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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

チキチキバンバン-まほうのくるま-  

チキチキバンバン

水陸空両用車の絵本(児童書)といえば、この本をはずすわけにはいくまい。「チキチキバンバン-まほうのくるま-」(イアン・フレミング・作、ジョン・バーニンガム・絵、渡辺茂男・訳、冨山房)がそれだ。渡辺鉄太氏の貴重な情報によれば、前出の「みつやくんのマークX」もこの本にアイデアの源泉があるのだそうだ。おそらく同じ英国の児童書である「空とぶ自動車スキマー作戦」も影響を受けていないはずがない。空とぶ自動車本の全ての原点ともいえる本なのである。

Ian Fleming 
Ian Fleming

原作者のイアン・フレミング、どこかで聞いたことがある名前だが、そう英国諜報部員“007”シリーズの原作者、ジェームズ・ボンドの生みの親でもある。本名Ian Lancaster Fleming、1908年イギリス・ロンドン生まれの冒険小説家。国会議員の家庭に生まれ、陸軍士官学校卒業後、銀行や問屋を経て、ロイター通信の支局長(外信部長)としてモスクワに赴任。1939年から英国諜報機関MI6(SIS)に勤務、第二次世界大戦中は実際に安全保障調整局(BSC)のスパイとして活動する(へえー)。終戦後、ジャマイカの別荘「ゴールデンアイ」に居住。1953年に、それまでの経験をもとに「ジェームズ・ボンド」シリーズ第1作となる長編「カジノ・ロワイヤル」を発表する。1964年に遺作となった「黄金の銃をもつ男」を校正中に心臓麻痺で死去(56才)[1]。本作は1964年に彼が唯一執筆した児童書である。彼が亡くなった年に書かれているので、もっと長生きをされていたら、クルマノエホンも含めて面白い児童書をたくさん残していたかもしれない。残念。

映画「チキチキバンバン」

ディズニーのミュージカル映画「チキチキバンバン」(ケン・ヒューズ・監督、1968年)はこの本が原作となっているが、話の内容は多少異なるようだ。プロデュースはアルバート・R・ブロッコリ(Albert R. Broccoli)、映画007シリーズの第一作「007ドクター・ノオ」から亡くなるまで007シリーズ(「007消えたライセンス」まで)の製作をした名プロデューサー[2]。イアン・フレミング&アルバート・R・ブロッコリ両氏の手による映画「チキチキバンバン」は007番外編といってもよい。

私は映画を見たことがないのだが、たいそうな傑作映画らしい。映画を見たことがなくても♪Oh, you pretty chitty bang bang, Chitty Chitty Bang Bang, we love you!の曲は誰もが一度は聴いたことがあるはず。子供たち用に我がカングーに常備していいるCD「NHK英語であそぼ ラップトーン・ファミリーとあそぼ」(avex io)の中にも含まれている楽しい曲だ。

「チキチキバンバン」その1

原作の方も、負けず劣らずの傑作である。全3巻にわかれているのであるが、さすがスリルとサスペンスの007シリーズを書いたストーリーテラー。場面設定や話の展開が実にうまい。読み手をぐいぐいと惹き付ける。主人公は元英国海軍中佐で探検家、発明家のカラクタカス・ポット氏とその妻ミムシー、双子の兄妹ジェレミーとジェマイマの家族。車も買うお金もないが、前向きで楽しく暮らしていたポット一家。ある日、ポット氏が発明した音の出る飴玉「カラクリ笛吹きあめ」が地元の製菓会社に売れて大金が入る。このお金で一家は車を買おうと思うのだが、崩れかけた小さな自動車修理工場で、一台の古いぽんこつオープンスポーツカーを見つける。8リッター、12気筒、スーパーチャージャー付エンジン、ブリティッシュ・グリーンのパラゴンパンサーである。人とは違うことが大好きなポット一家。二束三文でこの車を手に入れ、飴玉で儲けた数千ポンドの大半をつぎ込んでポット氏が美しい車によみがえらせた。彼女(英語では車は女性名詞)が動くときに発する音から「チキチキバンバン」と名づけられる。性能もすごいが、この車、修理したポット氏にもわからない不思議な力を持っていたのである。そこからポット一家の大冒険が始まる。

これ以上の詳しい内容は原作を手に入れて読んでいただくか、ホームページ「チキチキバンバン大研究」[3]を参照いただくとよい。全世界にチキチキバンバンのファンは多く、いろいろな研究がされているようだ。関連サイトも非常に多い。その中で、日本語で一番詳しいサイトはこの「チキチキバンバン大研究」であろう。実に多岐にわたって研究されている。原作本(訳書)のことを知りたいならば、「研究4.原作を読み解いていくと解るもの」を参照されたし。

私が笑った(失礼!関心しておもわず笑みがこぼれた)のは、「研究2.映画のデータから検証できるもの、(2)チキチキ考証学科」の項。映画「チキチキバンバン」のモデルカーが本当に飛ぶのかを航空力学的に検証している。この好奇心に脱帽。好奇心は創造の源。

「チキチキバンバン」その2

揚力の式、L=0.5×ρ×V2×S×CL(L:揚力、ρ:空気密度、V:速度、S:翼の面積、CL:揚力係数)から計算を試みたものであるがCLが計算できないので途中断念している。私が代わって少し補足をすれば、CLは翼の断面形状と翼断面の基準線の進行方向に対する傾き(迎角)に依存するので、実験的に算出するしかない。とはいえ、チキチキバンバン号の翼断面形状に関する詳細なデータはないので、例えば理想的な魚のような断面形状(例えば、専門的にはNACA4412形状)であると仮定すると、最大揚力係数CLMAXは約1.7程度である[4]。これを元に計算してみると、ρ=1.225kg/m3(標準大気)、V=160km/h==44.4m/sec、S=18.5m2、CLMAX=1.7なので、最大L=0.5×1.225×44.42×18.5×1.7=37,974.6N(ニュートン)の揚力を発生できる。よって、重力加速度9.8kg/sec2で割ると持ち上げられる最大重量は約3.9トン。映画チキチキバンバン号の重量データがないのだが、おそらくその部品構成から5トン以上はあると推定される。であれば、仮に理想的な翼形状であったとしても飛ばすことは無理だ。ましてや蛇腹の翼なのだから。と、夢のない数学的検証はこの辺で。私が似非エンジニアであることがばれそうなので。

私の個人的読書感想であるが、特に第2巻のポット一家がチキチキバンバン号でドーバー海峡をわたり、フランスの海岸で見つけた洞穴を探検するくだりは大人が読んでもドキドキする。その先にあったものは・・・!

John Burningham
John Burningham

文章もさることながら、ジョン・バーニンガムの挿絵も実によい。ジョン・バーニンガムは私の好きな作家の一人だ。映画のチキチキバンバン号は金ぴかの車だが、ジョン・バーニンガムの“彼女”はブリティッシュグリーンの渋い車体色。個人的にはこちらの色の方が好きである。英国車のスポーツカーはやっぱりブリティッシュグリーンだよね。ジョン・バーニンガムは、1936年イギリス生まれ。問題児だったのかどうかは不明だが、少年時代は10回も転校を繰り返し。ロンドンのセントラル美術学校卒業。兵役を拒否し、スラム街を掃除したり、農場や森林、病院で働いたりした豊富な経験が、後の絵本のお話に生かされている。1964年、はじめて手がけた絵本「ボルカ」でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。その後「ガンピーさんのふなあそび」で再度受賞した。1971年には、80日間44,000マイルの世界一周旅行をしており、日本にも立ち寄り、それが絵本「80日間世界一周」となった。また、「おじいちゃん」は、エミール/クルト・マッシュラー賞を受け、アニメーション映画にもなった。1964年、絵本作家のヘレン・オクセンバリーと結婚し、3人の子どもがいる[5][6]。

残念ながらこの本、日本語版は絶版である。私はヤフオクでセット二千円ほどで手に入れたが、人気のある本なので古本屋で仮にあったとしても高価で取引されていると思う。3冊セットとなるとさらに条件は厳しそう。辛抱強くオークションに安く出品されるのを待つか、出版社の再販に期待するしかなさそうだ。面白い本に出会うのに、なんでこんなに苦労せんとあかんのか?本の面白さを子供たちに伝える格好の材料なのに。こういう良書を子供たちに与えること、我々大人の責務であると思う。(朗報:Amazonを調べていたら原書“Chitty Chitty Bang Bang The Magical Car”(Ian Fleming・作、John Burningham・絵、Puffin Books)が2008/5/1に復刊されるようだ。予約受付中。これは買わねば。)

チキチキバンバン号は実写版が映画化されたが、この車のモデルはあるのだろうか?実はある。この本の冒頭にチキチキバンバン号のモデルのことが簡単に記載されている。このことについての詳細は次回紹介する。

[参考・引用]
[1]イアン・フレミング、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0
[2]アルバート・R・ブロッコリ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BBR%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%B3%E3%83%AA
[3]チキチキバンバン大研究、
http://www.geocities.jp/krytone1234/chittytop.htm
[4]流れ学第3版、谷一郎、第10章 翼、p233-234、岩波全書
[5]ジョン・バーニンガムの絵本、特集の本、ほるぷ出版ホームページ、
http://www.holp-pub.co.jp/
[6]ジョン・バーニンガム、人物別リスト、Utrecht[ユトレヒト]、
http://www.utrecht.jp/person/?p=42

チキチキバンバン 1―まほうのくるま ぼうけんその1 (1)

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Posted on 2007/11/27 Tue. 21:07 [edit]

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