わたしの足は車いす

先日、東京ビックサイトで開催されていた国際福祉機器展に行ってみた。1974年から約30余年続いているハンドメイドの自助具から最先端技術を活用した福祉車両まで世界の福祉機器を一堂に集めた国際展示会。ウォシュレットがもともと福祉機器だったことを考えると、ここに展示されている商品が将来普通の日常生活用品に化けるかもしれない。前にも言ったが、眼鏡ももともとは視力矯正用の福祉用具だった。東京モーターショーももうじき開催されるが、クルマの視点でも福祉車両など、国内大手自動車メーカがほとんど参画する、さしずめプチモーターショーである。

開発者とi-unit
i-unitと開発者

車椅子の展示も一般用からスポーツ用などバラエティに富んでいる。道路交通法に基づけば、走行速度が9km/h未満の電動車椅子は、高齢者移動用の電動カートなどとともに「歩行者」として扱われるが、椅子つき4輪車両、しかも操作機能つき電動車椅子であれば、自走車両という意味で形態的には「自動車」そのものである。事実、数年前の愛知万博で紹介されたトヨタの1人乗り自動車「i-unit」は、まさに車椅子の進化型モビリティである。

ということで、クルマノエホンでは車椅子絵本も取り上げようと思う。今回紹介するのは、「わたしの足は車いす」(フランツ=ヨーゼフ・ファイニク・文、フェレーナ・バルハウス・絵、ささきたづこ・訳、あかね書房)である。原書はドイツ語本“Meine fuesse sind der rollstuhl”(Franz-Joseph Huainigg・文、Verena Ballhaus・絵、Betz Annette)。2004年オーストリア児童文学賞受賞作。

両足が麻痺していると、当然ではあるが家の中でも、外出するにも、車椅子なしではどこへも行けない。車椅子が足の代わりになるのである。この本は、初めて車椅子でスーパーにひとりでおつかいに行った女の子アンナの物語である。

「わたしの足は車いす」一部

車椅子の移動にとって、われわれの周囲環境はバリアが多くある。歩道と車道の段差(バリア)もその一つである。今でこそバリアフリー設計で段差にスロープ形状を施した箇所を多くみるようになったが、車歩道に関わらず、建物や公共施設とのアクセスには今もってバリアが数多く存在する。

おつかい先で車椅子のアンナをじろじろ見る人、アンナの車いすを指差して「それ、なあに?」と聞く女の子に「そんなこと聞くもんじゃありません。」と諭す母親に悲しくなるアンナ。お店でリンゴを自分で取ろうとする彼女に、気遣って取ってくれた店員には「私だって自分でとれるわ。ほかの人と同じように。」と不機嫌になるアンナ。

そんな彼女に、街で出会った太っちょの男の子ジギーが言う。「君も僕も人とはちょっと違っている。でも、違っていてもいいんだ。違うことって、本当は特別なことなんだから。」この言葉にアンナの心は少し楽になる。

我々は異質なものに対して排除したり、関わらないようにしようとする心理が働きがちだ。障害を持つ人や高齢者もできるだけ他人に迷惑をかけまいと何でも自分でしようとする意固地な心理が働く。でも、最近はやりの言葉「ダイバーシティ(多様性)」的に言えば、まず違いを認める、違うものが混在することで新たな関係が生まれると考える。お互いの心の「バリアー」を取り除くことで、もう少し柔らかなギスギスしない社会になっていくんだろうな、そう思った一冊である。

Franz-Joseph Huainigg
Franz-Joseph Huainigg

作者のフランツ=ヨーゼフ・ファイニク(Franz-Joseph Huainigg)は、1966年オーストリア生まれ。クラーゲンフルト大学にてドイツ語およびメディアコミュニケーションを学ぶ。幼児の頃の予防接種の副作用で両足麻痺となり、以来、車いすの生活。オーストリア教育・文化省のためのメディア教育活動に携わり、「自分で人生を決めよう」運動その他の障害者活動を積極的に主導。現在、オーストリア国会議員。結婚してふたりの娘と暮らしている。

Verena Ballhaus
Verena Ballhaus

ユニークな挿絵のフェレーナ・バルハウス(Verena Ballhaus)は1951年ドイツ生まれ。ミュンヘン美術大学卒業後、舞台装置の仕事に従事する。その後、演劇ポスターのデザインに携わり、80年代半ばより本の挿絵を手がけるようになる。ドイツ児童文学賞(絵本部門)を受賞し、これまでに、50冊以上の作品を手がける。現在ミュンヘン在住。4人の子供と、一人の孫に恵まれている。

余談ではあるが、車椅子を使ったバスケットボールやサッカー、レースといった様々なスポーツがある。前々からの疑問なのだが、このようなスポーツに健常者が参加してはいけないのだろうか。サッカーも手を使ってはいけないという制限付のスポーツ。車椅子のスポーツだって足を使わず車椅子で代用すると意味では、サッカーと同じこと。こんな風に、身障者と健常者の混在する新たなスポーツになれば、車椅子も普通の日常生活用品になるのだと思うのだが。

わたしの足は車いす (あかね・新えほんシリーズ)わたしの足は車いす (あかね・新えほんシリーズ)
(2004/10)
フランツ=ヨーゼフ ファイニクフェレーナ バルハウス

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