海図なき戦い

海図なき戦い

トヨタとマツダの資本提携が発表された[1][2]。先に、ルノー・日産連合の2017年上半期世界販売台数が、VWやトヨタのグループ販売台数を抜いて世界一になったと報じられたが[3]、三菱加算は反則だろ?と思われたそのニュースがこの提携に影響したかどうかはわからない。ただ、豊田社長が会見でIT系など異業種の参入で「前例のない海図なき戦いが始まっている」と語ったように、技術開発も含め、トヨタといえどももう1社では戦えないこの業界の厳しい現状を反映している提携であることは確かだ。特に、両社の弱みであるEVの共同開発に軸が置かれている。“海図なき戦い”で思い出したのが、人気コミック『ONE PIECE』だ。今年が連載開始20周年だという。これを記念したムック本も出ていて、我が家も早速購読している。

初代プリウス
20周年のハイブリットエンジン(初代プリウス)
マツダ・コスモスポーツ(1967)
50周年のロータリーエンジン(コスモスポーツ)

20年前の1997年といえば、世界初のハイブリット量産車、トヨタ・プリウスが発売された年だ(「未来を走れハイブリットエコカー」)。さらに30年前の1967年には、世界初のロータリーエンジンの市販車、マツダ・コスモスポーツが発売されている[4][5]。奇しくも、自動車の世界を変えようとチャレンジしたこの2社が、アニバーサリーイヤーに“一味”になったのは興味深い。EVなど「未来の車を汎用品にしない」思いが一致したこともわかるが、IT業界の先例を見れば、クルマのコモディティ化もまた一つの未来の方向ではある。彼らはまた別な道を模索しようとしているのか。

またフランスや英国が、2040年までにガソリンやディーゼルエンジン車販売禁止を宣言したが[6]、原発の縮小や再生可能エネルギー発電の限界(発電能力や供給安定性、設置場所等々)も考えると、まだまだ化石燃料に頼らざるを得ない現状で、EVだって発電するのに大量のCO2を排出する電気を使って走る矛盾をどう解消するのか。確かにクリーンな排気というメリットはあるけれども、原発大国フランスですら、脱原発に揺れているというのに本当に「脱ICE(内燃機関)」は可能なのだろうか。日産e-Powerに代表されるシリーズハイブリット、あるいはレンジエクステンダーEVは、その化石燃料発電所を直接クルマの中に移動させた代物だとも考えられる。計算した訳ではないが、発電所から送電された電力を充電する場合の伝達効率を考えれば、こちらの方がピュアEVよりもトータルCO2排出量は少ないかもしれない。水素FCVだって、水素を作るのに大量のエネルギーを要するので本質課題は同じこと(「燃料電池のしくみ」)。エネルギー問題は、産油国やメジャー、電力マフィアなど政治的な力を持つ“七武海”も関わってくるので、自動車業界の覇権争いは『ONE PIECE』さながらに、非常に複雑な構図となってくる。

ONE PIECE人物相関図
『ONE PIECE』人物相関図(拡大図)
出典:http://psychobind.blog57.fc2.com/blog-entry-105.html

さらに新参“ルーキー”のA.I.制御やセンシング技術が肝となる自動運転や無人運転も、「トロッコ問題」のように誰を救う、誰が法的・倫理的責任を負う技術なのかといった本質的な議論をすっ飛ばしてコトは進んでいるようにも見える[7][8]。事故のリスクや廃炉の難題はわかっていながら棚上げされたまま、「夢のエネルギー」として誰もがもてはやした原子力発電のいつか来た道に似ているような気がするのは俺だけだろうか。まさに“海図(ルール)なき戦い“に両社は飲み込まれるだけなのか、はたまたこの混沌を治める覇者になるのだろうか。ONE PIECEも自動車も壮大な物語はまだまだ終わりそうにない。

世界自動車業界地図2017
世界自動車業界地図(既にこのマップも陳腐化)
出典:https://dime.jp/genre/345045/2/
世界自動車業界地図2017_2
ここにIT系新興勢力”ルーキーズ”との相関を乗せるだけでもこんなに複雑なクルマ業界
出典:http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/041100089/042700003/?ST=SP




[参考・引用]
[1]トヨタとマツダ、「海図なき戦い」へ協力、ロイター、2017年8月5日、東洋経済ONLINE、
http://toyokeizai.net/articles/-/183416
[2]トヨタ、マツダと資本提携 仲間増やし勝ち残り狙う、産経ニュース、2017年8月4日、
http://www.sankei.com/economy/news/170804/ecn1708040013-n1.html
[3]ルノー・日産連合、世界販売首位に 17年1~6月期、日本経済新聞、2017年7月28日、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ28HX8_Y7A720C1EA6000/
[4]自動車の歴史 ~年表~、よくわかる自動車歴史館、GAZOO、2015年3月27日、
http://gazoo.com/article/car_history/150327_1.html
[5]孤高のロータリーエンジン(1967年)、GAZOO、2013年12月20日、
http://gazoo.com/article/car_history/131220_1.html
[6]フランスがガソリン車の販売を禁止する真の理由、橋爪吉博、日経ビジネスオンライン、2017年7月27日、
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/022700114/072400008/
[7]完全自動運転自動車とトロッコ問題について、花水木法律事務所、BLOGOS、2015年11月2日、
http://blogos.com/article/142284/
[8]誰の命を救うべきか...自動運転車が抱える「トロッコ問題」MITがウェブ上でアンケート開始、塚本 紺、GIZMODE、2017年1月23日、
http://www.gizmodo.jp/2017/01/mit-moral-machine-self-driving-car.html
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[ 2017/08/05 21:03 ] cars/車のお勉強 | TB(0) | CM(0)

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