アリのおでかけ

アリのおでかけ

アリである。洒落ではない。この夏、日本中を席巻している昆虫のアレである。ついに、故郷・福岡にもヒアリはデビューした。刺されちゃってるし[1]。尤も、もともと大陸と交流の深い土地だから当然といえば当然だ。今年から騒がれ始めたが、もう何年も前から住みついていたのかもしれない。今のお役所の仕事ぶりを見る限り、とても”鋭い眼”で日々侵入をチェックしていたとは思えないのだ(そんなに予算もついていないだろうし)。それまでニュースでも話題になっていなかったから、我々もほとんど関心がなかった。その辺に徘徊しているアリがヒアリだとは思わないし。たまたま気づかなかった、犠牲者がいなかっただけで、今年の第一報を受けて慌てて調べ始めた、実情はそんなところだろう。もう立派に定住しているのだと思う。だから本日の絵本は『アリのおでかけ』(西村敏雄・作、こどもMOEのえほん)。

まさかこの日本で、親が子どもに「アリに注意しなさい」なんて言う日が来るとは思わなかった。

はっぱのおうち
もうこんな風景が見られんようになるのかもしれんね(『はっぱのおうち』(福音館書店)より)

この世に生まれ、ヒトが最初にじっくり観察する生き物はおそらくアリだ。庭で、公園で、道端で、あるいは家の中で歩くアリを見つける。地べたに落ちたアメちゃんに群がるアリたちを気持ち悪そうに眺める。子どもはしゃがみ込んでじいーっとこの生き物の様子を観察する。

穴から這い出たありんこはどこへ向かうのだろう?

この穴の中はどうなっているんだろう?

自分の身体より大きな虫の死骸をせっせと運んでいる。どうやって巣の中に入れるのだろう?

時間も忘れ、彼らの行く末を目で追う。

時に指でつんつんとちょっかいを出し、木の枝を穴に突っ込んでみたりする。そのうち、巣の入り口をふさぐ、自分が怪獣になったつもりで彼らを踏みつぶす。あるいは水筒の水を、巣の中に注ぎ入れる。大混乱して右往左往するありんこたちをみて楽しんでいる。子どもというのは残酷だ。理性というものが形成される前の、人間の本性がそこに見て取れる。でもこれが成長の一里塚。

ちょっと大きくなると、今度は拡大鏡や顕微鏡で彼らを見たくなる。その恐怖の素顔に驚くはずだ。

The Red Imported Fire Ant
Red Imported Fire Ant(やっぱりこいつらはヤバい・・・)。
出典:http://cisr.ucr.edu/red_imported_fire_ant.html 

子どもだけではない。最近じゃアントクアリウムなんて、大人はアリの巣をインテリアにしちまっている。

antquarium
アントクアリウム
出典:生物ちゃんねる

そのアリがヒトの命を奪うかもしれないなんて。もうアリさんを素手で触れないのか?

人間にとって最大の危険生物は蚊だ。これは良く知られた事実であるように、各種の感染症の媒体になるからだ。2番目がヒトというのが恐ろしいというか、ヒトの本性を考えれば納得[2]。最近は、その辺の山林に行けば普通に存在するマダニの危険性が叫ばれている。つい最近、マダニが媒介する感染症に感染した猫に噛まれて、私と同じ50代の健康な女性が死亡したのだという。世界初の事例らしい[3]。なんともおっかない日本になった。地震などの自然災害だけでなく、虫にも注意しなければならない。案外、戦争よりも人類は昆虫によって滅亡させられるのかもしれない。

アリのおでかけ その1

この絵本では「真っ赤」なバスに乗ったアリたちが、楽しげにお出かけをする。ワニの背中を進んだり、ラクダのコブを越えたり・・・。ヒアリたちも、中国から船にゆられて日本へお出かけしてきた訳だ。ちょうどいい暑さだし、飽食の日本は道端においしい食べ物がいっぱい落ちてるしねえーって、すっかり気に入られたのかもしれない。幼児絵本らしいストーリー展開からこのアリたちにほのぼの感を抱きそうなものだが、西村敏雄(「まてまてタクシー」参照)さん描くアリたちの目つきがヒアリに重なって、何か企んでいるように見えるのは俺だけだろうか。ちなみにヒアリの英語名は”Red” imported fire ant。西村さんの予言だったのかも・・・。

アリのおでかけ その2
何か企んでいそうなアリたち(『アリのおでかけ』より)

「ヒアリの天敵は日本のアリだけだ」という噂も飛び交っていたが、「一定の“防衛力”アリ」という専門家もいれば、「ヒアリは非常に強いため、勝負にならない。」と否定的な見解を示す専門家もいる[4][5]。なんとか在来種に大和魂を見せてもらいたいが、これだけグローバルに物流が進んでしまった以上(水際作戦が功を奏したといわれるニュージーランドとでは、中国との交流の絶対量が違い過ぎる[6])、彼らの「入植」を食い止めることは不可能に近いだろう。ヒトもアリも中国産は厄介だわな。

最終手段は、この絵本の最後に登場する舌の長~いアイツを放つしかないか。





[参考・引用]
[1]ヒアリ、ついに人刺す 福岡の作業員が全国初の被害、HUFFPOST、2017年0月28日、
http://www.huffingtonpost.jp/2017/07/27/hiari_n_17605964.html
[2]人間にとっての脅威の生物は?蚊はこれだけ危険な生物なんです(デング熱)、Xidear、2014年9月7日、
http://xidear.com/xidear/urawaza/kahakikenyo.html
[3]マダニ感染症、野良猫にかまれ保護しようとした50代女性が死亡 世界初、厚労省が注意喚起、産経ニュース、2017年7月24日、
http://www.sankei.com/life/news/170724/lif1707240038-n1.html
[4]敵はヒアリ 頑張れ日本のアリ?、NHK NEWS WEB、2017年7月15日、
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170715/k10011059471000.html
[5]“在来種のアリはヒアリの定着を防ぐ”ネット上にウワサ広がる → アリの研究者は「在来種では勝負にならない」、ねとらぼ生物部、2017年7月10日、
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1707/10/news133.html
[6]なぜ世界で唯一ニュージーランドだけがヒアリを「根絶」できたのか、村上貴弘、iRONNA、2017年7月11日、
http://ironna.jp/article/7105?p=1
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はっぱのおうち

☆ 本題の「アリ」さんではなく、
  「はっぱのおうち」の絵にフォローです。
  絵は林明子さんのですね。好きなイラストかな。
  次女も21歳、今まさに就職戦線中です。
  だから、、絵本もサクサクと自宅で探すことは難しくなっています。
  林明子さんの絵は結構好きで、図書館では彼女の作品を
  見かけると大抵借りています。

  「こんとあき」「はじめてのおつかい」が家にあるはず。
[ 2017/08/06 22:48 ] [ 編集 ]

Re: はっぱのおうち

いつも本題でないところにフォローありがとうございますw
さすが林明子さんに視線が行くところが『相愛文庫』で育ったSDTMさんですね。
[ 2017/08/07 20:30 ] [ 編集 ]

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