ジュンとひみつのお話

ファンタジーの世界

最近、ますます更新の間隔が空いちゃって・・・。なかなか時間が取れませぬ。厳しい病を押して、ブログをアップし続けた故・小林麻央さん。正直、彼女が病に倒れる前は、その美貌で若い頃からチヤホヤされ、あげくに稀代のプレイボーイに騙されたな、と少し冷めて見ておりました。しかし、私も二人の母をガンで失い、特に実母も乳ガンだったため、彼女のブログの読者ではありませんでしたが、陰ながら完治とまではいかないまでもせめて寛解を祈っておりました。拙ブログとは比較にもなりませんが、最期まで間断なく情報を発信し続けたその強い意志と覚悟は壮絶なものだったと思います。しかし、特にBBCへの寄稿文は、極めてナチュラルに生きることの本質を彼女なりに語ってくれた人々の記憶に残る名文になりました(「色どり豊かな人生」)。成田屋ももう悪いことはできませんね。さて駄ブログの方です。だいぶ前の情報になりますが、「佐藤さとるの世界とコロボックル物語」で紹介したように先月の10日(土)、横須賀市立児童図書館主催による同企画展の中で、この2月に亡くなった童話作家・佐藤さとる氏の甥で、氏の代表作の一つである『ジュンとひみつの友だち』のモデル・佐藤潤氏の講演会『叔父 佐藤さとるとの思い出』があったので聴講しました。佐藤さとる氏の知られざる逸話や、『ジュンとひみつの友だち』の謎も解けて、非常に興味深く、楽しい時間を過ごせました。

「佐藤さとるの世界とコロボックル物語」企画展1

企画展では児童図書館の所蔵する佐藤さとる氏の著作が、所狭しと展示されていて、先生の作品はこんなにもあるのかと驚きました。たまに児童図書館へは出向くのですけど、こんな大量の貴重な書籍が書庫に眠っているとは知りませんでした。これほど豊かな蔵書がありながら、これまた全国的にも珍しい、神奈川県内でも唯一の子どものための図書館が、地元が生んだ著名な児童文学者に関する常設文庫をなぜ持たないのか不思議に思います。確かにハードウェアはかなり年季を帯びているものの、日本の地方自治体、あるいは国や企業も含めた日本全体の弱点と言えるかもしれませんが、非常に強力なコンテンツを持っていても、それを有効に活かせないソフトウェアの弱さを痛感しました。

「佐藤さとるの世界とコロボックル物語」企画展2
企画展は大盛況

人口流出にあえぐ横須賀市は、先日二期8年を務めた吉田雄人氏に代わって、地元出身のタレント・上地雄輔さんの父・上地克明前市議が、小泉進次郎氏の強力な支援もあって新市長に選ばれました[1]。「ヨコスカ復活」という名のもと、旧態依然としたハコもの行政に安易に走ることなく、是非、横須賀市の持つソフトウェアの有効活用を図っていただきたいと思います。なんてったって上地家のベースは、佐藤さとる作品舞台の界隈、吉倉町なのですから(佐藤さとる氏と上地親子は逸見小学校の同窓[2][3])。

「わんぱく天国」挿絵1
「わんぱく天国」挿絵2
話題となった『わんぱく天国』の挿絵

これら展示図書の中でも、とりわけ燦然と光り輝いていた一冊が氏の代表作、我が住処が舞台にして、私の蔵書棚にも鎮座する『わんぱく天国―按針塚の少年たちー』(講談社)のオリジナル本でした。ここ横須賀ご出身で、古本屋ツアーコンダクター、小山力也氏が最近ついに手に入れたと小躍りしていた貴重本でもあります(4/30「東京のロビンソン・クルーソー」と「わんぱく天国」!)。

この本にまつわる佐藤潤氏のお話が興味深かったです。本書を開くと、最初に一枚の挿絵が登場します。盟友・村上勉画伯の手による駄菓子屋「宮瀬」の前で少年たちがたむろする場面です。この挿絵は、その後何度も再販された『わんぱく天国』の中でも唯一、このオリジナル本のみに挿入されているのだそうです。潤さんの“ひみつのお話”は、その店先にぶら下がっている「花王石鹸」の広告看板についてでした。「花王石鹸」はもちろん、現在の花王株式会社のことです。あの三日月マークのブランドロゴを知らぬ者はいないでしょう。戦前からこの馴染みのあるマークだったのです。しかしよーく見て下さい。なんか違ってやしませんか?そう、三日月の向きです。

戦前の花王マーク 戦後の花王マーク
戦前の花王マーク(左)と戦後の日本人に馴染みの花王マーク(右)[5]

潤さんもネットでいろいろ調べたそうですが、花王は1887年に創業者の長瀬富郎が開業した洋小間物商『長瀬商店』がオリジンだそうです。三日月を使ったロゴマークも長瀬が考案したもので、1890年から使っていて吹き出しに「花王石鹸」の文字が入っています(写真)。その後三日月だけのデザインになりましたが、当初は右向きの下弦の月型になっていました。その後戦中の1943年(昭和18年)に左向きの上弦の月型(正確には半月型を上弦・下弦の月と呼びます[4])に変更されます。本書の挿絵は、その一代前のロゴのようです。下弦の月はこれから新月、つまり月が完全に欠ける方向に進みます。これでは縁起が悪いということで、満月への向かう上弦型の三日月マークに変更されたというトリビアな話でした[5]。

佐藤さとるさんは、私が知る限り双子の姉、弟、妹の5人きょうだいで、双子の姉の一人と妹とは戦前に死別されています。講演者の潤さんは弟の息子さんに当たります。そのご姉弟とはよくカラオケに行かれていたようで、講演会当日はさとるさんの録音された歌声も披露されていました。自分が死んだとき、葬儀で流してくれとおっしゃって、実際に流されたと言う三橋美智也の「達者でナ」の歌声が、改めて先生を偲ぶ形になりました。歌はかなりお上手で、その美声を聞いた見知らぬ人から、弟さんが「どういうお方ですか?」と尋ねられた際、「なんでも昔、少し歌手をやっていたみたいですよ」とトボけて答えたというエピソードが会場の笑いを誘っていました。

「佐藤さとるの世界とコロボックル物語」企画展3
佐藤さとるさんは絵もめちゃくちゃ上手い。企画展で紹介されていた氏の作品の一つ。

潤さんの話によれば、佐藤兄弟はとても仲が良く、『わんぱく天国』を執筆していた頃も、本書の大切な要素となる昔あそびを思い出すのに、ああしたこうしたと実際に道具を作るなどして、潤さんも呆れるくらい二人で童心に返っていたそうです。私の親父もそうですが、この世代の人間は皆、自分で遊びの道具を作っています。DIYは当たり前、小刀一つあれば、竹や木材をちょこちょこっと細工して竹とんぼなどを作ってしまいます。また、さとるさんが体調を崩して入院されたとき、偶然にも先に入院されていた弟さんと隣部屋になったのだとか。二人の向かい合った頭に壁を挟むカタチで寝ていたそうです。入院中、各々が購入した超軽い掛布、携帯ラジオを互いが気になって、早く死んだ方がもらうと約束をしていたらしいですが、その弟さんが今年1月に亡くなり、なかなかその事実を伝えられなかった潤さんから、数日後にその訃報を聞いた後すぐに、先生は退院されました。そして、弟の後を追うようにして2月にご自宅で旅立たれたのです。私には兄弟姉妹がおりませんので、『しょうぼうじどうしゃじぷた』で有名な故・渡辺茂男氏のご長男・鉄太さんからご兄弟の仲の良さを伺ったときもそうでしたが、このような兄弟の強い絆をとても羨ましく感じます。小林姉妹もそうですね。

「佐藤さとるの世界とコロボックル物語」企画展4
講演会『叔父 佐藤さとるとの思い出』は満員御礼
出典:https://www.facebook.com/yokosukasatousatoru/

さて、個人的には私の大好きな『ジュンとひみつの友だち』のジュンが実際に存在していたことも驚きでしたが、本書をクルマノエホンとして紹介するキーとなった、ミサオ(操)姉さんも実在の人物なのかが今回の最大の興味でした。講演の中で明らかになった事実として、潤さんにお姉さんはいらっしゃいません。実像としてはどうやら佐藤さとるさんのご長女がモデルのようです。しかし、自動車を巧みに修理する技、機械に対して深い洞察を持つミサオのキャラクターとしてのモデルは、今回の演者、佐藤潤さんだったということがわかりました。彼はバイクで北米大陸を横断された経験もあるようですし、ご自身でバイクのパーツを分解・組立もされるとお話されていました。うみべのえほんや店主によると、クルマについてもかなりお詳しい筋金入りのカーガイらしいのです。甥っ子のそういう「特技」を知っていたさとるさんは、新しい作品の主人公を作り上げる過程で身内の二人を重ねあわせていたようです。もう一つの私の謎、「ダイスケ鉄塔」のモデルは存在したのかですが、佐藤家が横須賀を離れて転居した横浜・戸塚のご実家近くに鉄塔があったらしく、それが「ダイスケ鉄塔」のモデルじゃないかなあと、潤さんはおっしゃっていました。えええーっ、安針塚の鉄塔じゃないの?と思いましたけど・・・。

残念ながら講演後、彼は非常に多くの聴講者らとご歓談されていたので、もっと詳しいお話を直接伺う機会を得ることができませんでしたが、謎の一端が紐解けてすっきりした内容の濃い企画展でした。

※)聴講してかなり時間が経っていますので、記憶が定かではありません。メモも取っていなかったし、内容に誤りがあるかもしれませんがご容赦願います。



[参考・引用]
[1]横須賀市長選、上地克明氏が初当選 小泉進次郎氏「王国」威信守る、産経ニュース、2017年6月27日、
http://www.sankei.com/politics/news/170627/plt1706270013-n1.html
[2]上池克明オフィシャルサイト、
http://www.kamiji.net/profile/
[3]横須賀市立逸見小学校、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E9%A0%88%E8%B3%80%E5%B8%82%E7%AB%8B%E9%80%B8%E8%A6%8B%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E6%A0%A1
[4]「下弦の月」とは“半月”のことなのに、“三日月”と思っている人が多い件、NAVERまとめ、2013年9月24日、
https://matome.naver.jp/odai/2133688656761055501
[5]なぜ花王のロゴには"月"が描かれているの? -広報さんに聞いてみた、マイナビニュース、2013年7月7日、
http://news.mynavi.jp/articles/2013/07/07/ko/
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[ 2017/07/02 16:46 ] Yokosuka/横須賀 | TB(1) | CM(0)

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