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みっつの3  

みっつの3
出典:http://www.pref.saga.lg.jp/kiji00350013/index.html

連休中の子どもの日、妻方の祖母の葬儀参列のため、あの『GT roman』の沼津へ久しぶりに帰省した。酒を飲むかもしれない(呑むに決まっとる!)のと渋滞を避けるためJRを使った。この連休は多くの帰省客・レジャー客が渋滞に巻き込まれたと思うが、渋滞時に多い事故が追突だ。その追突事故防止に役立ちそうなのが佐賀県の実践する「みっつの3」運動。「みっつの3」って何?は後述するとして、なぜ佐賀県なのか?佐賀県は全国の中でも、この追突事故の発生率が突出しているのだという[1]。

事故類型別発生割合
事故類型別発生割合(総務省統計局「平成25年中の交通事故の発生状況」のデータに基づく)[2]

交通事故はどんな種類が多いのか。類型別事故データを見てみると、車両相互の事故が9割近くを占める。その中で3大事故といわれるのが「追突」「出会い頭」「右折時」で追突が最も多く、事故全体の4割弱を占める(2013年データ[2])。ところが佐賀県では、この追突事故の割合が44.5%と異常に高い(2015年データ[3])。


名古屋走り:BGMが耳についてしょうがない

ここで交通事故に関する県民特性を調べてみる。昨年2016年データによれば[4]、交通事故発生件数の1位は、「名古屋走り」で有名な愛知県、2位大阪府、3位福岡県がワースト3で、以下東京、静岡、埼玉と続く西高東低型。西側出身の私としては、これは何となくわかる気がするが、人口の集中する地域に事故が多くなるのは当然だろう。ところが、首都圏である我が生活エリア、神奈川(8位)を抑えて妻の故郷静岡が5位というのは驚いた。さすが『GT roman』の土地柄か。じゃあ事故発生率―ここでは事故発生件数÷免許人口(2015年データ)と定義するーで見てみると様子は少し変わってくる。何と1位は佐賀県。静岡、宮崎がワースト3だ。以下我が故郷福岡(件数も多いが発生率も高い)、香川、群馬と続く。全国平均が免許保有者153人に1人の発生率に対して、なんと佐賀は66人に1人とダントツである。人口10万人当たりの交通事故死者数も第1位が佐賀県(2014年データ)という、こと交通事故に関して佐賀は最悪の土地というデータになっている[5]。社会人を対象とした「一生行くことはないだろう」と思う都道府県ランキング(こんなランキング調査に何の意味があるのだろう?)で不名誉な1位となった佐賀県[6]としては、さらに追い打ちをかけるマイナスイメージに違いない。

佐賀県

なぜこのような情けない結果になっているのか。九州出身の私としては、それも実家の隣県の話となれば他人事ではない。[3]によれば佐賀は高齢ドライバーの事故率が高いということだが、65歳以上の高齢ドライバー率は約22%で、全国の中でも25位(2014年データ[6])。特別に高齢ドライバーが多い訳ではない。佐賀県は電車やバスなどの公共交通機関が他県に比べて少ないため、軽自動車の100世帯当たり普及台数は全国トップなんだとか[3]。この軽を日常の足として運転する高齢ドライバーが多く、この年齢層が事故増加の足を引っ張っているということなのだろうか。「名古屋走り」のように、運転マナーの県民性・地域性ということで片づけられるものなのだろうか。この汚名返上、特にその中でも追突事故を減らす目的で、佐賀県は「みっつの3」運動に取り組んでいる訳だが、一方で、もう少し事故データを詳しく分析して、真の要因を明らかにする必要もあるだろう。

3秒間の車間距離
出典:http://saga.mypl.net/public_info/?pid=1759

その「みっつの3」とは、追突事故を防止するための、数字の3をキーワードとした安全運転の基本行動マニュアルを3つ示している。1つ目は「3秒間の車間距離」。これは自分が加害者(第1当事者)にならないよう、車間距離は3秒分空けましょうというもの。つまり時速40km(秒速11.1m)で走っている場合は33.3m、時速60km(秒速16.7m)、80kmの場合はそれぞれ、50m、66.7mの車間を取って走りなさいということ。これは九州大学の松永勝也名誉教授が提唱した「3秒ルール」に基づくもので、「危ない」と気付くまでの空走時間を約1.5秒、ブレーキを踏んで停車するまでの制動時間を約1.3秒と想定し、誤差も考慮した3秒分、前の車両との距離を確保するという考え方らしい[8]。安全な車間距離は車両の速度によっても変わるし、人間の感覚機能は、距離より時間の計測の方が正確だからだろう。

車間距離と車頭距離
車間距離と車頭距離[9]

この前方車両の車尾がある地点を通過して、後続車の先頭がその地点を通過するまでの時間、つまり車間距離を後続車の車速で割った値を車間時間といい、前方車両の先頭がある地点を通過して、後続車の先頭がその地点に到達するまでの時間、つまり車頭距離を後続車の車速で割った値を車頭時間という(上図)。当然、車間時間(距離)<車頭時間(距離)となるが、いろいろ調べてみると車間時間(距離)と車頭時間(距離)を混同して使っているケースが多く見られるので、どちらのことを言っているのかきちんと区別する必要がある。車1台分の違いがあるのでね。ちなみに上記の「3秒ルール」は車間時間。ドライバーの目測であれば、こちらの方が測りやすい。

車間距離の測り方
出典:http://daikai.net/drive/pdf/h26-9annzen_point.pdf

車間時間3秒は長いなあというイメージがあるが、欧州の交通安全教育プログラムの多くは「2秒ルール」(車間距離=2秒)を指導しているようだ[9]。米国では州によって佐賀のように「3秒ルール」、あるいは「4秒ルール」推奨の地域もある。通常、私も車間時間2秒くらいかな(混んでると1~1.5秒くらいかも)、松永先生から怒られそう。「3秒ルール」は、例えば前方の電柱などの目標物を前車の車尾が通過してから、自車の車頭がそこを通過するまで秒数を計り、それを3秒になるよう間隔を空ける。「ゼロイチ」、「ゼロニ」、「ゼロサン」と数えるとちょうど3秒になるらしい。

ただこれも高速道路などを先行車、後続車ともに一定速度、つまり相対速度ゼロで走っている場合はいい。しかし、通常の一般道路では信号もあるし渋滞もある。割り込みもある。時々刻々の環境変化に伴い前後車両の相対速度が逐次変わる中で、ドライバーは車間距離をコントロールしている。[10]によれば、ドライバーはTHW(Time Headway)とTTC(Time to Collusion)という2つのパラメータを使って、先行車とのリスクを測っているのだという。THWは車間時間で、TTCは衝突余裕時間とも呼ばれ、車間距離を相対速度で割った値。THWの逆数とTTCの逆数の線形和でドライバーのリスクの感じ方を定量化できるそうだ。これが指標として使えれば、人間の感覚に合った自動運転制御なども可能になるだろう。

また、車間時間や車頭時間も長けりゃいいってもんでもなさそうなのだ。米国の実験では、THW=3秒以上で先行車に追従走行している場面において、先行車減速に伴う追突の危険が高まるケースが少なくないという。車間距離や車頭距離が短くなるとドライバーの反応は迅速になり、逆に長くなると緩慢になる、つまり長けりゃ長いでつい安心して、脇見などを誘発してしまうということだ[11]。だから「3秒ルール」に従っても決して油断してはいけない。絶対安全という運転方法はないのだ。

3秒、30mの徹底
出典:http://saga.mypl.net/public_info/?pid=1759

「みっつの3」の2つ目、「3秒・30mルール(方向指示器)の徹底」。これは自分が追突されない、被害車両にならないための心得である。車線変更の合図は進路変更の3秒前に、右左折の合図は30m手前で出しましょうというもの。停止する場合も、強いブレーキを踏む前に、軽くブレーキを1、2度踏んで、後続車に減速の意志を見せておくとよいだろう。前述の話とも関連するが、いくら後続車が車間を空けて注意を払っていても、急な右左折、急な車線変更、急停止をされるとそれに対応できない。名古屋走りは「黄色まだまだ、赤勝負」なんて言われるそうだが、日本では「黄色は進め」感覚のドライバーが多い。前にも書いたがフランス人の同僚に以前聞いたとき、ヨーロッパは黄信号=停止が常識なんだとか。もちろん日本の運転教育でもそう指導されているので、黄色だから先行車も進むなんて思わない方がよい。昔、丁字路交差点手前で信号が黄色に変わったので少し強めのブレーキを踏んだら、後方から猛スピードで突っ込んで来た“いかにも”の大型RV車が私を追い抜き、信号無視して右折していった。あのスピードでオカマ掘られたらと思うとちょっとヒヤリとしたが、私のような先行車も追突被害を防衛するために、後続車の様子も常に観察しながら、早めに減速意志を見せなきゃと思った事例である。

3分前の出発
出典:http://saga.mypl.net/public_info/?pid=1759

「みっつの3」の最後は「3分前の出発」。あせらず、急がずが安全運転の基本であるから、時間に余裕をもって3分でも早めに出発しましょうということ。最近、急な割り込みの先行車にヒートアップしたばかりなので、自戒も込めて「みっつの3」の紹介でした。


この動画を見たら、運転慎重になるね

佐賀の悪いイメージを植え付けてしまったかもしれないが、有田焼に唐津焼、呼子のイカは抜群に旨い。そしてあの伝説のボンドカー、トヨタ・2000GTのデザイナー、野崎喩を生んだ佐賀県(「TopGear 50 YEARS OF BOND CARS~世界一のスパイ ボンドが駆るクルマたち」)。アートと豊かな自然で感性を刺激する、佐賀はよかとこばい。

トヨタ・2000GT
佐賀の感性が生んだ名車2000GT
出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=A&CARTYPE_CD=A02&GENERATION=-1&CARNAME=2000GT



[参考・引用]
[1]追突事故防止のための「みっつの3」運動について、佐賀市ホームページ、2017年3月17日更新、
https://www.city.saga.lg.jp/main/1759.html
[2]事故類型別事故発生件数の紹介、押さえておきたい交通事故の基礎知識、
http://www.koutsujiko-kiso.com/cls1-p2.html
[3]佐賀県の交通事故に強い弁護士に相談、交通事故弁護士ガイド、
https://jikoguide.com/saga
[4]昨年中の交通事故の発生状況(2016年、全国データ)、シグナル・ホームページ、
http://www.signal-net.co.jp/2015/03/post-171.html#No4
[5]交通事故発生ランキング(都道府県別)、SBIホールディングス、
https://www.insweb.co.jp/jidousya-jiko/jiko-ranking.html
[6]一生に行くことはなさそうな都道府県ランキング!まさかの3位に……○○県がランクイン、マイナビ学生の窓口フレッシャーズ、2015年3月16日、
https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/13130
[7]高齢者ドライバー比率【65歳以上】、都道府県データランキング、
http://uub.jp/pdr/t/sd.html
[8]車間距離「3秒ルール」で事故を未然に防ごう!知っておくべき車間距離の正しいとり方とは?、carnnyマガジン、2017年4月21日、
https://carnny.jp/3859
[9]高速道路における適正な車両間隔に関する調査研究(平成27年度報告)、児玉知之、平成28年度高速道路調査会研究発表会、(公財)高速道路調査会ウェブサイト、
https://www.express-highway.or.jp/jigyo/info/gijyutsu/2016/gijyutsu201602.pdf
[10]自動運転の最大の課題は「人とクルマの関係性」、陰山遼将、MONOist、2015年3月18日、
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1503/18/news029.html
[11]追従運転時における車間時間の違いによる脇見時間への影響と追突警報の効果、安部原也 他、計測自動制御学会論文集、Vol.48、No.11、688/697、2012、
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicetr/48/11/48_688/_pdf
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Posted on 2017/05/17 Wed. 21:37 [edit]

category: cars/車のお勉強

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