ジャズ漫画

ジャズ漫画

今村復興大臣が“東北”発言で辞任に追いやられた。

先日のブチ切れ会見もあったばかりなので、もう庇い切れない政府としては事実上の更迭だろう[1]。[2]の記事のように、問題の発言部分だけ切り取るのではなく、もう少し前後の文脈の中で今村氏の発言の意図を汲む、つまり彼が問題提起したかった現状の防災対策は十分なのかという本質的な議論をすべきとの冷静な意見もある。ただこのブロガーさんも、被災者の友人の前で「東京に直下型がきたらもっと大変だろうね」なんて言えないと語っているのと同じで、先の騒動も冷め止まぬ時に、たとえ意味は違ったとしても「(社会資本等の毀損の点では)まだ東北で、あっちの方だったから良かった」と発言すれば、文面だけでどのように誤解されるかは容易に想像はつくはず。しかも防災復興の責任者である立場を考えれば、被災地域への配慮を欠いた軽率な発言と問われてもしょうがない。

今村雅弘
今村雅弘氏
アドリブ発言の彼はある意味ジャズなのかもしれんね。すいぶん痩せはったなあ。
出典:http://www.imamura-masahiro.com/

SNSの世界では、この失言を逆手にとって「東北でよかった」とふるさと自慢の投稿が増えているという[3]。俺みたいに汚ねえ言葉は吐かずに、ネット民はうまく返すなと思う。大臣ともなれば、記者の批判にもこれくらいクレバーに返すくらいじゃなきゃダメで、どんなに挑発されようが公式の席で激昂する姿を晒すのは論外。彼の大臣としての資質を見抜けなかった安倍総理の任命責任もあると思う。それにしても、メディアもこんな小者を叩く暇があったら、もっと巨悪を暴くなり、問題の本質を掘り下げろよ、と言いたくなるが、政治家もマスコミも質の低下が著しいなあ・・・。「一国の政治は、国民を映し出す鏡に過ぎない(サミュエルズ)」 か。

Blue Giant その2

さて本題。その東北震災時に仙台の高校生だった主人公・宮本大(だい)が、世界一のジャズプレイヤーを目指す『Blue Giant』(石塚真一・作、小学館)という最近知ったばかりのコミックにはまっている。2013年から2016年まで『ビックコミック』に連載され、昨年マンガ大賞の3位に輝く人気コミックだ[4]。中学の卒業記念に友人から誘われたライブでジャズに開眼し、高校ではバスケ部で汗を流しながら、独学で毎日故郷広瀬川の土手でテナーサックスの練習に励む大。バークリー音楽院で学び、ジャズに挫折をした後、個人スタジオで音楽教室を開いていた師匠・由井に才能を見出された大は、高校生の後半は理論から技術まで徹底的に教え込まれる。その後高校を卒業した大は上京し、非凡な才能を持つピアニスト・沢辺雪祈(ゆきのり)と出会う。大の居候先、同級生で大学進学のため上京していた、ジャズ初心者・玉田をドラマーに加え、18歳トリオJASSを組むことに。沢辺との出会い、玉田ドラムデビュー編、第5巻までは読了(全10巻)。現在シリーズ続編『BLUE GIANT SUPREME』も『ビックコミック』に連載中で、こちらはトリオを離れ、舞台をドイツへ移した大の海外武者修行編だ。私は間違えて、こちらの第1巻を先に読んでしまった。

Blue Giant その3 Blue Giant その4

このコミックの何に魅かれたのかということだが、まあ詳しくはないけどジャズは好きだし、怖れを知らず世界一になりたいと語る主人公に「若いっていいなあ」と思えるじじいになってしまったこと。本当に好きなことに打ち込む、極めるってこういうことなのかとこの歳になって改めて教えられたこと。兎角斜に構えちゃって間口を狭めようとするジャズの枠に囚われず、音楽そのものを楽しむ大の基本的なスタンスにも共感する。作者・石塚真一さんのキャリアもユニークだ。そして何よりも音のない漫画の世界なんだけど、なんだかとてつもない音の迫力を感じてしまうことなんだ。音を絵だけで“聴く”体験は初めてかもしれない。世の中のクソニュースを視させられるより、ずっと精神的に満たされる。

Blue Giant その5


大の演奏するシーンに合わせて名曲を聴くのも一興だろう。


BLOW UP!1 BLOW UP!contents

ジャズ漫画は他にも好きな作品があって、細野不二彦の『BLOW UP!』(小学館)は愛蔵本だ。こちらも大学を中退し、テナーサックスのミュージシャンを目指す主人公・菊池オサムを通じて、プロアマ問わず、業界関係者の悲喜こもごものドラマが、たった2巻の中に凝縮されている。ジャズ漫画、いや音楽漫画の傑作だと思う。ジャズに興味を持った人はこちらも読むべし。真夏の野外ジャズライブもお盛んだったバブル期のお話だが、私と同世代の菊池オサムや樫山、福田は、その後どうしているのだろう。

BLOW UP!その1 BLOW UP!その2
SAAB900(前期)のカブリオレやで!ファッションといい、ライブ・アンダー・ザ・ヘブン(明らかにライブ・アンダー・ザ・スカイのことね)の会話といい、80年代バブル感がハンパない。
BLOW UP!その3
大好きなキャラは、何と言ってもベースの樫山!




コンプリート・ジャズ・コミックコレクション ときめきJAZZタイム
内容はほぼ一緒なんだけど2冊とも持ってます

もう一つ、ジャズ愛好家の中で外せない漫画家はラズウェル細木さん(いつの間にかジャズ通から食通になっておられました)[5][6]。彼のジャズ漫画もずいぶん楽しませてもらった。ところでラズウェル細木さんも山形出身(石塚真一さんは茨城)だけど、“あっち”の人はジャズとの親和性が高いのかなあ。故郷福岡だと音楽はロックって育ってきたけど。共通して言えることは、作者も主人公もみな音楽が大好きだってこと。

ラズウェル細木

ラズウェル細木2
俺もヴィレッジ・ヴァンガードの前で写真撮ったわ。ここまでせえへんかったけどな。
John Coltrane - Live At The Village Vanguard Again!
John Coltrane - Live At The Village Vanguard Again

ラズウェル氏が中古レコード店で「3枚聴きつぶしてこれ4枚目」と嘘を言って初めて“サキコロ”買う場面があるんだけど、そういえば俺も持ってないな。ようやく連休に入って年度末年度初めのドタバタもちょっと一息。恥ずかしいけどサックスの歴史的名盤、買って聴いてみようかな。






[参考・引用]
[1]二階派パーティー暗転 今村氏、名誉挽回の講演で失言、産経新聞、2017年4月26日、
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170426-00000070-san-pol
[2]「東北で良かった」の誤解、ノモア、2017年4月27日、
http://ala2014.hatenadiary.jp/entry/2017/04/27/164642
[3]今村氏の失言逆手「東北でよかった」投稿相次ぐ、読売新聞、2017年4月27日、
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170427-00050071-yom-soci
[4]BLUE GIANT、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/BLUE_GIANT
[5]「コンプリート・ジャズ・コミック・コレクション」、ジャズ・猟盤の書庫、じっくり聴くモダンジャズの探索ツール、
http://modernjazznavigator.a.la9.jp/book/bu3.htm
[6]ジャズ漫画界の帝王、ラズウェル細木氏の大傑作!、Jazz PEOPLE、
http://www.pluto.dti.ne.jp/~bluesboy/roswell/roswell.html
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[ 2017/04/30 12:57 ] bookshelves/本棚 | TB(0) | CM(0)

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