Wir entdecken die Riesenfahrzeuge

久しぶりのクルマ絵本です。テキストを書く時間がなかったのと、何を題材にするか迷っていました。新年度も始まり、新しい環境で新しいチャレンジをスタートした方も多いと思います。どこかの党首がかつて発した戯言もありましたが、何ごとも是非「世界一」(まずは日本一でも良いです)を目標に始めてみて下さい。最初からトップランナーを目指してやり始めるのと、キャッチアップで良いというモチベーションでスタートするのとでは実行プロセスも異なりますし、成功しても失敗してもやり遂げた人や組織の成長度合いには雲泥の差が生じます。その世界一ですが、テーマ柄、世界で一番デカいクルマは何だろう?最近ふとそんな疑問を持ちました。「世界一速いクルマ」については以前に何度か紹介しましたが(「スピード図鑑1くるま」「世界一速い車」「スピードへの挑戦━命をかけたスリルと冒険」など参照)、物理的な指標としてスピードとくれば大きさです。真先に思いついたのは「世界のコマツ、世界のタダノ」でも紹介した鉱山や土木作業現場で活躍する大型ダンプトラックやクレーン車です。しかし、調べてみるとこいつらですらタダの小象でしかありませんでした。じゃあ想像を絶するクルマ界の巨象は何か?そんな巨大なクルマたちばかりを紹介した面白い絵本を見つけました。それが本日紹介する“Wir entdecken die Riesenfahrzeuge(でっかいクルマを見つけたよ)(Sussanne Gernhäuser・文、Peter Nieländer)です。”Alles ber Autos(くるまのすべて)”で初めて紹介したWieso?Weshalb?Warum?(なぜなぜ)シリーズ第6巻です。このシリーズ、第55巻“Wir erforschen die Dinosaurier”と第32巻“Wir entdecken den Weltraum”がそれぞれ講談社から、『めくって しらべる めくって わかる 恐竜のひみつ』『めくって しらべる めくって わかる 宇宙のひみつ』(学べる図鑑なぜ?なぜ?シリーズ)として翻訳絵本が出版されていますが、もちろん本書も『くるまのすべて』も未刊。予定あるのかなあ…。

Liebherr T262
Liebherr T262
出典:http://www.belekc.ru/attachments/Image/t262.jpeg?template=generic

さて世界の建機メーカーといえば、日本のコマツ社と米国のキャタピラー社の両雄が思いつきます。しかし、本書はドイツの絵本ですし、ドイツにはリープヘル(Liebherr)というこれまた巨大な企業が存在します[1]。表紙の超大型ダンプトラックは、そのリープヘル社のT262のようです[写真]。スペックを調べてみると、全長13.3m、全幅7.4m、全高6.7mで総重量は390t(空車重量は157t)(※1)。最大出力2,500hp(1,864kw)のV型12気筒エンジンを搭載し最高速度51.5km/hを出せます[2]。私が資源開発工学科の学生時代、見学旅行で宇部興産㈱の露天掘り鉱山や専用の高速道路を訪れたことがありますが、そこで見た大型ダンプトラックは、大体このサイズもしくはもっと小さかったと思います。ページをめくると、その兄貴分T282が姿を見せます。T262より一回り大きく、全長15.3m、全幅9.5m、全高7.85mで、ベッセルと呼ばれる荷台に積める最大積載量は363t(体重40kgの小学生が9,075人も乗ることができます。小学生1万人って…)、総重量は597tにもなります。V型20気筒エンジンによる最大出力は3,650hp(2,720kw)で、この巨体にも関わらず最高速度は64km/hも出ます[3]。

Wir entdecken die Riesenfahrzeuge その1
Liebherr T282とO&K RH120C("Wir entdecken die Riesenfahrzeuge"より)
Liebherr T282
Liebherr T282
出典:https://s-media-cache-ak0.pinimg.com/736x/5a/3f/8f/5a3f8fe3ba13c886c7f6cb711317c682.jpg

(※1)車両総重量(GVM:gross vehicle weight)=車両重量(vehicle weight, curb weight)+乗車定員×55kg+最大積載量(maximum payload)[4][27]

コマツ 960E
コマツ 960E[5]

日本のコマツに目を向けてみると、リープヘルT282とほぼ同サイズの960Eという最大モデルがあります。960E-1型は、全長15.6m、全幅9.6m、全高7.4mで最大積載量327t、総重量は576tです。タイヤの直径は約4mというとてつもない巨大さです[5]。ベストセラーといわれた前モデル930E(こんなのが世界で650台も稼働している!※2)のタイヤ1本で象14頭も支えられるのだとか[6]。また、コマツでEの付くモデルは電気駆動式ということですが、[7]や[8]によればこの駆動方式は「ディーゼルエンジンの出力を直結された発電機で電気エネルギーに変換し、発生させた電気は直にタイヤに組み込まれたモータに流れ、そのモータで車を動かす仕組みである」とあります。要はエンジンを発電機に利用したモータ駆動の電気自動車(シリーズハイブリット)で、バッテリやキャパシタに電気を貯めずに、インバータ経由でモータ直結の違いはあっても、日産ノートの販売好調を牽引している「e-POWER」と似たような原理です。特筆すべきはモータがタイヤに組み込まれたインホイールモータ型の電気自動車だということ。電気自動車、意外や建機業界が最も最先端を走っていることを知りました。ちなみに960EのV型18気筒ディーゼルエンジンの最大出力は3,500hp(2,610kW)で、T282同等の最高速度64.4km/hだそうですが、ハイブリットEVなので燃費はこの手のクルマとしてはかなり良いようです[5]。

(※2)この930Eの実物を目の前で見ることができます。2011年にコマツ発祥の地、石川県小松市にオープンした「こまつの杜」に実車が展示されています。運転席まで上がることができるみたいです。930Eは海外の鉱山で活躍しているので、日本国内で見学できるのはこの1台のみ、非常に貴重です[9]。

Wir entdecken die Riesenfahrzeuge その2
"Wir entdecken die Riesenfahrzeuge"より
930Eを運ぶベンツトレーラー
930Eを運ぶベンツトレーラー[10]
こんな巨大車両を運搬する車両もまたスゴイのだ。

その車両を紹介した動画がこれ。あまりのやばさにモンスターマシンを調べるきっかけとなった。


でも世界最大の建機メーカー、キャタピラー社の最大モデルはこんなもんじゃないんです。797Fは全長15.1m、全幅9.5m、全高7.7mで最大積載量は363t、総重量は600t超えの624t。現在は米国式Ton=short ton換算で最大積載量400Ton(=363t)超えを一つの基準に超大型化時代へ突入しているようです。106ℓV型20気筒ディーゼルエンジンの最高出力は4,000hp(2,983kW)で、最高速度はなんと68km/h[11][12]。しかし、このくらいで驚いてはいけません。上には上があります。

CAT 797F
CAT 797F[12]

現時点で世界最大のダンプトラック(ホウルトラックとも呼ぶ)は、ベラルーシ・ベラーズ社が製造するBelaz 75710。このモデルは、ロシアの採鉱会社のために製作されたものだそうです。全長20.6m、高さ8.16m、全幅9.87m、最大積載量は450tで、総重量はなんと810t(空車重量360t)にもなります。直径4.03m、幅1.48mのMichelin製スーパーサイズ・タイヤ(59/80 R 63)8個によって支えられ、ターボチャージャー付き65ℓV型16気筒エンジン2基を搭載、最高出力は2基合わせて4,600hp(3,430kW)。この巨体で最高速度は64km/hといいますから、まさに恐竜ですわ(“DINOTRUX”参照)[13][14][15][16]。

Belaz 75710
Belaz 75710:こんなの前から来たら逃げるよね[15]


当然ですが、ここまで巨大な車両をコントロールするには監視装置が必須となります。カメラはもちろんのこと、レーダーも搭載されていて車両周囲の対象物を認識しながらオペレーターは運転をしています。

Wir entdecken die Riesenfahrzeuge その3
"Wir entdecken die Riesenfahrzeuge"より
Bucyrus 495HR
Bucyrus 495HR[17]

本書には、その他にも巨大なクルマが登場します(一部巨大なヒコーキの紹介も)。大型ダンプトラックとくれば、その巨大なベッセルに大量の土石を積載するドデカい積込機(ショベルカー)が相棒として必要になります。上の挿絵はそのケーブルショベルが大型ダンプトラックに積込を行っている図ですが、ケーブルショベルはBucyrus 495HRと思われます[17]。バケット容量は最大61m3[18]。製造元の米国・ビュサイラス(Bucyrus)社は1880年創立の名門重機メーカーでしたが、2011年にキャタピラー社(CAT)に買収されます[19][20]。ビュサイラスには車体重量2,041t、最大バケット容量69m3の性能を誇る795という世界最大のケーブルショベル開発構想がありましたが幻に終わりました。ケーブルショベルは鉱山ではまだ多く使われているそうですが、油圧ショベルの大型化に伴い、その地位は徐々に揺らいでいます。その後ケーブル系メーカーはCATと米鉱山用機械大手のジョイ・グローバル社(JOY)の2社に集約されたそうですが[21]、昨年コマツがこのJOYを買収し、CATとコマツの覇権争いが熾烈になっています[22]。

O&K RH120C
O&K RH120C
出典:https://farm1.staticflickr.com/307/19613764883_243777fc59_b.jpg

前出の挿絵に描かれたT282に積込作業を行っている油圧ショベルの車種特定に手こずりました。赤と白という建機にしては珍しいカラーリングが施されたこの油圧ショベル、O&K(Orenstein & Koppel OHG)という今はなきドイツの建機メーカーが製造したRH120Cというモデルのようです。O&Kはその後Terex社に買収され、Terexの鉱山部門も後にBucyrusに身売りし、今はCATという歴史を辿っています[21]。O&Kは車重910t、最大バケット容量42m3のRH400を1997年にデビューさせ、大型化の先陣を切ったそうですが[21][23]、RH120Cは車重210t[24]、後継機のTerex RH120Eで車重284t、最大バケット容量が17m3程度です。現在世界最大の油圧ショベルは、O&Kの血筋となるCAT 6120B HFSで、車重は何と1,270t、最大バケット容量も65m3という化け物であります[21]。しかし、これでもかわいいものです。

CAT 6120B HFS
CAT 6120B HFS
出典:http://i.auto-bild.de/ir_img/1/0/6/3/9/2/9/Cat-6120B-H-FS-729x486-ef94016168fb2bbb.jpg

ところで渦中の森友学園、総敷地面積8,770m2の約6割である5,190m2を3.8m掘り返した場合[26]、その体積は19,722m3。これをCAT 6120B HFSで掘り返しても303回作業が必要になります。埋め戻せばその倍の工数がかかります。そんな大工事をやった形跡もなく、その工事見積もり費として8億円も値引きされたのですよね。そもそも正直にゴミを処分するとでも思ったのですかねえ、財務省は。何者かを忖度し、斟酌しなければいけなかった他言無用の理由があったのでしょう。その核心に触れることは、恐ろしくて誰にも手が出せないと思います。それが証拠に、マスコミも野党もなんとなくフェードアウト。じつに面白い。

さてさて、本書には他にも巨大なクルマがたくさん紹介されていますが、冒頭での問い、
「想像を絶するクルマ界の巨象は何か?」
への答えが出ていませんね。本書を最初にめくると、これまで紹介した巨象がかすんでしまうくらいのモンスター・マシンが登場します。蓮舫さんはお好きでないでしょうが、マッチョなトランプ大統領が大好物そうな代物です。そのお話は次回にしたいと思います。(続く)



[参考・引用]
[1]リープヘル、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%98%E3%83%AB
[2]Liebherr T262 Rock Truck、RITCHIE Specs、
http://www.ritchiespecs.com/specification?type=construction+equ&category=Rock+Truck&make=Liebherr&model=T262&modelid=107719
[3]Liebherr T 282B、Wikipedia、
https://en.wikipedia.org/wiki/Liebherr_T_282B
[4]トラックの積載量・総重量を表すGVWとは?、行列のできるトラック相談所、
http://torack7.blog.fc2.com/blog-entry-186.html
[5]<超大型ダンプトラックに最大機種を追加!>コマツ、超大型ダンプトラック「960E」導入を発表、コマツJapanホームページ、2008年5月28日、
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/press/2008052816423905689.html
[6]世界最大級大型ダンプトラック、930Eとは?、こまつの杜ホームページ、
http://komatsunomori.jp/930e/
[7]コマツのコア・コンピタンスを高めるピオリア工場―シカゴ事務所駐在員報告、コマツ・鉱業用ダンプトラック製造工場を見学、日機連シカゴ事務所、日機連週報第2716号、2009年4月17日、日本機械連合会(JMF)ホームページ、
http://www.jmf.or.jp/syuuhou/html/20090417.html
[8]コマツ、電気駆動式の超大型ダンプトラックを発売、レスポンス、2008年9月25日、
http://response.jp/article/2008/09/25/114119.html
[9]当社発祥の地、石川県小松市に「こまつの杜」が誕生、コマツJapanホームページ、2011年5月12日、
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/press/2011051016042119196.html
[10]何コレ!?ベンツのトラックが積んでいる馬鹿デカいタイヤの正体は・・・!?、Mr.Sanders、SEEK DRIVE、2014年4月29日、
http://www.j-sd.net/mercedes-benz-truck-komatsu-930e/
[11]Caterpillar 797F、Wikipedia、
https://en.wikipedia.org/wiki/Caterpillar_797F
[12]世界最大級の超巨大ダンプカー「キャタピラー 797F」を建造するタイムラプス映像、DNA、2015年6月7日、
http://dailynewsagency.com/2015/06/07/cat-797-mining-truck-assembly-glt/
[13]BelAZ 75710、Wikipedia、
https://en.wikipedia.org/wiki/BelAZ_75710
[14]【ビデオ】最大積載量450トンの世界最大のダンプカーがお披露目!!、autoblog、2013年10月6日、
http://jp.autoblog.com/2013/10/06/worlds-largest-dump-truck-video/
[15]【衝撃】Belazの超巨大トラックはトヨタもびっくりの360トン、腹BLACK、NETGEEK、2014年11月5日、
http://netgeek.biz/archives/24518
[16]Michelin 59/80 R 63 XDR、Wikipedia、
https://pt.wikipedia.org/wiki/Michelin_59/80_R_63_XDR
[17]Shovels/Excavators、Kentucky Coal Education、
http://www.coaleducation.org/technology/Surface/Shovels.htm
[18]パワーショベル大型化の歴史:世界最大のケーブル式積込ショベルは?、土木塾、
http://hw001.spaaqs.ne.jp/geomover/ethmvr/shv/ms_shv.htm
[19]ビュサイラス・エリー(Bucyrus-Erie)、浅井照明、蒸気エンジンの話、
http://asait.world.coocan.jp/kuiper_belt/canal3/bucyrus_erie.htm
[20]米キャタピラー、約7160億円で重機のビサイラス買収へ、Bloomberg、2010年11月15日、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2010-11-15/LBXFFQ07SXKX01
[21]建設機械のモンスタ達、岡本直樹、p82-88、建設機械施、Vol.67 No.1、2015年1月、
http://www.yamazaki.co.jp/data/school/pdf/cm1501.pdf
[22]コマツ、米鉱山機械メーカーを3000億円で買収、日本経済新聞、2016年7月21日、
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ21HI0_R20C16A7000000/
[23]超大型油圧ショベルの歴史:マイニングショベルの大型化 世界最大の油圧ショベルは?、土木塾、
http://hw001.spaaqs.ne.jp/geomover/ethmvr/he/ms_he2.htm
[24]O&K RH120-C、Baumaschienen-Modelle.net、
http://baumaschinen-modelle.net/en/collection/model/206/
[25]Terex RH120E Shovel、RITCHIE Specs、
http://www.ritchiespecs.com/specification?type=&category=Shovel&make=Terex&model=RH120E&modelid=107755
[26]ごみ撤去費「財務局と航空局で算定」 大阪・国有地売却、飯島健太、太田成美、朝日新聞DIGITAL、2017年2月21日、
http://www.asahi.com/articles/ASK2P64KKK2PPTIL02Q.html
[27]新版自動車用語辞典<増補二版>、大須賀和美・編著、精文館、2009
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