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世界で伍して戦うということ  

07Renault_F1

世界柔道選手権は、谷選手他、無差別級の金メダルでなんとか有終の美を修めることができた。まずはオメデトウ、そして選手の皆さんお疲れ様でした。初日は期待の鈴木、井上両選手が不可解な判定でメダルを逃し、斎藤監督からは「柔道じゃねえ、こんなの」との感想も聞かれた[1]。また、国際柔道連盟(IJF)理事選で山下理事も落選し、日本の柔道も「落日」の様相を呈している。

そんなニュースを聞いて、私はある人の言葉を思い出した。関係者から間接的に聞き及んだルノーF1チームの徳永直紀さんのコメント。「新しい技術を創り出してもレギュレーションで禁止されてしまうのはこの世界では常識。それがF1の世界なので、後悔するより、いかに早く次の一手を打てるかが技術者の力量だ。そのために、F1エンジニアは自分の内なる引き出しにどれだけアイデアを持っているかが問われる。」

日本人にはあまりなじみのない徳永氏であるが、スカイラインGT-Rで有名になった4輪トルク制御システム、「アテーサETS」の開発も手がけた元日産エンジニア、現在はルノーF1のエレクトロニクスマネージメントシステム開発部門の責任者となっている電子制御のプロ[2]。2005、2006年の2年連続F1コンストラクターズ(製造会社)部門チャンピオンの影の立役者とも言われ、F1業界では有名な人だ。

昨年、ルノーF1チームが快進撃を続けているシーズン途中、ルノーが先駆けて開発を重ね、RS26に標準装備もされていたマスダンパーがレギュレーション違反で使用禁止となった。マスダンパーとは、おもりとダンパー(減衰器または吸振器)を組み合わせたもので、おもりを路面からの振動に共振させて車の揺れを軽減するシステムのこと。筒の上端におもりをつり下げ、その下にコイルスプリングを配置し、おもりの反力を利用して振動を打ち消す。原理的には古くからある車体の安定性を得るための装置なのだが、ルノーはノーズに設置していたらしい。他のメーカも同様な試みを行ったが、ルノーのように効果が出ない。

そのルノー快進撃の一要因となったノウハウ技術が使用禁止になったのだから、ルノーチームに与えた影響は大きい。FIA(国際自動車連盟:Federation Internationale de l'Automobile)はマスダンパーを空力パーツだとみなし、空力に影響を与えるパーツは完全にボディワークに固定されていなければならないとするテクニカルレギュレーションに違反していると判断したのだが[3][4]、振り子のおもりのどこが空力パーツなのか?ほとんど言いがかりである。マスダンパーの使用は’05シーズンにルノーがFIAに確認済みだったらしいし[5]、ドライバーズ、コンストラクターズともにフェラーリチームに猛追されていた時期だっただけに(結果的に05年に引き続き2年連続チャンピオンとなったが)、何らかの策略と勘繰れないこともない。

前出の徳永氏の発言は、このような厳しい時期でのものである。レギュレーションがころころ変わるのは常識だし、それが不条理な理由によるものであることも日常茶飯事の世界。勿論、ルールにのっとって正当な抗議をするのは当然なのだが、いちいち目くじらをたてていてもしょうがない。出る杭は打たれる、ならばまた自力で杭を出すしかない。その力の源が自分の中にいかに多くのアイデアを持つかということだろう。このアイデアは自分を磨く、切磋琢磨し続けることからしか生まれない。

ルイ・パスツール
ルイ・パスツール

細菌学者ルイ・パスツールの言葉"Chance favors the prepared mind."(チャンスの女神は準備を整えた人に微笑む=たくさんの努力・経験の結果として、自分の引き出しに入れた多くのアイデアからチャンスは生まれるとでも解釈するのだろうか)にも通ずる。

一切言い訳のない徳永氏の言葉を聞くと、F1の世界はやはり真のグローバルスポーツだと感じる。テストマッチのアウエーで半端でないハンディを負うサッカーも同様だ。本当に世界で戦い、勝利し続けるということは、こういうことだと改めて感じた。自信に裏づけされた真のプロフェッショナルの言葉はかっこいいね。

翻って世界柔道選手権。確かに、カラー柔道着になったころからJUDOは日本古来の「柔道」の姿ではなくなったと思う。しかし、柔道がJUDO、すなわち世界スタンダードになった時点で、武道とは異なるスポーツなのだと認知すべきである。私には講道館柔道が言い訳に使われているような気がするのだが。

スポーツのJUDOが機械的な判定で筋を通してくるなら、武道としての「柔道」の技を更に極め、機械的な判定でも有無を言わせぬ力で、あるいは自然に審判の手が上がるような美しく流れるような技で勝つしかない。技の「アイデア」を多く持つ選手が勝つ(克つ)。

07世界柔道選手権で優勝した谷亮子
07世界柔道選手権で優勝した谷亮子

そんな「柔道じゃねえ」JUDOの世界大会で優勝した谷亮子さん(そういえば、谷さんはトヨタ自動車だったね。どちらも敵なし。)は、JUDOも柔道も極めた凄いお母さんである。プロ中のプロ。育児中も、抱っこを握力トレーニング、子供と遊びながらの腹筋300回と「育児トレーニング」をこなしてきたそうで[6]、二児の母の我妻曰く「有り得ねえ。」

[1]斉藤監督「柔道じゃねえ」 不可解判定に場内からもブーイング、産経新聞、2007年9月14日、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070914-00000917-san-spo
[2]Where Was It?、もう一人のチャンピオン、2006年9月26日、
http://wherewasi.exblog.jp/2778568/
[3]そして八百屋は今日も行く、F1:"マス・ダンパー"論争の是非を問う、2006年8月4日、
http://fiveaday.exblog.jp/2979994/
[4]ocnEsporteホームページ、モータースポーツ、風雲急を告げる真夏の熱戦、2006年7月31日、
http://www.ocn.ne.jp/sports/motorsports/magazine/0604.html
[5]F1遅報、マス・ダンパー使用禁止決定、2006年8月24日、
http://f1chihou.net/2006/08/post_619.html
[6]THE STADiUM、谷亮子 育児トレーニングでスケールアップ、2007年3月19日、
http://news.thestadium.jp/2007/03/post_42.html
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Posted on 2007/09/22 Sat. 04:52 [edit]

category: cars/車のお勉強

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