ぼくのくるま

ぼくのくるま

横須賀が生んだ児童文学界の巨匠(と書くとご本人は嫌がるだろうが)、佐藤さとる氏の世界をもっと知ってもらおうと、市民有志が立ち上げたチーム・コロボックルの企画展については以前に紹介した。その活動の中心的な役割を担っておられる、横須賀唯一の絵本専門店「うみべのえほんやツバメ号」さんが、今度はお店のギャラリーで「佐藤さとるの世界と岡本順原画展」を開催している(2/14まで)。土曜日にちょいと顔を出してきた。佐藤さとる氏の育った、ここ横須賀按針塚を舞台にした自伝的名作『わんぱく天国』が、ゴブリン書房から最近復刻されていて、その挿絵を描いているのが岡本順氏である。他にも佐藤氏との共著は『宇宙からきたかんづめ』『机の上の仙人』(ゴブリン書房)、『えんぴつ太郎の冒険』(鈴木出版)などがあり、これら4作品の原画とこの企画展開催中に89歳を迎えられる佐藤氏のメッセージなどが展示されている。佐藤さとる作品といえば、村上勉氏とのコンビが有名だが(『わんぱく天国』の旧版もそう)、親子ほど歳の離れたこの二人のコラボレーションもすばらしい。岡本氏は私と同い年でクルマもお好きなようで、『ぼくのくるま』(岡本順・作、ポプラ社)というクルマノエホンも上梓されている。

ぼくのくるま その1

巻末に著者が、「これはぼくのために描いた絵本です。ぼくのくるまはミニカーのように小さくなって、虫のように空もとべる。魚のように水の中をおよげる。そして本の世界にもはいっていける……。なんてワクワクするんだろう!ぼくのくるまにのって、どこへいこうかな。」と書いているように、クルマ好きの男が描いたファンタジー絵本。主人公の少年が、ミニカーのサイズになるのは、小人の世界が多々登場する佐藤さとるの世界にも通じる。全編、擬音語以外、一切文字のないコマわり絵本だ。まるで無声映画のように、ダイナミックかつ、この不思議な世界に吸いこまれていく。

BNC527
BNC527[1]

少年が冒険をともにするミニカーは、BNC527のような1910-20年代に流行った古ーいサイクルカーがモデルだろうか[1]。ある満月の夏の夜、少年がベッドでウトウトしていると、彼のお気に入りのミニカーが突然大きくなって、びっくりした少年に乗るように誘う。 少年がスイッチを入れるとあら不思議、自分も一緒にミニカーのサイズになってしまう。それからは飼い猫に追いかけられ、空と飛び、水槽に潜ったりの大冒険。少年のシフト操作もなかなかである。『みつやくんのマークX』同様、陸海空両用のクルマは子どもたちの憧れだ。圧巻は、少年の読みかけの恐竜の本の世界に彼らが入り込んでしまうこと。果たしてこれは夢なのか、それとも現実なのか?夢でもいいから一度こんな体験してみたい。

ぼくのくるま その2

作者の岡本順さんは1962年生まれの私とタメ。企画展の原画を見ていると、繊細に描かれた小道具たちが、私の世代にはどれも懐かしく感じられた。本書の舞台表現はもうちょっと現代風なんだけど、少年の部屋の棚に並んだミニカーの数々(チンク、バルンくん、シトロエン・タイプH等々)に、クルマ好きの心躍る。

岡本氏は愛知県で出生されたそうだが、うみべのえほんやツバメ号店主のお話によると、父上の仕事の関係で小さい頃に東京に移り住んだとのことで、現在は藤沢在住のベースは関東の方だ。2012年、『きつね、きつね、きつねがとおる』(ポプラ社)で第17回日本絵本賞を受賞。どうぶつを題材とした著作も多く、自動車だけでなく生き物もお好きなようだ(本作も恐竜でてくるしね)。絵本では『ぼくのくるま』以外にも『ふっくらふしぎなおくりもの』や『ポール』(佼成出版)、挿絵に『狛犬の佐助』(ポプラ社)『夏休み、翡翠をさがした』(アリス館)「佐藤さとる幼年童話自選集」ほか、前述の佐藤さとる氏との共作多数。愛車はスズキ・ジムニーシエラ(JB43W)だそうだ。うみべのえほんやツバメ号さんにもこれで乗り付けたみたい。

ぼくのくるま その3
絵がうまいなあ

本書の裏表紙に、「ZIPSPEEDのFIATにあこがれて…」と記されている。僕は知らなかったのだけど、「ZIPSPEED」は知る人ぞ知る、静岡にあるカスタムメイドやレーシングカーを製作するカロッツェリアみたい[2][3]。かなりのエンスーとみた。


こんなクルマがあこがれのよう

三浦海岸
全国的に大雪だったのに、ここ三浦半島はとても良いお天気でした(うみべのえほんやツバメ号さんのすぐ近く三浦海岸にて)





[参考・引用]
[1]BNC cyclecar、Bienvenue sur le forum de l'Amicale Tricyclecariste de France、
http://tricyclecaristes.forumr.net/t79-bnc-cyclecar
[2]「第2回 オールドタイマーお台場旧車天国」⑥、タカちゃんのおもちゃ箱、2014年12月13日、
http://blogs.yahoo.co.jp/taka808racing/62961251.html?__ysp=WklQU1BFRUQg6Z2Z5bKh
[3]バカっ速い!ルパン三世の愛車FIAT500改 ZIP SPEED、自動車youtube速報~かーつべ!~、2014年6月20日、
http://car-youtube.blog.jp/archives/8379529.html
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こんにちわ。

近くにこんな素敵なお店があったなんて!

早速今度ベレットで訪れてみます。

絵本の内容も楽しそう!
[ 2017/02/21 15:14 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こんばんは。
数年前にオープンした、今や横須賀名所・情報発信の地になっている絵本屋さんです。
ぜひお出かけください。店主も喜ぶと思います。
横須賀は故・佐藤さとる氏の生誕の地でありますから、
絵本や児童書の作家やアーティストが世界じゅうから集まり住んでいただくといいなと願っています。
海のみえる坂の街はいろいろと不便ですが、その景観・風情は創造力を育むと思うんですよね。
[ 2017/02/21 23:15 ] [ 編集 ]

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