スニッファー 嗅覚捜査官
出典:http://ドラマ.ストリーミング.club/wp-content/uploads/2016/08/0019ed3d8a721831b10c299842ac02bb.png

最近ハマっているドラマがある。NHKで土曜の10時に放送されている『スニッファー 嗅覚捜査官』だ。全7話なので、来週12/3が最終回。

超人的な嗅覚で、犯罪現場に残された匂いを嗅ぎ、事件解決の糸口を探る警察のコンサルタント、“スニッファー”こと華岡信一郎が主人公。科学捜査のドラマは多々あれど、嗅覚で事件を解決する刑事ドラマは今まで思いつかなかったプロットだ。華岡演じる阿部寛と、彼に捜査協力を依頼しているというか、常に華岡のぶっ飛んだ行動に振り回されている特別捜査支援室の刑事・小向達郎役の香川照之という二人の芸達者が演じるコミカルな掛け合い、脇を固める耳鼻咽喉科の女医・末永由紀(井川遥)と華岡の元妻・片山恵美(板谷由夏)という美人女優の配役の妙も毎回見入ちゃっている理由だ[1]。

オレ達は、犯人の匂いを嗅ぐ。
NHKスニッファー 嗅覚捜査官ホームページより
https://youtu.be/eHgvFfH_mzI

名脇役カルマンギア
名脇役カルマンギア(スニッファーepisode1より)
VW ビートル 空冷4気筒水平対向エンジン
ベースのクルマ、RRのVWタイプ1

そして、案外一番刺さっているポイントが、華岡の愛車、VWカルマンギア(タイプ1)かも。それもカブリオレだ。そう来たか。良い、このクルマの選択が良い。イケメンなのだが、ちょっとうす汚い華岡が、自分の研究室からカルマンギアに乗り込む。「プアマンズ・ポルシェ」が主人公の変人キャラに被る。その華岡がフロントのボンネットを上げて鞄を取り出すシーンがあったが、このクルマはVWのタイプ1(ビートル)と同じ、水平対向4気筒の空冷OHVエンジンをRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトで搭載する。エンジンは後ろだ。

RRならではのシーン
RRならではのシーン(スニッファーepisode4より)

VWカルマンギア(タイプ1)
VWカルマンギア(タイプ1)
出典:https://gazoo.com/car/newcar/vehicle_info/Pages/detail.aspx?MAKER_CD=O&CARTYPE_CD=A07&GENERATION=-2&CARNAME=%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%82%AE%E3%82%A2

この今では珍しいRR。RRといえばポルシェ911だが、最近ではルノーの新型トゥインゴがこのレイアウトを採用している。現在コンパクトカーの主流はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)だ。RRのメリット・デメリットの詳細は[2][3]などを参照いただきたいが、もともとRRは、フロントに操舵系、リアにエンジン・駆動系というシンプルな配置なので、フロント部分は操舵機構だけでキャビン(居室)も含めた空間の余裕が生まれる。また、前輪にかかる重量が軽くなるためハンドル操作も軽く、小回りも効くというコンパクトカーにとっては有利な面が多かった。しかし、クルマの高性能化が進むにつれ、サスペンションやブレーキが複雑化、大型化することでフロント部分のスペースメリットがなくなり、ハンドル操作の軽さもパワステの普及で利点にはならなくなった。そしてアレック・イシゴニスやダンテ・ジアコーザといった天才設計者が、現在のFFレイアウトの基礎を確立、それぞれBMCミニフィアット128という名車を生み出した。さらに1974年、ジウジアローの手によるFFでは難しかった広いキャビンと大きなラゲッジスペースを両立させた革新的なクルマ、VMゴルフの誕生により、コンパクトカーはほぼFFが制して現在に至る。そんな時流に逆らってコンパクトRRである。新トゥインゴのRR技術の基礎は、車台とエンジンを共有している同じくRRのスマート(現在3代目)を90年代に開発したダイムラーのノウハウによるところが大きいのだろう(ルノー・日産とダイムラーは業務提携している)。

初代スマート
新しいRR時代の先鞭をつけたのか?初代Smart[3]

魅力的なエクステリアデザインと「生活RR」に興味を持って、先日、以前お世話になっていたルノー販売店にこの新型トゥインゴを見に行った。最初にフロントはどうなっているのだろう?という私の興味を察し、顔見知りのSA、M氏が「中、見たいでしょ」と切り出した。ちょっとユニークなロック解除方法で樹脂製のボンネットを“スライド”させると、普通はそこにあるべきエンジンはなく、ラジエータやバッテリなどの補機類が適度に配置されるだけで、小さい(尺の足らない)クルマでは難しかったクラッシャブルゾーン確保に貢献している。RRは、衝突時に変形しずらい重量物のエンジンがキャビンに飛び込んでくるというリスクも避けられる[3]。そしてAピラーから前の車体部分は全て樹脂製で軽量化が図られている。さすがに、こんな小さなコンパクトRRにカルマンギアのような鞄を入れられるラゲッジスペースの余裕はない。

新型Twingoその1
新型Twingo:樹脂製のボンネットはこんな風にスライドさせる。

フロント構造はわかった。それじゃ荷室はどこだ?ということになるが、後方へ回り、リアゲートを開けるとコンパクトカーとしては実用に耐えうるラゲッジスペースが現れる。そして、当然だがエンジンから発生する高熱を遮断するための断熱材入り(遮音も兼ねている)マットをずらし、蓋を持ち上げれば、そこには隙間なくレイアウトされたルノー製1ℓ直3ターボエンジンが姿を現した。

新型Twingoその2
ラゲッジルームはこんな感じ
新型Twingoその3
断熱マットをずらすと、
新型Twingoその4
金属蓋が現れ、蓋を開けると、
新型Twingoその5
リアエンジンが現れる(左隅に冷却用扇風機が)

RRがカルマンギアやポルシェといったスポーツカーに採用され、未だに生き続けている最大の理由が、その加速性能とブレーキ性能。車は加速する際に後方に荷重がかかる。リアに重量物のエンジンを積んでいるということは、駆動輪である後輪にしっかり荷重がかかってタイヤが空転しにくい。ブレーキをかけると今度は前方に荷重がかかるが、後方に重たいエンジンがあるため、4輪にバランスよく荷重がかかってブレーキが効きやすい。一方で操舵輪である前輪にかかる荷重は小さく、ステアリングが軽いので直進安定性が悪く、後方が重いためコーナリング(カーブを曲がる)時に、内側に巻き込むような車両特性(オーバーステア)が生じてスピンしやすくなる。つまり運転するのが難しい、良い意味で玄人好みのスポーティな操縦性を持つのがRRである[2]。

FRすら死滅しかかっているFF全盛のこの時代に、こんなオモロイもん作りよって。RRは大昔ポルシェ911に乗ったことがあるが乗り味はすっかり忘却の彼方。試乗もしていないのでその実力値は巷の試乗記を参考にするしかないが、これで本体価格180万超というから(キャンバストップ仕様でも200万を切る[4])。クルマ好き変態の方には、下手な軽やコンパクトカーを買うよりは面白いのではなかろうか。M氏によれば、その外観や内装のセンスの良さから、女性客も多いとのことで、昨今の流行を牽引する女性ドライバーがコンパクトRRをどう評価するのか興味がある。

おしゃれなTwingo
内外装ともにおしゃれなTwingo[4]:ルノーといえば秀逸なシートだが、あのフランス車特有のふんわりしっかり感はなく、ドイツ車以上に硬くルノーらしさが失われていた。
BMW i3もRR
BMWの電気自動車i3もRR
出典:http://carbikenews.xyz/post-1417/

2代目スマートのエンジンは、当時ダイムラーと提携していた三菱製で、三菱はRRの軽自動車iを商品化した[3]。その三菱がルノー・日産の傘下に下ったことで、巡り巡って再びダイムラーとも繋がり、RR技術を持つ巨大なグル―プが誕生したことになる(日産はRR作ったことないのでは?)。Fun to Driveの観点からRRレイアウトはEVとの相性もよいという意見もあるので[5]、電動化といったパワートレインの変革とともに、RRを軸とした駆動方式やパッケージングの大変革もあるかもね。RR、ちょっと注目である。

さてこのヘンテコ捜査官『スニッファー』、実は日本オリジナルのドラマではない。元は2013年にウクライナのテレビ・チャンネルICTVで放送が開始された『スニッファー ウクライナの私立探偵』(原題“Нюхач”)で、NHKが日本版としてリメイクしたもの。ロシアでも大人気となり、数々の国際賞も受賞している[6]。Нюхачは「ニュハッチ」と発音するようだけど、においを嗅ぐこと、嗅ぐ人といった名詞。英訳のSnifferが主人公の役名及び、英語、日本語のタイトルになった[7]。動画を見ると、本家の主人公はRRカルマンギアではなく、ド派手なFRカマロに乗っとるがな。日本版はずいぶん渋めにリメイクされたな。



今シーズン、家族はドラマを良く見ていて(だいたい録画ね)、この『スニッファー』もそうだし、『IQ246〜 華麗なる事件簿〜』(TBS)とか『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS)、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)(砂の塔と逃げ恥の2つは特に娘がハマっとります)、そして息子が大好きな『THE LAST COP/ラストコップ』(日テレ)。ラストコップは1985年に凶悪犯を追い詰めた瞬間、仕掛けられた爆弾が爆発したことで昏睡状態となった主人公の刑事が、30年後に目覚めて復職するというストーリー。かなり破天荒な作りになっているが、同世代の唐沢寿明さんが身体を張って頑張っているので、ついつい私も観てしまう。このラストコップもリメイク版で、オリジナルはドイツの人気刑事ドラマ『DER LETZTE BULLE』(英題:THE LAST COP)だそうだ[8]。

RR同様、リメイク版が流行りのようです。

[参考・引用]
[1]スニッファー 嗅覚捜査官、NHK土曜ドラマ、NHKオンライン、
http://www.nhk.or.jp/dodra/sniffer/
[2]RRとは?駆動方式の構造と仕組み、メリットとデメリットは?歴代のRR車もご紹介!、MOBY、2016年7月24日、
http://car-moby.jp/81245
[3]ルノー・新型トゥインゴ試乗 革新か?先祖帰りか?RRを採用した新型トゥインゴ、山崎龍、Star★Cars、2016年10月27日、
https://www.car-review.net/twingo_0001_01.html
[4]新車試乗記 第797回 ルノー トゥインゴ、MOTOR DAYS、2016年10月7日、
http://www.motordays.com/newcar/articles/twingo-renault-imp-20161007/
[5]BMW i3 プロトタイプ(RR)【海外試乗記】「電気で走る」だけじゃない、webCG、2013年7月29日、
http://www.webcg.net/articles/-/28954
[6]スニッファー ウクライナの私立探偵、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC_%E3%82%A6%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%81%AE%E7%A7%81%E7%AB%8B%E6%8E%A2%E5%81%B5#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E7.89.88
[7]ウクライナ産ロシア語ドラマ『Нюхач』、英国アート生活、2016年2月10日、
http://loki-art.jugem.jp/?eid=1647
[8]THE LAST COP/ラストコップ、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/THE_LAST_COP/%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%97
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