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またか...タンタンのコンゴ探検  

タンタンのコンゴ探検

先月、こんな記事が目に留まった。以下記事の引用[1]である。
【ブリュッセル8月26日時事通信】「世界中で親しまれているベルギーの漫画「タンタンの冒険」シリーズの1作をめぐり、植民地主義的で人種差別的な表現が目立ち、動物虐待も目に余るとして、各国でボイコットや訴訟など抗議の動きが広がっている。問題の1作は、1930~31年に発表された第2巻「タンタンのコンゴ探検(Tintin au Congo)」(エルジェ・作、川口恵子・訳、福音館書店)。主人公の少年記者タンタンが愛犬を連れて当時のベルギー領コンゴ(現コンゴ民主共和国)に出掛け、さまざまな危機を切り抜けて冒険する筋立て。(続く)

作者エルジェ(1907~83年)の視点には当時の植民地に対する偏見に満ちた見方が色濃く反映されており、現地住民を怠け者で劣った人種として描いている。また、野生動物を虐待したり殺したりする場面も多い。これに抗議して英国の人種差別反対を掲げる団体が今年7月、書店に販売方法の見直しを要請。米書籍販売大手ボーダーズは、米国と英国のチェーン店で同書を児童書コーナーから大人向けコーナーに移すなどの対応を取った。7月下旬には、南アフリカ共和国の出版社が、公用語の一つであるアフリカーンス語での出版を停止。ベルギーとスウェーデンでは販売差し止めを求める訴訟が起こされた。タンタン・シリーズは、米映画会社ドリームワークスによって映画化が予定され、スティーブン・スピルバーグ監督らがメガホンを執る見通しだが、今回の騒動が興行に悪影響を及ぼす可能性もある。」

ちびくろサンボ
ちびくろサンボ(”The Story of Little Black Sambo”[4]より)

またぞろ出てきた。第2の「ちびくろサンボ」問題[2]である。それもターゲットは私も好きな絵本「タンタンの冒険」シリーズ。

早速アマゾンで購入し、読んでみた(ひょっとしたら、この本も絶版になるかもしれないし)。確かにタンタンがなんら悪びれることなく簡単に動物の狩りをする表現はあるし、植民地時代の宗主国ヨーロッパからみた植民地の表現にはなっているが、それほど目くじらをたてるほどのものか?というのが正直な感想である。戦前戦後を通して欧米のメディアに登場したステレオタイプの日本人表現の方が、よっぽど失礼だと思うのだが。

「差別反対」「動物虐待反対」には全く異論はない。けれども、どうしてああいう類の急進的な人権擁護団体や動物愛護団体というのは、今回のようなヒステリックな行動に出るのだろう。しかも、初版が発行されたのが1946年にも関わらず、何で今頃?の疑問も沸く。

「タンタンのコンゴ探検」その1

この本の表現の多くは、現代においては確かに違和感のあるものではあるが、初版当時の世界では当たり前の歴史的事実であった。勿論、戦前の日本を含めた植民地主義を肯定するつもりはないが、歴史を消すことはできない。ましてや、「臭いものには蓋」的な今回の行動には素直に同調することは、私にはできない。むしろ、この本を植民地時代の史実を教える、差別や命を考えさせる良い教材だと考えられないのだろうか。

人間というのは美しい面・すばらしい面だけではない。汚い面もあれば、弱い面もある。それが人間である。一方だけを教え、学ぶのはバランスを欠く。両面を知ってこそ、人は成長するのだ。「美しい日本(人)」作りを掲げながら、「汚い日本(人)」ばかりが露呈してしまった安倍政権は逆のバランスを欠いた。

また、子供たちに事実から目をそらさせてはいけない。歴史を通して何が正しく、何が間違いなのかを教える義務が大人にはある。「タンタンの冒険」を読み、理解できる年代は早くても小学生中学年、おおよそ小学生高学年以上が読者対象となろう。とすれば、ものの良し悪しは十分判断・理解できる読者層である。「タンタン」を読ませない、ましてや出版差し止めなど全く必要ない。

本書の訳者・川口恵子氏の解説を読むと、このような批判は今に始まったことではないようだ。「この本を危険と感じるのは、感じる人自身にかつての宗主国と同じ視線、非西欧的なものを劣ると感じる歪んだ眼差しが潜んでいるにほかならない。」は人間の本質を突いた洞察だ。「植民地主義も人種差別も知らない子供の目には、この本は全く別のものに映るでしょう。」という川口氏の言葉を借りれば、この本を歴史学習の教材にというのもおせっかいなのかもしれない。子供は大人の想像を超えた創造力を持つのだから。

今回の動きが現代版「焚書坑儒」の発端にならないことを祈る。細かな描写や色使いが美しく、芸術性も高い「タンタンの冒険」シリーズは、そこに書かれたマニアックな車の数々から、エンスー絵本としても有名である。「タンタンの冒険」だけでも十分なクルマ絵本の研究対象となり得る。今後「クルマノエホン」でも取り上げていきたい。ちなみに、表紙の車はT型フォード[3]である。

「タンタンのコンゴ探検」その2

[参考・引用]
[1] タンタン騒動、各国で広がる=人種差別と訴訟も、時事通信、2007年8月26日、
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/world/jiji-27X559.html
[2]国際教育論 異文化理解論(1)文化と差別の問題 ちびくろサンボ問題を軸に、太田和敬、
http://www.asahi-net.or.jp/~FL5K-OOT/chibi.htm
[3]Les autos de Tintin、
http://dardel.info/tintin/index.html
[4]The Story of Little Black Sambo、Hellen Bannerman、Chatto&Windus、1975

タンタンのコンゴ探険 (タンタンの冒険旅行 22)タンタンのコンゴ探険 (タンタンの冒険旅行 22)
(2007/01)
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Posted on 2007/09/15 Sat. 09:56 [edit]

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