ちいさいあかいじどうしゃ

チンクエチェント絵本を紹介した後は、日本のなつかしい国民的小型車が主人公の絵本を一冊。「ちいさい あかい じどうしゃ」(佐藤義美・文、富永秀夫・絵、キンダーブック、昭和42年9月号、フレーベル館)である。キンダーブックというと現在でも発行されている幼稚園児御用達の歴史ある月間教育絵本である。1927年(昭和2年)創刊の今年でなんと80歳[1]。私の幼稚園時代もお世話になっていたはずで、昭和42年といえば、私も5歳で年中さんだった頃だ。その頃の国民的小型車といえば、富士重工製スバル360。ちいさいあかいじどうしゃは、このスバル360がモデルとなっている。

ストーリーはシンプルである。4人家族の弟、一郎君は中古車売場で小さい赤い自動車を見つける。「ぼくはこのくるまがすきだなあ。お父さんがこのくるまを買うといいなあ」と思っていると、「ぼくを買ってください。よくはたらきますよ」とその車が言った。

今日は日曜日。我が家にやってきた「あかいちいさいじどうしゃ」で一郎君の家族はお出かけをする。高度成長期、新三種の神器3C(Car、Cooler、Color television)といわれたのが1960年半ば。まさにこの当時のお話で、マイカーを持つということは非常に憧れの対象であった。私の家も、マイカーを持ったのはちょうどこの頃、白い初代トヨタカローラの中古車だったと記憶している。

あかいじどうしゃは、当時できたばかりの高速道路を走ったり、パーキング・ビルで休憩したりと、現在では当たり前の施設も当時は大変珍しかった。高速道路には人一倍思い出がある。私の父は旧日本道路公団(現在のJH)の土木技師で、昭和40年代、北九州道路(正確には自動車専用道路、1979年前線開通[2])の建設に携わっていた。休みの日にICの工事現場に連れて行ってもらった(部外者を入れてよかった(^^;)?)記憶もある。

「ちいさいあかいじどうしゃ」一部

ストーリーの後半は凸凹道を走っている途中でエンコ(今では死語だがエンジン故障のこと、当時は頻繁に使っていた)、お決まりのパターンである。あの当時舗装されていない道路はあちこちにあったし(山道はほとんど未舗装)、我が家のカローラもエンコばかりしていた。宮崎への旅行中、山道で故障したり、立体駐車場のエレベータを出るときに止まってしまい往生したこともある。路面電車の線路上でエンストし冷や汗ものの時もあった。今では笑い話だが、当時は命がけのドライブだった。

最後はお父さんと一郎君が車庫で洗車をするところで終わる。そういえば父とよく洗車もしたっけ。私はほとんど洗車をしないので、子供たちにはこういうことも体験させないとあかんかなあ。

というごくごく普通の家族の、自動車のある日常生活を描いたお話なのだが、当時をリアルタイムにごくごく普通に生きた世代にとっては非常に懐かしい絵本となっている。一緒に描かれている名車の数々も懐かしい。ブルバード(ダットサンP310)、トヨタコロナRT40、ホンダS600等々。当時の自動車事情を知る資料としても貴重な一冊である。果たして、今の子供たちはどれほど車の記憶をもって育つのだろうか?

佐藤義美
佐藤義美

作者の佐藤義美さん、恥ずかしながらこの本を調べるまで非常に有名な方だとは知らなかった。童謡「いぬのおまわりさん」の作詞家といえば誰でもわかるだろう。1905年、大分県直入郡岡本村(現竹田市)に生まれる。早稲田大学国文科を卒業後、1930年に同大大学院修了(この時代の院卒とはかなりのインテリ)、東京第三商業学校に就職。国語・作文の教鞭をとる。早稲田大学国文科在学中にはすでに童謡作家として活躍。晩年は積年の夢、ヨットを手に入れ、神奈川県逗子に仕事場をもつ。1968年(この本発行の翌年)に亡くなっているが、63歳の生涯で3千以上もの作品を残した。故郷竹田市には、佐藤義美記念館[3][4]があり、逗子の仕事場を再現、彼の遺品などを展示しているそうだ。

[1]あのね、キンダーブック、
http://www.rakuten.ne.jp/gold/anone/hoikuehon/
[2]北九州高速道路4号線、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E9%AB%98%E9%80%9F%E9%81%93%E8%B7%AF4%E5%8F%B7%E7%B7%9A
[3]佐藤義美記念館ホームページ、
http://ww35.tiki.ne.jp/~yosimi/
[4]たけろぐ、
http://nakatake05.blogcoara.jp/takelog/cat220/index.html
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