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ピンポン  

ピンポン

リオ五輪前半戦、最大の収穫は、見る側もやる側も「卓球」だったような気がする(体操団体の逆転Vもすごかったけど)。女子も銅メダル獲れたし、あとは男子が頂点を狙うのみ。これだけ「卓球」がメディアの話題になることは今までになかったことだろう。小学生までサッカーと水泳をやっていた長男が、中学の部活にまさかの「卓球」を選んだことと、彼が選択しなかったサッカー代表の不甲斐ない結果に対するバイアスが全くないとは言えないが、そんな身内の事情を差し引いても、卓球男女の活躍に新しいスポーツの魅力を感じた(もちろん、papayoyo父子のサッカー愛が無くなった訳ではありませんよ)。その息子とDSソフトを探しに、B/Oへ立ち寄った際、『ピンポン』(松本大洋・作、小学館)の中古本を見つけて、今さらながら試しに第1巻を購入してみた。松本大洋の実力は知っていたし、本作は映画にもなって、ここ横須賀出身の窪塚洋介さんが主演を務めたことで興味はあったのだが、コミックも映画も今まで手を出していなかった。そこにオリンピックと息子の部活である。これは読むしかないっしょ、ミーハーだけど。

ピンポン01
風間竜一怖すぎ(『ピンポン➊』より)

松本大洋の、まるで切り絵のようなエッジの効いた独特の画風は好き嫌いが分かれるようだが、僕はけっこう好きな部類だ。思春期の少年少女が、どこか冷め切っている心理描写も彼の作品の真骨頂。ストーリーや内容の評論は他に譲るとして、ダブル主人公、星野裕と月野誠のライバルであり、全国屈指の激戦区神奈川(現実も本当にそうなのか?)を制圧する海王学園高のエース、風間竜一の言い放つ卓球哲学にオリンピックで見た壮絶なラリーが重なった。

「人間の反応時間の生理的限界は0.1秒なのであります。これを反射時間と呼びます。卓球という競技はこの反射時間に反応時間を可能な限り近づける事により、その極致に至る事が出来るというのが自分の考えであります。浴衣を着て行なうタイプのものとは本質が違います。」(「『ピンポン➊』第7話ドラゴン」より)



また、物語のキーマンの一人が、中国からの“雇われ”高校生だったりして、まさに今の現実を予見している。どこの国と試合をやっても、中国人と戦っているようなもんだからね。海外では、養子縁組制度を悪用して中国人選手を帰化させるといった本末転倒な事態も起きているが[1]、卓球世界は、良くも悪くもチャイニーズ抜きでは語れない。

ひと昔前まで、卓球といえば根暗スポーツとか温泉遊戯とか、まあメジャーなスポーツではなかった。それを日本国民に刷り込んだのが、あのタモリさんの一言だったという[2]。1980年代後半、「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の人気コーナー「テレフォンショッキング」にミュージシャンの織田哲朗が出演した際、織田が学生時代に卓球をやっていたことを明かすと、タモリが「卓球って根暗だよね!!」とコメントを返した。すると、翌年の中学生の卓球部入部人数が激減するという“事件”が発生した。時はバブル全盛期のテニスブーム、同じラケットで球を打ち返す競技ながら、見た目にも似ても似つかない“ダサい”卓球にトドメを指したかもしれない。

中洲産業大学教授
中洲産業大学教授、世界を変える
出典:http://matome.naver.jp/odai/2133559352949464401

その根暗さをさらに助長したのが、私の学生の頃は当たり前のように存在した“暗い緑色(黒板色)”の卓球台。このネガティブイメージに危機感を持った協会?業界?がイメージチェンジのためにブルーの台に色を変えた。そして1992年(平成4年)のバルセロナ五輪で、日本発祥の青い卓球台が正式採用。その後、ほとんどの国際大会では青い卓球台を使用することになったそうだ。タモリ、世界を変える。そういえば、最近卓球の試合を観ると心なしか会場が明るくなった気がしたものだが、照明のせいかと思っていたら、明るいブルーの卓球台のせいだったのね。

卓球台「Infinity(無限=∞)」
リオ五輪のかっこいい卓球台は「日本の技術の集大成」 ソニー出身のデザイナーが手がける
出典:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1608/16/news079.html

そして福原愛さんや石川佳純さんなどのアイドル(試合中の顔は怖い!)も登場して、徐々に卓球が人気を取り戻してきていた。昨年くらいから世界選手権でも男女ともに好成績のニュースが届き始め、今回リオでの期待以上の成績と、その圧巻のパフォーマンス。波田陽区にしか見えない水谷隼選手のゆるいキャラも好感度を高めている(※)。

(※)“喝”のおじいちゃんが、水谷選手のガッツポーズにダメ出しをしたことが話題になっている[3]。「負けた人の健闘を称えよ」と言いたいことはわかるが、彼もちゃんと相手には敬意を払っているし、とにかく選手はあらゆるストレスを体内に溜め込んで試合に挑むので、勝った時にガッツポーズが出るのは、緊張が解けた時の当然の生理現象だと思うのだよね。それだけ集中していた証拠。何より「ガッツポーズは肩の下まで」という基準が意味不明だ。「やっつけた、という態度を取っちゃ駄目。」というならば、こっちの選手の非礼にこそ“喝”を入れて欲しい。テレビ局もいつまでもこういう老害を使い続けてはいかん。鳥越さんもそうだけど、テレビで影響力を得た方々の末路が痛々しい。でも俺もこういうジジイになるんだろうなあ…。

ガッツポーズ、ええやん
ガッツポーズ、ええやん
出典:http://geinou.aventa-rises.com/シンガポール卓球女子代表チーム選手の帰化中国/

以前にテレビニュースの特集でも紹介されていたが、彼らの大躍進の裏では、協会の周到な若手育成戦略があったらしい[4]。現在世界ランキング100位以内に男女計24人が入っているそうだ。これは人気ではメジャーなテニスやゴルフを圧倒する。基本戦略として、選手・指導層のすそ野を拡大、特に2002年以降に始まった小学生を合宿に呼んで強化する「ホープスナショナルチーム(HNT)」創設やJOCの「エリートアカデミー」など、スポーツ科学も積極的に導入した強化育成策が大きいようだ。理研の姫野博士に協力してもらって、絶対に返せない魔球を生み出せないだろうか?

今回大活躍の水谷選手はHNTの第1期生だし[5]、高校生代表、伊藤美誠さんも2010年にHNT入りしている[6]。だが『卓球界の革命児』と言われた伊藤選手も、準決勝・ドイツとの第1試合、相手を完全に追い詰めてから大逆転されてこのゲームを落としてしまう。この試合は、最終第5試合までもつれこんだから、もしこのゲームを彼女が獲っていたら、勢いですんなり決勝まで進めたかもしれない。やはり15歳という若さゆえかと思われたが、銅メダルを賭けたシンガポールとの一戦では、世界4位相手にストレートの圧勝、とても高校生には見えないふてぶてしさも感じられるほど見事に修正をしてきた。敗戦は人をさらに強くする。いずれ世界の頂点を狙える恐るべき逸材だ[7]。

世代交代
世代交代がいい感じで進む卓球界
出典:http://www.sankei.com/rio2016/photos/160817/rio1608170069-p7.html

ただ、これらの成果の種が巻かれたのはさらに遡ること1980年代。やはりタモリ氏の“金言”の影響があったのかもしれない。さらに、これら戦略の効果が表れ始めるのが2006年から[4]。やはりスポーツの世界では、種まきから果実を実らせるまでに即効薬などはなく(あればドーピングになってしまう)、20年、30年の長期スパンで挑むしかないと改めて感じた。

サッカーもJリーグが発足して、A代表からアマ、学生まで、一気通貫の組織体制に移行してから四半世紀が経とうとしているが、やり方がマズいのか未だリーグも代表も国際レベルの実力をつけて来たとは言い難い。このような事例で振り返ると、組織的な強化体制としては致命的な状態のバスケやバレー、マラソンをはじめとした陸上などは、4年後の東京においても相当厳しい戦いを強いられると予想される。カヌー・羽根田選手の銅メダルなんて、それこそ孤軍奮闘の武者修行の賜物で、所属先(ミキハウス)とスロバキアに育てられたみたいなもんでしょ[8]。一体、協会は何をしていたのかね。各競技とも、よほど綿密に(東京の先も見越した)育成ロードマップを描かないと、開催国枠で安易に出場できることが、かえって育成戦略の根本的な見直しやレベルアップの障害になるのではないかと心配している。それぞれポテンシャルのある若い逸材が出てきているので、上手に育ててもらいたいものだ。

ピンポン02
『ピンポン➊』より

さて、肝心の『ピンポン』の感想はどうなん?てことだが、んーっ、こいつは面白い。まだ主要メンバー登場のまきで、試合らしい試合の場面は出て来ないのだけど、どいつもこいつも相当なクセ者揃いで今後の展開が楽しみ。今までスポーツ漫画はあまり読んだことがなかった。僕らの世代は野球が主流だったけど、ジャイアンツ嫌いだったので『巨人の星』は読んでないし、『スラムダンク』はバスケにあまり興味がないからなあ。『タッチ』はあだち充の絵が好きではないので…。『ドカベン』とか『あぶさん』くらいかな。ホークスがダイエーになって、香川や景浦が福岡にやって来たということもあるし。あと、小学生の頃よく読んでいたのが『おれは鉄平』。これ読んで、中学生のとき剣道部に入ったくらいだから。『キャプテン翼』もそうだけど、スポーツ漫画は子どもたちに大きな影響を与える。

同じく続きも読みたいと言った息子は、昨日もクソ暑い中、部活に出かけた。休みの私は、息子を学校まで送り、その足で残りの4巻を買いに再びB/Oへ。部活から帰宅するなり、あっという間に完読。来年は息子たちの後輩が増えるだろうか。

そうそう、今年の前半、福岡に帰省したときに古本屋で、松本大洋の『Sunny』(IKKI COMIX)をセットで購入した。『ピンポン』の作者とは知らずに。Sunnyは日産サニーのこと。今は実家に置いたままだが、いずれ異色のクルマノエホンとして取り上げようと思う。

ピンポン03
あつがなついぜっ!!(『ピンポン❷』より)



[参考・引用]
[1]韓国が養子縁組制度を悪用 メダルのために中国人選手漁り、産経ニュース、2016年8月17日、
http://www.sankei.com/rio2016/news/160817/rio1608170034-n1.html
[2]タモリ一言で世界の卓球台変化、暗い緑色から青色へ変更のきっかけに。、ナリナリドットコム、2015年9月8日、
http://www.narinari.com/smart/news/2015/09/33606/2
[3]張本氏、水谷に「喝」の真意…団体メダル称賛も「負けた人称えないと」、スポニチアネックス、2016年8月15日、
http://www.sponichi.co.jp/olympic/news/2016/08/17/kiji/K20160817013179771.html
[4]卓球「ニッポン」復活に向けて戦略的育成強化で王者・中国に迫る、玉村治、WEDGE Infinity、2015年5月22日、
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4995?page=1
[5]【卓球】水谷は日本協会ジュニア強化の「1期生」、スポーツ報知、2016年8月13日、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160813-00000077-sph-spo
[6]戦績、伊藤美誠選手、アスリートエール・ホームページ、
http://www.athleteyell.jp/ito_mima/experience.html
[7]伊藤美誠は「卓球界の革命児」暗黙ルールどこ吹く風、日刊スポーツ、2016年8月17日、
http://rio.headlines.yahoo.co.jp/rio/hl?a=20160817-00000166-nksports-spo
[8]羽根田が銅メダル獲得!カヌー競技で日本人初、スポニチアネックス、2016年8月9日、
http://www.sponichi.co.jp/olympic/news/2016/08/09/kiji/K20160809013135381.html
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Posted on 2016/08/18 Thu. 01:39 [edit]

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