かず動物園-ZOO IN ZOOM

今日は作者のデザインセンスを感じさせる、ちょっと変化球のクルマノエホンを紹介します。タイトルは「かず動物園-ZOO IN ZOOM」(黒岩一雄/クロイワ・カズ)という私家版、非売品の珍しい作品です(副題がマツダのCMみたいやなあ)。1964年の出版なので、私と同世代、相当古いです。

比較的手に入れやすいだろうと、ニッチな領域を狙ったクルマノエホンの蒐集も10年を数え、だんだんと収拾がつかなくなってきましたが、いまだ日々のウォッチング、情報収集は欠かしません。その中でもどうしても手に入れたい本が何冊かあります。当然どれも古く、希少なため入手困難です。価格もそうですが、古書店、ネットオークション等々そもそも取引ルートに上がる機会自体がほとんどありません。これもそういった本の一冊です。何せ、もともと非売品ですから、ネット上での情報もほぼ皆無です(なぜ、私は知り得たのでしょうか?)。

そんな時、久しぶりに「かず動物園」というキーワードで検索すると、この本が引っかかりました。しかもネット販売しています。それも古書店ではなく、東京・駒場東大前の雑貨屋『Ditty Tools』さん。当然値段も決してお安いというものではありませんが、このチャンスを逃すと二度と現物を目にすることはできないかもしれない(一応エンジニアの端くれなので現物主義!)。以前にも、今ではそんな価格で手に入れることは絶対に不可能な大魚(しかも美品)を逃した経験があるので、まずは出品者に聞いてみようと思いました。でも記事のアップが約1年前なので、ほぼダメもとで問い合わせメールを送信しました。すぐに返信いただいたメールには「再入荷分があります」という奇跡の回答。こんな本が1年の間に2冊も出るとはこの店は一体何なのだろう?と今度はこの雑貨屋さんに興味を持ちました。

ちょうど横浜のラボと東京に出かける予定があったので、またまた降って湧いためんどうな仕事をとりあえず片づけ(最後に“よろしく”とメール一本)、ウキウキ気分で久しぶりの駒場東大前へ(かつて素敵なチェコ絵本を見つけた縁起の良い場所)。歩いていたらほとんど気づかないような建物の2階にその店はありました。商品のレイアウト、並んでいる雑貨の選択に店主のセンスを感じます。でも50過ぎのオッサンリーマンが来る場所ではないことは確かです(笑)。事前に来店することを伝えていたので、その“現物”をまず見せていただきました。

かず動物園その1

思ったより小さめのその絵本は、31種の動物のイラストに写真のタイヤをコラージュするというアイデアが抜群です。イラストとコラージュのデザインもまた秀逸。動くタイヤを素材にしているので、イラストも生き生きと動いているように見えるでしょ。動物園の喧噪が聞こえてくるようです。最初この作品を見つけた時、そのセンスに釘付けでした。モノクロ基調の絵本というよりはシックなデザイン本です。昔はよくありましたが、ちょっとザラザラとした手触りのインク吸取紙(ブロッター)素材で作られた本の質感に懐かしさも覚えます。

かず動物園その2 かず動物園その3
かず動物園その3 かず動物園その4
いろいろなメーカーのタイヤをコラージュ(「かず動物園」より)

当初、タイヤメーカーとのコラボ絵本かなとも思いましたが、冒頭のように私家版ですし、タイヤの写真をみると、グッドイヤーやファイアストーン、ミシュランに買収されたグッドリッチの「シルバータウン」[1]らしき商品名も見られ、色んなブランドが使われています。日本のメーカーは確認できませんでしたが、60年代前半といえば、まだ海外ブランドが強かったのですかね。

かず動物園その5

タイヤのコラージュも写真だけでなく、トレッドパターンなんかも使われていて見ていてとても楽しい。動物好きにも、クルマ好きにも気に入ってもらえること請け合いです。

なんで雑貨屋さんにこの本が、しかも再入荷という疑問が湧きますが、お聞きすると若い女性店主はこの作家、黒岩一雄さんがお好きなようで、ご自身もお気に入りの1冊だということでした。古本というより、(ディスプレイにも重宝する)雑貨として市場に出回ることもあるようで、なるほどそういう観点から探す手もあるのかと新しい発見です。また、私がクルマの絵本を集めていると話すと、真鍋博さんの「じどうしゃ」という絵本をお持ちですか?と聞かれてまたびっくり。これこそ、前述の“逃した大魚”だったのです。彼女も現物を見たことがあるとのことで、この本の素晴らしさについても話が盛り上がりました。

さて、このブログに紹介しているのでおわかりだと思いますが、結局購買欲に負けて購入してしまいました。ポルシェやBMWに乗る高給取りや資産家のコレクターであれば、なんの躊躇もなく手に入れられる値段でしょうが、まだカネのかかる子どもを2人も抱える薄給リーマンが趣味で買う本としては、財務省(妻)の顔が一瞬頭に浮かぶ価格帯です。でも二度と出会うことがないかもしれない。一応、夏のボーナスも出たし、デザインの道を目指す娘の何かの参考になるかもしれないなどと勝手にエクスキューズを付けて、念願叶って入手を果たした次第です。

作者の黒岩一雄(クロイワ・カズ)氏については一次資料がなかなか見つからず、Wikipedia他[2][3]によるわずかな情報のみ。1931年東京生まれの日本の漫画家。早稲田大学英文科卒業後、ライオン歯磨(現・ライオン)の宣伝課に勤務し、広告コピーなどを手がけるコピーライターの時代もあったようです。その後、独立し、切れ味の鋭い1コマ漫画で活躍。日本漫画家協会賞大賞や文藝春秋漫画賞などの受賞歴があり、代表作に『EYE FOR EYE』『オフィ椅子シンドローム』『シブイ男たち』などの漫画集など。さらに調べていくと、科学雑誌『日経サイエンス』の創刊号以来、企業広告コラム「超の世界」のイラストを担当しているのがクロイワ・カズさんでした[4]。そういえば以前に目にしていたことあったかも知れない。彼についてさらに詳細の情報をご存じの方、教えて下さい!

21世紀に工学は「文化創造学」となる
21世紀に工学は「文化創造学」となる/原島 博(「超の世界」より、illustrated by KAZ O.KUROIWA)

毎日のように重苦しい事件や災害が続く昨今。こんな不安で閉塞感漂う時代の空気や流れを変えるのは、政治でも経済でもなく、(テクノロジーとの融合も含めた)デザインやアートのチカラだと、最近何の根拠もなく思い込んでいる私です。この絵本の紹介で、少しでも皆さんの気持ちが晴れたり、何かの発想のヒントになれば幸いです。

[参考・引用]
[1]グッドリッチ、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%81
[2]クロイワ・カズ、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%AF%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%BA
[3]クロイワ・カズ(漫画家)、まんがseek、
https://mangaseek.net/person/6491.html
[4]CMライブラリ、宇部興産株式会社ホームページ、
http://www.ube-ind.co.jp/japanese/ad/index.htm
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コメント

  1. SDTM | /ZyVyp1I

    原島 博

    ☆ こんばんわ。
      ちゃんと記事は毎回読ませて頂いているんですが、
      なかなかフォローまで至りません。
      60歳目の前で、新業務に就くなど厳しい(笑)環境下で
      一日をなんとかこなすのに精一杯。(息抜きもかなりやっています)
      バランスを取るのに時間を取られがちです。(大笑)

      原島先生には、直接お会いしたことがありませんが、結構色んな所で
      影響を受けたような気がします。

      高校2年の時に、父親に物理の参考書で何か良いかを相談した際、
      渋谷の大盛堂書店に一緒に行き、「原島博監修」の物理の参考書&問題集を
      選んで貰いました。これは当事、高校2年のSDTMではかなり高度な感じを
      しましたが、大学受験にでる問題を完全にフォローされていることに高校3年の夏以降
      に気がつき、旺文社の傾向と対策を夏休み中に終えた後に集中して、その問題集に
      取り組みました。自分自身はなかなか基本だけあれば応用するまでの柔軟さが無いと
      感じていたので、幅広い応用問題がでていた原島先生の本は非常に役に立ちました。

      この本は、当事の受験生で人気があったとは思えず、非常にトリッキィーな物だったと
      思っています。父親はおそらく原島先生がどんな方が知っていて、この本を選んでくれた
      のだと思います。

    ( 03:07 [Edit] )

  2. papayoyo | -

    Re: 原島 博

    STDM様、ご無沙汰です。またコメントありがとうございます。
    クロイワ・カズのイラストを紹介するのに、たまたま原島大先生をダシに使わせていただいたのですが、そこに食いつかれるとはさすがSTDMさんの感性(笑)。
    私も先生とは直接お仕事をさせてもらったことはないですが、原島博といえばVR(仮想現実感)でしょうか。この本を買いに行く前に立ち寄った弊社のラボでは、まさにこのVRの最新テクノロジーを体験させてもらいディスカッションしていたんですね(のつもりが余計な仕事も振って来たのですけど)。情報技術を素材に人のコミュニケーションの本質とは?が先生の関心事と理解していますが、AIや自動運転もそうですが、昨今のテクノロジーの進歩で機械が人間の知能や感覚に近づくと、改めて人間って何だ?と考えさせられます。
    またいつでも遊びにお越しください。

    ( 07:00 )

  3. SDTM | /ZyVyp1I

    済みません

    ☆ 勘違いをしていたようです。

      原島 博さんではなく 原島 鮮さんでした。
      大間違いにフォローを頂いてから気がつきました。申し訳ありません。
      ただ、原島 博さんの1980年代の活動については、画像系研究に
      勤しんでいらしたことを父親から聞かされておりました。
      それでゴッチャにしていました。深くお詫び申し上げます。
      折角コメントをいれたのですが、、どうしましょうか?
      削除しましょうか?

    ( 23:39 [Edit] )

  4. papayoyo | -

    Re: 済みません

    ひょっとして?と思っていたのですが、やはりそうでしたか(笑)
    原島鮮先生も超有名ですもんね。確か私も大学の力学の教科書は原島鮮だった記憶があります。
    誰でも間違いはありますし、この記事とは関係のない話の勘違いから思わぬ知識が得られることもあります。
    もしかしたらと思って調べてみたのですが、原島博先生は原島鮮先生の甥らしいです。
    http://twcu-alumnae.jp/100/honbu/post-9.html
    鮮氏のご子息、文雄氏も著名な工学者で親子二代の大学学長。スゴイ学者一家だったのですね。
    失敗からの大発見です。
    SDTMさんの貴重なコメント、残しておきますw

    ( 20:50 )

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