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博多のうどんと古本屋  

博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか

親父が倒れて実家に帰っていた時、父からの頼まれ事を済ますため天神のデパートへ出かけた。お昼はいつもの博多うどんの老舗『因幡うどん』でとも思ったが、今回は天神コアビル内にある人気の『味の正福』に並んで焼き鯖定食を食す。脂ものって旨かったなあ。やはり博多は魚が旨い。昼飯を済ませた後、実家の掃除をしていて必要になった神仏具を探しに、最も“博多“らしさの残る川端商店街へと向かう。天神からは歩いて10分くらいだ。福岡出身のチューリップが歌う『博多っ子純情』の歌詞には、「いつか君行くといい 博多には夢がある できるなら夏がいい…」とあるが、今回は真冬の博多を散歩してみた。

2016冬の中洲
冬の中洲

天神コアビルの地下には昔、渋い小さなレコード店があった。その隣のビル、ビブレの上階にも確か大きなレコード売り場があって、学生時代はこの界隈でレコードを漁っていた記憶が蘇ってきた。ビブレの先には、昔と同じ場所にベスト電器の福岡本店がある。博多の人間にとって、家電量販店といえば「ベースト、ショッピーング♪」のCMソングが思い浮かぶ。1996年までは業界シェアNo.1の家電量販チェーンだったから、就職して上京した頃はヤマダやコジマなんて「誰それ?」って感じだった。自宅近くのショッパーズプラザ横須賀にも、まだダイエーが経営権を持っていた頃に同じ福岡を活動拠点にしているモノどおしだったからなのか出店してきて、なんとなく望郷の念に駆られたことがあったけど、かつての栄光もどこへやら、店舗は狭くてショボくてガッカリした思い出がある。

2016冬の川端商店街
川端商店街

ベスト電器本店を過ぎ、緑で覆われた不思議な建物「アクロス福岡」の横を通って明治通りに出る。橋の上から中洲の眺望をしばし噛みしめながら、ちょいと東へ歩くと川端商店街の入口が見えてくる。昔ながらの下町の商店街。博多の風情を味わうならここに立ち寄ってみるといい。この通りに多い神仏具店の何店かを梯子して、商店街の端にある”櫛田様(櫛田神社)“にも寄ってみた。すっかり観光地化したここも、春節で大挙押し寄せたチャイニーズの中国語が飛び交っていた。

2016冬の櫛田神社
櫛田神社

この地の鎮守様に父の回復をお願いしてから国体道路へと出る。西に向かうとすぐに『かろのうろん』という有名なうどん屋が見えてくる。昼時を少し過ぎたのに観光客らしい人たちが列を作っている。『かろのうろん』と聞いて、「永六輔」と「咳・声・喉に浅田飴」のキーワードが出てくる人は相当に古い。昭和40年代、永さんが商品キャラクターを務めた浅田飴のCMにこの『かろのうろん』が登場したことがある。昔の博多の人はダ行がラ行になってしまうので、角にあるうどん屋は「かろのうろん」となる。だから咳・声・喉に浅田飴は「せき・こえ・のろにあさらあめ」。実はこの店で私は食べたことがない。「名物に美味いものなし」が頭にあったからだろう。でも本当は旨いらしい。

かろのうろん
かろのうろん
2016冬の春吉橋
中洲懸橋(旧春吉橋)から那珂川を望む

さらに西へ戻って『博多っ子純情』の歌詞にも出てくる春吉橋を渡る。中洲の夜の蝶たちは、この橋の上でいつか愛が欲しいと涙する。先をどんどん歩くとメインの渡辺通りに出てきた。この通りに面した天神ロフトの裏手にある新天神ビルというこじんまりとした雑居ビルの中に最終目的地があった。階段を上がり、まるでアパートのような玄関を入るとそこは古本屋さんである。最近福岡に出来た旅と古本の店『ひとつ星』とその姉妹店、絵本と児童書の店『みかづき』の二店舗。6畳3間ほどの空間にこの2つの小さな古本屋さんが同居する。横浜地区では古本屋の閉店が続く昨今、福岡でも状況は似ているだろうが、以前にも紹介した『徘徊堂』のように新しい個性店が刺激を与えてくれている。『ひとつ星』の男性オーナーさんは地元人ではなく関東の人、『みかづき』の女性オーナーは地元の人って言ってたかな(その逆だったかもしれない)。立ち上がったばかりで、本の量もまだ少ないが(店舗自体が小さいからね)、個性に磨きをかけて地元に根を張って欲しい。まさに今自分に振りかかっている問題だと手に取った『老いを照らす』(朝日新書)を購入。

ひとつ星 その1
こんな何の変哲もない雑居ビルを昇ると
ひとつ星 その2
こんな古びたアパートのような感じで
ひとつ星 その3
その古本屋は現れる

後日、実家の近所の本屋で『博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか』(ぴあ)という本を見つけ購入した。博多うどんに惚れこんだ外食コンサルタントの著者が、博多うどんを全国チェーン展開できないか経営の視点で分析した本。結論から言えば「できない」。食にうるさいタモリもかつて故郷・博多うどんの店を東京で開業したそうだが失敗に終わっている。そもそも食文化というものはその地域に根差したものだ。所変われば水も違うし、獲れる産物も異なる。博多ラーメンもすっかり全国区になったが、福岡で旨いと思っていたラーメン店を、以前神奈川の通勤途中で見つけ、懐かしくなって入ってみたことがある。一口食べてみて「ん?」。初めて食した時の感動が全くなかったのだ。チェーン展開して味が落ちたかとも思ったけど、食材も客の嗜好も異なるこの地で店を出すのだから、福岡と同じ味で提供される訳がないのだ。地元で親しまれた味を全国、あるいは世界規模で再現するなんてよくよく考えれば無理なこと。だから本書の結論-(博多うどん=ソウルフードは)半径1時間30分のビジネスモデルーを読んで、納得するとともに正直ホッとした。地元で食らうことに意味がある。

うまひゃひゃさぬきうどん

神奈川に移り住んで四半世紀が経つが、本書の著者のように博多うどんの名店を梯子したいといった強い願望に駆られたことはこれまでなかった。博多ではうどんはあまりにも当たり前すぎて、近所の馴染みのうどん屋とか学食のうどんがその人にとっては一番旨かったり安心したりする。日本人にとって当前のように毎日食すごはんも、よっぽどの米好きでない限り、「いろんな米を食べ比べたい」とは普段あまり思わないだろう。それと同じで他に好奇心が向かない。でも私にとっては別の食いもんである「讃岐うどん」は色々な店で食べ比べをしたいと思っている。コシの強い讃岐うどんは、何とも言えず柔ーい食感の博多うどんとは対極に位置する。まだ長女が生まれる前、『うまひゃひゃさぬきうどん』(コスモの本)という本に嫁とハマったことがある。未知なるソウルフードの、作者・さとなおさんの軽妙かつ明快な食レポに、本場香川で讃岐うどんを食いてえと心底思わせてくれた本。その後、「讃岐」のブランドを掲げたうどんチェーン店や冷凍食品が多数登場したが、やはり本場で食べる味とは違うのだろう。私はまだ四国の地すらも踏んだことがないのだが、奇妙奇天烈な妻の親友夫妻が住む香川にいずれ足を延ばし、”うまひゃひゃうどん“の名店を梯子することを夢見ている。

うまそうに食う松重豊
孤独のグルメ・「真夏の博多・出張スペシャル」より

一方、30年近く故郷を離れると、さすがに脳裏に染みついたソウルフードが懐かしくなる。さして有名店でもない近所のうどんチェーンで食っても、その絶妙な麺の柔さ加減、醤油の味が強い関東で食べるうどんに比べて刺々しさのない優しい味わいの出汁、そして丸天、ごぼ(牛蒡)天など王道のトッピングに、そうそうこれなんだよなあと今回の帰省ストレスから一瞬解放される。味覚は恐らく幼少期に形成・確立されるだろうから、子供の時分に慣れ親しんだ食文化・食生活、もっと言えばその土地の空気感や暗黙のルールはその人に極めて大きな影響を及ぼす。そういう意味でも、あまりにソウルフルな博多うどんが関門海峡を渡るのは難しい。この感覚はその土地で生まれ育った者にしか100%伝わらないと思う。横須賀がホームの子供たち、九州人で学生時代福岡に住んでいた父親を持つ沼津出身の嫁の3人の東(あずま)人に囲まれた私は、ふとアウェイ感を覚えることがある。でも、博多で育ったことのない人にとっては全く新しい味覚を提供してくれると思うので、是非博多に遊びにきんしゃったときには、”うろん“を食うてみるとよかです。

明後日また帰省します。






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Posted on 2016/03/04 Fri. 21:32 [edit]

category: Fukuoka/福岡

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