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薬と健康食品は宗教である  

薬と健康食品は宗教である

久しぶりに更新する。今週の月曜日まで福岡の実家に帰省していた。1月末、独り暮らしの父の体調が良くないと連絡を受け、今後の対応について相談をしに帰る予定だった。29日の昼、飛行機待ちの羽田で携帯が鳴った。福岡の親戚からだった。「叔父さんが家で倒れたとよ。今救急車で病院に運ばれたけん。」

一瞬、最悪の事態を考えた。だが意識はあるという。今から福岡便に乗り、病院へ直行することを告げて電話を切った。その後の病院で割と元気だった父から聞いた話によれば、早朝目が覚めたときに起き上がれなかったという。布団から這って出て隣の部屋まで辿り着き、何かに寄り掛かったままそこで力尽きた。どれくらい時間が経ったのか、ふと我に返ると玄関のチャイムが鳴っている。しかし動くことも声を出すことも出来ない。しばらく経って再びチャイムが鳴った。電話もジャンジャン鳴り出した。でもやはり動けない。気が付いたら、家に入ってきた隣人に助けられた。

最初のチャイムは定期点検に来た九州電気保安協会の訪問だった。実家は旧い集合住宅だ。その後お向かいに寄って隣室の父が留守であることを伝えたそうだ。隣人夫妻は最近再び自宅前の路上で倒れた父の体調を気遣って、数日前に病院での検査へ付き添ってくれていた。彼らの連絡で私は急遽帰省を決めたのだ。検査に行ったばかりだし、この雨の寒い朝に父が外出のはずがない。再度呼び鈴を鳴らしても、電話をかけても応答がない。機転を利かせてくれた彼らが、緊急連絡先で鍵を持っている市内の親戚へ通報したというのが事の顛末である。

発見されたときは起きてから恐らく4、5時間後。かなり身体も冷え切っていて、私が実家に戻った時まで誰にも気づかれなければ低体温症でお陀仏だったかもしれない。幸いにして身体が思うように動かないこと以外はべらべらとよくしゃべる父。保安協会の訪問日でなければ、隣人宅に先に寄っていれば、隣人宅が不在だったら、親戚が遠出していたら…。奇跡が重なって、父は命拾いをした。運の強い男である。

浮腫(入院前) 浮腫(入院後)
下肢浮腫の症状変化(左:入院前、右:入院後)

入院先での診断結果は両下肢脱力・浮腫、膝と踵の褥瘡(じょくそう)、左慢性硬膜下血腫。褥瘡は長時間床に横たわっていたため。慢性硬膜下血腫は数日前にかかりつけの病院でも診断されていた。昨年末に路上で転倒した際、顔面を強打していたことが発症の要因と思われる。今年に入って右足をかなり引きずるようになったらしく恐らくこれが原因だ。ただ脳内圧迫は見られないので緊急手術の必要はなく、放っておけば自然治癒するかもしれないとのこと。問題は立ち上がれなくなった両下肢脱力の原因。色々検査をしたものの、年相応の問題が認められる以外、脱力の直接的な原因は今もって不明だ。脱力と排尿障害の症状から脊髄梗塞の可能性も疑われたが、極めて稀な病気で明確な証明はできないことと、仮にそうだとしてもリハビリ以外有効な治療法はないらしい。昨年夏ごろから顕著になり薬も効かず歩行機能の妨げにもなっていた足のむくみ(浮腫)は、入院後数日で見違えるほど良くなった。予想以上に回復は早く、数日後に立ち上がり歩行もできるようになって、今は午前・午後の歩行訓練も含めたリハビリ治療に移行している。タンパクも出ていた尿数値や排尿障害も徐々に良くなった。それでも退院は春先、まだ1、2ヶ月ほどかかる見込みと主治医に言われた。

実家に散在していた薬、健康食品
実家に散在していた薬、健康食品、これもごく一部

そんなこんなで初日からドタバタ劇の福岡帰省。今回は長丁場になると思って滞在準備はしていたものの、実家に戻って唖然としたのはゴミ屋敷化とした家の中。時折帰省した際に水回りの掃除などはして帰っていたが、昨年末に帰省した際よりもさらに足の踏み場もないくらい、家中モノやゴミで溢れかえっていた。父の身体が悲鳴を上げていたことが察しられた。まずは家の片づけだと、改めて整理し始めて驚いたのは大量の薬と健康食品のストック。食生活は相当荒れていて、ここ数年はスーパーで買った惣菜など外食中心で、足の具合が悪くなったこの半年は近所のコンビニ弁当かレトルト・カップものだったようだ。昔から塩分過多の食嗜好だったが、八十を超えなお味の濃い出来合の食事を続ければ体もおかしくなる。この状態を心配した管轄の福祉センターの方の勧めで、高齢者向け宅配食を開始したばかりだった(年末に宅配食を試してみたが、味が薄いと一蹴)。食生活は健康の要。おそらく不摂生な食事により体調を徐々に崩していったのだと思われる。

身体の調子が悪くなれば病院に行き、症状の数だけ薬が処方される。薬を服用しても、生活の基本は変わらないから症状は改善されない。一向に良くならないと再び病院へ行き、また新しい薬が処方される。その悪循環。そのうち古い薬や飲み忘れの薬が溜まっていく。タイミングよく中央社会保険医療協議会が2016年度診療報酬改定案を答申したニュースが流れていた。特に病院だけではなく薬局にも「かかりつけ」を推進して、病院の処方のまま薬を出す「門前薬局」の医療報酬を引き下げることで、医療機関とのもたれ合いの関係性を改善、重複や飲み合わせも確認することで、より患者側の利益に立った医療制度に改善するというもの[1]。父の「かかりつけ」医も症状によって内科、耳鼻科、眼科、皮膚科…と多岐に亘るので、いろいろな病院から処方された薬の種類はさらに複雑となる。これらの薬をちゃんとコントロールして飲んでいたとはとても思えない。答申の施策でQOL改善の効果が上がるのかどうかは別として、この国の抱える大きな宿痾の一つが、まさに実家でも起こっていた訳だ。

薬はカネになるビジネスだ。利権の絡むこの業界の闇は深い。理研のSTAP細胞、化血研の不正製造の問題も根底には巨額のブラックマネーが関係していた可能性もあると思う。医師も無節操に“カネのなる木”を処方し、薬局もそれに追従する。患者も病院に行って薬が出ないと不安になる。投薬を減らす指南をした医師が患者から批判されるという笑えない話もあると聞く。[2]によれば、『日本の医学界はいわば宗教団体なのだ。たとえば「血圧を下げればいい教」「血糖値を下げればいい教」「がんは切ったほうがいい教」という宗教が跋扈(ばっこ)している。』らしい。高血圧治療薬や抗がん剤はそれぞれの○○教のお札やお守りみたいなものだ。その“お札”に有難くお金を払う。一応科学に基づいているので、患者は何の疑いもなく薬の効能を信じてしまう。しかしその科学的データが本当に正しいのだろうかと[2]では問題提起している。自動車業界で喩えると、日本ではドイツ車、特にVW教の信者が多いが、果たしてVWは日本の道路環境、日本人の使用環境に適したクルマなのかという疑問に近いのかも。

健康食品についていえば、流行はやりの「うこん」一つとってもドラッグストアで購入したものと通販で注文したものと2種類も服用していた。意味がわからん。“食品”といっても注意書きをよく読めば「医師の処方に従って服用下さい」と書かれている。医薬との飲みあわせは大丈夫だったのかと心配になる。私が外出中にも留守電で健康食品会社からの勧誘電話が入っていたし、高齢者を狙って日常茶飯事に売り込み攻勢をかけているのだろう。既に支払済だったが高額の請求書も出てきて販売元をネットで検索するも全くヒットせず。後で父を問い詰めると「これには騙された」と白状した。でも他のは大手メーカー品だと開き直る。確かに誰もが知っている大手食品メーカーのものもあったが、大企業こそある意味ヤクザな商売をする。

健康食品商法の一例
健康食品商法の一例(実家で見つけたパンフレットの一部)

多くの健康食品の販売方法は巷でトラブルを起こしている新興宗教の信者獲得の手法と似ている。まず、メディアやDMでさりげなく宣伝する。訪問や電話で勧誘する(最近はネットでも広告が目立つ)。主なターゲットは高齢者だ。そして身体の悩みはないかと説くのだ。高齢になれば誰でも一つや二つの健康上の悩みはあるものだ。そして「病院で処方された薬を飲んでも改善されないでしょ。あなたの人生を明るくするのは自然界由来の天然食品。医薬品のような副作用もない。」と科学的根拠も疑わしい宣伝文句が並ぶ。心の悩みや社会の矛盾から救えるのは我々の信ずる教祖様のみだと説く新興宗教と同じ手口である。うこんや鮫、蜂、青汁ににんにくや胡麻の類は自然界の教祖たちなのだ。ちょっと疑い深い人には、ほ~ら「うこん」や「にんにく」で健康になった人がこんなにいますよと“信者”の体験談を聞かせる、読ませる。最終手段は信者にはこんな有名人がいますと留めを指す。そして晴れて信者となった者には、これだけの“お布施”が必要だと、真の目的であるカネを支払わせる。そして極め付けは新たな信者を紹介した人に特典がもらえますという悪魔のささやき[3]。

こう書いている私とて、母が末期ガンに冒されていた時は抗がん剤治療に疑問を持っていたので健康食品に藁をもつかむ思いで、恥ずかしながらいくつかに手を出した。ここが『宗教』の本質で、人は不安なとき何かにすがりたくなるものだ。宗教なんて信じないと思っていた左翼の運動家(あまりレフト・ライトで人を判断しない方がよいのかもしれないが)であり作家の故・小田実氏は、末期ガンであることを友人の瀬戸内寂聴氏に伝えた際、「まだ死にとうないわ。寂聴さん、元気になるお経あげてや。」と語ったと言う。無神論者で自分の信念だけで強がって生きてきた男でさえも、死に際には心が折れ、神仏に頼りたくなるのだ[4]。私も実家で途方に暮れた時、荒れ放題だった母の仏壇、仏壇代わりに線香をあげていた祖父母の写真と神棚を真っ先に清掃し、手を合わせた。神仏を祀る場所すらも放置されていたくらい、父の状態は良くなかったということでもある。この弱い人間の心の本質によって成り立っているのが、人類史上最強のビジネスモデルである『宗教』だと理解している。このモデルに倣って”健康教”で商売しているのが医薬品業界であり、健康食品業界だ。

余談だがCMでもお馴染みの健康食品の通販会社って福岡に本社が多いのだよね。『○潤』のエバーなんとか、『青い汁』の9才、『○のしずく』の悠○、『にんにくと卵』のや○や、皆本社は市内かその近郊にある。親戚に言われて初めて気づいた。調べてみるとどうやら地域ならではのカラクリがあるみたい[5]。

実家に散在していた健康関連本
買っていた本と実生活とのギャップ

片づけをしていてさらに掘り出されたものが、薬や健康食品の効き目や安全性に関する書籍の山。購入された本のタイトルと父の生活実態との矛盾にもはや笑うしかなかった。健康に関する出版物の多くはそれぞれの“宗派”を批判・擁護するもので、健康教のビジネスはもはや出版業界をも巻き込んだ様相を呈している。

宗教をビジネスに喩えるとはけしからんとお叱りを受けそうだが、寄付やお布施で成り立っているとはいえ、法人によっては千年、二千年と存在し続けていることを考えるとちゃんと収支が成り立っている、つまり宗教はビジネスなんだと解釈する方がわかり易い。詐欺まがいの宗教団体などはまさに商売として活動している。でも宗教を完全否定している訳ではない。私も宗教系の学校で育ててもらったし、心の拠り所として人が生きていく上で必要なものだと思っている。薬や健康食品も全てが悪だとも言っていない。ただ何事も中庸が肝心で、のめり込んだり、生活を犠牲にするようになればそれは本末転倒だ。もはや宗教化している医薬品や健康食品の類もよくよく吟味して、必要最小限に留めておく方が幸せに人生を送れるに違いない、父の日常生活の実態を知ってそう感じた訳だ。

入院中八十七になった父の様子も気になるし(孫くらいの療法士と楽しくやっているかもしれないが)、やっかいなのは退院後の対応だ。現在要支援1に認定されている父だが、恐らく今の実家で一人暮らしを続けていくのはもう限界だろう。本人はまだやる気満々なのだが、残り少ない余生のQOL(生活の質)をちゃんと考えてあげなくてはならない。今大問題になっている介護付き高齢者住宅へ移ることも選択肢として検討すべき課題の一つ。もちろん元気に回復するに越したことはないが、“健康教”の洗脳を解いて正しく賢く生きる知恵を取り戻す必要もある。これからはしばらく実家と自宅の往復が続きそうだ。会社の介護在宅制度も使え、比較的仕事の融通もきく研究所勤務であることも幸いして、このサポートは非常に助かる。介護で帰省しながら、いつかはやらねばならない実家の片づけも少しずつ進められるので、不幸中の幸い、自分は恵まれた方なのだと前向きに考えている。

まだ心の整理もつかないのでダラダラとまとまりのない記事になってしまったが、かなりプライベートな具体的情報も公開した。これは備忘録として残しておきたかったことに加え、多くの皆さんにも突然降りかかるかもしれないリアルな社会的リスクだということを共有したかったこと、また経験知というのは非常に重要なので、介護する側される側、同じ境遇にある方や経験者のご意見や情報も頂いて、今後の参考にしたいという思いもある。実際、会社の同僚らにも同様の経験者が複数いることも今回わかって、本当に自分だけの問題ではない日本社会の縮図なのだと痛感した。もしお目に止まれば、一緒に議論しましょう。

とはいえ、重苦しいブログにはしたくないので、このテーマであるクルマと絵本の楽しい情報収集や紹介は今後も続けていきたいと思う。久しぶりに長期滞在する元気いっぱい福岡圏の話題もUPする予定。更新頻度は減りますし、レスポンスも悪いと思いますが、是非今後もご贔屓に。

[参考・引用]
[1]診療報酬改定案 「地域・在宅」医療を重視、毎日新聞、2016年2月11日、
http://mainichi.jp/articles/20160211/ddm/003/010/113000c
[2]和田秀樹氏「日本の医学界は宗教団体のよう」、塚田紀史、東洋経済ONLINE、2016年1月3日、
http://toyokeizai.net/articles/-/97488
[3]実態とかけ離れた「健康食品」の宣伝文句、東洋経済ONLINE、2012年9月12日、
http://toyokeizai.net/articles/-/11191
[4]老いを照らす、瀬戸内寂聴、朝日新書、2008
[5]九州、特に福岡に何故通販健康食品系の会社が多いのか、その理由についての考察。、堀江貴文、THE HUFFINGTON POST、2014年6月29日、
http://www.huffingtonpost.jp/takafumi-horie/post_7915_b_5540552.html
[6]健康食品のホームページ、厚生労働省、
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/hokenkinou/
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Posted on 2016/02/20 Sat. 18:30 [edit]

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2016/02/20 22:40 | edit

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