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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

みつやくんのマークX ふたたび  

みつやくんのマークX(あかね書房)1 みつやくんのマークX(あかね書房)2

今日紹介するクルマノエホンは「みつやくんのマークX(エックス)(渡辺茂男・作、エム・ナマエ・絵、あかね書房・あかね新作幼年童話4)である。40年以上も前に、当時の多くの子どもたちに大きな影響を与えたクルマ児童書の名作「みつやくんのマークX」については、2007年に一度紹介している。この時に紹介したのは同年、新栄堂書店から発行された復刻版の方である。まだこのブログを立ち上げて間もない頃で、渡辺茂男氏のご長男・鉄太氏や新栄堂書店の柳内社長、そしてみつやくんのモデルであるご次男・光哉氏から直々にご丁寧なコメントをいただいた思い出深い本である。今回の重要なポイントは、本書が初版元の“あかね書房”版だということ。

先日、ヤフオクで別な書籍を検索していた時に、「みつやくんのマークX」が引っかかった。自分の持っている復刻版の方だろうと説明文を読むと、驚くことにあかね書房版だった。’07年に紹介した際、柳内社長から伺った話では、復刻に際して鉄太氏、エムナマエ氏と当時の内容を一文一文長時間かけて慎重に検証した結果、一文だけ原文から変更されたということだった。私はこの一文がどの部分なのかとても興味があって、あかね書房版も手に入れたいと思っていた。当初は比較的容易に入手可能だろうとタカをくくっていたのだが、これが全く見つからない。Amazonの中古本で発見しても2万円近くのプレミア価格。復刻版の中古本でさえも今や5千円近くに跳ね上がっていることには驚いた。それだけ伝説的な児童書だということだ。完全に購入を諦めて、すっかり忘れていた頃にヤフオク出品を偶然見つけたという訳である。しかもスタート価格は900円でまだ誰も入札していない。どうせ最終日には2万円近くにまで跳ね上がるのだろうとあまり期待はしていなかった。

とはいえ入札状況は気になって毎日ウォッチしていると、終了数日前に1件の入札があった。ああ、やっぱり狙われているんだねと諦めかけた最終日、残り1時間を過ぎても入札件数は1件のまま。競争率の意外な低さに「ひょっとしたら」という気持ちが芽生えてきた。結局、その後は自分も含めて数名の“レース”になったのだが、私の購買欲が(まさ)ったのか、念願叶って落札者となった。児童書としては決して安い買い物ではなかったけれど、復刻版の現状価格よりは断然安い。入手困難な人気本にしてはかなりリーズナブルな落札価格だったと思う。

新旧みつやくんのマークX
左がオリジナル版、右が復刻版。オリジナルの方がちょっとだけ大きい。
新旧みつやくんのマークX その2
旧版の背表紙にはなぜだかエムナマエさんのプリントがない
新旧みつやくんのマークX その3
バーコードが40年の時の流れを感じさせる
新旧みつやくんのマークX その4
カバーのそで部分までも完璧に復刻

後日届いた落札品を確認すると、さすがに‘73年初版本ではなかったがカバー付で’76年発行の第8刷だった。カバー背表紙の色落ちはあるものの、状態は極めてよい。サイズはオリジナル版の方が一回り大きい。本を開いてみて最初に感じたことは、旧版の方が紙がやや分厚く、紙質も異なる点。そこは40年の技術の進歩なのであろう。でも昔の児童書ってこんな感触だったなと懐かしくなった。決して本好きの少年ではなかったが、子供時代の記憶が肌に染みついているんだね。柳内社長がおっしゃっていた通り、カバーのそで部分までも完璧に復刻する念の入れようだ。で、気になっていた唯一の変更箇所はどこだったのか。

それはマークXのパワーソースの紹介部分だ。この未来のクルマのエンジンは、空を飛ぶもののジェットエンジンではなくロータリーエンジンを採用している。ロータリーエンジンは、構造がシンプルで小型・軽量・高い静粛性かつ高出力を特長とする夢のエンジンと言われた。マツダが世界初の量産ロータリーエンジンを搭載したコスモを発表したのが’67年。'70年に北米の厳しい大気浄化法「マスキー法」が連邦議会で可決され、HC(炭化水素)の排出に不利なロータリーエンジンは苦境に陥る。しかし、本書の初版’73年に、新しく開発したエンジンがマスキー法試験に合格する[1]。このような背景の中でオリジナルは発行された。そこで旧版では次のような表現になっている。

ロータリーエンジンは、いま せかいがちゅうもくしている あたらしい エンジンだ。

その後、’74年に今度は第一次オイルショックが襲い、当時燃費効率のよくなかったロータリーエンジンにとって大打撃だった。この困難にも負けずに燃費大幅改善を目的とした「フェニックスプロジェクト」が動き出す。そして燃費50%改善という目標値以上の成果を上げて、’78年にはロータリーエンジンの本格スポーツカー、RX-7を発表する。プロトタイプでは’91年にル・マン24時間耐久レースで日本車初の総合優勝を果たし、その技術力を見せつけた。しかし、ご存じのように21世紀に入って自動車パワーソースの流れはハイブリットに移り、電気自動車、燃料電池自動車など新世紀ならではの新しい技術も次々と誕生した。その間、マツダの経営事情も厳しくなり、いつのまにかロータリーエンジンの存在は風前の灯となった。‘02年には一旦ロータリーエンジンの生産が中止となる。しかしマツダのロータリーに賭ける拘りは相当なもので、さらに小型・軽量・高性能の新世代ロータリーエンジン“RENESIS”が開発され、’03年にはこのエンジンが搭載された本格スポーツカー、RX-8が登場することとなった[1]。このような文脈の中で、量産ロータリーエンジンの誕生から約半世紀を過ぎて復刻された新版では、上記の部分が以下のように修正された。

ロータリーエンジンは、こがたでも 力のつよい エンジンだ。

これが挿絵も含めたった一ヵ所の変更点。オリジナルを尊重しつつ、現状に照らし合わせてギリギリ違和感のない表現だったのだろう。今回久々に再読したが、やはり本書の読者を惹きつける力は40年以上たった今でも全く色褪せない。名作というのは時を超えて普遍的なものだということがよくわかる。復刻されてもほぼ変更がなかったことからもそれは証明されている。そういう意味で、画質のアップデート以外にちょこちょこと映像が差し替えられたスターウォーズは、名作ではないのかもしれんね。

オリジナル版で変更された箇所
オリジナル版で変更された箇所(あかね書房版「みつやくんのマークX」より)

最近元気のよいマツダだが、2014年には首脳陣が今後ロータリーエンジン搭載車は考えていないと言及している。しかしここに来て、マツダ・ロータリー50周年を迎える2017年に新型RX-7が公開されることが発表された[2]。当然パワーソースは新型ロータリーエンジンになるはず。昨年トヨタとマツダの驚きの業務提携が発表されたけど、トヨタ・マークXにマツダ・ロータリー積んだら、まんま“みつやくんのマークX”ではないか。スカイラインにベンツのエンジンが搭載される時代だからね。あり得ない話でもない。また昨年、トヨタの子会社が「空飛ぶクルマ」の特許を米国で出願したことが話題になった[3]。この本に多大な影響を受けた読者が両社の経営中枢にいることも考えられるので、「空飛ぶマークX」を”やっちゃえ”(あっ、これは別のメーカーでした)てなことにはならないだろうか。本当に実現すれば出版業界も巻き込んでのサプライズになる。マツダ広報幹部の大学の先輩に冗談半分、話してみるかね。

トヨタ「マークX」×FD RX-7×「空飛ぶクルマ」特許みつやくんのマークX
トヨタ・マークX[4]×マツダ・RX7[1]×トヨタ「空飛ぶクルマ」特許[3]=みつやくんのマークX?

新栄堂書店の柳内社長、またまたロータリーが活気づいてきそうですし、空飛ぶクルマも夢物語でなくなってきているのかもしれません。是非、復刻版の増刷をお願いします。手ごろな値段で、平成の少年少女の多くにこの心躍る物語を読ませてあげたいのです。

[参考・引用]
[1]ロータリーエンジン開発物語、マツダホームページ、
http://www.mazda.com/ja/innovation/stories/rotary/newfrontier/
[2]新型RX-7が2017年に復活!ロータリーエンジンも!、CarMe、2015年12月25日、
http://car-me.jp/articles/2044
[3]トヨタが「空飛ぶクルマ」の特許を出願!、山内博、clicccar.com、2015年9月23日、
http://clicccar.com/2015/09/23/327593/
[4]トヨタ「マークX」より精悍でアグレッシブなスタイルに生まれ変わった!、Gulliver、2006年10月11日、
http://221616.com/car-topics/a_0000051122.html
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Posted on 2016/01/24 Sun. 20:57 [edit]

category: picture books about automobile/クルマノエホン

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2016/01/28 06:45 | edit

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