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“我が街に大河ドラマを”の顛末  

三浦按針と徳川家康をNHK大河ドラマに

今週は郷里に帰省していた。夏に母の七回忌法要があったのだが、台風で数日延期となり、どうしても仕事の関係で出席できなくなって法事は父に任してしまった。その後もやっかいな業務が続いて今まで不義理をしていた。最近、独居老人の父の体調がすぐれないこともあり、墓参りと実家福岡の様子見に仕事の間隙を縫って、やっとまとまった休暇を取った。当家の墓は山口県防府市にある。

朝の宇部空港
朝の宇部空港:初めてJet Flyerを利用した

早朝羽田から宇部空港へ飛び、バスとJRを経由して防府へ。墓地の場所がわからないので、一人で墓を守っている叔母に防府駅へクルマで迎えに来てもらった。叔母は82歳。未だ現役のドライバーで、ホンダ・フィットをバリバリ運転している。狭路で離合(すれ違い)にもたつく若い女性ドライバーに不満を漏らすくらい、その辺の一般ドライバーよりも運転は上手いかもしれない。とにかく元気な後期高齢者。これが高齢社会のある一面の姿だ。視力と判断能力の低下からその4つ上の兄である父は数年前に運転免許証を返上したが、歩行が少し困難になったにも関わらず長年慣れ親しんだ便利な移動手段の一つを奪われた。クルマの維持費もバカにならないしね。これもまた高齢社会の一端を象徴する。

防府天満宮その1 防府天満宮その2
人もまばらな師走の防府天満宮

共同墓地でお参りを済ませ、昼まではまだ時間があったので、叔母に防府天満宮へ案内してもらう。防府天満宮は福岡の大宰府天満宮、京都の北野天満宮と並び日本三大天神と言われる[1]。その中でも防府天満宮は最も歴史が古い。菅原道真公が九州に左遷される途中に寄ったこの地が気に入り、自分が死んだら魂となって帰ってくると約束したことが創建の由来らしい[2]。正月に帰省をした際、娘の合格祈願に大宰府詣でをし、その後合格のお礼参りをしていなかったことも母の法要欠席とともに気になっていた。今回実家の福岡では大宰府に寄る時間はなさそうだったので、ここ防府で官公様にお礼をしておこうと思ったのだ。天満宮へは何十年ぶりだろう。まだ祖母の旧宅が市の中心地にあった子供の頃、家から歩いて行った記憶がある。大晦日前の平日ということもあり、宮内は人もまばら。何組かの団体の姿が見られるくらいだった。

春風楼から眺める防府市街
宮内にある春風楼から防府市街を眺める

そういえばこの防府市は、今年の大河ドラマの舞台ではなかったのか。なのにこの閑散とした雰囲気は…。2015年の大河ドラマは『花燃ゆ』。井上真央さん演じる主人公・杉 文(後の楫取かとり美和子)は、吉田松陰の妹であり、久坂玄瑞の妻。久坂が禁門の変で自決した後、病死した姉・寿の夫で長州藩の重役を務めていた楫取素彦と再婚をし、世界遺産にもなった富岡製糸場を中心とした群馬の製糸産業育成に努め、晩年の約30年以上を防府で過ごした。楫取夫妻の墓も市内の大楽寺にある[3]。だから物語の最終話に向けて防府でのロケも予定され、市は1億2000万円をかけて期間限定の『ほうふ花燃ゆ大河ドラマ館「文の防府日和。」』を設置したのだそうだ[4]。

楫取美和子
出典:http://www.kanko-hofu.gr.jp/katorimotohiko/

私は全く大河ドラマを見ないので、最近まで主人公の終の棲家が防府だったことを知らなかった。叔母も似たようなものだったらしい。大楽寺には祖母方の墓があり、叔母がそこへ墓参りをした際、すぐ近くの墓前で写真撮影が行なわれていたのを見て、初めてここが大河ゆかりの地だったことを知ったのだそうだ。ちなみに大楽寺には夏目雅子さんのお墓もある。ご主人だった作家・伊集院静さんが防府出身だからだ。市民の知名度もそれくらいの地味な杉 文なので『花燃ゆ』の視聴率は最初から低迷した。伊勢谷友介(松陰)、東出昌大(玄瑞)、大沢たかお(素彦)らイケメン俳優を投入しても効果は上がらず。そりゃ、謀略の罪で兄が刑死し、夫が内戦で自害するという重苦しい空気の中で耐え忍ぶヒロインの姿を見続けるのは正直辛い。最近「長州藩はテロリスト集団だった」とする書籍が売れているようだが、長州の血を引く私ですら、あながち突飛な説でもないなと思っている。尊王攘夷はある種のカルト思想だし、テロリズムが世界中で蔓延した1年だったから余計にそう思うのかもしれない。そういう幕末に対するマイナスイメージも視聴率に影響したのだろうか。まだこの本は読んでいないが、いずれ記事にしたいと思う。

4代目マツダ・デミオDJ系
”防府”モデル?4代目マツダ・デミオDJ系[5]

NHKは視聴率を上げるために色々策を講じたようだが効果は上がらず。後半、群馬編になって少し視聴率が持ち直したため、結局防府のシーンはお流れになったという。年間来場者数30万人を見越していた大河ドラマ館は、結局5万人を超えた程度(11月末時点)[4]。多額の投資をした防府市は詐欺にでもあった気分だろう。最終話の放映された13日には井上真央さんが防府市を訪れたそうだが、1人で責任を負わされた格好の彼女がかわいそう。NHKの対応も酷いとは思うが、大河ドラマを町興しの起爆剤にと皮算用する市も“経営”の見通しが甘いと言わざるを得ない。市はドラマの企画に参画していないのだから全くの他力本願である。自助努力はどれほどなされたのだろう。Wikipediaで防府市をググると「有数の観光・歴史資源を抱えているにもかかわらず、観光にはうまく生かされていない。」とあり[6]、全くそう思う。天満宮、幕末の志士然り、以前このブログでも紹介した俳人・種田山頭火の故郷でもある防府。また京都料理のイメージが強い鱧だが、山口県は全国有数の鱧産地であり、防府は鱧漁の拠点でもある[7]。当家の法事では必ず鱧料理の会席となるがホントに旨いのだ。しかし辻 文も含めこれらのPR資源が全く世間に認知されていないというのがこの地に対する私の印象だ。一方、自動車工業とも縁のある町で、ブリヂストンや絶好調のマツダの工場があり、アクセラやアテンザ、デミオを生産している[8]。デミオを“防府”モデルとして世界にブランドアピールできないものか。シャープ・亀山モデルの失敗もあるけれど…。

さてここからが本題である。長州には積年の恨みのある会津藩。その会津市とは姉妹都市関係にあるここ横須賀もまた市のブランド構築に悩む地方都市である。先日、行きつけの古書店の店主と三浦按針の話になったとき、たまたまいた常連さんにあるポスターをいただいた。冒頭の「三浦按針と徳川家康をNHK大河ドラマに」のポスターで、この絵を描かれた「按針のまち逸見を愛する会」の会員・血脇正裕氏だった[9]。今年の4月に、青い目のサムライこと、三浦按針にゆかりのある横須賀市、大分県臼杵市、静岡県伊東市、長崎県平戸市の4市長らがNHKに按針と彼を重用した家康に焦点を当てた大河ドラマの制作を訴える要望書を出した[10]。米国人女優・シャーロット・ケイト・フォックスさんが外国人俳優として初めて朝ドラの主役を演じた『マッサン』の成功もあり、そろそろ大河ドラマも外国人主役があっても良いタイミングなのかもしれない。しかしこれも防府と同様、獲らぬ狸の感がある。確かに按針さんは大河に相応しく波乱万丈な生涯を送っているが、とにかく彼に関する史料が少ない。ゆえにドラマのベースとなり得る彼の小説も少ない。大河を成功させるには『花燃ゆ』で失敗した脚本を、情報の少ない中、どのように上手に仕上げるかが鍵となる。海洋歴史小説として評価の高い白石一郎氏の『航海者―三浦按針の生涯』(文春文庫)を軸に構成するのかなあ。前半は海外ロケ敢行の船上ドラマになったりして。『街道をゆく・三浦半島記』の司馬遼太郎先生に“按針伝”を書き遺してもらいたかった。

SHOGUN
”SHOGUN”より
出典:http://revistacultural.ecosdeasia.com/wp-content/uploads/2014/08/Shogun-5.jpg

その昔、按針をモデルにしたと言われる『将軍SHOGUN』というちょっと胡散臭いアメリカのテレビドラマが放送されたことがある(古い人はご存知ですよね)。リチャード・チェンバレンと三船敏郎という豪華なキャストだったけど、完全なフィクションだったので、地元住民としては史実に基づいた三浦按針ドラマを見てみたい気はする。しかし大河ドラマの手法はもう古い。『花燃ゆ』に限らず最近の大河ドラマの視聴率が伸び悩んでいるのも、腰を据えて50話テレビドラマを見続ける視聴スタイルが現代人の生活スタイルに全く合致していないからだろう。朝ドラが好調を維持しているのは、主人公のモデル選択と脚本の良さもあると思うが、朝の15分が身支度しながら何となく見るのにちょうど良い尺なのだ。我が家は朝ドラすらも観ていないけれど。そういう意味で長丁場の大河ドラマに固執するテレビ制作者と、そのドラマ人気に安易に乗っかろうとする地方行政の発想がもう時代遅れなのだ。町興しは地道に自らの智恵と、自らの手で盛り上げるのが王道だ。会社と同じでコンサルの言いなり、アウトソーシングだけでは成功しない。

我が住処が大河ドラマの舞台になることはないと思うが、『坂の上の雲』のようなショートシリーズのドラマ化にはちょっとだけ期待はしているのだけどね。

[参考・引用]
[1]天満宮、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%BA%80%E5%AE%AE
[2]防府天満宮、歴史が息づく千年のまち、防府市観光協会、
http://www.kanko-hofu.gr.jp/index/page/id/10
[3]花燃ゆ、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E7%87%83%E3%82%86
[4]視聴率ワースト危機『花燃ゆ』 井上真央が後始末させられる、NEWSポストセブン、2015年12月13日、
http://www.news-postseven.com/archives/20151213_370301.html
[5]マツダ、新型「マツダ デミオ」の生産を防府工場で開始、ニュースリリース、マツダ・ホームページ、2014年7月17日、
http://www2.mazda.com/ja/publicity/release/2014/201407/140717a.html
[6]防府市、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%B2%E5%BA%9C%E5%B8%82
[7]産地ならではの新鮮な味わい!防府市の名物料理「天神鱧」、特集「山口県の名物料理」、魅力発県やまぐち、
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/gyosei/koho/portal/tokushu/gourmet/hamo.html
[8]日本での生産活動、マツダホーム―ページ、
http://www.mazda.com/ja/about/profile/activity/japan/
[9]三浦按針と徳川家康をNHK大河ドラマに!、横須賀市(神奈川県)、三浦按針(ウイリアム・アダムス) William Adams日本に来た最初のイギリス人(海の男・青い目のサムライ)、
http://homepage2.nifty.com/anjintei/willadams1.html
[10]按針、家康で大河を 横須賀市長らがNHKに要望書、カナコロ、2015年4月9日、
http://www.kanaloco.jp/article/85763





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Posted on 2015/12/19 Sat. 11:45 [edit]

category: Yokosuka/横須賀

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コメント

花燃ゆ

☆ 今回の記事、なかなか単純な話ではありませんね。
   「花燃ゆ」を題材に大河ドラマの脚本問題、それに乗っかる地方行政のいい加減さ。
   更に、横須賀でも同じ事を狙う人々がおり、そんな事で良いのか、、
   という問いかけなんでしょうね。

   SDTMは妻と共に「花燃ゆ」を全話観ました。また、次女も垣間見していました。
   家族内では意見が異なり、次女は「あまり好きでないストーリだ」と言って憚りません。
   SDTMは「世間で言うほど、面白くないとは思えない。女性から見た維新の姿を
   それなりに見せて、維新で死んでいった仲間たちに向けた女性の気持ちを描いた
   と思う」と意見しました。妻は「大河はやっぱストーリの展開力が命、それが女性中心
   となると、その辺が弱くなる」、、こんな感じ。色々の見方があると思います。
   NHKも世間が色々言っても1年間やり通すのですから体力ありますね。
   民間TVじゃ、すぐ降板かもしれません。
   結論はないのですが、SDTM家での話をすこしお伝えした次第です。
   

URL | SDTM #/ZyVyp1I
2015/12/19 22:42 | edit

Re: 花燃ゆ

SDTMさん
いつも貴重なコメントありがとうございます。
いやー、こんな近くに大河ドラマを囲んでの旧き良き家族団欒のご一家がおられたとは。
私の分析もかなり一方的なものだったと少し反省しています(汗)
一つのドラマを通じて家族でそれぞれ意見し合うなんてステキですね。
大河ドラマ自体が悪いとは思っていません。歴史に興味を持つ良いきっかけになりますし。自分もそうでした。
ただ個人的には50話を見続ける体力は無くなりました。10話くらいが限度かな。
私も中学生頃までは家族で通しで見ていた記憶があります。
「勝海舟」や大村益次郎の「花神」をよく覚えています。益次郎は長州でしたし。
戦国武将よりも幕末物が好きでした。幕末物はいつも視聴率が悪かったようですが。
もちろん原作も読んでおりました。
当時の大河はテーマ曲が素晴らしく、「勝海舟」のOPは今でも最後までハミングできます。
冨田勲さんですね。マイティ・ジャックみたいでカッコよかったです。
最近の大河もきっと素晴らしいテーマ曲が多いはずです。作曲者もスゴイ人たちなので。
ジャケ買いじゃないですがOP曲を聴いて大河見始める人もいるんじゃないかな。
私が視聴していた頃は今のように大河で町興しなんて騒いでいなかったように思えます。
大河ドラマの周辺をかき回しているのはきっと、
NHKとビジネスに疎い地方行政や地域住民の間に入って儲けを企んでいる輩なんでしょうね。
世の中、カネの匂いを嗅ぎつけて集る胡散臭い連中が多いですから。
ウチの近所の按針さんで横須賀を盛り上げようとしている方々は純粋に地元愛の強い人たちで、
かなり昔から地道に様々な活動・勉強をされていますから、横しまな考えは少ないと思います。
だからこそ、あくどい人たちの餌食にはなって欲しくないのです。   

URL | papayoyo #-
2015/12/20 00:50 | edit

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