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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

ヒコーキノエホン  

飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯

ずっと気になりつつ敢えて手を出さなかったヒコーキの絵本。ただでさえクルマの絵本の収拾がつかなくなっているのにヒコーキまでは…。もちろん今までにも手に入れた飛行機系の絵本・児童書は何冊かある。『クルマが先か?ヒコーキが先か?』(岡部いさく・著、二玄社)でも述べられているように、歴史を紐解けばヒコーキのメーカーがクルマを作り、クルマのメーカーがヒコーキを作ってきた。自動車メーカーのニッサン、スバル、三菱の源流を辿れば戦闘機の名機を産み出した航空機メーカーだし、ホンダは宗一郎翁の夢であった航空機を自主開発し、ジェット機にもビジネスを広げて総合“NORIMONO”メーカーに進化しようとしている。バック・トゥー・ザ・フューチャーじゃないが、最近は空飛ぶクルマまで登場してきているしね[1]。つまりクルマとヒコーキとは切っても切れない縁なのである。だからクルマの絵本を語る上でヒコーキの絵本は無視できない存在だった。私自身、大学では衝撃波の実験や数値シミュレーションをやっていたので、ロケットや航空機の開発に憧れたこともあったし、今でもヒコーキは大好きだ。そんな私の心を揺さぶる素敵なヒコーキ絵本を最近書店で見かける機会が多くなった。

リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険 ぼくがとぶ

それが『リンドバーグ: 空飛ぶネズミの大冒険(原題“Lindbergh: The Tale of a Flying Mouse”)』(トーベン・クールマン・作、金原瑞人・訳、ブロンズ新社)や『ぼくがとぶ』(佐々木マキ・作、絵本館)だったり、『星の王子さま』(ジョアン・スファール作、池澤夏樹訳、サンクチュアリ出版)や『飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯(原題“The Pilot and the Little Prince”)』(ピーター・シス・作、原田勝・訳、徳間書店)である。



後者2冊は今ちょっとしたブームのサン=テグジュペリもの。アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリ(Antoine Marie Jean-Baptiste Roger, comte de Saint-Exupéry)。言わずと知れた『星の王子さま』の原作者。読書嫌いだった私ですら、子どもの頃に読んだベストセラー本。あの有名なヘビとゾウの絵しか記憶にないのだけど(そ、そんだけ?!)…。ちょうどこの不朽の名作をアニメーション化した映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』が公開中である。無駄なものを完璧なまでに削ぎ落とし、100人の読み手がいれば100人の読み方がある稀有な本。ウォルト・ディズニーやオーソン・ウェルズも映画化を試みようとして成し得なかったこの原作をモチーフに、どのような映画に仕上がっているかは非常に興味がある。

星の王子さま・ジョアン・スファール版
池澤夏樹翻訳版
星の王子さま・ジョアン・スファール版(オリジナル) 星の王子さま・ジョアン・スファール版より
装幀デザインはオリジナル版の方が好きなジョアン・スファール版『星の王子さま』

『星の王子さま』(ジョアン・スファール)は新しい解釈でバンド・デシネ(ベデ)、つまりフランス版コミックに書き下ろしたもの。原作では無表情だった王子様が、表情豊かに大変身している。『飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯』(ピーター・シス)は、これほど飛行機と共に人生を歩み、飛行機をこよなく愛した人はいないかもしれないと思わせるアントワーヌの生涯を、これまた私の大好きなピーター・シスの美しい挿絵を通して描いた力作である。

夜間飛行 人間の土地

どちらの絵本も購入してしまい、さらにはサン=テグジュペリの代表作『夜間飛行』と『人間の土地』の新潮文庫版も買ってしまった。『星の王子さま』は『人間の土地』の童話版とも言われる。文庫版の表紙の挿絵はどこかで見たことがある絵のタッチだ。そう、宮崎駿の筆によるもの。彼のジブリ作品には空飛ぶ乗り物や飛行シーンが欠かせないが、彼もまたサン=テグジュペリをこよなく愛する一人なのだ。

サン=テグジュペリ 
アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリ[2]

サン=テグジュペリは作家であると同時に航空機の操縦士でもあり、フランス軍パイロットとして第二次世界大戦にも召集されている。操縦士が作家になったと言った方が正しいかもしれない。大戦前には既に作家としての名声を得ていたので、敵であるドイツ空軍にも信奉者は多く、サン=テグジュペリが所属する部隊とは戦いたくないと語った兵士もいたという[3]。そして、1944年7月31日、午前8時45分、アントワーヌはコルシカ島のボルゴを飛び立ち、敵軍の配置を撮影するため、リヨン東方を目指した。帰投予定は午後12時30分だったが、彼の機が二度と帰って来ることはなかった[4]。永らく行方不明扱いだったサン=テグジュペリだが、1998年地中海マルセイユ沖で、彼と彼の妻の名が刻まれたブレスレットがトロール船によって発見される。これを受けて広範囲の海底調査が行われ、2000年に彼の搭乗機ロッキード社F-5Bの残骸が確認された。2008年にはこの偵察機を撃墜したという元ドイツ軍パイロットの証言も得られた。彼もまたサン=テグジュペリ作品の愛読者であり、もし操縦士が彼であったと知っていたら撃たなかっただろうと話していたそうだ[3]。

サン=テグジュペリ2
サン=テグジュペリそっくりさん
この二人そっくりなんだけど。やっぱりクルマとヒコーキは不可欠な関係?
(上:1942年撮影のサン=テクジュペリ[3]、下:2014年、日本外国特派員協会で会見する日産自動車のカルロス・ゴーンCEO[5])

ペンは剣よりも強し。宗教の対立を背景に(個人的にはそう単純な構図ではないと思っているが)世界中で無差別殺戮が止まない昨今。そんな無意味な殺し合いを思いとどまらせるのは宗教の経典でも憲法の条文でも政治家のメッセージでもなく、生身の“フツー”の人間が創造した一冊の本や、一本の映画、一枚の絵画だったりするのではないかとサン=テグジュペリのエピソードを知って考えさせられた。クルマもそうだがヒコーキってやつは、他人の人生を奪うためのマシンではなく、ただただ時を忘れるほど操縦したりいじったり眺めたりして、大袈裟に言えば乗り手の人生に実りをもたらすためのエモーショナルな道具であって欲しいと思う。

飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯 その1
「飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯」より

ヒコーキの絵本から少し横道に逸れてしまったが、今年の冬休みはサン=テグジュペリ祭りになりそうである。本ブログのカテゴリーにはヒコーキノエホンを追加することにした。そのうち独立したサイトを立ち上げる、かも。それにしても増え続ける絵本や資料をストックする倉庫兼作業場が欲しい!横須賀では同じく増え続ける空き家・空き地の再利用を模索しているが、誰がタダで貸してくれないかなあ…。年末ジャンボに賭けるか。

[参考・引用]
[1]世界初の空飛ぶクルマがいよいよ2017年に発売、ギズモードジャパン、2015年3月28日、
http://www.gizmodo.jp/2015/03/2017_5.html
[2]「サン=テグジュペリ 伝説の愛」、
http://www.aritearu.com/Life/Chess/Spirit/Saint_Exupery.html
[3]アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%8C%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%86%E3%82%B0%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%9A%E3%83%AA
[4]飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯、ピーター・シス・作、原田勝・訳、徳間書店、2015
[5]日本外国特派員協会で会見する日産自動車のカルロス・ゴーンCEO、YouTube、2014年7月17日、
https://www.youtube.com/watch?v=Fegf2nTcccQ










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Posted on 2015/12/05 Sat. 21:12 [edit]

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