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My Tesla: A Love story of a mouse and her car  

My Tesla: A Love story of a mouse and her car

このブログのメインカテゴリー「クルマの絵本」の200記事目。相変わらずのゆるーい更新ペースである。100記事目は渡辺・山本の黄金コンビによるロングセラー「とらっく とらっく とらっく」を紹介したが、記念すべきマイルストンに何を取り上げるか。いろいろ考えた挙句、“My Tesla: A Love story of a mouse and her car(私のテスラ~ネズミとクルマの恋の物語~)”(Joan C.Gratz・作、Gratzfilm&Print)という外国絵本を紹介することにした。

自動車の発明から120年以上経った現在、内燃機関で発達してきた自動車もハイブリッド、電気自動車、燃料電池車と確実に電動化への道を進み始めているし、自動運転という技術の軸でGoogleやAppleなど全く新しいコンペティターが自動車産業の新たな牽引者となっている。このテスラというブランドもEV、IoT、AIなど知能化・電動化技術を武器に古参のメーカーに挑戦状を叩きつけている新規参入組の一つだ。“Alles über Autos”でも紹介したようにVWがあのような事件を起こし、ついにと言うか業界の新しいプレイヤーが主人公のクルマ絵本が登場した2015年は、カール・ベンツの1896年と同じくらい、自分の中では大きなパラダイムシフトの節目として記憶される、そんな感想を持った。Googleの無人Podカーが絵本になるのも時間の問題だろう。

My Tesla その1
テスラはユニコーン?(”My Tesla”より)

物語の主人公はお買いもの好きのネズミのマキシン(Maxine)。彼女はショッピングモールで特売札の付いた“ユニコーン(一角獣)”を見つけるが残念なことにセールは終わってしまっていた。と、そこに同じくセールに出されていた赤い一台のクルマに一目惚れする。それがテスラのモデルSだった。テスラの絵本と思って本書を開くと、冒頭にいきなりユニコーンが登場する。最初はこの導入部の意図がわからないのだが、あとでその文脈が理解できる。

1ヶ月くらい前のことになるが、通勤途中に自分の前を走る白いクルマが気になった。「見たことのないクルマだなあ…」そう思って信号待ちのときに接近してみると、T字の形をした謎のブランドバッジ。視線を下に移すと“MODEL S”の文字が。「テスラかあ!」街中を走るテスラを見たのはこの時が初めてだった。その後も通勤時に何度か遭遇し、ちょうどこの頃、ネットサーフィンをしていて見つけたのが本書である。Amazon.co.jpではKindle版しか出ていない。私はタブレット端末も持っていないし、絵本は紙で所有したい古いタイプの人間なので、本家Amazon.comを検索。するとペーパーバック版が出ていた。ちょっと高くなるがユーザー登録をしてポチっと。そんなモデルSにまつわる偶然の出会いが続いたこともあって、“BTTF2(In Kumamoto)”ではデロリアンの代わりにこのモデルSをタイムスリップの鍵にした駄文オマージュを思いついた。

My Tesla その2 My Tesla その3 My Tesla その4
マジックカー?(”My Tesla”より)

マキシンはモデルSの美しさに釘付けとなった。試運転してみると、顔が変形するほどの加速感にびっくり。寝ても覚めてもこのクルマのことが頭から離れなくなった。マキシンはテスラに恋をしたのだ。テスラはユニコーンのように神秘的な生き物(magical creature)だとマキシンは思った。このテスラには今までのクルマにあるはずのエンジンはないし、誰も経験したことのないアグレッシブな走りを見せるし、独特なコックピットーニルヴァーナ(涅槃)に続く道をナビゲーションしてくれる巨大なタッチスクリーンーを持ち、高度な知能をも兼ね備えた”マジック”カーに映ったのかもしれない。それにお互い“horn”(角と警笛をかけている)もあるしね。さらに日本人の文化にあまり馴染みのないユニコーンについてWikipediaで調べてみると、「非常に獰猛で、力強く、勇敢であるが人間の力で殺すことが可能な生物で、処女の懐に抱かれておとなしくなるという。角には蛇などの毒で汚された水を清める力がある。」とある[1]。なるほど、EVの力強い加速感、ゼロエミッションの環境に優しいクルマの比喩としてこの架空の動物が使われた理由がわかった。主人公が女性のネズミということにも深い意味があった訳だ。

テスラ・モデルSは恐ろしく高価なクルマだ。アストン・マーチンやマセラティのようなミステリアスな高級車のイメージに加え、ピュアEVという希少性。テスラを所有することは、特にアメリカでは一種のステータス・シンボルになっている[2]。テスラのオーナーとなったマキシンは、このクルマの経済的・物質的価値に溺れて自分を見失ってしまう。テスラが産み出された本来の目的からかけ離れたところで、このクルマが話題になることに対する警告の意味も込めた絵本となっている。

最初、この絵本を手にしたときは単なるテスラ(イーロン・マスク)を持ちあげる宣伝媒体かなと思ったが、そんなに単純な物語ではなかった。電気自動車や自動運転車が脚光を浴び始めた現在、それらのクルマ、あるいはクルマそのものが存在する本質的意味は何かをみんなが考えるきっかけにして欲しい、それが本書のメッセージだ。

Joan C.Gratz
Joan C.Gratz[4]

この絵本のストーリーは、ほとんど事実であると作者Joanは語っている。ネズミのマキシンは彼女の分身なのだ。Joanもまた白いテスラ・モデルSを衝動買いしたオーナーで、このテスラから着想を得てこの絵本を描いたという[3]。Joan C.Gratzはアミメーションの短編映画やコマーシャルの監督、アーティストそしてアニメーターであり、クレイアニメーションの手法の一つであるクレイペインティングのパイオニアの一人である。その技法を使った代表作である”Mona Lisa Descending a Staircse”で1992年のアカデミー賞短編アニメーション部門でオスカーを受賞(本書にもさりげなく描かれている)。彼女の手掛けた最初の絵本は“Downward-Facing Frog: Yoga Practices and Etiquette in the Animal Kingdom”(Gratzfilm&Print)。オレゴン州ポートランド在住。ボートハウスに住んでいるという[4][5]。

My Tesla その5

最後に本書に対する苦言を一言だけ言わせてもらうと、何箇所か誤植があったことだ。たぶん作者のプライベートカンパニーからの出版なので手作り感はあるのだけれど。

↓”Mona Lisa Descending a Staircse”一秒の動画を作るのに二日もかかったらしい[6]


[参考・引用]
[1]ユニコーン、Wikipedia、
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B3
[2]テスラの購入者は“ステータスシンボル”として車を買う、燃料価格は気にしない、Auto World News、2014年12月12日、
http://jp.autoworldnews.com/articles/6829/20141212/teslamotors.htm
[3]テスラが絵本に! テスラ「モデルS」に一目惚れしたネズミの話、Danny King、autoblog、2015年9月24日、
http://jp.autoblog.com/2015/09/24/childrens-book-mouse-tesla-love-story/
[4]Joan C. Gratz、IMDb、
http://www.imdb.com/name/nm0336049/
[5]Joan C. Gratzホームページ、
http://www.gratzfilm.com/Gratzfilm/Joan_C._Gratz.html
[6]コマ撮りアニメーションの秘密(10)―階段を降りるモナリザ…Joan C. Gratz(1991年)、ゆっくりゆっくり、2010年3月10日、
http://ikajum.jugem.jp/?day=20100310
[7]Tesla & The Mouse — A Love Story Of A Mouse & Her Car、Cynthia Shahan、CleanTchnica、2015年9月30日、
http://cleantechnica.com/2015/09/30/tesla-mouse-love-story-mouse-car/

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Posted on 2015/11/22 Sun. 09:52 [edit]

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