いすゞ・エルフ by 4歳さかなクン
出典:日本テレビ「誰だって波瀾爆笑 さかなクン」2015年9月13日OA

先日テレビを付けていたら、お魚博士で有名な「さかなクン」の密着取材をやっていた。今やスーパー忙しい「さかなクン」を初めて知ったのは、昔テレ東でやっていた「TVチャンピオン魚通選手権」だったと思う。テレチャン(LEGO選手権とか大好きだった)らしい選手権だったが、面白い高校生がいるもんだと当時は観ていた(彼はこの選手権で5連覇を果たしている)。そのまんま大人になった「さかなクン」、なぜ当クルマノエホンの本日のテーマなのか。番組では謎多き彼の生い立ちも同時に紹介されていたのだが、4歳の頃に彼が描いたという絵にびっくり。それが冒頭のクルマの絵(いすゞ・エルフ)だったからである。

さらに調べてみると、彼が幼少の頃に大好きだったものはサカナではなく、ダンプトラックだったそうだ。その中でもあこがれの車の一つがゴミ収集車。毎朝、近づいてくるエンジンの音で目を覚ましては、見に行っていたそうな。ゴミ収集車がごみを“食べる”様は、子どもの心を掴んで離さない(「せいそうしゃくん」参照)。なるほど、さかなクンの前は「くるまクン」だった訳だ[1]。

ゴミ収集車 by 4歳さかなクン
驚異の観察力[1]
息子さんの作品2
このブログでもお馴染みの自動車画家・溝呂木陽氏のご子息が4歳の頃に描いたクルマの絵(「水彩展TOUR EIFFEL」参照。平面的な表現ではあるが、これでもかなりの才能である。)

それにしても4歳の子ども(というかまだ乳幼児に近い)とは思えない画力。まず幼稚園の年少さんに当たる児童が対象物を立体的に描いていることが驚きだ。これくらいの歳では単純な図形らしき物で対象物を象徴的に表現したり、いわゆる“頭足人”を描き始める程度[2][3]。ましてや平面的であっても、複雑な形のクルマを具象表現するのはかなり難しい。さらにクルマというのは基本4輪で動く乗り物なので、斜めから描くと観察しやすい手前の2輪よりも車体の陰に隠れてしまう奥の2輪を描写することが大人でも難しいものだ。手前と奥のタイヤは車軸で繋がっている訳だから、立体像を頭の中で思い浮かべ、両者の因果関係を理解した上で描かないと非常にバランスの悪い絵となってしまう。普通の4歳児ではまだ空間認知が曖昧のため、物理的に矛盾したタイヤを描いたとしても当然なのだが、この絵の空間配置は大人顔負けに完璧である。

しかも車体の横には「東京都清掃事業」の文字が。4歳児がこんな難しい漢字を知っているはずもなく、恐らく文字を図形として忠実に模写したのだと思う。恐るべき観察眼だ。

トラック by 4歳さかなクン
ずかん・じどうしゃ その1
巨匠・山本忠敬画伯の絵と比べてみる(上:出典[4]、下:「ずかん・じどうしゃ」より)

観察力は科学者としての必要条件だ。さかなクンのように人並以上に絵がうまい必要はないが、細かい特徴まで見逃さずに記録できる能力は非常に重要である。彼は中学生の時に先生が学校に持って来たカブトガニを飼育し、専門家でも難しいとされる人工孵化に成功している。「水槽が狭くてかわいそうだなあ」という理由で決まった時間に外に出してあげていたら、それを潮の満ち引きとカブトガニが誤認したのが成功の原因と言っているが[2]、「狭くてかわいそう」と思うところが彼独特の観察眼だったのだろう。

クニマス by さかなクン
さかなクンによるクニマスのイラスト[5]

また天皇陛下が「さかなクン」の名前をあげて快挙を労われたことで有名になった、絶滅種と思われていたクニマス再発見への貢献。クニマスのイラストを大学教授から依頼されたさかなクンは、参考資料として全国から近縁種のヒメマスを取り寄せ、その中にクニマスの特長を持つ個体を見つけたことが、この大発見のきっかけだったという[6]。これも彼の優れた観察力の賜物である。

入学を希望した東京水産大学の学生にはなれなかったが、今や水産大の流れを汲む東京海洋大学客員准教授にして同大の名誉博士。これらの夢のキャリア実現も彼の魚に対する旺盛な好奇心と初恋の相手と言うほど魚に愛情を傾けてきたことによる必然だと思う。以前に紹介した「あたまにつまった石ころが」の主人公に通じるものがある。

魚貝の図鑑 イトヨリ
魚好きのきっかけとなった「魚貝の図鑑」(左)と一番のお気に入りだったイトヨリ(「魚貝の図鑑」より)

実は私も魚は大好きで、クルマの絵本を集める前は本屋に行けば必ず魚類(鯨類を含む)に関する文献を物色していた。きっかけは「世界自動車図鑑 誕生から現在まで」でも言及したように、3歳くらいの時に父親から買ってもらった小学館の「学習図鑑シリーズ③魚貝の図鑑」だった。魚の自然美に惹かれ、ボロボロになるまで読んだ。中でもイトヨリが好きだった。さかなクンほど好奇心旺盛ではなかったが、訪れた土地の水族館は大体チェックしていたし、学生の頃は渓流釣りにも興じた。親戚から「猫も跨ぐ」と言われるほど魚の食べ方には自信があるし、魚との縁を何より感じたのは、嫁が沼津の魚屋の孫娘だったこと。今は故人となったが祖父の手による天日干しの干物は絶品で、これが食えただけでも神への感謝である。

世界大博物図鑑その1 世界大博物図鑑その2
社会人になってすぐの頃、思い切って買った大図鑑。あらゆる資料から引用した素晴らしい挿絵の数々がこの図鑑の醍醐味。
「魚の博物学」と「古生代の魚類」
こういう本を読んでいると魚博士になった気分になるんだよねえー
『魚の博物学』挿絵
『魚の博物学』(J.R.ノルマン著)の挿絵がまたいい
深海魚 暗黒街のモンスターたち
深海魚がちょっとしたブームだとか…
鮭サラー その生と死
魚文学の名著『鮭サラー その生と死』(H. ウィリアムスン著)
イルカに学ぶ流体力学
流体力学からの視点はやはり気になる
漁師町のうめぇモン!
やっぱり最後はうめぇモン!
我が魚蔵書の一部
我が魚蔵書の一部

そして現在の趣味であるクルマの絵本。クルマも魚類・鯨類も流体理論に基づく人工の、そして自然の造形物である。私は大学では流体の研究をやっていたので、自ずとクルマも魚も興味の対象であった。形もどこか似ているだろう。しかもその造形美はいずれも多種多彩であり、我々の目を楽しませてくれる(最近のクルマはちょっと没個性化しているが)。結局、全ては繋がっていた訳だ。さかなクンのお陰でまた魚にも興味が湧いてきた。海釣りも始めたいのだけど、お金と暇がねえ。当分は古い書物と旨い魚を食すだけにしておこう。

さかなクンの愛車
さかなクンの愛車、三菱キャンター。意外とワイルドだった!(日本テレビ「誰だって波瀾爆笑 さかなクン」より)

[参考・引用]
[1]「さかなクン」になるまで【前編】最初は「くるまクン」だった?、教育ニュース、ベネッセ・ホームページ、2013年7月5日、
http://benesse.jp/blog/20130705/p1.html
[2]子供の絵の発達段階、幼児は物を見て描いていない、芸術による教育の会、
http://www.geijyutuniyoru.com/kenkyunote/kenkyuunote-6.html
[3]2.子どもの絵の発達、子どもの絵を育てる、手の教室、
http://teno-kyoshitsu.com/text/kodomono_e/kodomono_e02.html
[4]さかなクンが4歳の時に書いた絵www、アルファルファモザイク、2015年6月12日、
http://alfalfalfa.com/articles/121199.html
[5]西湖のクニマス発見者の一人さかなクンによるイラスト、水産庁ホームページ、
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h22_h/trend/1/zoom_f012.html
[6]天皇陛下「クニマス発見、本当に奇跡の魚」〈会見全文〉、朝日新聞、2010年12月23日、
http://www.asahi.com/special/plus/TKY201012220499.html
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