しょうぼうじどうしゃじぷた

このブログを始めてちょうど1年になる。月3、4回の更新ペースでとても日記と呼べる代物ではないが、クルマ絵本の紹介も今日で34回目となった。その間、私のクルマ絵本コレクションも増える一方で、数えてみると約160冊まで膨張、とても紹介が追いつけない状況にある。そんな記念すべき日に紹介する本は、この本のほかあるまい。『しょうぼうじどうしゃじぷた』(渡辺茂男・作、山本忠敬・絵、福音館書店)である。初版は1963年で私とほぼ同い年のロングセラー。あまりにも有名すぎて、紹介するのもおこがましいが、紛れもなく日本の絵本史の中でも最もすぐれた作品の一つである。当然ながら車の絵本のジャンルの中でも突出した存在感を持つ。改めてクルマ絵本の素晴らしさを再認識する上でも、今回取り上げさせていただいた。

「しょうぼうじどうしゃじぷた」その1

ストーリーはいまさら語る必要もないが、常にスポットライトを浴びているはしご車の「のっぽくん」やポンプ車の「ぱんぷくん」、救急車の「いちもくさん」の陰で目立たず卑屈になっていた「じぷた」が、地味ではあるが最後に自分の存在価値を認められる姿に、適材適所という課題のつきまとう会社という組織に身を置く私としては考えさせられることが多い。(作者、渡辺茂男さんについては、『くるまはいくつ?』の項を参照してもらいたい。)

世の中には何でもできるスーパーマン、完全な人はいないのである。あんな人になりたいけどなれないと焦る必要もないし、あんな人にはなれないと自分を卑下する必要もない。完璧に見える人も、たまたまその人の適した場所にスポットライトが当たっただけ。スポットライトの陰には不得手な部分もあるし、不安もいっぱいあるのだ。あの日産のカルロス・ゴーン社長も然りである(文藝春秋でたたかれていましたね)。大事なのは自分の身の丈にあった、自分に適した場所を自分で探すということだ。適所が見つかれば、おのずとモチベーションも上がる。誰もが適材なのだ。適所は必ずある。

一方、身の丈を自分の力で伸ばすという努力も怠ってはいけない。つまり自分の能力を磨き続けること。メジャーリーガー「イチロー」ですら、自己研鑽し続けているのである。身の丈が伸びれば、自分に適した場所も広がる。自分の能力を伸ばしていかないと、適所の範囲は狭いままであり、当然、適所に巡り会う確率は低くなる。かくいう私は狭いままだなあ。

「しょうぼうじどうしゃじぷた」その2

さて絵本に話を戻そう。絵本画家、特に乗り物画家の重鎮、故・山本忠敬さんの絵がまたいい。彼の描く自動車は緻密であるのだが、微妙にデフォルメされている。そこが、ただの写実ではない読む者の目を引きつける所以だ。特に山本さんの作品における車の主人公の心理描写はすばらしい。映画『Cars』では、機械である自動車に人間のような表情を持たせるのが非常に苦労したというピクサーのスタッフたちの話を聞いたことがある。山本さんの描く主人公たちは、ライトニングマックイーンたちほどの自己主張はないが、いかにも日本的につつましく、微妙な心理変化がうまく表現されている。

山本忠敬
山本忠敬[1]

山本忠敬(ただよし)さん(私は失礼ながら親しみをこめて”ちゅうけい”さんと読む)は1916年東京に生まれる。1941年東京美術学校(現・東京藝術大学)工芸科図案部卒業。横浜シネマ漫画映画研究所員の傍ら、恩師監修の月間絵本に絵を描く。その後、軍に入隊するも病気のため除隊。終戦まで開成中学校の講師を勤める。戦後は、デザイン・挿絵・テレビコマーシャル・舞台装置・広告の仕事を始めるが、34歳のとき、同級生で児童文学者の瀬田貞二氏に誘われて『児童百科事典』(平凡社刊)の挿絵を描く。8年後、『ピー、うみへいく』(瀬田貞二作、福音館書店)でデビュー。絵本のほか、乗り物の図鑑シリーズなども手がけている。絵本に『しょうぼうじどうしゃじぷた』のほか、『とらっくとらっくとらっく』(渡辺茂男作) 『のろまなローラー』(小出正吾作)『はたらくじどうしゃ1~4』『ずかん・じどうしゃ』福音館)『とべ!ちいさいプロペラき』(小風さち作)、単行本『飛行機の歴史』(福音館)など絵本作家として数々の名作を生んできたのは周知のとおりである。2003年1月に86歳で亡くなるまで井の頭に住んだ[2][3]。

このような良質な本は、子供の反応も良い。愚息にとっても大好きな絵本の一つだ。自分で読めるようになっても、何度も読み返して欲しい本だ。父親の感じたことを共有して欲しいとは思わないが、この本を通じて子供なりに何らかのインスピレーションを感じてとってもらえばと思う。必ず感じるはずだし、大人になっても記憶に残る、そういう一冊だと思う。

今日のような台風で外に出られない日は、こんな本の読み聞かせで過ごすに限る。



[参考・引用]
[1]絵本作家のアトリエ、山本忠敬さん、母の友でゆっくり子育て、ココログ、
http://fukuinkan.cocolog-nifty.com/hahanotomo/cat7158910/index.html
[2]飛行機の歴史、山本忠敬、福音館書店、1999
[3]三鷹と絵本、三鷹市公式ホームページ、
http://www.city.mitaka.tokyo.jp/a014/p017/t01700050.html
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    福音館書店福音館書店(ふくいんかんしょてん)は、東京都文京区に本社を置く児童書を中心とした出版社である。略称「福音館」。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Quotation:Wikipedia- Article- History License:GFDL



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