出動119番

今年もとうとう大晦日。寒さも一段と増してきたので火の元には十分注意を要する時期である。会社も休みに入って、毎晩2駅先、米海軍基地の近くまでウォーキングで往復するのを日課にしているのだが、消防車の巡回や町内会の皆さんなど火の用心の見回りをされている場面に遭遇する。このような活動は防犯にも役立つだろうし、こういう方々のご苦労があって日本の町の安全が守られているのだなあと再認識される。最近は放火事件も多いということで、さらにパトロールが強化されているようだ。私も結構怪しい恰好で歩いているが、今のところ職質を受けたことはない。という流れで本日のクルマ絵本は「出動119番」(平山暉彦・作、講談社)を紹介し、今年のブログアップ納めとしたい。平山さんといえば、既出MGミジェットのタイプMをモデルにした「ブルブルさんのあかいじどうしゃ」とか、「栄光に彩られたスポーツカーたち」などスポーツカーの画家というイメージが強い。しかし今回は子供たちも大好きな消防車を描いた。

この絵本のスタイルは少しユニークである。一般的に「出動119番」というテーマであれば、消防署に火事の連絡が入り、消防車が出動し、現場に到着して、消火活動を行うといった時間軸で見た場面変化が表現されることが多い。ところがこの絵本は現場に到着した多くの消防車が消火活動を行っている緊迫したある瞬間を切り出している。しかし単に一瞬の舞台を描写するだけではなく、消防車が到着した順番に後方から視線を移動させることで、消防車の出動から現場到着までの時間的経緯、すなわちストーリーまでも一緒に表現するという高度な演出だ(図1)。読者である子どもたちはこの先はどうなっているのか、次にどんな消防車が到着するのかページをめくるごとに期待が膨らむことだろう。そしてちょっとだけの時間変化(はしご車が梯子を伸ばす時間)と、全景に視線移動する空間変化を加えることで、さらに視覚的なインパクトを与えている(図2)。レスキューヘリまで登場するのだから読者は興奮だ。

出動119番 その1 出動119番 その2
図1.画面の右側にちょっとだけ前方車両や消防隊員を書き込むことで、ページをめくっても同一空間上での出来事であることを読者に認識させる。しかし消防車の当着順に左から右へストーリー展開させることによって時間の経過も表現する(「出動119番」より)。
出動119番 その3
図2.2次元から3次元的描写へ切り替えることで火災現場の緊迫感を引き出す(「出動119番」より)

仕事を終え、消防車たちが現場から引き上げる場面は、敢えて役者を図鑑形式で表現する(図3)。何気ない消防車絵本に見えるが、実に凝った作りとなっている。平山氏の真骨頂である緻密な消防車両の書き込みが、メカ好きな児童の興味を惹きつけるのは言うまでもない。

出動119番 その4
図3.仕事を終えた消防車たちは図鑑形式で整列(「出動119番」より)

表紙の2台を見てみよう。先頭車はイベコ・マギルス社(独)140-25型ベースの30mはしご車である[1]。本書協力の東京消防庁でもこのタイプの車両は多く導入されたようだが、排ガス規制などの関係で現在はイベコの車体を使わず国産のものを利用しているようだ[2]。後方は三菱ふそうの中型シャーシベースのポンプ車と思われるが、型式まではわからなかった。[3]によればここ最近、東京消防庁での三菱ふそう車両は少数派になってしまったらしい。

出動119番 その5
図4.表紙の2台(「出動119番」より)
イベコ・マギルス社30mはしご車
30mはしご車(イベコ・マギルス社140-25型)[1]

最後に絵本に登場する車両の素性を調べてみた(図3参照)。乗用車と違ってベース車両を特定するのはかなり難しい。消防車に詳しい方がいらしたら、是非情報をいただきたい。

はいすゞ・810EX指揮統制車
指揮統制車(いすゞ・810EX)[4]
トヨタ・初代ハイメデック高規格救急車UZH13#S型
高規格救急車(トヨタ・初代ハイメデックUZH13#S型)[5]
いすゞ・3代目フォワード照明電源車
照明電源車(いすゞ・3代目フォワード)[6]
日野・U-FW2KRAA型50mはしご車
50mはしご車(日野・U-FW2KRAA型)[9]

(図3左上)指揮統制車:ベース車両はいすゞ・810EX[4]
(図3左中)救急車:トヨタ・初代ハイメデックUZH13#S型高規格救急車[5]
(図3左下)レスキュー車(特殊工作車):非常に特徴的なスタイリングだがベース車両は不明(いすゞ?日野?)。
(図3右上)ポンプ車:表紙の後方車輌。ベース車両は不明。
(図3右中)照明電源車:非常に特徴的な艤装からベース車両はいすゞ・3代目フォワードと思われる。型式については不明[6][7]。 
(図3左下)はしご車:50mはしご車。ベース車両は日野・U-FW2KRAA型[8]
(下図)スノーケル車(屈折放水搭車):挿絵から三菱ふそう製であることはわかる。[10]によれば三菱ふそうのザ・グレートがベース車両で、挿絵から推察すると前2軸後1軸のFT型と思われる[11]。

出動119番 その6
図4.スノーケル車=高所放水車のこと(「出動119番」より)
正式には屈折放水搭車というそうだ。福島第1原発事故で投入され注目を集めた。
三菱ふそう・ザ・グレートFT型屈折放水搭車
屈折放水搭車(三菱ふそう・ザ・グレートFT型)[12]

2014年末の横須賀中央消防署
2014年末の横須賀中央消防署

2014年末の横須賀1 2014年末の横須賀2
ビルの高層化が進む横須賀。消防活動も大変だね。

よいお年を。

[参考・引用]
[1]東山梨行政事務組合東山梨消防本部、
http://www.geocities.jp/yamagata_nfdfc_kanto/higashi-yamanashi.html
[2]はしご車その2、東海の部屋 県東部出張所、
http://eastfiredepartment.i-ra.jp/e738249.html
[3]頑張れ、三菱ふそうの消防車輌!、ikkyu kazuの日記、2011年12月20日、
http://blogs.yahoo.co.jp/kazu0720bonba/7904675.html
[4]日本の消防車、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E6%B6%88%E9%98%B2%E8%BB%8A
[5]トヨタ・ハイメディック、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF
[6]照明電源車、消防車両紹介その2、東京消防ファン、
http://tfd119.com/a/g/ss.htm
[7]いすゞ 810 & 3代目フォワード 消防車シリーズ、トミカZOOのブログ、2014年9月28日、
http://blogs.yahoo.co.jp/sakal_wakou/39001589.html
[8]名消防車列伝、橋本政晴、p68、イカロス出版、2007
[9]中央消防署 はしご車(50m級)、車両紹介のページ、金沢市消防局、
http://fire.city.kanazawa.ishikawa.jp/action/gazou/hirosaka%20lh.htm
[10]豊洲の屈折放水、とあるM氏の車両日記(カーブログ)、2010年11月28日、
http://ameblo.jp/takoji135/entry-10721132569.html
[11]三菱ふそう・ザ・グレート、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E3%81%B5%E3%81%9D%E3%81%86%E3%83%BB%E3%82%B6%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88
[12]屈折放水搭車、東京消防庁消防整備
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/ts/soubi/car/popup/08.html




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