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Coolで温かみのあるLED電球  

Siphon

今年のノーベル物理学賞のテーマはLED(発光ダイオード)。赤、緑、そして難攻不落だった青のLEDが揃って白色はもちろんのこと様々な発光色が出せるようになった。最近は白熱電球が切れるとLED電球に交換することが多くなったけれど、明るさがちょっときつい感じがするのと、正直LED電球のデザイン、ダサすぎません?各照明機器メーカーは消費電力の大きい白熱電球の製造をほとんど中止しているし、ガラスの中でか細いフィラメントがほんわか光るエジソン球もじき見られなくなると思っていた。ところがLED電球の“美的設計”に拘る人はやっぱりいて、味のあるフィラメント球風のLEDがいくつか提案・商品化されている。その一つがこの“Siphon”。

LED電球とその構造
LED電球とその構造[2]

そもそも電気屋で売っているLED電球はなんでダサいのか。「半透明のプラスティック製のカバーに大きな金属の放熱部」これが良く見かけるLED電球デザインだ(上図)。フィラメントへの通電による電熱で点灯させる白熱電球と異なり、LEDは半導体の中で電気エネルギーが直接光になるので電力の光変換効率が高い。光変換効率でいうと、白熱電球は入力エネルギーの約10%しか光にならないのだそうだ[3]。だから白熱電球は異常に熱くなる。一方電極間の放電で蛍光体を発光させる蛍光灯の効率は約25%[3]、LEDは蛍光灯とほぼ同程度だが最新の技術では32%くらいになるという(日亜化学工業データによる[4])。それでも残りの68%は光エネルギーとして外部に出力されずに熱エネルギーとして放出されるので、やはりそれなりに熱い。

siphon エジソン
温かみのあるデザインのLED電球、Siphonエジソン

LEDの強みはその寿命。白熱電球、蛍光灯の寿命がそれぞれ1,000~2,000時間、13,000時間程度なのに対して、LEDのそれは4万時間程度という圧倒的な差。しかしLEDの欠点は熱に弱く、均一に光を放射できないため拡散性がよくない[5]。だから「半透明のプラスティック製のカバー」で光を拡散し、「大きな金属の放熱部」で電球内部に籠る熱を放出させる構造を取らざるを得なかった。名古屋のビートソニック社という小さな映像・音響機器・LED照明機器メーカーは、これらの課題を解決して「光にこだわる人たちのための美しい電球」をコンセプトに、美しいデザインのガラス球の中にフィラメント形状や光り方をLEDで再現したレトロ感あふれる“Siphon”を開発した。なかなかステキやん。美的設計やん。我が家にはこんな電球が映える部屋がないのが残念だけど、現在クラウドファンティングサービス「Makuake」で製品化支援も含めた先行予約販売を行っているそうだ。当初の目標金額150万円は既に大幅にクリアしていて、11/7に1000万円を新たな目標に設定しなおしている。11/8現在、サポーター500人以上500万円以上の予約が入っている[1]。

EVERLEDS LDA4LC1EVERLEDS LDA4LC2
EVERLEDS(エバーレッズ)クリア電球タイプ LDA4LC[6]

大手メーカー、パナソニックでも見た目が白熱電球のLEDを開発している。「EVERLEDS(エバーレッズ)クリア電球タイプ LDA4LC」がそれ。なぜ白熱電球に似せたデザインに拘ったのか。その理由を語る開発者の思いは熱い。 

『なぜなら、白熱電球は電球として“パーフェクト”だからです。テクノロジーが進化した新しい形というのはありますが、それだけでは面白くありません。そこで、“我々が欲しい照明ってこんなんだよね、残したいよね”と思ったのが、ノスタルジックでアナログな雰囲気が漂う従来ランプの姿のまま、省エネ性も両立させたLED電球、ということになりました』[6]

気持ちは十分伝わるが美的設計の詰めが甘い。白い樹脂製の放熱部分、そこへ無造作に刻印された“Panasonic”のロゴ。これだけでデザイン台無しなんだけどなあ。やはりこれが量産メーカーの限界なのだろうか。美的デザインに関して言えば、ビートソニック社の圧勝である。でもこの技術者のモチベーションは捨てないで欲しいと思った。

中村修二
中村修二博士(ノーベル財団ホームページより)

さて話はノーベル賞に戻る。受賞者の一人、中村修二教授が先日の文化勲章の授章会見の中で、長く蟠(わだかま)りのあった日亜化学との関係改善を提案したこと、それに対する日亜化学の反応がネット上でも話題になっている。ノーベル賞受賞者は日本では神格化されているので、中村は溜飲を下げただの、受賞に相応しくないなど賛否両論が飛び交う。所詮一度に3名の枠しかない、欧米人目線の一科学賞だし、GaN系青色LEDが(その他科学技術の偉業の大半もそうであるように)多くの科学者、技術者のアイデア、努力の積み上げの結果だってことも皆わかっている。代表者として賞を授かったということでいいじゃないの。

いいじゃないの~

中村氏受賞への反響の大きさは、やはりあの特許訴訟が尾を引いていると思うが、日本は銭のことを言い出せば品性がないと言われ、出る杭は打たれる。変人(個性的)で自己主張の強い科学者や技術者が本当に仕事をしづらい社会だ。私の所属する企業研究所にもマッドエンジニアっぽい人はいて、研究を管理する側としては面倒くせえなと思うこともあるけれど、こういう尖がった人がブレークスルーを先導することは多い(我ら“クレイジー☆エンジニア”主義!)。南部陽一郎、江崎玲於奈、利根川進、根岸英一・・・、海を渡ったノーベル賞学者のお歴々も皆、日本社会では扱いづらい存在だったのだと思うし、彼らが皆人徳者だった訳でもないだろう。人間なのだから当然、欲もあるはずだ。

あの裁判結果の意味とか、青色LED発明における中村氏の貢献度とか、法律的・技術的な論評をできるほど知識や興味がある訳ではないが、技術者の端くれの一人として一般論を言えば、開発に多くの人の協力があったとしてもオリジナルのアイデアは尊重されるべきものだし、それを実現化するための情熱と行動力によって企業への多大な利益、評価をもたらしたのであれば、その貢献に対して常識を超える報酬があっても良いのではないかと思う(中村氏は役員待遇の給与と研究の自由裁量権はもらっていたらしいけど)。よく会社に研究費や身分を保証されているのだからノーリスクに対してハイリターンは合理性がないと言う人もいるが、ノーリスク・ローリターンで社員にイノベーションが起こせるだろうか。言っておくが、今のご時世、企業研究者といえども、否企業だからこそ予算や職位が常に保証されているという訳ではないからね。挑戦的な課題は企業・社員ともにハイリスクを伴う。「ブルドーザのガンバ」でも書いたが、やはり努力が報われる社会でないとこれからの時代を背負う若い人のモチベーションが続かない。

喧嘩にはだいたい双方に問題があるもので、中村氏を一方的に支持するつもりもない。本当のところは当事者にしかわからないのだし。ただ喧嘩両成敗、お互い腹を割って話しませんかというのが彼の自己反省も含めての提案だったと好意的に解釈した。やはりF2Fで直接話をしないと本当に理解し合えない。これに日亜が応えるのが本当の大人の対応だったのではないかな。徳島で会えばマスコミの恰好の餌食になるから、いつかアメリカででもこっそり会えばいい。仲介してくれる人はいくらでもおるんやから、中村もあんな公の会見で言うべき話ではなかったんや。

中村修二と小川信雄
陰の功労者、故・小川信雄氏(右)と中村博士

日亜ももう少しうまく変人中村を扱っていれば、ここまで拗れることはなかったと思う。彼は好きで会社と喧嘩をしたのではないと思うし、事実創業者、故・小川信雄氏には大きな恩義を感じていると公言しているのだから。小川氏は何度も中村を突き放しながら壁を乗り越えてくるのを待った。そしてここぞという時に彼の要求を黙って飲む。“怒り”が原動力という彼の技術者としての性格をよく理解した上での見事な采配だ[7]。現社長は経営者として指導者としてそこまで長けていなかったのだろう。中村が日亜と決別していなければ、今頃はノーベル賞社員を輩出した企業として、日亜のブランド価値は計り知れないものになっていたはずだ。その価値は200億どころではない。惜しかったねえ。

日亜化学と中村教授との関係については以下元日亜社員によるブログ記事[8]が書き込みコメント含めて面白い。元社員だけにやや日亜寄りの記事だが、大方中立的に非常にわかりやすくまとめられていると思う。飛び交う引用・データも興味深い。何より面倒くさいコメントに対しても、若いのに実に巧みにファシリテーションされている。このブログやコメントを読んでいると、日亜の社員ってまじめというかおとなし過ぎる印象を持った。良い意味でも悪い意味でも擦れていない会社。ああいう変わり者の扱いをどうしていいのかわからなかったんだね、創業者以外は。腹黒い大企業はこういう奇人・変人の扱いにも慣れているので、ここまで大袈裟にならないのだと思う。その前に会社に盾突く奴は潰されてしまうのかもしれないけど…。

結局、最後は多くの日本人が持つ倫理観、”金儲けは悪”という結論かと言われるかもしれないが、日亜の社長さんも中村さんも、前述のビートソニック社やパナソニックのように会社の儲けや個人の報酬よりもまず先に「光(技術)でこんなことやりたいよね」といった企業や研究者、エンジニアとして最も大切な動機付けにもう一度立ち戻って仕事をしていたら、もっと素敵な未来があったかもしれんね。喧嘩するのは後味が悪いが、技術論議では同じチーム内であっても上下関係なく納得いくまで喧嘩すればよろし。でも一旦技術の外に出てしまえばノーサイド、そういう切り替えができなければ良い技術・商品は創り出せないと思う。良いモノができれば、結果的に儲けは付いてくる。

[参考・引用]
[1]ダサいLEDは終わりにしよう!フィラメントをLEDで再現、美しい電球を広めたい、Makuake、
https://www.makuake.com/project/siphon/
[2]LED照明の特徴、天野尚、電気技術解説講座、(社)日本電気技術者協会、
http://www.jeea.or.jp/course/contents/09404/
[3]LEDってなに?、LED工事棟梁.com、
http://led.touryo.com/ledbasic
[4]発光効率とは、LED用語辞典、日経テクノロジーonline、2010年8月12日、
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/WORD/20100722/184378/
[5]LED電球のメリット・デメリットって?、エネチェンジ、2014年10月9日、
https://enechange.jp/articles/led-lighting-2/#LED-4
[6]そこが知りたい家電の新技術 消え行く白熱電球の光を残したい―パナソニックの「クリアLED電球」ができるまで、藤原大蔵、家電Watch、2012年3月21日、
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/newtech/20120321_517093.html
[7]祝ノーベル賞 青色LED 特集、日経テクノロジーonline、
http://techon.nikkeibp.co.jp/nobelprize/
[8]ノーベル賞を受賞した中村修二さんと日亜化学、いったいどちらの言い分が正しいのか?元日亜社員のつぶやき。、濱口達史のブログ、2014年10月8日、
http://toeic990.jpn.org/2014/10/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E8%B3%9E%E3%82%92%E5%8F%97%E8%B3%9E%E3%81%97%E3%81%9F%E4%B8%AD%E6%9D%91%E4%BF%AE%E4%BA%8C%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%A8%E6%97%A5%E4%BA%9C%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%80%81/
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Posted on 2014/11/08 Sat. 19:51 [edit]

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