砂の彫刻展10

前回の記事では、錦織圭、国枝慎吾らのテニスの技のスゴさについて言及したが、先日別の人間業にも感動を覚えることがあった。今週の日曜日、我が家の女子組が藝大の学祭を見に行くというので、男子組は小雨降る横浜で過ごすことに。午前中に出かけたのは以前「鉄道趣味、ここに極まる」で紹介した原鉄道模型博物館。息子とこの博物館に訪れるのは2度目だが、当館館長でこの素晴らしいコレクションを製作・蒐集された原信太郎氏は残念なことに今年の7月、95歳でお亡くなりになっている[1]。

阪神電気鉄道311形313(模型)
原の技冴える阪神電気鉄道311形313(原鉄道模型博物館)

この写真は原氏が製作した阪神電気鉄道311形313の模型。阪神電鉄が1921年に導入した車輌だそうだ。鮮やかなブルーの車体が印象的。大正時代にこんなモダンな電車が走っていたとは、当時のデザインセンスに驚く。しかしもっと驚くのはこの模型を自作した原氏の技である。「鉄道趣味…」でも紹介したように、彼が小学6年生で製作した模型の出来栄えにも驚嘆するが(ほぼ同年齢の息子は信じられないという顔をしていた)、趣味を極めてからの作品は人間業とは思えない精密さである。芸術品と言っても良い。

彼が関西の私鉄に魅せられたのは小学生の頃。1930年(昭和5年)、信太郎少年が息子と同じ小学5年生の時、祖父から許しを得て超特急「燕」で関西へ一人旅に出かけている。旅費は約75円。銀行員の月給が70円ぐらいの頃だから、愚息が数十万を手にして一人で新幹線に乗って大阪へ出かけるということだ。方向音痴で横浜駅までもロクに行けない奴が不可能である(本人も「無理」と)。スケールが違うというか、今なら誘拐され兼ねない。錦織君も13歳でアメリカへ単身武者修行に出ているし、可愛い子には旅をさせよ、か。確かにその後の人生にとってリターンは大きいかもしれないが、本人のみならず親にも相当の覚悟がいるね。

原鉄道模型ジオラマ1 原鉄道模型ジオラマ2
原鉄道模型ジオラマ3 原鉄道模型ジオラマ4

世界最大級の1番ゲージ(縮尺1/32)のジオラマは何度見ても飽きない。前回見つけたお気に入りの場所に立って、親子二人でしばし時間を忘れた。

0系マスコン・ハンドル
11月3日までやっている特別企画「ありがとう!SHINKANSEN展」で展示されている実物の0系マスター・コントローラー。260km/hまでの速度計は2つ。左がメインで、右がフェールセーフ用のサブ。

原鉄道模型博物館ホームページ

東口でお昼を食べ、みなとみらい線で馬車道駅へ。駅から徒歩で約1分、特設テント会場で開催されてる「ヨコハマ砂の彫刻展」を観るためだ。彫刻展は現在横浜で開催中の芸術文化イベント、「東アジア文化都市2014横浜」の一つである。日中韓など世界各地から集まったプロの砂像アーティストによる韓国、中国、そして日本の国の始まりを砂の彫刻の大パノラマで表現した。

砂の彫刻展1 砂の彫刻展2
我々を出迎えてくれた鳳凰と龍

ゲートゾーンにはアジアの芸術文化展らしく入口に鳳凰と龍が出迎える。これだけでメイン会場への期待が高まる。

砂の彫刻展3
ライトアップにより砂の表面には微妙なグラデーションが
砂の彫刻展4
見よ、この竹林の芸の細かさを!

会場に入ると、まずは左手に韓国ゾーン。ハングル文字を生み出した李氏朝鮮4代国王、世宗(セジョン)大王や当時の通貨、朝鮮通宝、そしてソウルの国宝、南大門(ナムデムン)などが彫られている。会場に入るやそのスケールに圧倒されるが、細部まで見るとその匠の技の繊細さに溜息が出る。部分的に紫やピンクに彩られていて砂を彩色しているのかなと思ったのだが、これは上部からプロジェクターでライトアップすることで、砂の表面に微妙なグラデーションがかかっているのだ。彫刻に豊かな表情を与えてくれる。

砂の彫刻展6 砂の彫刻展5
細かいところまで手を貫かない職人技(左)と兵馬俑のリアリティ(右)

中国ゾーン。万里の長城に秦の始皇帝は息子でもわかる。他に紫禁城や天壇などの世界遺産が見事に彫られていた。特に始皇帝の着る服の装飾は圧巻。兵馬俑はまさに砂の中から掘り出された本物のよう。

砂の彫刻展7 砂の彫刻展8
一枚の写真に収めきれない大パノラマ
砂の彫刻展9
昔の横浜風景:木々や浮雲の表現が人間業じゃない

最後は我が日本ゾーン。ペリー来航と開国の物語を表現した。世界遺産、富士山をバックに左は黒船とペリー提督一行、右に開港当時の横浜を彫っている。淡い紫でライトアップされた富士山が幻想的だった。浮雲の表現も見事でしょ。会場はそれほど広くないのだが、それぞれが大パノラマなので一枚の写真に収めることができない。それくらいの大迫力。個人的にはやはり日本人の琴線に触れる日本ゾーンが一番良かったかな。でもいずれ劣らぬ力作です。わだかまりの多い韓国・中国との関係だが、アートの世界に国境はない。

2次元の写真ではこの立体感や我々の感動は絶対に伝わるまい。会場での撮影OKもプロデューサーの自信の表れなのだと思う。チャンスのある方は11月3日まで開催中なので是非実物を見るべし。会期後は取り壊される儚い運命の砂の彫刻。それだけに作品には緊張感もある。夜はプロジェクションマッピングでより幻想的になるそうだ。横浜デートにも最適。ところで会場で知ったのだが、砂を取り寄せた鳥取砂丘には「砂の美術館」というもっと規模の大きい砂像美術館がある。こちらも会期ごとに作品は入れ替わり、もとの砂へと戻っていくのだが、ホームページを見るとこれまたスゴい。スタバがついに開店、鳥取へ行こう!

ヨコハマ砂の彫刻展ホームページ
鳥取砂丘 砂の美術館ホームページ

[参考・引用]
[1]原鉄道模型博物館館長の原信太郎氏死去 世界的な鉄道模型コレクターとして知られる、産経新聞、2014年7月7日、
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140707/waf14070719510026-n1.htm
スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks


    最近の記事