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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

ぶんた いなかだ  

ぶんた いなかだ

早いもので8月も終わり。ここ数日の冷え込みは秋の予感を漂わせている。子供たちの学校も最近は9月のカレンダーをめくる前に始まっているが、このブログに立ち寄られた方は今年の夏をどのように過ごされただろうか。我が家は長女が高校受験生。夏休みは気の抜けない貴重な勉強の時期で、呑気な娘も毎晩遅くまで頑張っていた。母親は盆休み返上で仕事が立て込み、父親は五十肩で夜もよく眠れない日々が続いた(現在も苦悶中)。そんな中でほとんど出かけることもなく、いつものようにエネルギー有り余る小5の長男にはつまらない夏休みを過ごさせてしまった。今日紹介するクルマ絵本は、我が家の夏休みとは正反対、インパクトのある絵で田舎の夏を思いきり楽しませてくれる「ぶんた いなかだ」(彦一彦・作、福武書店)である。クルマが主人公の絵本ではないが、大きな犬の周りを赤いミニが走るユニークな構図の表紙に惹かれて購入した本である。

本書の主人公はタイトルにあるブルドック犬のぶんた。物語は彼の目線で語られている。暑い夏のある日、プールで遊んでいたぶんたに絵描きのご主人様が「いなかへ行こう!」と言い出した。いなかが何なのかわからないぶんたは、ご主人様の赤いミニに乗せられて都会を離れ、いなかへと向かう。海へやって来た。大きなプールのようだ。夜も暗い海沿いを走るミニ。海は楽しいプールじゃなくなった。

ぶんた いなかだ その1
赤いミニに乗って田舎へ行こう!(「ぶんた いなかだ 」より)

私も通勤では湘南の海を眺めるルート134を走るが、特に夏は眩しいほどに真っ青な朝の海とは対照的に、帰りの夜の海は不気味なほど暗闇に感じることがある。上のシーンはその夏の海の二つの表情がうまく表現されている。この旅の先に何があるのか、まるでぶんたの期待と不安を表す心象風景のようだ。

ぶんた いなかだ その2

闇の先には一転して、セミの声が聞こえてきそうな真夏のいなかの風景。じいちゃんとばあちゃんが赤いミニを迎えてくれた。ご主人様の実家は、ひいばあちゃんに祖父母、父母、弟夫婦と甥っ子たちが住む大家族だ。家のうしろは山、山を越えると海が一面に広がる。

ぶんたたちが遊びに来たので、家族みんなで海へ行く。甥っ子とぶんたは浅瀬で遊んだ。じいが船を出して今度は沖で投網だ。絵本の隅っこに書かれたじいの言葉もいい。
「ドコマデモ生キテミロ ツラクナッタラ ココヘコイ コノウミニコイ」

魚もいっぱい獲れた。実に豊かな海である。じいが海の恵みをさばいて料理を作ってくれた。たくさんのごちそうと家族で賑やかな夕食だ。

ぶんた いなかだ その3
自然の豊かな恵みを大家族で食らう(「ぶんた いなかだ 」より)

おなかいっぱいになって眠くなったぶんた。星降る夜に蛍の舞。遠くの田んぼから蛙の声が聞こえる。
「イナカダ イナカダ イナカダ カダカダ」

豊かだ。「ぶんた、いなかだ」のタイトルとおり、これこそが日本の田舎の原風景。作者のエネルギッシュな画風は、田舎の豊かさだけでなく、じんじんと陽射しの照りつける夏の暑さまで伝えてくれる。僕も実家は九州だけど、ここまで自然に恵まれた田舎暮らしを経験したことはないなあ。子供たちにもこんな夏休みを一度は過ごさせてあげたいけれど、まさにこの絵に描いたような田舎はどれくらい残っているのだろう。自然は意外と身近(横須賀近郊)にあったりするかもしれないが、大家族の団欒というのもザ・田舎の必要条件。これを求めるのはなかなか難しいかもしれない。

彦一彦
彦一彦

作者の彦(げん)一彦氏は、1947年千葉県成田市生まれ。青山学院大学英文科卒業。独学で絵画を志し、1975年渡欧、テンペラ、銅版、石版画を修得する。帰国後、多数の個展、随筆執筆等に活躍。銅版画集『饗宴』、『夢座』を中野紅画廊より刊行。絵本には本書を含め『たいようはいいな』(福武書店)、『おおかみと7ひきのこやぎ』(ミキハウス)などの作品がある。ぶんたのモデルは本書が捧げられた愛犬BUN太くんのようだ。

猿島の七日間
猿島の七日間

この絵本と出会い、彼の初の児童文学作品『猿島の七日間』(福武書店)の存在を知る。猿島は我が住処、横須賀市にある無人島で、島へ釣りに出かけた少年が一人取り残され、次の船が来るまでの一週間(実際には一日数便運行しているのだけど)、自給自足のプチ冒険物語。少年の名は西岡彦樹(げんき)。ネタバレをすると、この名前はぶんたと遊んでくれた元気な甥っ子と同じである(絵本の中で彼の日記が登場する)。この絵本と『猿島…』は繋がっていたのだ。猿島が舞台なのですぐに購入してみたが、少年が自然の中で生活する知恵や行動力が素晴らしく、楽しく読ませてもらった。彦氏の作品の一貫したテーマは、我々にとって真の豊かさとは何かということ。夏休みって知識教育ではなく、本当はそういうことを肌で学ぶ、学ばせる機会なんだろうなあ。今年の夏休みにも実行できなかったが、猿島にはこの本を持っていずれ家族で遊びに行こうと思っている。

ぶんた いなかだ その4
横芝光町の風景?(「ぶんた いなかだ 」より)

さて本書の舞台はどこだろうか。登場人物が「だっぺ」言葉を使っているので、作者の出身地・成田もある千葉方面だろうか。スイカととうもろこしがよく獲れる土地であることが描かれているが、これらが特産品で海も近く漁業も盛んな千葉の市町村はと探してみると、成田にも近い海沿いの町、横芝光町が浮上してきた。晩餐のメインディッシュに乗っていた伊勢海老もこの地の名産のようだ[1]。

[参考・引用]
[1]郷自慢横芝光町の名産物、家族のバカンスと旅文化と宿文化 ロッジングモール、
http://www.lodging-s.co.jp/meisan/chiba/chiba-07.html
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Posted on 2014/08/31 Sun. 19:15 [edit]

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