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トヨタ社長、あんたもか…  

氷水を被るトヨタ社長

とうとうやっちゃったのね、トヨタ社長[1]。現在世界の著名人の間で拡がりを見せ、賛否両論を巻き起こしている「アイス・バケツ・チャレンジ」。まだ知らない人のために簡単に説明すると、難病、筋委縮性側索硬化症(ALS)克服の支援運動としてアメリカで始まったもので、バケツに入った氷水を頭からかける様子を動画で撮影してソーシャルメディア上で公開するか、100ドルをALS協会に寄付するというもの。寄付をすれば氷水を被る必要はないのだが、セレブたちが氷水を被る動画が人気を博して、今や賛同=氷水パフォーマンスがお決まりとなっている。さらに次にやってもらいたい人物を3人指名し、指名された人物は24時間以内にいずれかの方法を選択するというルールから、ソーシャルネットワークなどを通じて世界中へ拡散している。元々はガン研究の寄付運動が起源のようである[2]。秋元康氏からご指名を受けたトヨタ自動車社長、豊田章男氏もこのチャリティーの輪に加わったというわけ。

これまでの支援金は従来とは比べものにならないくらい集まったというから、難病を広く認知させ支援の輪を広げたという意味では確かにユニークなアイデアなのかもしれない。しかし心の薄汚れた私はちょっと穿った見方をしてしまう。この企画はもはや著名人の宣伝や単なるバカ騒ぎの手段にしか見えず、当初の主旨からは大きく逸脱してしまった感がある。それに『氷水を頭からかける様子をフェイスブックやツイッターなどのSNS上で公開する』というルールが何となく胡散臭い。この活動に賛同すればただ黙って100ドル寄付すればよいのにである。これまでに氷水を被った著名人をみると、「どうしても治したい病気」とALSの克服に並々ならぬ使命感を抱いているiPS細胞の山中教授[3]はまだわかるとしても、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグにマイクロソフトの元会長ビル・ゲイツ、日本で言えばソフトバンクの孫社長や楽天の三木谷社長、ホリエモン等々IT業界で商売をする企業経営者たち、今やSNS無くして人気の維持はあり得ない芸能人多々、さもありなんである。大体A〇Bのメンバーなんて、ALSを深く理解しているとは到底思えないし、マー君は今肩冷やしたらあかんやろ。自動車メーカーもSNS上で社長が話題になるのは大きな宣言効果があるだろうし、豊田社長に指名された日産の志賀副会長も氷水を被るのだろうか。

「行動も起こさずに文句ばかり」「ノリが悪くね」と批判されるのは百も承知。仮に自分が指名を受けたとしても氷水は被りたくないし、100ドル(1万円)といったって庶民が迷わず寄付できる額ではない。セレブ層に対する単なる僻みなのかもしれない。そんな私はこのマスターベーション的な活動の拡がりに違和感を覚えるも、結果的に寄付金が増え、私のような庶民がそれこそソーシャルメディアで話題に取り上げるくらい関心は高まった訳だから、セレブ達の本音と建前の使い分け(「偽善」といいましょうか)には大人の事情と理解をするとして、それでもなお3つの不快感、気持ち悪さが残る。

一つは他の難病支援とのバランス。難病に苦しむのは何もALS患者だけではない。厚生省が特定疾患として指定する難病は実に130疾患もある[4]。例えば末期ガン疾患においても患者はもとより家族の精神的・経済的負担は計り知れない。経験者の私が言うのだから間違いない。そんなことを考えるとALSだけ注目され、多大な支援を受けて不公平ではないのかとか、その他の難病に対しても同様な支援活動を起こせば、同じように盛り上がって資金集めが出来るのだろうかとか疑問に思ってしまう。多分この連鎖が一段落すれば、他の難病のことなんて見向きもされなくなるのだろう。お遊びもいいけれど、そんな厳しい現実についてパフォーマンスをやっている人たちは考えているのだろうか。

一つは指名された人はさらに3人を指名するというルール。もうこうなるとチェーンメールかねずみ講の類である。指名を拒否した人には嫌がらせもあったというから一種の脅迫、社会的パワーハラスメントだ。資金援助のサイトを立ち上げて、賛同した人がそこへ意思表明するだけでいいではないか。既に他の支援活動をやっていて、あえてこの企画に乗らないと言う人もいるだろう。本当の篤志家はさりげなく、自身の慈善活動についてはあまり表には出したがらないものだ(財団法人作行会で検索してみて)。今回の企画は少なくとも”粋”ではない。

最後は何故氷水パフォーマンスでなければならなかったのか。ALSの認知・理解を広げるための手段が氷水とはどうしても結びつかない。もっと他の方法があっただろうに。氷水を全身に浴びることは、急激な体温変化によって最悪死亡もありうる危険な行為である。氷水そのもので死亡事故が発生したかどうかはわからないが、氷水を被る手段がエスカレートして(例えば消防車を使うとか)、重大な事故につながった海外の報道もある[5]。そもそものルールは、危険な行為はできないからと自然に寄付の方を選択させる意図があったのだと思う。命をも脅かす病気の支援活動で、万が一支援者が命を落とすことがあったら、援助を受ける側はどう思うであろうか。しかも活動自体にマイナスイメージを与えてしまう。直接の寄付先はALS協会という医療の専門団体である。だから氷水パフォーマンスの危険性は十分承知のはず。医療関係者として「氷水を被る行為は危険なので“絶対”に止めて下さい」と何故言えないのか。日本ALS協会HPには支援への感謝と「くれぐれも無理はしないように」という一文はあるが、やはり危険行為は止めさせないといけない。それが出来るのは当事者である彼等しかいないのだから。

この話題で盛り上がっているときに、この「アイス・バケツ・チャレンジ」の発案者の一人が、建物の2階から海に飛び込んで脊椎を折り溺死したという記事がアップされていた[6]。やはり発案者は危険を顧みぬ人だったのか。ALSを患う友人のためという純粋な発案動機だっただけに残念である。



[参考・引用]
[1]トヨタの豊田章男社長、氷水をかぶる!…次は日産の志賀副会長をご指名、レスポンス、2014年8月22日、
http://response.jp/article/2014/08/22/230477.html
[2]アイス・バケツ・チャレンジ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B1%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8
[3]篠沢教授とALS、患者を生きる、朝日新聞、2014年3月3日、
http://apital.asahi.com/ikiru/2014030300002.html
[4]難病情報センターホームページ、
http://www.nanbyou.or.jp/
[5]「氷水チャレンジ」で事故、消防士4人重軽傷 米、AFP、2014年8月22日、
http://www.afpbb.com/articles/-/3023748
[6]ALS Ice Bucket Challenge発案者の一人が27歳で溺死 ─ #ALSIceBucketChallenge、岡澤創人、GQ Japan、
http://gqjapan.jp/more/andmore/20140821/ice_bucket_challgen_founder
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Posted on 2014/08/23 Sat. 01:00 [edit]

category: cars/車のお勉強

tb: 0   cm: 2

コメント

こんにちは。

この件については、同様に自分も不快感、違和感を感じていました。
指名された著名人のうち、誰か一人でも
「寄付には賛同し行うけれど、自分は命に関わるような悪乗りはしない、してはいけない」
と表明すれば、正常な思考ができる人には理解されると思いますし、
ALS協会も困らないと思うのですが、なぜそうならないのでしょうかね。
世間がどうであれ、せめて自分はまともでいたいです。
所謂「周囲(世間)から浮く」ことには、もう慣れてしまいました。

URL | びょうせい #-
2014/08/25 12:33 | edit

Re: タイトルなし

びょうせい様、コメントありがとうございます。
このブログで取り上げるテーマとしてはどうかなとも思いましたが、
トヨタ社長が実行されたことで強引にクルマつながりにしてみました。
一番最初に行動を起こされた方は、難病についてどうすれば広く認知してもらえるか、
いろいろ考えた末の結論だったのだと思います。
その人の行動力・企画力には素直に敬意を表したい。
しかしブームになればなるほど当初の意図はどんどん希釈されてしまう。
しかも必ずそれを利用する輩が現れるのが世の常です。
人々の善意で成り立つ活動ですから否定もしずらい。
このことが物事の本質から目を背けさせ、
ALS協会が危険な行為の中止を強く言えない理由もそこにあるのでしょう。
大義の名の下に何の疑問を持つことなく(本当はおかしいと思っているかもしれないけれど)、
右へ倣えの社会現象は「いつか来た道」と薄気味悪さすら感じます。
とにかく大きな事故が起こる前に軌道修正がされることを願うばかりです。

URL | papayoyo #-
2014/08/25 21:32 | edit

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