月へ アポロ11号のはるかなる旅

月へ アポロ11号のはるかなる旅

私がエンジニアの道を選んだのは土木技術者だった父の影響が大きかったかもしれないが、45年前のちょうど今頃の出来事が科学技術に興味を抱くきっかけとなったのは間違いない。1969年7月20日、人類が史上初めて月に降り立った日のこと。同世代の科学者や技術者は少なからず人生の選択に影響を受けているはずだ。大学の資源開発工学科の同期に、就職活動の際、月資源開発の仕事をしたいと言った男がいた。30年も前の話だ。指導教官からはもっと現実的な就職先を考えなさいと諭されていたが、我々世代が月や宇宙に憧れる気持ちはよくわかる。この有史以来初めて月面着陸を成功させたアポロ11号の発射から帰還までの約1週間(1969年7月16日~24日、もっと長い旅の印象があった)を、美しいイラストで再現してくれたのが「月へ アポロ11号のはるかなる旅(原題は“MOONSHOT”)」(ブライアン・フロッカ・作、偕成社)である。書店で見つけて懐かしく思い購入した絵本だ。フロッカ氏は、以前クルマの絵本で紹介した“THE RACECAR ALPHABET”と同じ作者である。イラストレーターの溝呂木陽さんも「うまい」と唸っておられたが、繊細な線画にも関わらずダイナミックで、このミッションのスケール感と迫力を見事に表現している。

月へ アポロ11号のはるかなる旅 その1
緊張のカウントダウン(「月へ アポロ11号のはるかなる旅」より)

当時小学1年生の少年だった私がアポロの何に魅せられたかって、その特異な飛行プロセスである。何せ誰もやったことがない大プロジェクトだ。アポロを飛ばすサターンVロケットの雄姿には圧倒されたが、第3段ロケットのフェアリングが開くと、中から司令船コロンビアが登場。司令船がロケットから離れると反転し、再びロケットの方に向かってまだロケット内部に残っている月着陸船イーグルとドッキングする。一体化した司令船と月着陸船は第3段ロケットから離脱して、そのまま月へと向かう飛行を続けるのだ。宇宙空間でのこの高度で複雑な“飛び方”に少年はワクワクした。

月軌道に入るとコリンズ飛行士がコロンビアに残り、アームストロング船長とオルドリン飛行士がイーグルに移動、イーグルはコロンビアと切り離されて月面着陸の体制に入る。とにかく今まで見たこともないこの四本脚の月着陸船のフォルムは、サンダーバードやウルトラセブンのメカに夢中だった少年の心を掴んで離さなかった。まさにテレビ番組から出てきたような乗り物だったからである。

月着陸船イーグル
メカ的にかっこいい月着陸船イーグル(「月へ アポロ11号のはるかなる旅」より)

アームストロング船長が「ヒューストン、こちらは<静かの海>、ワシ(イーグル)は舞い降りた」と通信をして月面着陸に成功したのが日本時間の21日午前5時17分40秒。彼が“人類にとって偉大な一歩”を踏んだのが午前11時56分20秒[1]。ちょうど夏休みに入ったばかりだったのか、自宅の白黒テレビで観ていた衛星中継は今でも鮮明に覚えている。画面が鮮明ではなかったので、第一歩のシーンは何を映しているのかよくわからなかったが、とにかく画面を食い入るように観ていた。

当時の報道番組をYouTubeで観ることが出来るのだねえ!これこれ。


本書にも描かれているが、その日の夜はベランダに出て月を見上げながら、今あそこに人がいるんだと不思議な気持ちになった。

飛行プロセス
複雑な飛行プロセスも非常に詳しくわかりやすい(「月へ アポロ11号のはるかなる旅」より)

月面調査を終えたイーグルは、上半分がロケットになって離陸するのも驚いた。再びコリンズ飛行士の待つ司令船とドッキングして乗り移り、地球への帰還モードへ。アポロチョコとしても有名になった大気圏突入時のコロンビアの帰還カプセルのカタチ。円錐の先端部から突っ込むと思いきや、底の部分から斜めに突入するメカニズムも当時は興味深かった。小惑星探査衛星「はやぶさ」の帰還も素晴らしかったが、こういう科学技術のチャレンジと成果が、次の世代の科学者・技術者を育む。2014年の前半、科学技術の話題をさらったのが小保方氏のスキャンダルだったことは非常に残念である。

アポロ11号といえば「我々は月に行ってなどいない」などの捏造説がある。代表的なのは、あの月面着陸シーンはスタジオのセットで撮影されたでっち上げというもの。調べてみると、面白い動画が見つかった。フランスのテレビ局が制作した『Opération Lune』という番組が、私は見ていないが2003年の大晦日に放送した「ビートたけしの世界はこうしてだまされた!?」の中で紹介されている。打ち上げ当時のラムズフェルト大統領補佐官やキッシンジャー国務長官の証言が登場するので「えっ!」となるのだが、しばらく見ていると「ん?」となってくる。種を明かせば、この番組はエイプリルフール用に製作されたフェイクもので、欧米の番組にはよくある手法。ビートたけしの番組でも最後にネタばらしをしているそうだ。物語としては面白いのでYouTubeをリンクしておくが、驚くのは動画のコメント欄を見ると、この内容を真に受けた人が結構いるということだ。大学教授にも捏造説を支持する輩がいるというから、人間を洗脳するのは意外と簡単なのかもしれない。これを信じた人はきっと「この記事を書いているあなたが騙されているのです」と反論するのだろうが、自然科学系の最高学府で学ぶ多くの若人がオウムに洗脳された事実を思い出せば、こういう類の捏造説も笑って見過ごせないのかもしれない。この動画の投稿者も意図的になのかネタばらしの部分は削除している。

注意!この動画は嘘です。




さて話が脱線してしまったが、詳解かつわかりやすい本書を、当然45年前のことなど知らない10歳の息子にも紹介してみると興味深く読んでいた。ただ生まれた時から日本人宇宙飛行士が何人も存在していて、当たり前のように我々の頭上を周回する宇宙ステーションからの映像に見慣れている現代っ子にとっては、単なる宇宙飛行記録ぐらいにしか思っていないのかもしれない。実は、この絵本が描いた1週間の月旅行よりも、その後の飛行士たちの人生ドラマの方がもっと興味深かったりする。特にオルドリン氏は、宇宙体験がネガティブに影響を及ぼした唯一の宇宙飛行士とも言われ、その人生は『宇宙からの帰還』(立花隆・著、中央公論社)に詳しい。若い人たちはこのような本もいずれ読んでみると良い。

日本人宇宙飛行士第1号の毛利衛さんは「宇宙から見た地球には国境が見えない」と言った。まだまだ一握りではあるが宇宙人となった彼ら飛行士たちが受けた大きな精神的インパクトを、地上にいる我々に伝えてくれたにも関わらず、45年を過ぎた今も世界は何も変わっていないように見える。地球人は相変わらず国境で争いを続けているからだ。

私も見上げたお月様

[参考・引用]
[1]東京五輪中継と6億人以上が見た月面着陸、NHKは何を伝えてきたか、
http://www.nhk.or.jp/archives/nhk50years/history/p12/
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[ 2014/07/26 07:53 ] bookshelves/本棚 | TB(0) | CM(2)

アポロ宇宙船 11号 月面 ニィール ・アーム ストロング船長。

謹啓 アポロ宇宙船 11号は 人類が 最初に 月世界に 着陸した。 ニィール ・アーム ストロング船長の 宇宙船。 で1969年 米国の宇宙センターから 打ち上げて ・ 約1週間で 無事に アメリカに帰還 米国ニクソン大統領と 面会して NYで 凱旋門 パレードした。私達も TVで 釘付けして 見入りました。 TVは ボヤケですが 船長さんが 梯子を ゆっくりと 月の大地に 足を 着陸するのは 今でも はっきりと 脳裏に 記憶したことですな。
[ 2015/06/06 15:41 ] [ 編集 ]

Re: アポロ宇宙船 11号 月面 ニィール ・アーム ストロング船長。

岡田様、
コメントありがとうございます。
私もあの月面着陸の衛星放送はよく覚えています。
あの日の晩は、皆、月を見上げていたと思います。
最近JAXAの筑波宇宙センターに行く機会がありましたが、
宇宙に携わる仕事が出来るというのは本当に羨ましいですね。
http://ehonkuruma.blog59.fc2.com/blog-entry-594.html
[ 2015/06/06 22:28 ] [ 編集 ]

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