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世界の名車 絵で見るくるまの文化史  

世界の名車 絵で見るくるまの文化史

GWも終わってしまった。私は月曜までがお休みなので、明日からまた日常がはじまる。連休中はほとんど遠出をしなかったが、古本あさりに吉祥寺方面と横浜方面を散策した。収穫は少なかったのだが、その中での掘り出し物の一つが、本日紹介する「世界の名車 絵で見るくるまの文化史」(五十嵐平達、世界の自動車別冊、朝日新聞社)である。昭和52年(1977年)発行のなかなか古い大人のクルマ絵本だ。

表紙を見たとたん「買い!」と決めたその絵は、1955ロールス・ロイス・シルバー・ドーン。作者はあのベルナール・ビュフェであり、紛れもない正当な絵画である。私はビュッフェの直線的で粗いタッチが好きであるが、車をモチーフとした絵画を描いていたとは知らなかった。蛇足であるが、この絵は富士山麓にあるビュフェ美術館に所蔵されているそうだ。

さてこのB5版の小さい古書は、中身が結構深い。この本は60年代以前、おもに欧米の広告やカタログに描かれていた自動車画を通して、自動車やその背景にある文化を紹介している。巻頭言には「この本は歴史書ではないが、自動車画を味わうことを通じて、少しでも現在の車社会がかかえる諸問題の解決に役立つことができれば幸いである。」とある。

この本の成り立ちは戦後すぐにさかのぼる。作者は幼少のころから外国の自動車カタログを絵本がわりにしていたという筋金入りのエンスーであった。そのコレクションを元に、戦後、自動車雑誌「モーターライン」に「私のスクラップ・ブック」というコラムを書き始めた。しかし、自動車文化というものが存在せぬ当時の日本では当然関心は薄くコラムは10回で終了、雑誌も昭和29年に廃刊となったそうだ。

時は流れ、「世界の自動車」1977年版に自動車画特集を組んだところ、予想以上の反響があり、「私のスクラップ・ブック」を書籍化したこの本が上梓された。僭越ながら、この本のテーマである自動車画を味わうというのは、私がこのブログで扱うクルマ絵本も基本は写真ではなく「絵」であることと共通する。著者が語る「アーチストの車への愛情に直接触れてもらいたいことと、車を情感でとらえてほしかったからである。」に、この本を購入した価値があると感じた。ネットで買えば、もう少し安く購入できたと後で知っても、こういう本に出会えるのが古本散策の醍醐味だ。

FORD Model-A 1928 from Vanity Fair
FORD Model-A 1928 from Vanity Fair(「世界の名車 絵で見るくるまの文化史」より)

この本に登場する自動車画はどれもすばらしいの一言につきる。絵画として十分鑑賞に堪えうる高レベルなのである。こういう絵が戦前、それもかなり古くからカタログ画に使われていたということに欧米の自動車文化の深さを思い知らされる。カラー画も豊富で見ていて飽きない。

MERCEDES-BENZ Type-320 1937 from catalogue 1935 MERCEDES-BENZ Type-500K Cabriolet"C" from catalogue
(左)MERCEDES-BENZ Type-320 1937 from catalogue(右)1935 MERCEDES-BENZ Type-500K Cabriolet"C" from catalogue(いずれも「世界の名車 絵で見るくるまの文化史」より)

特に戦前に一世を風靡したメルセデスの自動車画は印象的だ。1930年代中頃から、メルセデスの自動車画は統一化される。今風にいうとブランド・アイデンティティ(BI)確立の一環なのだろうが、時にナチス隆盛の時代とも一致するため、ナチスのプロパガンダ政策の影響もあるのかもしれない。著者の表現を引用すると、「2次元的な線とカラーで表現されていたが、影の描写を肯定しながらも、車体の立体感は表面のつやと反射を巧みに整理した線で表現されていた」浮世絵的な日本画風を確立していった。戦後も様々なメーカの自動車画に、この画風は引き継がれることになる。

VOLKS WAGEN 1953 from Vanity Fair
VOLKS WAGEN 1953 from Vanity Fair(「世界の名車 絵で見るくるまの文化史」より)

この平面的技法はどこかで見たことがある気がすると思ったのだが、その作品に車も多く登場するイラストレーターのわたせせいぞうの絵に似ていないだろうか。車好きの彼も古い自動車画に影響を受けたのかもしれない。

相変わらず活気のない国内の自動車販売であるが、原点に帰って、カタログを写真から筆による絵にしてみるというのはどうであろうか(CGはだめ)。もう少し、自動車をアーティスティックに扱おうよ。経済性の軽・小型車、環境対応、先進テクノロジーだけじゃ本当につまらない。

五十嵐平達
五十嵐平達

さて、作者の五十嵐平達さんについては、この本に出会うまで知らなかったのだが、自動車業界では非常に有名な方であった。履歴によると1924年生まれ。旧制都立工業専門学校(現在の首都大学東京工学部)で機械工学を専攻した技術者、自動車史家。いすゞ自動車研究部員を経て、1950年よりフリー。日本最初のカーデザイナーとして日産、ヤナセ等で造形に参加。デザイン・歴史の造形も深く、専門書への寄稿も数多い。クラシックカーや模型など、多彩な趣味人でもある。既に2000年12月に亡くなられているが、晩年はトヨタ博物館の監修者、ヒストリカルアドバイザーとしてご活躍され、彼の収集した膨大な資料は同博物館図書閲覧室特別閲覧室「五十嵐文庫」として一部公開されている[1]。2005年に自動車文化の普及と歴史記録に尽力という理由で日本自動車殿堂入り[2][3]。

[参考・引用]
[1]トヨタ博物館ホームページ、
http://www.toyota.co.jp/Museum/index-j.html?frame=1-1
[2]五十嵐平達先生が、2005年「日本自動車殿堂者」に選ばれました。、
http://www.npo-ttj.com/dendo200500005.html
[3]NPO法人 トランスポート・トラスト・ジャパン、
http://www.npo-ttj.com/indexTTJ.htm
[4]郷愁の自動車・カタログギャラリー、
http://blog.so-net.ne.jp/hide-g/←このブログのカタログ収集も半端ではない。参考まで。
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Posted on 2007/05/07 Mon. 17:18 [edit]

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