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ぼくは はしごしゃ  

ぼくは はしごしゃ

久しぶりに消防車絵本を紹介しよう。表紙のベンツのはしご車が目に留まって、最近手に入れた「ぼくは はしごしゃ」(沢木昌子・文、柿本幸造・絵、ひかりのくに昭和出版)である。

「ひかりのくに」は昭和の幼児向け絵本では外せない月刊保育誌で、本書は昭和41年出版の古い物だ。「ひかりのくに」に限らず、昭和の保育絵本には消防自動車を題材にしたものも少なくはないが、“ベンツ”が登場する(ブランドバッジが誇らしげに描き込まれている)のは珍しい。実際に日本の消防車としてベンツ車が日本の公道を走っていたのだろうか。調べてみると、本当に存在していたのである。

BENZ-METZ DL300h
BENZ-METZ DL300h[5]
鋼製4連30m油圧式リフター付はしご車
東京消防庁に導入された鋼製4連30m油圧式リフター付はしご車[1]

このはしご車はベンツ社のシャシー(LF1113型)に、艤装をメッツ(Metz)社が施した、鋼製4連30m油圧式リフター付はしご車(DL30h型)というもの。[1]によれば昭和40年(1965)度に東京消防庁が2台輸入し、本書が出版された昭和41年(1966)年度にも1台導入している(ベンツ・メッツからは昭和30年度にも鋼製5連30m機械式はしご車を1台導入している)。このはしご車は国産にない数々の機能を要していた。まず油圧式リフターが装備されている点。ワイヤが切断されてもリフターが落下しないようにブレーキ装置も搭載。当時国産のはしご車には、梯子を伸ばしたときに自重で「てい体」(梯子の部分)[2]がスルスル縮まないように長さを固定するための安全装置「掛金」[3]が必要であった。しかし、この舶来のはしご車には掛金が付いていなかった。またてい体を縮めるための引き込みワイヤが付いていたため、てい体は自重に頼らず水平状態でも縮めることが出来た。昭和43年以降は国産はしご車が主流になるようだが、最近の日本の消防車両の中にもベンツ・メッツ製のものは存在するようである[4]。

SIKU DL300h #3 SIKU DL300h #2
SIKUのはしご車DL300h、ホースリールの欠落が残念

以上のように本書の主人公・ベンツのはしご車は、実際に国内でも運用されていたことはわかった。さて、私が何故このDL30hはしご車の勇姿が気になったかというと、このはしご車のミニカーを所有していたからだ(写真)。ドイツのミニカーで有名なSIKU製DL30hはしご車である(品番V261)。子供の頃、両親に買ってもらってずいぶんこのミニカーで遊んだ。今は息子に譲ったが、その精巧さ(てい体は3連となっているので梯子の構造は正確には再現されていないが)とプロポーションの良さが気に入って、マッチボックスのそれとは明らかに取り扱いを区別して遊んでいたため、40年以上も前のものにしては割と綺麗な状態で残っている。残念ながら特に気に入っていたホースリールの部分が紛失しており、完品ではないけれども今でも思い出の一台だ。

ぼくは はしごしゃ その1

本書はベンツのシャシーに巨大な“てい体(はしご)”を艤装する場面から始まる。「エンジンは190馬力。とても力持ちで、スピードが出るんだ」と言っているが、[5]によれば1966年製DL30hは排気量5638ccの150PS(仏馬力)となっている。仕向け地での改造によってエンジン仕様もいろいろあるのかもしれない。最高速度は94km/hということだから、確かにこの巨体(全長:8.85m、全幅:2.4m)にしては速い。

ぼくは はしごしゃ その2

この主人公が4連式梯子のDL30hをモデルにしたことは上の挿絵からもわかる。子供が風船を飛ばしてべそをかいていたときに、働くのはこの時とばかり梯子をスルスルと伸ばすシーン。確かに4連になっている。でも間違えて“アドバルーン”を捕まえるところが昭和を感じる。

ぼくは はしごしゃ その3

工場が出火してもはしご君の出番はない。でも隣のビルに火が燃え移りそうだということで、はしご君に出動命令が出た。待ってましたと意気揚々と出動するはしご君の表情が実にいい。この頃から日本国内でも高いビルが建ち始め、はしご車の出番が多くなる。当時の先進車両だったベンツ・メッツの導入を契機に、国産のはしご車の性能が向上していく時代の変化の象徴としてエポックメイキングなしょうぼうじどうしゃ絵本ではないかと思う。

化学車のモデルは? ポンプ車のモデルは?
謎の化学車とポンプ車

さて表紙を飾る3台の消防自動車。はしご君の両隣の2台のモデルが謎である。右側のポンプ車は、グリルの形状から日産のPS580とかFS581ではないかと思ったが全体のプロポーションが少し異なる[6][7]。型式はわからないが、ここで紹介されているトヨタの消防車の方が全体の印象は一致する。

謎の2台のサイドビュー
謎の2台のサイドビュー

一方、左側の化学車(本書8頁で仲間の化学車が駆け出したという場面から推定)の方は、フロントやサイドビューが描かれた挿絵から調べてみたが、モデルを特定することは出来なかった。昭和の消防自動車にお詳しい方、何か情報をお持ちでしたら教えて下さい!

本書の作者・沢木昌子氏のことはわからなかったが、挿絵の柿本幸造氏は、1915年広島出身の童画家。「どんくまさん」シリーズ(至光社)の挿絵画家として知られる。1959年小学館児童文化賞受賞[8]。

絵本とミニカー

[参考・引用]
[1]災害と戦ってきた装備の変遷 消防装備史、東京消防庁装備部・監修、p36-43、東京法令出版、2008
[2]第26図 はしご車各部の名称、第四編 はしご自動車操法、消防操法の基準、総務省消防庁ホームページ、
http://www.fdma.go.jp/concern/law/kokuji/hen51/51020003020.htm
[3]安全掛金取り外し、モリタテクノスホームページ、
http://www.morita-technos.com/overhaul/version_up/002.html
[4]日本のはしご車、消防車両紹介、FIRE RESCUE EMS、
http://www.signalos.co.jp/
[5]DL30h、FAHRZEUGE、PARKPLATZ Historische Feuerwehrfahrzeuge、WOCHE DER HELFER FASZINATION FEUERWEHR、MERCEDES-BENZ MUSEUM、
http://woche-der-helfer.mercedes-benz-classic.com/Teilnehmerfahrzeuge
[6]ニッサントラックの歩み、草ヒロ探検隊、2011年8月24日、
http://kusahiroexploration.blog107.fc2.com/blog-entry-1741.html
[7]ニッサンPS580消防車、自動車のふるさと、
http://backcountry.cocolog-nifty.com/photos/furusato/imgp0775.html
[8]柿本幸造、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%BF%E6%9C%AC%E5%B9%B8%E9%80%A0
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Posted on 2014/03/21 Fri. 14:35 [edit]

category: picture books about automobile/クルマノエホン

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コメント

いいなー

絵本で描かれた消防車もイイし、
思い入れのあるミニカーがまたイイですね!
そして実車の写真も可愛くてオシャレな消防車だ!!
独特の雰囲気があってイイですね〜。

URL | アソラボ #-
2014/03/21 18:25 | edit

Re: いいなー

この絵本はネットの古本屋で見つけて即決でした。
ホント、柿本さんの挿絵が素敵です。
DL300hは今の消防車にないプロポーションがたまりません。
働くクルマも旧車のデザインは捨てがたいですね。
ミニカーもいいでしょ。
大事に取っておいてよかったです。

URL | papayoyo #-
2014/03/21 21:08 | edit

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