公開されたダイムラーの自動運転試作車

先日、幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN 2013に初めて出かけてみた。CEATEC JAPANはアジア最大級の最先端IT・エレクトロニクス総合展である[1]。この領域はどちらかというと苦手なのだが、「ナイト2020発売?」でも紹介した日産自動車が開発中の自動運転車が見られるなど大手自動車メーカーも出展する。さしずめ来月開催される東京モーターショーの先行イベント的な意味合いも持つため、クルマ好きにも興味深い展示会なのだ。現代の自動車は、映像・情報・通信の技術を抜きには語れない。好き嫌いは別にして。

かつての東京モーターショー見物と同様に、東京ディスニーランドよりもさらに先の京葉線海浜幕張までのちょっとした小旅行を経て幕張メッセに到着。会場ではスマホを利用したアプリのデモなどが多くて、当然来場者のほとんどは片手の中の画面を見つめ、指で画面を触る人たちばかり。未だガラケーユーザーのお父さんにとって、パカッと蓋を開けるのが恥ずかしい雰囲気。「スマホを持たないあなたが、何故CEATECなんかに行ったの?」という妻の指摘は確かに正しい。とにかくガラケーでは、世の中の技術の進歩に触れられないことを痛感。今、真剣にスマホへの機種変を考えている。

日産デモスペースの全景
日産デモスペースの全景
日産デモの様子
日産デモの様子



さて、そんな私にとって数少ない関心事の一つであった自動運転車走行デモについて。日産の展示ブースは、トヨタやホンダに比べて簡素なものだったが、隣の建屋の走行デモ&試乗エリアには巨大な走行コースが設けられていた。トヨタの「Winglet」、ホンダの「UNI-CUB」など異形マイクロモビリティの試乗コースも設置されていたが、電気自動車リーフが2台走行できる日産デモエリアの広さは別格。排気ガスを出さないEVの成せる技である。さすがに屋内走行なので、「ナイト2020発売?」での動画のようなビュンビュン走るデモではない。コースもシンプルで、認識する対象の車も一台のみ。歩行者もいない。非常に限定された環境下での自動運転走行なので、実用化というにはまだほど遠い印象。それでもドライバーがハンドルに手を触れずに勝手に動いていく自動車を目の当たりにする機会は、ほとんどの観客が初めてのコトだったろう。それだけに関心も高く(連日ニュースやワイドショーで紹介されていましたね)、自動運転車には多くの衆目が集まった。

ホンダ「UNI-CUB」試乗の様子 「UNI-CUB」に対するコメント
(左)ホンダ「UNI-CUB」試乗風景(右)「UNI-CUB」に対するトヨタ・日産TOPのコメント

その日産が自動運転車の市販化計画を発表してからわずか2週間足らずの先月9日、ダイムラー社はフランクフルトモーターショーに先立ち、自社の開発した自動運転技術を公開した[2]。

8月にはメルセデス・ベンツS500ベースの自動運転研究車両が、ドイツ国内のマンハイムからプフォルツハイムまでの103kmを自動運転走行することに成功したのだそうだ。このコースは「じどうしゃのはつめい~カール・ベンツ~」でも紹介したカール・ベンツの妻ベルタ・ベンツが、1888年に夫に内緒でベンツ3号機に乗って、女性として初めて自動車ドライブをした道程を辿っている[3]。創業者に敬意を表した粋な計らいである。このデモ走行の様子は、YouTubeの動画で見ることができる。



詳細版はこちら
http://www.youtube.com/watch?v=KgmDgSTmncc
http://www.youtube.com/watch?v=kWruuRQTmSo

自動運転車、できてるやん!欧州の狭い街並みをフツーに走っとるがな。ランナバウトも、渋滞時や交差点のモードも、まるで人が運転しているかのように実に自然な走りを見せている。動画を見る限り、歩行者や停止車両、標識や路面サインの識別など認識技術もかなりレベルの高い領域まで開発が進んでいるようだ。“Das Beste oder nichts(最善か無か)“。ここまで詳細なテスト走行の様子を公開できるのも、「新しい歴史は我々が作る」という彼らの強い自負があるからなのだろう。恐るべしダイムラー。

日産は2020年までに自動運転車の市販化を目指すそうだが、ダイムラーの技術なら2、3年先でも発売できるのではないか、そう思わせる完成度。当社の幹部は、具体的な発売時期については言及していない。開発は可能だが、各国の安全当局が自動走行を認めないだろうと語っている[2]。言い換えれば、当局が許可さえ出せば、いつでも発売できるんだぞという自信の表れでもある。

同幹部はまた、同社がGoogleよりもはるか昔の30年近く前から自動運転技術の研究開発に取り組んでいることを強調したことからも[2]、先行発表する新参者を牽制しているように見える。

一方、真打トヨタ自動車も11日、自動運転技術の一部を2015年にも実用化すると発表した。こちらは‘90年代後半から開発に着手しているという[4]。まずは高速道路限定の自動運転と思われるが、「日本のロボット・カーたち」でも紹介した車間維持システムや車線維持支援システムなど、高速道路を自動走行するための基盤技術は既に実用化されている訳で、‘15年というのはそれほど非現実的な目標ではないだろう。

ところでトヨタはこの発表で、約2年前から自動運転の公道実験を行っていることをカミングアウトした。先月26日には、日産が公道実験用に自動運転研究試作車のナンバーを国内で初めて取得したと報道されたが[5]、トヨタは国交省に黙って無許可で公道実験を行っていたということだろうか?科学技術の進歩に実証プロセスは必要不可欠なので、むしろ欧米のように研究目的の公道実験に対しては規制緩和があってもいいと思う。しかし安全にも関わることなので、関係省庁も含めきちんとした情報公開やガイドライン作りをお願いしたい。『実験車走ってますよ』表示とかね。

日産の自動運転車市販化の宣言は、業界を大いに刺激したようで(もちろんGoogleカーが波を起こしたのは言うまでもない)、ここにきて自動運転車の開発競争がいよいよ激化してきた。その中でのダイムラーの完成度は、素人目で見ても突出している。‘20年までに発売をコミットした日産としては、生産車開発やFCV(燃料電池車)技術開発などで提携をしているダイムラーに、自動運転技術でも助け舟を出してもらうのだろうか。ゴーン社長、さあどうする?

ロボット自動車・サリイ
(上図)ずっと探しているクルマの絵本、ロボットカー(自動運転車)が主人公の「ロボット自動車・サリイ」。誰か売ってくれないかなあ、手ごろな値段で。出版社様、復刻でも構いません。自動運転車が盛り上がっている今こそ。

[おまけ]
CEATECの展示会場は、走行デモ&試乗エリアと、家電やコンピュータ、自動車メーカーなど一般の人にもお馴染みの大企業が出展するライフ&ソサエティステージ、そして一般人には馴染みが薄いが、業界エンジニアにとってはむしろこちらの方に関心がある、電池や半導体、電子部品メーカーなどが出展するキーテクノロジーステージの3つのエリアに分かれていた。キーテクノロジーステージはかなり専門的な知識や興味がないとついていけないが、その中に一台のデロリアンが展示されていた。タイムマシン?ではなくて、EV仕様のデロリアン。広島の㈱電源設計という会社が、事故で不動状態になったデロリアンを電気自動車に改造したのだそうだ。詳しくはこちらを。

デロリアンEV
デロリアンEV by ㈱電源設計

[参考・引用]
[1]開催概要、CEATEC JAPANホームページ、
http://www.ceatec.com/ja/outline/outline01.html
[2]メルセデス、自動走行車の実験に成功、JOSEPH B. WHITE、ウォール・ストリート・ジャーナル、2013年9月10日、
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323410304579066361485078256.html
[3]ベルタ・ベンツ・メモリアルルート、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88
[4]トヨタは高速道限定「自動運転車」15年実用化へ、SankeiBiz、2013年10月11日、
http://www.sankeibiz.jp/express/news/131011/exb1310110918000-n1.htm
[5]日産が「自動運転車」にナンバー取得 国内初の公道実験へ、産経ニュース、2013年9月26日、
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130926/biz13092617470021-n1.htm
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