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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

MAZESCAPES  

MAZESCAPES

ほとんど家の中で過ごした春疾風(はるはやて:最近は爆弾低気圧などという言葉が氾濫してまったく風情がない)の先週末。こんなとき、小4に進級したばかりの息子はやることがなくてつまんないとうるさい。DVDでハリポタを見たり、DS、ボードゲームに付き合ってもなお時間を持て余す小怪獣。そこで時間つぶしにとクルマの絵本の書棚から取り出して渡したのが“MAZESCAPES”(ROXIE MUNRO・作、SEASTAR)という絵本。MAZESCAPESという言葉は辞書にはなく、maze(迷路)とescapes(脱出)の造語のようだ。複雑に入り組んだ市街地道路やハイウェイを辿って目的地までの道を見つけるというよくある迷路絵本ではあるが…。

MAZESCAPES その1
絵本を持っていざ出発!(”MAZESCAPES”より)

これがなかなか凝った仕掛けになっている。まずは、スタートA地点から次のページのB地点、そして次はC地点…とアルファベット順に道を辿りながら最終目的地を目指す王道の“ABC”トラベルゲーム。しかし、この絵本では左にめくって目的地の動物園に着いたら終わりではなく、今度は右にめくりながらさらに別なルートを探してスタート地点へ戻る。往復で通常の絵本の2倍楽しめるのだ。それだけではない。冒頭の挿絵が示すように、この絵本を持って乗り込むクルマ(RV)でゲームを楽しみながら旅をするという想定になっていて、読者をバーチャルな世界へと引き込む工夫もされている。そして、この錆色のRV(我が家のXトレイル君と同じではないか)を各場面の中から探すという別なゲームも加わる。もちろん眩暈がするほど細かくて複雑な迷路の中には、各場面の往路復路に1台ずつRVが隠れている。

MAZESCAPES その2
隠れ文字Yのヒントは“yard sale”(”MAZESCAPES”より)

「ウォーリーをさがせ」はこれだけではない。それぞれの絵の中に描かれた自転車とスクールバスと犬を散歩させている人の数はいくつ?なんて課題も課せられる。絵が半端なく細かいので、最近老眼が進んだ私にとっては拷問以外なにものでもない。さらにこの絵の中には隠れ文字もあって、その文字を当てるというお題まである。また、隠された文字のヒントが絵の中に描かれているという。救急車(ambulance)が走る近くにはAを見つけられるといったように。さすがにジャパニーズの息子には無理だなあと思っていると、隣のページの隠れ文字Yのヒントは何だろう?ということになった。全くわからないので絵本の最後に付いている答えのページをみると、家の庭のような場所に人がたくさん集まった箇所を指して“yard sale”とある。ガレージセールと言った方が日本人には馴染みがあるだろう。garage saleの米語だ。こりゃ、大人でも難しい。

付録の紙のクルマ
付録の紙のクルマ

この絵本には小さな紙のクルマが6台も付いていて、このクルマで迷路を走らせても遊べる。このように遊ぶ工夫がてんこ盛りの絵本なのだが、巻頭に“What other games can you create and play with this book?”とあるように、自分で新しい遊びを発見させるのも、またこの絵本の役割なのだろう。愚息は、上述のゲームだけで十分時間をつぶせたようだが、まだ全てをやり尽くしていないので、暇なときはしばらくこの本が役に立ちそうだ。

MAZESCAPES その3
複雑なラウンドアバウト迷路(”MAZESCAPES”より)
一般的なラウンドアバウト
一般的なラウンドアバウト(”MAZESCAPES”より)

迷路で息子と私がけっこう苦労したのが、上図の丸い放射状の道。日本ではほとんどお目にかかれないラウンドアバウトという道路形態。別のページに描かれたシンプルなパターン(下図)が一般的で、信号なしで交差点を成立させる方法だ。主に欧米、特にイギリスでは全国的にこのタイプが主流で、[1]から引用すると「円形状の一方通行ロータリーを交差点に作り、車は交差点に来るとロータリーに合流する。ただし、ロータリーを既に走っている車が優先となる。ロータリーに入ると、その中をぐるりと回って自分の目的の方向の道へ出て行く」仕組みの道路だ。私は海外ではアメリカ本土での運転経験があるが、ラウンドアバウトは未体験である。有名なところでは、パリの凱旋門を中心としたシャルル・ド・ゴール広場などがあるが、この巨大でかつ無法地帯のラウンドアバウトは、日本人にとっては超難所らしい。出るに出られず1時間周り続けたご婦人もおられるとか。絵本の作者はアメリカ人なので、フリーウェイの大規模なインターチェンジなど、いかにもアメリカ的なシーンも登場するが、このラウンドアバウトは、パリの街並みを凝縮したような風景になっている。

究極のラウンドアバウト_パリ・シャルル・ド・ゴール広場
究極のラウンドアバウト(パリ・シャルル・ド・ゴール広場)[2]

ラウンドアバウトは一見合理的にも見えるが、[1]によれば一長一短があるようだ。私も通勤時よく経験するのだが、例えば交差側にほとんど車が通過しないような交差点で信号待ちをさせられるのは実に腹立たしい。このような交通量が適度に少ない交差点ではラウンドアバウトにしてノンストップで目的の方向に進めた方が、精神的にも環境的にも優しい。一方、交通量が非常に多い交差点でこの手法を用いると、ロータリー内で渋滞が起きる可能性があり、最悪の場合ロータリーから抜け出せなくなって、東日本大震災でも発生した「デッドロック」状態を引き起こすリスクがあるという。信号機があれば、平時の場合はこのデッドロック現象を起こすことはないだろう。また、ロータリー用に従来より広い土地が交差点として必要になるというデメリットもある。歩行者をどのように安全に横断させるかといった問題もある。歩行者が待つ横断歩道の手前できちんと一旦停止ができるだろうか。あるいは、歩道橋という高負荷を歩行者側に強いるのか。

ラウンドアバウトの仕組み
ラウンドアバウトの仕組み[3]

以上のようなデメリットはあるものの、実際英国など数多くの先行例もある訳だし、この日本でも検討の余地はあるはずだ。交差点内での事故は非常に多いが、ロータリーを既に走っている車が優先となるので、流入時速度が抑制されて重大事故低減につながる。実際にラウンドアバウトの設置によって交差点事故が大幅に減少したという報告例もある[4]。

そこで日本でもこのラウンドアバウトを導入し、実証実験を行うという初の試みが長野県飯田市でスタートした[5]。ラウンドアバウト通行中の様子をライブカメラで見ることが出来るので、ラウンドアバウトをご存じない方は一度ご覧になられると良いと思う。直接体験をしたければ、長野へクルマを飛ばすべし。

ROXIE MUNRO
ROXIE MUNRO[7]

さて、絵本の作者ROXIE MUNROは、ニューヨーク在住の芸術家、イラストレーター。テキサス生まれで、メリーランド育ち。6歳のときに、全国的な美術コンクールで初めての賞を取る。メリーランド大学とMaryland Institute College of Artで学び、ハワイ大学で芸術学士号を得る。彼女は人生の大半を芸術家として忙しく働いてきたが、一時は、フリーランスのテレビのアニメ画家としてワシントンD.C.で過ごしたこともある。このときの経験は、絵を描くことはもちろん、プレッシャー下で集中すること、締め切りに間に合わせることの訓練になった。彼女はCBSやワシントンポスト紙、AP通信などを顧客に持ち、描いた絵はニューヨーカー誌の表紙を何度も飾っている。彼女はおもに町並みを絵にすることが多く、その作品は全米のあらゆるギャラリーや美術館で展示されたり、個人や企業、公共の様々なコレクションで所有されている。彼女は本書も含め30冊以上の児童書を書いているが、主な著書に、同じく迷路絵本の“Amazement Park”や"Ecomazes"(2010年スミソニアン・ベスト科学絵本受賞)、“The Inside-Outside Books of”シリーズでは様々な都市の絵本を描いている。中でも“The Inside-Outside Books of New York City”はニューヨークタイムズ誌のベストイラスト賞を受賞。“Blimps”は翻訳されて「ひこうせん」(ロクシー・マンロ・作、天沼春樹・訳、福武書店)として出版されている。“Feathers, Flaps, and Flops: Fabulous Early Fliers”はスウェーデン人の作家・写真家である夫、Bo Zaundersとの共著である[6]。

[参考・引用]
[1]渋滞学、西成活裕、新潮選書、2006
[2]ラウンドアバウトのすゝめ、青い西瓜の日々、2013年2月24日、
http://suikaotoko.hatenablog.com/entry/2013/02/24/044434
[3]信号いらず丸い交差点、日本に定着するか?、読売新聞、2013年2月23日、
http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/news/20130223-OYT8T00700.htm
[4]ラウンドアバウトの計画・設計ガイド(案)Ver.1、p9、(社)交通工学研究会、2009、
http://www.jste.or.jp/Activity/RBT_guide_v1-1.pdf
[5]交通事故を低減できるか!?日本初「ラウンドアバウト」式交差点の実証試験を開始、msnトピックス、2013年4月4日、
http://topics.jp.msn.com/otoko_blog/hobby/article.aspx?articleid=1763816
[6]About Roxie、Roxie Munro Website、
http://www.roxiemunro.com/aboutroxie.html
[7]Roxie Munro、Children’s Literature、Author&Illustrator Booking Service、
http://www.childrenslit.com/bookingservice/munro-roxie.html

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(2001/07/01)
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(2008/03/01)
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Posted on 2013/04/11 Thu. 22:39 [edit]

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