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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

THE RACECAR ALPHABET  

THE RACECAR ALPHABET

前回に因んでレースカー絵本を一冊。“THE RACECAR ALPHABET”(Brian Floca・作、Atheneum/Richard Jackson Books)というカーレースを題材にしたABC絵本である。児童図書と侮るなかれ、イラストがまずいい。ABC絵本といっても単語の羅列ではなく、シンプルな散文がそれぞれの挿絵を説明する、なかなか渋い絵本だ。絵本に興味はなくても、レーシングカー好きな方にはコレクションにお奨めである。

カーレースを題材にしたABC絵本には、この他にも私の知る限り“For the Love of NASCAR”(Michael Fresina・文、Mark Anderson・絵、Triumph Books)というこれまたマニアックすぎる本があるのだが、こちらはどちらかというとNASCARレーサーたちが主人公の絵本。本書はTHE RACECARというくらいだから、古くは1901年のFord 999から2001年のF1カー、Ferrari F1-2001まで、栄光のレースカーたちのオンパレード。いずれも自動車レースの主役たちを児童向けのABC絵本にしてしまうアメリカという国は、本当にクルマが大好きなんだなあと改めて感心してしまった。

Ferrari F1-2001 from the racecar alphabet
Ferrari F1-2001(“THE RACECAR ALPHABET”より)

しかしTPP交渉の中では、日本の軽自動車規格は非関税障壁だなどとふざけた言いがかりをつけるアメリカに対して、「郷に入れば郷に従え」と不満も言いたくなるが、恐らく彼らの多くは軽自動車やエコカーなんて自動車だと思っていないのだろう。そんなおもちゃのような、エンジン音も出さないような真っ当なクルマとは言いがたい”パーソナルモビリティ”を優遇するなどけしからんと言いたげだ。本書に登場するようなかっ飛びのレースカーこそが彼らにとって尊敬し得るクルマなのだ。一方、エコカーが大人気で、暴走による人身事故が大きな社会問題になっているこの日本では、スピードレースなんて悪者扱いなのだろう。「燃料電池車のひみつ」なんて児童書はあっても、Super GTに参戦するようなレーシングカーは、絶対に絵本にはならないだろうなあ(過去には「せかいのれーす」や「はしれサファリラリー」といった幻の絵本があったのだけれどね)。星野仙一は知っていても、星野一義を知る子供はほとんどいないだろう。今や草食系の、資源にも乏しい日本では当然の帰結だと理解はしても、自動車生産台数世界第3位のこの国で、スポーツ文化としての自動車レースが定着しないのは残念である(かつてのF1ブームは、バブル期の一過性のものでしかなかった)。

さて、興味深い本書の中身であるが、特徴的なところをピックアップして紹介する。
構図:この絵本はかなり大胆な構図が多く、カーレース本らしく絵にダイナミズムを与えている。ド迫力のBMW328(1940)やMercedes-Benz 300SL(1952)の疾走シーンなどなど。

BMW328 from the racecar alphabet
BMW328(“THE RACECAR ALPHABET”より)

Mercedes-Benz 300SL from the racecar alphabet
Mercedes-Benz 300SL(“THE RACECAR ALPHABET”より)

頭韻:英語の散文なので韻を踏むのは当然の技法だが、ABC絵本なので頭韻が圧倒的に多く、その活用が徹底している。たとえば、
Motor, mighty motor, maker of motion-roars like a monster, minded and mended by many mechanics.(自動車、強力なエンジン、動きを産み出すもの-このマシンは怪物のような唸り声を上げ、多くのメカニックらによって整備され、修理される)”
Curve acoss the course cause cars to careen and to crowd and come close to colliding.(コースを曲がるとき、クルマは斜めに傾き、ひしめき合い、衝突しそうなくらい間隔が詰まる)”
なんか早口言葉みたい。

Jaguar C Type from the racecar alphabet
Jaguar C Type(1951):Motor(“THE RACECAR ALPHABET”より)

Bugatti Type 35 from the racecar alphabet
Bugatti Type 35(1924):Curve(“THE RACECAR ALPHABET”より)

クラッシュ:カーレースといえばクラッシュは付き物だが、本書には複数箇所、大破したクルマが描写されている。子供絵本に事故場面かと日本人(の保護者)は面食らってしまうが、
Racing, rapid riding, rushing, roaring, risking.(レースとは、疾走、加速、轟音、リスク)”
とあるように、レースはリスクが伴うものだときちんと現実を伝えるところが良い。極め付きは、
X-ray after an accident.(事故ったらX線/レントゲン)”
完璧である。

それにしても俺の和訳はうまくないなあ。精進、精進。

Mercedes-Benz W154 from the racecar alphabet
Mercedes-Benz W154(1938)(“THE RACECAR ALPHABET”より)
表紙のカーナンバー26番もこのクルマ

作者のブライアン・フロッカ(Brian Floca)氏は、アメリカ、テキサス州生まれ。1991年ブラウン大学卒業(歴史と美術を専攻)、スクール・オブ・ビジュアル・アーツで芸術学修士号(MFA)取得。在学中にロードアイランド・デザインスクールでデザインを学び、そこで出会った著者アヴィ(Avi)の小説『光の街、闇の街』(未訳)に描いた挿し絵で注目される。翻訳作品に『ポピー –––– ミミズクの森をぬけて』(アヴィ・作、あかね書房)などがある。『月へ アポロ11号のはるかなる旅』(偕成社)は、2010年の「ロバート・F・サイバート知識の本賞」(良質の児童向けノンフィク ションを対象とした賞)で次点となった。本書はやはり日本では需要がないせいか未訳である。現在、ニューヨーク州ブルックリン在住[1][2]。

Brian Floca
Brian Floca[2]

ABC絵本に習って、お題は自動車レースをいろは作文で。

For the Love of NASCAR その1
い:一気に加速、レースカー("For the Love of NASCAR”より)

はしれサファリラリー その1
ろ:ロールバーで固められたラリーカー(「はしれサファリラリー」より)

スピード王ものがたり その1
は:ハンドルに命を預ける、孤高のドライバー(「スピード王ものがたり」より)

Mercedes-Benz 300SL@Nürburgring
に:ニュルブルクリンクはサーキットの聖地(写真は1952年ニュルブルクリンク・グランド・ジュビリー・レースでのMercedes-Benz 300SL[3])

F・1おやじ その1
ほ:本田宗一郎、エンジンにいのちをかけた男(「F・1おやじ」より)

お後がよろしいようで。

Porsche 956 from the racecar alphabet
Porsche 956(1982)(“THE RACECAR ALPHABET”より)

[2013.3.17追記]
たぶんこの絵本は好きだろうなあ、と本ブログでもお馴染みの自動車アーティスト、ミゾロギアキラ氏に「こんな絵本ありまっせ」とタレコミを入れたところ、たいそう気に入っていただけました。彼のブログにも取り上げていただき、早速ご自身でもAmazonで注文されたようです。リンクもしていただきありがとうございました。
http://blog.goo.ne.jp/gtlr1128/e/a95fe3302bdb14d65148663fe9b365c6





[参考・引用]
[1]ブライアン・フロッカ、著者紹介、偕成社ホームページ、
http://www.kaiseisha.co.jp/index.php?page=shop.author_page&author_id=2279&vmcchk=1&option=com_virtuemart&Itemid=15
[2]About、Brian Flocaホームページ、
http://www.brianfloca.com/About.html
[3]第7回 メルセデス・ベンツ300SL - SLクラスの60周年を祝して、当摩節夫、カタログとその時代、M-BASE、2012年5月28日、
http://www.mikipress.com/m-base/2012/05/7.html
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Posted on 2013/03/16 Sat. 14:17 [edit]

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