くまたくんちのじどうしゃ

くまたくんちのじどうしゃ

日曜日のレゴ製作で久しぶりに渡辺茂男氏の作品を読み返した。渡辺氏は3人のご子息をモデルにしたクルマノエホンを残されている。長男鉄太氏がモデルの「てつたくんのじどうしゃ」、次男光哉氏がモデルの「みつやくんのマークX」、そして今回紹介する三男光太氏がモデルの「くまたくんちのじどうしゃ」(渡辺茂男・文、大友康夫・絵、あかね書房)である。長男・次男が実名で、三男坊は“くま”となった。ご本人は「なんで俺だけが」と思われているかもしれないが、本書も父・渡辺氏の子への愛情が随所に感じられる、微笑ましい作品となっている。

ストーリーは主人公くまたくんの家族がじどうしゃを購入するまでのお話。じどうしゃを買おうということになったくまさん一家。お父さんくまの提案で、日曜日にみんなでじどうしゃを見に出かけることになった。いろいろなじどうしゃに目移りしてしまうくまたくんの家族。気に入ったクルマはあったのだろうか。

そういえば、我が家は家族で車選びに出かけたことがあまりなかったかもしれない。近所にあるダイエー系の複合商業施設ショッパーズプラザ横須賀の中には、トヨタ車が常設展示されているスペースがあるので、たまに通りすがりに息子と試乗することはある。でもクルマを買おうと本気モードでショールームに出かけた記憶はほとんどない。現在の愛車Xトレイルを物色し始めた頃、横浜の中古車センターへ家族で実車を見に出かける予定だった。でも途中で大きな事故渋滞にはまり、結局諦めて引き返す羽目に。その後、路上で見かけた小豆色のXトレイルに一目ぼれして1点狙い、既に廃止色だったのでネットで探しまくり購入に至った。あの時、中古車センターに出かけていたら、違う色、あるいは全く別のクルマを選んでいたかもしれない。渋滞も運命の糸の1ピースだったのだ。先代カングーのときも色・車種ともに指名だったので、やはり試乗車を自宅まで持ち込んでもらい妻の許可を得た。我が家の場合、もちろん家族の意見は尊重するが、最初に車種を選ぶのは基本私だ。ネットなどで事前に情報を収集しやすくなったこともあって、本書のように車選びにいろいろなクルマを見て回ることは少なくなった。

くまたくんちのじどうしゃ その1 PUMA GT
左:ピューマ9X(「くまたくんちのじどうしゃ」より)と右:ホントにあったPUMA GT(1967)

さてくまたくん一家、最初は新車のショールームを眺めた。ピカピカの真新しいスポーツカー(ピューマ9Xとあるが、昔ブラジルにプーマ/PUMAという自動車メーカーがあったのじゃよ)が飾ってあった。「かっこいい!パパ、これかって!」というくまたくんに、「うん、いろいろみてからね」とそっけない。パパくまさんは私のように最初から中古車狙いのようだ。それが証拠に、見開きのイラストでは中古車情報誌を熱心に見ている。

次に立ち寄ったのは中古車センター。いろいろなクルマが所狭しと並んでいる。始めに試乗したのは軽自動車(スバル360)。宣伝文句には「ちいさなつわもの」とある。確かに日本車を代表する兵(つわもの)だが、パパくまさんにはちょっと窮屈。

くまたくんちのじどうしゃ その2
わかいふたりのハードトップ(「くまたくんちのじどうしゃ」より)

次に見たのが2ドアハードトップ(モデルは不明)。宣伝文句は「わかいふたりのハードトップ」嗚呼昭和の響き!。本書初版の1986年(昭和61年)頃にはまだハードトップは健在だったが、この絵本のようなピラーレスハードトップは、安全設計が大きく叫ばれるようになった‘93年には完全に消滅している[1]。

次に「4ドアもみてみよう」とあるが、このクルマ、日産マーチ(5ドアハッチバック)では?

くまたくんちのじどうしゃ その3
ポルシェ933(「くまたくんちのじどうしゃ」より)

「おやおや、外車もあるんだねえ!」とポルシェ933(ナンバーがFR-933)も見つけた。「かっこいい!」とくまたくん。「ハンドルが左がわについているから、運転しにくいよ」とパパ。「とてもむりよ」と現実的なママ。

2シーターの赤いスポーツカー(ホンダS600?)もあった。

くまたくんちのじどうしゃ その4
くまたくんのお気に入りジープ(「くまたくんちのじどうしゃ」より)

くまたくんがえらく気に入ったのはジープ(モデルは不明)。運転席に乗せてもらい、ハンドルにつかまって、「ぼく、大きくなったらジープを運転するんだ。」とご満悦のくまたくん。

バンもマイクロバスもあった。すると「おっ、これはいいぞ!」お父さんがオレンジ色のハイルーフワゴン(VW・タイプ2)を見つけた。くまたくんも「わあ、かっこいい!ぼく、乗りたいなあ!」と叫んだ。お母さんもこれは気に入ったようだ。3列座席の8人乗りで、後席を倒すとベッドにもなる。サンルーフも付いている。「これに乗って、キャンプに行こう!」みんなの意見は一致した。結局、このワーゲン・バスを購入したくまさん一家。早速、試運転に楽しく出かけました、というお話。

くまたくんちのじどうしゃ その5

何にでも「かっこいい」と食いつく好奇心旺盛なくまたくんに、我が愚息を重ねあわせる。男の子って、こういう時期が一番かわいいよね。恐らく目を細めながら執筆をされた渡辺氏の気持ちが、男の子を持つ父親にはよく伝わってくる。

自動車の販売方法が訪問販売から店舗販売に転換し始めたのが昭和40年頃[2]らしい。昭和42年発行の「ちいさい あかい じどうしゃ」にも家族で中古車販売場に出向く場面が出てくる。しかし、私が幼少の同じ頃、家族で販売店や展示場にクルマを見に行った記憶がないので、恐らくまだ訪問販売で購入していたのではないかと思う。本書が発行された80年代後半は、顧客を販売店へ呼び込む店舗販売が主流の時代。バブル景気で店舗数も拡大、店舗はより清潔にとリニューアルも進んだ。その後の景気低迷で、同じブランドにも関わらず系列の車種しか置かない「チャンネル」販売という縦割りの販売体制が限界を迎える。90年代後半には、トヨタのMEGAWEBや日産のカレストなど同じメーカーの別チャネルがひとつに集まって空間を共有する複合店舗が展開された[3]。

複合店舗の業態が自動車の販売促進につながったのかどうかはわからぬが、今やインターネットの時代、もはやネット空間が仮想の複合店舗と化している。私もやったように、インターネットで欲しいクルマを絞り込み、情報を収集した上で、実店舗あるいは実車持ち込みの訪問によって現物を確認するといった買い方だ。いすれはディーラーで商談をするのではなく、購入ボタンをポチッと押すようになるのかもしれない。

本の買い方もそうだ。最近は気になった本はネット、あるいは本屋で調べて、amazonかオークションで安く買う。本屋にぶらりと立ち寄り、本との偶然の出会いを体験する機会はめっきり少なくなった。ネット販売やいろいろなクルマを数多く揃える前述の複合店舗や大型の中古車展示場では、本書のようにクルマとの運命的な出会いはあるのだろうか。大きな買い物だし、車選びにそんなドラマがもっとあってもいいような気がする。

BMWカタログ
BMWからカタログが…

先日、商品に釣られてBMWの懸賞に応募してしまった。よせばいいのに、X5に興味がありますなんてアンケートにも答えちまったし。案の定、横須賀のディーラーから電子メールとX5のカタログがご丁寧に送られてきた。高級車となると敷居も高いが、たまにはディーラーでも覗いてみるか。絶対に買わない(買えない)けれどね。

[2013.2.6追記]
渡辺鉄太さんから伺った裏話。くまたくんちのじどうしゃ、ワーゲンバスのモデルはなんとトヨタ・タウンエース・ワゴンだった(「うちのじどうしゃ」のモデルにもなった)。渡辺茂男氏は、本書を書くためにこのクルマを購入したのだ。でも、どーみてもワーゲンバスだよね。大友さんの趣味だったのかな。渡辺茂男氏はトヨタ党で様々なトヨタ車を乗り継いでおられたそうだ。本書中の白いピラーレスハードトップは、所有されていたコロナ・マークⅡではないかとのこと(たぶん’84年発売の5代目X70系)。と、ここでハタと気づいた。みつやくんのマークXはマークⅡから取ったのではないかと。まさかマークⅡが後年Xにモデルチェンジするとは思いもしなかっただろうけど。

マークⅡH/T X70系
マークⅡH/T X70系

[参考・引用]
[1]ハードトップ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%88%E3%83%83%E3%83%97
[2]第17回マネージャーの基本(1)、マネジメントの原点、日本能率協会マネジメントセンターホームページ、
http://www.jmam.co.jp/column/column07/1188104_1535.html
[3]自動車販売店 売れる空間と仕組みの最新、空間通信、2007年1月29日、
http://www.fantastics.co.jp/car_hajimeni.htm
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