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トヨタ・パトロールFS20  

トヨタ・パトロールFS20

前回の「声のえほん・パトカー」の主人公はトヨタ・パトロールFS20。なんだ、初代トヨペット・クラウンRS型を白黒に塗ってパトカーに改修しただけだろ?と言われるクルマ通の方もおられるかもしれない。確かにベースはクラウンRSだが、FS20はれっきとしたパトカー専用モデルなのだそうだ。私も知らなかった。今回はこのパトロールFS20を少し調べてみた。

このパトロール専用モデルというのは、現在のパトカーも同様で、[1]によれば『ほとんどのパトカーは、各自動車メーカーに「パトロールカー」「パトカー」というグレードが市販モデルと別に存在しており、一般車並みのカタログもある。このカタログは警察関係者以外は請求・閲覧できないが、独自のルートで入手するパトカーファンもいる(全くどこの世界にも筋金入りのマニアが存在する)。例えば、見た目はY31セドリックセダン3000ブロアムやクラウンセダンロイヤルサルーン3000と同じパトカーでも、3000ブロアムやロイヤルサルーン3000の市販車には存在しないマニュアルトランスミッションを装備し、ギア比を加速重視に変更、必要最小限の装備を残し徹底的に軽量化されているため、エンジン性能は同一でも中身は全く別物である。バッテリーを大容量化しているモデルもある。』とある。FS20のようなパトロール専用車があるというのは、その筋の方には常識なのだ。一般市民のマイカーの改造は制限されているが、パトカーは実際、バリバリにチューンナップされているという訳だ。しつこいが、あくまで改造ではなく、正規のグレードということになっている。まあ、高性能車でぶっ飛ばす悪い輩もいるからね。パトカーも高性能化しないと。

初代トヨペット・クラウンRS型(1955)
初代トヨペット・クラウンRS型(1955)[7]
クラウンデラックス
1900ccデラックス[8]

シャシーのベースとなったのは、1955年に登場した初代トヨペット・クラウンRS型。スタンダードの直列4気筒1.5LのR型エンジン(マイナーでデラックスに採用された3R型は1.9L)から、ランクル(4駆のランドクルーザー)などに採用された直列6気筒3.9LのF型エンジンが搭載され、最高速度は150km/h、最高出力は110HP(82kW)/3400rpm)のスペシャルモデル[2][3][4]。1959年(昭和34年)に警察車両として正式採用された。それまでのパトカーは、米軍払い下げのジープ(「しょうぼうじどうしゃじぷた」もそうでした)やトラックなどで、本格的な国産乗用車ベースのパトカーとしては初の専用モデルだったらしい[5]。

TOYOTAエンブレム
エンブレムにはTOYOTAらしき文字が(「声のえほん・パトカー」より)

上記のような背景からエンジンだけでなく、トヨペット・クラウンのエンブレムが「TOYOPET」なのに対して、FS20では「TOYOTA」の違いがある。トヨタ・パトロールFS20のモデルと思われるミニカーや模型はいくつか存在するものの、RSとFS20が混同されていて、いずれのモデルも「TOYOPET」という間違ったエンブレムが付けられている(※)。改めて絵本「声のえほん・パトカー」の挿絵を見てみると、商標上の問題なのか正確なアルファベットはぼかされて確認できない。しかし明らかに文字数は「TOYOTA」と同じ6文字、「TOYOPET」の7文字ではないことがわかる。

(※)エブロの神奈川県警ミニカーは“TOYOPET CROWN RS21 POLICE CAR”という実在しないパトカーの名称になっている[3]。ニチモの1/22キットは、組み立て説明書こそ「トヨタ・パトロールカー」となっているが、パッケージの挿絵(小松崎茂・画)はTOYOPETのエンブレムという残念な結果となっている。ただしデカールには正しくTOYOTAと印刷されている[4]。

RSとFS20が異なるのはエンジンやエンブレムだけではない。寸法諸元も異なっている。[4]によるとニチモのキットに記されたFS20の基本スペックは、全長:4,485mm、全幅:1,695mm、全高:1,540mm。対してRSのそれは、全長:4,285mm、全幅:1,680mm、全高:1,525mm[6]。全体的に一回り大きくなっている。4気筒(RS)から6気筒(FS20)へ、縦置きで2気筒分増えたので、エンジンルーム拡張に伴うオーバーハング化で全長が200mm延長されるのはわかる。[4]の管理者ノスタルPCさんも『幅・高さも15mmとわずかに大きいですが、高さはサスペンションなどの足回りでも変わりますし、ボディ全体をひと周り大きくするのは、変更するプレス部品の数が多くなってしまい、調達の上からも面倒と思われるので、エンジンルームだけが前方に200mm延長されている、と考えるのが順当ではないかと思います。』と述べておられるように、全長、全高の差に対して、全幅が異なる合理性が見当たらない。そこでもう少し調べてみると、マイナーチェンジ後のクラウンデラックスのスペックは、全長:4,410mm、全幅:1,695mm、全高:1,530mmという資料があった[8]。マイチェンで大きくなっていたのだ。これがベースであれば全幅は同じなので合点がいく。

補助ランプの色
補助ランプの色の真偽は?(「声のえほん・パトカー」より)

またノスタルPCさんは、絵本「声のえほん・パトカー」の実に細かな描写に興味を持たれた。オート3輪が横転している場面のFS20に注目して欲しい。画像ではなかなかわかりずらいかもしれないが、フロントグリル前の警戒灯が赤色灯に点灯しているのだ(上図)。ところが別の場面、例えば夜の町を疾走するFS20では、スモールランプまたはフォグの扱いになっている(下図)。赤色に点灯するということは、ランプのレンズカバーが赤色のはずだが、そうすれば全ての場面で赤色灯になっていなければおかしい。確かに現代の白黒パトカーの警戒灯では、電気的に制御が容易になったLED技術などを用いて白色レンズでフォグランプを偽装しつつ、点灯時には赤色になるものがあるそうだが、1960年代前後でそれらの技術はまだ確立されていない。[3](正確には「クルマ少年が歩いた横浜60年代」(二玄社)からの引用)ではF20の当時の写真を見ることができるが、その写真からも赤色レンズを使用しているようには見えない。それでは何ゆえ、前述の場面では警戒灯が赤色に描写されていたのか?ノスタルPCさんによれば、安井敬造画伯の絵は『他に登場している消防の救助車、ヘリコプター、警察官の制服、司令室内の機器などを見ても、写真資料を入手して、キチンと描き分けている』とのことだし、エンブレムの記述も正確だ。とすれば、赤色警戒灯のバージョンも存在したのかもしれない。当時の資料が少ないだけになかなか興味の付きないF20である。

トヨタ・パトロールFS20
トヨタ・パトロールFS20の写真資料[3]

今回の考察については、小生が時々参考にしている「ノスタルジックパトカー の世界へようこそ・・・。」の管理者ノスタルPC様といろいろ情報交換をさせていただいた際のコメントを流用している。ご意見・情報を頂戴したノスタルPC様に改めて御礼申し上げる。
http://nostalgicpc.bbs.coocan.jp/?m=listthread&t_id=784

(2012.12.21追記)
「ノスタルジックパトカー」掲示板でのやり取りの中で、inomamo様より貴重な情報提供があった。なんとFS20には外観の違いで2種類あるとのこと。違いは白黒塗り分けのモールが異なることと、初期型にはBピラーにウィンカーが付いているのだ。絵本を改めて見てみると、Bピラーにウィンカーは描かれておらず、モールの形も確かに後期型だ。

FS20とRS20の違い
RS20(上)とFS20の初期型(中)・後期型(下)(inomamo様提供資料引用)

[参考・引用]
[1]パトロールカー、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC
[2]トヨタ・F型エンジン、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBF%E5%9E%8B%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3
[3]エブロ クラウンRS21 パトカー、あのコルトを狙え
http://blog.goo.ne.jp/saiun4gou/e/b8f4a447baf491a5989240acf715abe3
[4]ニチモ1/22「トヨタ・パトロールカー」、ノスタルジックパトカー の世界へようこそ・・・。、
http://2nd.geocities.jp/nostalgicpc/nichimo01.html
[5]ニチモ、トヨタ・パトロールカー、( ̄◇ ̄) 人間、、辛抱だ!
http://minkara.carview.co.jp/userid/240223/blog/20235415/
[6]トヨタ・クラウン、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3
[7]トヨペットクラウンRS型、日本の自動車技術240選、自動車技術会ホームページ、
http://www.jsae.or.jp/autotech/data/1-18.html
[8]トヨペット・クラウン、カタログで見る昭和30年代の車、
http://www.asahi-net.or.jp/~rf7k-inue/izen/no-2/rs31/rs31.html
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Posted on 2012/12/06 Thu. 22:19 [edit]

category: cars/車のお勉強

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