クルマノエホン livres d'images de voitures

楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

あわや…KQ  

京浜急行電車

先週25日の朝7時、会社に着くとエレベータ内で珍しく早い出社の同僚に声をかけられた。
同僚「○○さんのところ大丈夫だった?」
私「えっ、何のこと?」
同僚「知らないの?昨夜○○さんちの近くで土砂崩れがあって、京急が脱線してニュースで大騒ぎだよ。」
昨夜の出来事は全く知らなかった。朝が早いのでいつも早めの就寝、出がけはTVの朝のニュース音声を聞くのだが、その日に限って音楽を聴いていた。出勤時は雨も上がっていたし、車での通勤も京急沿線の国道16号は通らず、裏道の葉山経由で通勤する。だから道路の渋滞にも気付かなかった。早速、会社でYahooニュースを見る。ホントだ。事故現場は京急追浜駅と田浦駅の間。京急田浦駅の隣駅、安針塚駅が最寄りの、京急電車の往来が毎日の生活音になっている我が家の目と鼻の先での事故だった。重傷者も出ている。確かに昨晩の雨はひどかったが…。

京急田浦駅近くの中学校へ電車で通う娘に影響はないか。心配になって自宅に連絡を入れると、バス通学にして家を出たとのこと。あとで聞くと、国道16号は大渋滞で徒歩1時間をかけて学校に行ったのだそうだ。その後の復旧作業は難航し、結局27日の運転再開まで彼女は徒歩通学となった。崩れた崖の法面補修もまだ十分ではなかろうし、現在でも徐行運転が続いている。台風17号の接近が懸念されるが、とにかく京急沿線、特にこの辺りは横須賀特有の“谷戸(やと)”の風景が続き、多くのトンネルと急な斜面が連続する路線。大雨が降れば、どこが崩れてもおかしくないリスクを抱えている。実際‘97年には、さらに我が家に近い京急田浦駅と安針塚駅の間で同じような土砂崩れに伴う脱線が発生し、やはり負傷者が出ている[1]。

京急脱線事故現場その1
京急脱線事故現場

にも関わらず、JR在来線のような狭軌ではなく、標準軌の京浜急行はビュンビュン系の高速鉄道として有名である。新幹線と違い、窓から見える町並みとの距離が近いので、窓際に立つとその速度感は半端ない。スポーツカーならいざ知らず、電車に乗って脳内アドレナリンが放出されるのも珍しいだろう。最高速度は時速120km、事故直前の速度も雨による速度規制区域でなかったことから時速75kmくらい出ていたらしい[2]。

負傷者は運転士も含めて28名。怪我をされた方は誠にお気の毒であるが、雨が降りしきる中、トンネルとの境界で3両もの車両が脱線するというかなりきわどい事故であったものの、死者は出ていない[1]。大惨事に至らなかったのは、先頭車両の重量が影響したらしい。京急の電車は全て、先頭車両が駆動系(モーター)を搭載した電動車になっており重量が重い。運動力学的なメカニズムは説明できないが、そうすることで車両全体のバランスも安定し、脱線転覆しにくくなるのだそうだ。事故現場の写真をみると、確かに車両は脱線しているものの、前から4両目まではほぼまっすぐにトンネルの内部に進入している。もし先頭車両が軽い構造であったなら、脱線により進行方向に対して直角な方向へ頭が回転して、トンネルの開口部壁面に激突していた可能性がある。その場合、人は3mどころか時速80km近い速度で、客室内を吹っ飛んでいただろう。

京急脱線事故現場その2
京急脱線事故現場(土砂崩れの跡が痛々しい)

京急がこのような安全対策を講じていたのは、今から約50年ほど前、1963年(昭和38年)に京急生麦駅付近で起きたJR線の事故が契機になっている。上りのJR横須賀線の先頭車両が脱線して大きく方向を変え、反対側からやって来た下り線の車両に激突した事故。死者160名という大惨事となった。その後の研究で、京急は先頭車両を重いモーター付車両にするという結論に至り、ルール化した。京急には都営浅草線や京成線も乗り入れているが、モーター付先頭車両でなければ、京急路線に乗り入れも出来ないそうだ。以上のことは[3]に詳しいが、ソースとなった論文の知見が、現在に至るまで何故全ての電車に適用されていないのかが不思議なのである。クルマのようにシートベルトやエアバッグで保護されることもなく、つり革一つあるいは全く無防備な状態で多数の乗客が乗り込む電車の怖さ・リスクを改めて感じた事故であった。

ところで、このような安全ポリシーが徹底されている以外にも、京急にはいろいろな魅力がある。京急に歌を奏でる電車があることをご存じだろうか。モーターの制駆動装置インバータ(直流電気をモーター用に交流に変換する装置)の制御方法の一つに「VVVFインバータ制御」(可変電圧可変周波数制御)というものがある。交流出力をプログラムで任意に制御できるので、効率よく速度調整ができる。また、このインバータは、電車の発車・停車時に電磁的な音(磁励音)を出すので、プログラム次第でいかような音も作ることが理論的にはできる[4][5]。

この磁励音は普段なら騒音でしかないのだが、ドイツのシーメンス社はそれを逆手にとって、プログラミングを工夫することでドレミ音階になるようなインバータを遊び心で作ってしまった。これが京急ユーザーはよくご存じの「ドレミファインバータ」である。ドイツの高速鉄道「ICE」の車両が米国内で試験走行した際は「アメリカ国歌も奏でた」という[6]。私は偶然の産物と思っていたが、意図的に設計されたものだった。京急では2100形と新1000系の初期車両に採用。「ドレミファ~♪」の出発音が実に楽しい。実際の音階は“ファソラシ♭ドレミファソ”[7]ようで、シが半音下がっているのはご愛嬌だが、インバータの本来機能を満足するにはやむを得ない妥協点だったのだろう。

しかし、’98年から採用されていたこの京急ドレミファインバータ、残念なことに数年後には姿を消すらしい。機器の更新により効率優先で日本製インバータの採用が決まったからだ。日本製は味気ない甲高い機械音を放出するとのこと[8]。もっと遊べよ!日本のエンジニア。今日も駅から聞こえていたが、いつまでこの楽しい歌声が聴けるのだろう。



京急と音楽といえば、CMにもなった、くるりの「赤い電車」が有名だが、私的には大好きなクレイジーケンバンド、横山剣さんの珍しいラップ曲、「夜のヴィブラートKQ仕様」がおすすめ。京急電車のエッセンスが全て表現されている。
KKK 京浜急行ってなんだかイイネ!
唐辛子みたくレッドホットで、やんちゃで、
東洋一のファンキーなソウル・トレインだ是!
まるで住宅や崖下やお墓の間を縫うように
走る乱暴なコース・レイアウト
しかし線路の幅が異常に広いから
安全なハイ・スピード・コーナリングが可能
ジェット・コースター的スリルも満点!
バリエーション豊富で、普通、快速、急行、特急、快速特急とあって、
夏場にはミュージック・トレインなんてのもありました

でも昭和のおじさんとしては、山口百恵さんの「横須賀ストーリー」PV、赤い電車とのツーショットがなんといっても最高!


京急では主要17駅の列車入線メロディ、いわゆる駅メロを、それぞれの地元出身者や沿線を舞台にしたゆかりのあるご当地ソングにしようという粋な計らいを行っている。もちろん横須賀中央駅は百恵さんの「横須賀ストーリー」。その他駅の採用曲は以下のとおり。
http://pref7.so.land.to/gotochi_keikyu.htm

しはつでんしゃ おとうさんはうんてんし

ここは絵本紹介ブログ(絵本紹介停滞中)なので、京急の絵本も探してみたが、これがあまりない。鉄ちゃん絵本もクルマ以上に奥深い世界なのだが、京急本はレアな存在なようだ。私が見つけたのは「しはつでんしゃ」(石橋真樹子・作、福音館書店こどものとも年中向き)[9]と、もう一冊は「おとうさんはうんてんし」(平田昌広・作 鈴木まもる・絵、佼成出版社)[10]。京急ファンの方、もっと探してみて下さい。

今回の事故に懲りずに、是非京浜急行沿線へ多くの方に足を延ばしていただきたい。

[参考・引用]
[1]京急脱線 安全対策見直し急務、毎日新聞、2012年9月26日
[2]京急脱線 現場 速度規制せず、東京新聞、2012年9月26日、
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012092690070610.html
[3]うち捨てられた論文・・鉄道事故裏話、Make Your Peace、2005年6月28日、
http://mypeace.exblog.jp/74607
[4]可変電圧可変周波数制御、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%AF%E5%A4%89%E9%9B%BB%E5%9C%A7%E5%8F%AF%E5%A4%89%E5%91%A8%E6%B3%A2%E6%95%B0%E5%88%B6%E5%BE%A1
[5]ドレミファインバーター、ニコ典インターネット用語辞典、
http://nicoten.web.fc2.com/2/4t/4594-doremifa-inverter.html
[6]「ドレミファインバータ」はもう聞くことができない?、たべちゃんの旅行記「旅のメモ」、2011年7月18日、
http://tabechan.cocolog-nifty.com/note/2011/07/post-77b5.html
[7]シーメンス、ニコニコ大百科、
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%B9
[8]京急電鉄:「歌う電車」近く姿消す 音階刻む機器更新で 惜しむ声、数多く、毎日新聞、2011年11月21日
[9]しはつでんしゃ、トライアンフblog、2010年3月21日
http://www.triumph-jp.com/blog/2010/03/21/3116/
[10]おとうさんはうんてんし、絵本の部屋、2012年9月、
http://blog.goo.ne.jp/nestlabo4848/e/83e8bf1e349431899f22d7aab30bacb8
スポンサーサイト

Posted on 2012/09/30 Sun. 08:33 [edit]

category: vehicles/のりもの

tb: 0   cm: 0

コメント

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://ehonkuruma.blog59.fc2.com/tb.php/401-6c0f3c66
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

ブログ内検索

RSSフィード

リンク