ピッピ ロンドンへいく

いよいよロンドンオリンピックが開幕した。サッカーで日本がスペインを撃破したのは驚きだったが、「マイアミの奇跡」でも決勝Tには進めなかったし、相変わらずのフィニッシュの精度の悪さを見ていると、まあ期待を込めてベスト8までかな。オリンピック自体にさほど興味はないけれど(と言いながら朝の5時から開会式を見てしまった)、祭りは素直に楽しもうではないか。クルマの絵本というには微妙なのだが、そのロンドンオリンピックにふさわしい絵本、「ピッピ ロンドンへいく」(リチャード・スキャリー・作、久米穣・訳、集英社PICTURE LANDシリーズ7)を今回は紹介しよう。原題は“BUSY, BUSY WORLD”(Richard Scarry、Western Publishing)で、本書と「パリのおまわりさん」(同シリーズ8)の2冊に分冊され翻訳されている。

Richard Scarry
Richard Scarry[2]

作者リチャード・スキャリーは絵本の世界ではあまりにも有名。特に出身であるアメリカでは知らない人はいないのではないだろうか。1919年ボストンに生まれる。両親は店を経営していたため、大恐慌の時代でも経済的に裕福な家庭に育った。ボストンの美術学校を卒業後、第2次大戦での従軍を経て、ニューヨークで雑誌の挿し絵などを手がけ、1946年からは絵本の制作を始める。今までに出版された絵本は300冊以上、十数ヶ国語に翻訳されており、全世界で1億冊以上販売されている。1994年スイスにて永眠[1]。

“BUSY, BUSY WORLD” スキャリー氏とMG TC(1951)
(左)「パリのおまわりさん」の表紙にもなった原著"BUSY, BUSY WORLD”
(右)奥様とMG TCに乗るスキャリー氏(1951)[2]

私にとってはクルマの絵本を調べていく中で出会った作家であり、クルマをテーマにした絵本もたくさんある。本書でも子供向けにかわいらしく、でも元のモデルがありそうなクルマが随所に登場する。もちろん作者オリジナルの愉快なクルマたちも。彼の作品では動物を疑人化した主人公たちが、架空の町Busytownで、次から次へと様々な楽しい事件を起こすシリーズが有名。そのスタイルで世界の国や都市を舞台にしたのが本書である。原作は世界33か国のお話がてんこ盛りの絵本。本書はその中のロンドン(イギリス)を舞台にした「ピッピ ロンドンへいく」をはじめ、18編のショートストーリーが盛り込まれている。「パリのおまわりさん」の方はもちろんパリや、ローマなどが描かれていて、この2つの大都市の物語は、他の話よりも長い。“BUSY, BUSY WORLD”全体を通してみると、ロンドンの扱いは普通で、まあアメリカ人からみれば、“祖国”イギリスよりも、パリやローマへの憧れが強いのだろう。そうそう、東京もステレオタイプの「フジヤマ」「ゲイシャ」ではなく、現代的な電車のラッシュアワーの街として登場する。

Tower of BridgeとRoutemaster
Tower of BridgeとRoutemaster(「ピッピ ロンドンへいく」より)

さて本題の「ピッピ ロンドンへいく」の解説を。原著“BUSY, BUSY WORLD”の表紙は、「パリのおまわりさん」と同じエッフェル塔を背景に走るロンドン名物の二階建てバス“Routemaster”が描かれているが、本書は二階建てバスがA:タワーブリッジ(Tower Bridge)を渡るこれぞロンドンという挿絵になっている。シックなタワーに、真っ赤なバスが映えるおしゃれなイラスト。

「ピッピ ロンドンへいく」その1
ビーフィーターとピッピ(「ピッピ ロンドンへいく」より)

猫のピッピは、エリザベス女王様にお仕えして、手柄を立てようとロンドンへやってきた(開会式でも即位60周年の女王陛下はまだまだお元気そうだったね)。まずピッピが最初に向かったのはB:ロンドン塔(Tower of London)。この塔の番兵にしてもらおうと思ったが断られた。この護衛兵、ヨーマン・ウォーダーズ(The Yeomen Warders)、通称ビーフィーター(Beefeater、ドライ・ジンの銘柄でも有名ですね)と呼ばれ、現在は観光ガイドを主な生業にしているが、昔は陛下の財産の守護とロンドン塔に収監された重要囚人の監視という大役を任されていた[3]。

「ピッピ ロンドンへいく」その2
近衛歩兵とピッピ(「ピッピ ロンドンへいく」より)

次にピッピはC:バッキンガム宮殿(Buckingham Palace)へと向かう。宮殿の番兵といえば、衛兵交代式でも有名な赤い服と黒い熊の帽子の英国陸軍近衛歩兵(Foot Guards)。ブルドッグの近衛兵は、護衛に夢中で取り合ってくれない。

「ピッピ ロンドンへいく」その3
ライフガーズとピッピ(「ピッピ ロンドンへいく」より)

さらに「海軍省のところでは、ぴかぴかのハメット(ヘルメット?)の(きつねの)番兵に危なく踏みつぶされところでした」とある。本書の初版1965年の前年には、英国海軍省(Admiralty)は陸軍省、空軍省とともに国防省に統合されているので[4]、この頃海軍省は存在しない。おそらく旧海軍本部で護衛する近衛騎兵連隊(Life Guards)のことだろう[5]。

どこの番兵にも相手にされず、ピッピがとぼとぼと歩いていると、「女王陛下が大事な指輪をなくされる!」と書かれた号外を新聞売りが売っていた。幸せを願ってコインを投げる泉(トラファルガー広場の噴水?)に来た時、ピッピは水の底に金色の何かが沈んでいるのを見つけた。「女王様の指輪だ!」

ロンドン地図
大ロンドン地図(A:Tower Bridge、B:Tower of London、C:Buckingham Palace、D:Admiralty Archで旧海軍本部ビルはこの海軍門のすぐ近くにある)

ビーフィーター 近衛歩兵 ライフガーズ
(左)ビーフィーター@ロンドン塔(中)近衛歩兵@バッキンガム宮殿(右)ライフガーズ@旧海軍本部ビル

指輪を警官に見せたピッピは、「大手柄だ!」と女王様のところへ連れて行かれ、陛下から感謝のお言葉を頂いた。そしてピッピを噴水の番兵にしてもらった。コインを毎日すくい、女王様がそのお金で野良猫たちの食べものをお買いになりましたとさ、というお話。その国のプチ観光旅行が楽しめるこんなショートストーリーが、「パリのおまわりさん」を含めてあと32話が準備されている。昨朝、何気に“BUSY, BUSY WORLD”の2冊をリビングに置いてみると、早起きした息子が興味津々でページをめくる。開会式を見ながら、登場する国と見比べて本書を楽しそうに読んでいた。英語の語学教材としてもしばしば用いられるスキャリー絵本なので、是非“BUSY, BUSY WORLD”も手に入れて原書で味わってみたい。

それにしても今回のオリンピックの参加国が204とは時代も変わったものである。聞いたこともない国名がわんさか登場する。私が小学生だった1970年代は確か120か国くらいだったと思う。その後、アフリカでの旧宗国からの独立が進んだり、旧ソ連が崩壊したりなどして急速に数が増えた。“BUSY, BUSY WORLD”では「アフリカ」でひとくくりだし、ソビエトもまだ存在している。

世界の切手調べ
愚息の夏休み自由研究?世界の切手調べ

先日義父が昔集めていた切手を大量に譲ってくれた。譲ってくれたというよりは、70年代以前の旧い未使用のヨーロッパ切手が大半なので、少しでもお金にならないか処分を任されたという訳(昔と違って投資対象にならない古切手は金にならないのだよねえ)。とはいえ、どう取り扱うかは自由なので、夏休みで暇な妻と子供たちはこれらの切手を整理して、国別切手によるみごとな世界地図を作成した。早くも夏休みの自由研究にしたようだ。私も子供の頃集めていたが、切手はあんなに小さい一枚に様々な情報が詰まった優れた学習教材だ。最近、自動車切手にも少し興味がある。今年の夏は子供たちにとって、改めて世界の広さ、多様さを知る絶好の機会になったようだ。私もロンドンについてだいぶ勉強になったです、ハイ。

オリンピック一色

[参考・引用]
[1]Richard Scarry、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Richard_Scarry
[2]Richard Scarry、kids@Randam、
http://www.randomhouse.com/kids/richardscarry/
[3]ヨーマン・ウォーダーズ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%BA
[4]海軍本部(イギリス)、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%BB%8D%E6%9C%AC%E9%83%A8_(%E3%82%A4%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B9)
[5]ライフガーズ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%82%BA
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