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フリズル先生のマジック・スクールバス 星めぐり  

フリズル先生のマジック・スクールバス 星めぐり

今日のクルマ絵本は「フリズル先生のマジック・スクールバス 星めぐり」(ジョアンナ・コール・文、 ブルース・ディーギン・絵、藤田千枝・訳、岩波書店)を取り上げる。原題は“The Magic School Bus Lost in the Solar System”(Joanna Cole:Author、Bruce Degen:Illustrator、Scholastic Press)。児童の交通安全に絡めて前回記事にした「スクールバス」でのつながり、大津のいじめ問題を発端に教育現場が今大きく揺れていること、そして金環日食や金星の日面通過、今月15日には「木星食」なる天体ショーも全国で観測されたそうで、今年に入って天体や宇宙に関する話題が目白押しだったこともあり本書をピックアップしてみた。

ロケットに変身!
ロケットに早変わりするスクールバス(「星のたび」より)

「フリズル先生のマジック・スクールバス」はシリーズ化された科学絵本である。理科の先生、Ms. Valerie Frizzle(フリズル先生)とその生徒たちが、ロケットや潜水艦、タイムマシンといった変幻自在にカタチを変える不思議なおんぼろスクールバスに乗って、科学冒険の旅に出るというお話。科学の知識は“現場”で学べと言わんばかりに、冒険のフィールドは、宇宙、人のからだ、海の底、恐竜時代と多岐に亘る。ブルース・ディーギンのちょっとクセのあるアメリカンなイラストなので、日本人には好き嫌いが分かれるかもしれないが、米国では1985年に発行された「水のたび」(“At the Waterworks”)以降、オリジナル本は12巻出ている児童に大人気のシリーズ。日本では以下8巻が岩波書店より翻訳されている。

タイムマシンに変身! 潜水艦にも変身するスクールバス
タイムマシンになったり(左:「恐竜さがし」より)潜水艦になったり(右:「海のそこへ」より)

1.水のたび(“At the Waterworks”)
2.台風にのる(“Inside a Hurricane”)
3.からだたんけん(“Inside the Human Body”)
4.恐竜さがし(“In the Time of the Dinosaurs”)
5.星めぐり(“Lost in the Solar System”)
6.地球のまんなか(“Inside the Earth”)
7.海のそこへ(“On the Ocean Floor”)
8.ミツバチのなぞ(“Inside a Beehive”)

未翻訳なのは、“the Electric Field Trip(電気の世界へのたび)”、“Explores the Senses(感覚のたんけん)”、“the Science Fair Expedition(科学博へいく)”、“the Climate Challenge(気候変動)の4巻である[1]。いずれも興味深いタイトルだが、なぜか翻訳されていない。本シリーズはカナダでテレビアニメ化され、1999年から2000年までテレビ東京でも放映されていたらしい[2]。2001年からは同じ著者らによる社会科を題材にした“Ms. Frizzle's Adventures”という新シリーズが始まっている[1]。

生きている地球
学研「なぜなぜ理科学習漫画3 生きている地球」

日本でいえば学研の「ひみつ」シリーズといったところか。科学の学習漫画本というのはなかなか良くできていて、大人が読んでもけっこう勉強になる。とっつきやすいコミックスタイルで、その分野に興味を抱いたり基礎知識を学べたりと、子供たちの向学心に少なからず影響を与える貴重な情報源だと思う。読書ぎらいだった私も小学生の頃に買ってもらった「なぜなぜ理科学習漫画3 生きている地球」(鈴木敬信、古川晴男、鹿沼三郎・監修、集英社)という本をボロボロになるまで繰り返し読んだ。私が資源開発工学という地球を対象にした学問を大学で専攻したのも、少年期のこの本が影響を与えたのではないかと思っている。近年この本をまた読みたくなって、ヤフオクで手に入れ再読、最近そろそろ興味を持ちそうな年頃になった息子に読むよう手渡した。

奇跡的に観察できた金環日食
奇跡的に観察できた金環日食(2012/5/21@横須賀)

そんな本よりも活字よりももっと知的好奇心を満たしてくれるのが、やはり実験や実体験だと思う。自分の経験を振り返ると、夏休み定番の虫捕り、昆虫採集は科学に興味を持つための第一歩だったように思う(そういえば、子供たちは「ファーブル昆虫記」を読んだことがないねえ)。そして今年最大の科学体験といえば、5月21日の金環日食。我が家は上野の科学博物館で日食メガネを購入し、万全の体制で挑んだが、お父さんは土砂降りの中での通勤途中で最悪の結末。子供たちと妻は奇跡的に雲の切れ間から顔を出したお天道様を拝むことが出来た。この貴重な経験は、彼らの記憶に長く刻まれることだろう。

「星めぐり」その1
「1年の長さはどれくらいか?」生徒たちが調べたレポートで構成される(「星のたび」より)

さて本書のストーリーを簡単に紹介しよう。今日はフリズル学級のクラス遠足の日。プラネタリウムに太陽系のスカイショーを見に行く予定が休館だった(休館日くらい調べて行けよと思うのだが・・・)。と、突然おんぼろスクールバスはロケットに早変わり。クラス遠足は宇宙旅行になった。月から太陽、水星、金星、・・・へと旅は続く。フリズル先生が各天体を解説するストーリー構成になっているが、生徒たちの疑問とそれを調べたレポート用紙が随所に貼られている。例えば『Q:金星の雲はなぜ黄色いのか?A:金星の雲は黄色い硫酸でできているので』など。こういう工夫は自ら調べ、考えることの重要性を教えてくれる。

ボイジャーが撮影した土星の輪
ボイジャーが撮影した土星の輪[8]

日食の解説はなかったけれど、土星の輪がレコードの溝のように1000以上に分かれていることを紹介した場面では、80年代初期、NASAの惑星探査機ボイジャーが最接近して撮影した美しい土星の映像をニュースで見て自分も感動したことを思い出させてくれた(古いねえ)。冥王星はまだ惑星として解説されているが、『もともと海王星の月だったと考える学者もいる』と、非惑星説にも触れている。本書初版の’95年頃は、’92年以降に太陽系外縁天体が次々と発見され、非惑星論争が激しくなっていた頃[3]。結局、学会では冥王星は準惑星に格下げになったが、発見者を擁し、ディズニーキャラクター“冥王星(プルート)”も生んだアメリカでは、今なお人気の“惑星”である。

私も含めアポロの月面着陸で科学技術や宇宙開発に憧れたご同輩は多いと思う。今じゃ星出宇宙飛行士などが憧れの対象になるのだろうが、日本人が宇宙ステーションで働くようになった現在でも、宇宙はまだまだ未知の世界。本書のように太陽系の話はいつも想像力をかき立ててくれる。

Joanna Cole
Joanna Cole[4]

作者のジョアンナ・コール(Joanna Cole)は、1944年米国ニュージャージー州出身の絵本作家。小学校の頃、フリズル先生のような教師から、毎週色んな課題を与えられ、その実験を楽しんだという経験が本書のもとになっている[4]。ニューヨーク市立大学で心理学を学び、いくつかの大学院を経て、ブルックリンの小学校で図書館員として1年間働く。その後出版業界で記者や編集者のキャリアを積んだ後、1980年に児童書の執筆や父兄向けの雑誌に記事を書くフリーランスとなる。1985年に初めて「マジック・スクールバス」を上梓してから現在に至る[5]。処女作“Cockroaches”(「ゴキブリ」なんて本を書いたのは、それまで誰も書いたことがなかったことと、おんぼろアパートに住んでいたので、この生物を研究する時間が十分にあったからだそうだ[4])や「こいぬがうまれるよ」(福音館書店)、「おねえさんになったの」(バベルプレス)、「進化ってなんだろう」(リブリオ出版)など児童向け科学教育の著作を数多く執筆しており、その中でも本書は彼女が最も成功を収めた作品の一つである。

Bruce Degen2
Bruce Degen[6]

ブルース・ディーギン(Bruce Degen)は、1945年ニューヨーク、ブルックリン生まれの児童文学者、イラストレーター。小学生の頃、イラストレーターになるよう先生に勧められ、前回の絵本「SCHOOL BUS」の作者、ドナルド・クリューズと同じクーパー・ユニオン先端科学芸術大学で芸術を学び、プラット・インスティチュート(Pratt Institute)の芸術学修士課程を修了。彼の作品の中でも本書はあまりにも有名であるが、他に“Shirley's Wonderful Baby”, “Daddy Is a Doodlebug”, “Jamberry”などの著作や、Nancy White Carlstromの“Jesse Bear”シリーズやJane Yolenの“Commander Toad”シリーズでは挿絵を担当している。彼の活躍は幅広く、広告デザインのほか、学生向けに芸術を、大人向けに絵本の描き方を教えたり、オペラの舞台美術製作やイスラエルで石版スタジオを経営するといった種々の活動を行っている。現在はコネチカット州に在住[6]。

本書のような先生と生徒の和気藹々とした授業の雰囲気は単なるフィクションだけの世界なのだろうか。学校は本来楽しい場所であるはずなのに、その学校教育に暗い陰を落とした大津のいじめ問題は全く収束しそうな気配がない。学校・教育関係者の無責任な対応や発言、社会問題化したことにより事実とは異なる個人情報までもがネット上に広がったことなど、様々な人々の、少なくとも子供たちの心に悪い影響を与えたことは間違いない。それもこれも事なかれ主義で子供たちをきちんと叱れない、問題を隠蔽してきた大人たちの責任だ。加害生徒たちもきっと親にも殴られた、いや叱られたことすらないのだろう。いじめに気付いた早い段階でぶん殴ってやればよかったのだ。相手の「痛み」をせめて身体で気づかせてやるためにも。

無責任な大人たち
”腐った林檎”は教育者たちの方なのか?

連日の報道で、うちの子供たちも先生や学校に対して不信感を示すような言動が増えてきたように思える。教師というのは、本書の作者、ジョアンナ・コールやブルース・ディーギンの人生に大きな影響を与えたように、その教えや言動が、生徒一人ひとりの一生を決めるかもしれない重責を担う。だからこそ、教師は本来信頼され尊敬されるべき職業である。最近、先生が授業を統制できなくなる「授業崩壊」[7]が小学校低学年まで広がっていると聞く。今回の一件やその他次から次に出てくる教師の不祥事は、全国の子供たちの教育への不信感をさらに募らせてしまった。さらに学校現場が荒れることが危惧されるし、私も他人事とは思えなくなってきた。親もまたいじめの加害者にも被害者にもならないよう子供の心や行動の変化に日々目を配る保護者としての責任がある。先生や学校の信頼回復には、今後かなりの時間を要するだろうが、我々親たちのフォローも欠かせない。

本書のようにもっと楽しく明るい記事にしたかったが、この絵本を読んで子供たちの教育現場を憂うことになるなんて、日本の病は相当重い。

次回からは心機一転、間もなく開催されるロンドンオリンピックにちなんで、自動車マニア王国、イギリスやロンドンを舞台にしたクルマ絵本を紹介していこうと思う。

[参考・引用]
[1]The Magic School Bus、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Magic_School_Bus
[2]マジック・スクール・バス、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B8%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%B9
[3]冥王星、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A5%E7%8E%8B%E6%98%9F
[4]Joanna Cole、The Magic School Website、
http://www.scholastic.com/magicschoolbus/books/cole.htm
[5]Joanna Cole、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Joanna_Cole
[6]Bruce Degen、Wikipdia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Bruce_Degen
[7]授業崩壊、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%88%E6%A5%AD%E5%B4%A9%E5%A3%8A
[8]Images of Saturn、Voyager、NASA JPL Home Page、
http://voyager.jpl.nasa.gov/imagesvideo/saturn.html
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Posted on 2012/07/26 Thu. 21:35 [edit]

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