レゴのしくみで遊ぶ本 メカニズムの事典

先日、昔から探していた2冊の本を相次いで安く手に入れた。『レゴのしくみで遊ぶ本―LEGO TechnicからLEGO MindStormsまで』(五十川芳仁・著、ソフトバンク・パブリッシング)の初版本と『メカニズムの事典』(伊藤茂・著、理工学社)である。自分の興味もあるが、息子がもう少し大きくなったら機械に興味をもってもらいたいという親の勝手な意図もある。美術系への道まっしぐら、理数系がきらいな長女と違って(どうしたら好きになってくれるか、少なくとも苦手意識を持たないかと悩んでいる)、息子は国語よりも算数や理科が好きである。そしてレゴ遊びも大好きだ(もちろんお姉ちゃんも造形玩具としてアートの観点から大好きです)。最近、上級者向けのテクニック系にも興味を示している。そういう子供たちに、機械工学の基礎の一つである機構学(Mechanism)の入口に関心を持たせるには恰好の良書の2冊だと個人的には思っている。

学生時代、機構学の授業は正直あまり面白いものではなかった。機構学とは機械の基本要素である歯車による動力伝達やリンク機構をモデル化し、数式で解き表すといった学問である。ただ、機械の基本中の基本であるメカニズムというものは、書物からの知識ではなく、実際の部品を組み合わせたり動かしてみたりして体得するものではないだろうかと日本のモノづくりに元気がない最近特にそう思うようになった。確かにこの2冊はメカニズムの“書物”ではあるが、実際にモノにして動かしてみたいと思わせる楽しさがある。数式もほとんど登場しない。

メカニズムの事典の中身
『メカニズムの事典』の中身はこんな感じ[2]。パラパラめくるだけで頭の体操になります。

数式が出ないといっても『メカニズムの事典』はれっきとした理工学専門書である。私が会社に入りたての頃、特許の実施例での機構を考えるときに先輩が参考書として教えてくれたのが、浅川権八博士の名著『機械の素』であった。この本の初版は明治時代(1912年)に上梓されたものだが、それこそ考えられるあらゆる機構図が数百もの事例によって示されている。簡単なメカニズムが紹介されているだけで、それこそ特許の明細書のような詳細な説明はない。どのように動くかは自分の頭で考えなさいという非常に潔い本だ。原著は時代とともに絶版となり1966年に『新編・機械の素』として復刊、その後版を重ね(私が会社で読んでいたのはこの頃の版)、1983年に普及版として改訂されたものが本書である。メカニズム事例は800図にも及ぶ。

ディファレンシャルギアの説明 変速機の説明
(左)ディファレンシャルギアの解説(右)変速機の解説(いずれも『レゴのしくみで遊ぶ本』より)

さすがにこの本は小学生低学年が読むには難があるので、子供がメカニズムに興味を抱くきっかけを与えてくれそうな本が『レゴのしくみで遊ぶ本』だ。小さい子供でも、工作機械や専用工具がなくても作ることができ、簡単に分解できるのがレゴの真骨頂。そのレゴの部品を使って、回る・伝える・走る・曲がる・歩くといった様々な動きのメカニズムをわかりやすく写真で紹介した、まさに機械のしくみを身体で覚えられる本。デファレンシャルギア(このパーツが存在することも驚くが)の役割の説明があったり、簡単なサスペンションや変速機の作り方なんかもあって、クルマ好きにもたまらない。息子も興味津々でページをめくって眺めていた(そう読むのではなく、ビジュアルで理解できるところがよい)。

こんな楽しい本が今は絶版である。著者もレゴジャパンやソフトバンククリエイティブに対して、長らく復刊の交渉を続けてきたようだが、諸般の事情があって実現しなかった。本書がオークションで高値取引をされていることに心を痛めた著者は、版権をクリアする形で内容を一新した「LEGO Technic 虎の巻」というものを代金後払いのpdfファイルで自由配布した。なんとも太っ腹。その後、「虎の巻」は『ブロックで作るキカイの本』で書籍化されたようだがこれも今は絶版の模様[1]。私にとってレゴは小さい頃からの憧れの玩具だったし、大好きなブランドであるが、こういうレゴの本質をきちんと理解されているサポーターの方をレゴ社はしっかりとフォローすべきである。まあ、マニア任せといったところが、レゴの世界観なのかもしれないが。

レゴ作品4
レゴでステアリング機構を学ぶ

さて『レゴのしくみで遊ぶ本』を参考に、我が家には少ないテクニックパーツで一見エンジンもどきのごく簡単なからくりやステアリング機構を作ってみた。息子も面白そうに要素部品の動き方について質問したり、もっといろいろ機構を試してみたがったが、如何せん所有するパーツが少なすぎる。もっとパワフルな動きを与えるには歯数の多いギアが必要だし、モータも欲しくなるだろう。これからはテクニックパーツ探しが忙しくなりそう。またヤフオクでの出費が…。彼が高学年や中学生にでもなれば、『メカニズムの事典』の機構例をピックアップして、レゴで具現化させる課題を与えてもよいかもしれない。

著者がレゴで遊び倒すサイトはこちら↓
LEt'sGOstudio

このブログのテーマである自動車はメカニズム事例の宝庫。ピストンの上下運動を回転運動に変えるクランク機構、エンジンの回転力を車輪に伝える変速機構、ハンドルの回転運動を車輪を切る運動に変えるステアリング・ギア機構、サスペンションのリンク機構等々。レゴでエンジンを再現できると面白いだろうなあと思ってネットサーフィンをしていると、世の中には驚くべきアホたちが多数存在するものである。実際に空気圧で動くレゴのV8エンジンが製作されていて、販売もされている(ここ)。V8エンジンのキットが299ユーロ(32,000円弱、1ユーロ=105円換算)、高っ!しかも、マルチリンクリアサスペンションなんかも作っているこだわり。これだけ揃うと実際のクルマと同じメカニズムで動くレゴ車があるのでは?と思っていると本当にあった。レゴおたく恐るべしである。

空気圧で動くLEGO V8エンジン
これだけスムーズに動かせるのは、LEGOパーツ一点一点の部品精度が高い証なんだろうなあ。


LEGOのマルチリンクリアサス


上記エンジンで動くLEGO V8 Mustang
ということは、ドライブシャフトを介した後輪駆動系も再現しているのね。


これを使って機構学や自動車工学の授業をやったら面白いだろうなあ。

[参考・引用]
[1]執筆のきっかけ 「レゴのしくみで遊ぶ本」をお持ちの方、入手できなかった方へのメッセージ、五十川芳仁、LEGO Techinic Tora no Maki、
http://www.isogawastudio.co.jp/legostudio/toranomaki/jp/message1.html
[2]図書出版 理工学社 営業部ブログ、
http://blog-rikogakusha.com/?cid=5

改訂 レゴのしくみで遊ぶ本改訂 レゴのしくみで遊ぶ本
(2001/10)
五十川 芳仁

商品詳細を見る


メカニズムの事典―機械の素・改題縮刷版メカニズムの事典―機械の素・改題縮刷版
(1983/05)
伊藤 茂

商品詳細を見る

スポンサーサイト


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks


    最近の記事