GTroman第1巻

今日はあいにくの荒れ模様にも関わらず家族で沼津に出かける。沼津には嫁の実家がある。彼女の祖父、すなわち子供たちの今年95歳になるひいじいちゃんの入院先を見舞うためだ。たいした病状ではないのだけれど、娘が中学に上がるとなかなか遊びに行けなくなるので顔見せのためにね。久しぶりの里帰りだったが、結婚後彼女の実家に頻繁に訪れるようになった頃、やたら外車、それも個性的なクルマが多い街だなあという印象をもった。自宅周辺の横浜・横須賀エリアや通勤路である湘南エリアも外車比率は高いが、地方の小さな都市にしては異常に目立つのだ。カングーの実物を最初に見たのも、沼津のルノーディーラーに展示されていたものだった(ルノーディーラーが存在すること自体珍しい)。風光明媚で気候も良く、海の幸、山の幸に恵まれた沼津には、かつて御用邸も存在し、別荘地として多くの文化人にも愛された土地柄だけあって、趣味人も多いのかもしれない。そんな沼津市出身・在住の漫画家による沼津を舞台にした名車・旧車オンパレードのエンスーコミック『GTroman』(西風・作、集英社)を本日は取り上げる。

このシリーズは1986年のバブル景気初期に『週刊ヤングジャンプ増刊号』から掲載が始まり、その後『月刊ベアーズクラブ』で長らく連載され、最後は『ビジネスジャンプ』で連載が終了した[1]。コミック版は全11巻。連載当時大学生だった私は、リアルタイムでは読んでいない。クルマの絵本を蒐集し始めて本書に出会うことになるのだが、フリーハンドの絵のタッチが自分の好みだったことと、“沼津本”ということも相まって、それ以来私の愛読書の一つとなっている。まだまだクルマに関する知識に乏しい私にとっては、非常に勉強になるコミックで、事あるごとに読み返している(”Jaguar E-type”参照)。

roman
カフェバー“roman”(「GTroman」より)

舞台は沼津郊外に店を構える架空のカフェバー(この呼称がバブル期の記憶を呼び戻す)“roman”。マスター沢木はその昔、沼津一円の「族」総ての相談役をしていた。彼の愛車は2ドアのハコスカGT-R(KPGC10型)。ドラテクは超一流。romanには彼を慕うエンスーたちが、駐車場にはそうそうたるクルマたちがたむろする。トヨタ2000GT、BMW633、DINO246GT、ALFAジュリアスーパー…。クルマをこよなく愛する男女のロマンや恋愛をコミカルに一話完結で描くのが西風流だ。クルマが絡む男女の恋愛ものコミックといえば、やはりバブル期に人気を得たわたせせいぞう作品だが、むしろ私はこちらを読んでいた。前者はクルマが主役、後者は脇役、後者が優等生のドラマとすれば、前者は明らかに愛すべき不良たちのピュアな生き様を描く。前者が横須賀的、後者が横浜的といってもよいだろうか。

GT-RとZ423のバトル
GT-RとZ432のバトル(「GTroman」より)

たとえば第1巻では、Z(ホンダの)のオーナー、パシリのタケシが女をドライブに誘うのに自分の愛車はハコスカGT-Rだと嘘を付いて、マスターのGT-Rを借りて冷や汗もののデート話(#4)や、昔やんちゃをしていた若いころ、沢木の素性を知らずに喧嘩を売って、彼のGT-RにフェアレディZ432でバトルを仕掛けたことを回想する、忘れ難きZ432に想いを馳せる今はしがない営業サラリーマンの話(#5)などが描かれる、MEN’S ROMAN FOREVERなGTromanである。

西風氏
若かりし頃の西風氏

作者の西風氏は1959年1月沼津産、在住ということ以外謎の人物だ。いしかわじゅん氏は「断言したっていいが、コイツはワルイ。絶対不良に決まっている。こんなものを描く人間が不良でないわけがない。」と西風氏を評している。2006年から、モーターマガジン社より『GTroman STRADALE』と題された雑誌が隔月刊で発行されているが、巻頭の描き下ろし漫画は本書の続編ともいえ、再び“roman”を舞台に、マスターを筆頭におなじみのキャラクターが齢を重ねた姿で顔をそろえているので、GTromanファンは必見だ[1]。

さて冒頭のひいじいちゃん、今回の入院先で10年以上前にも治療を受けていたことがあった。ちょうど私と同じ年頃で九州出身だという主治医の話を聞いてもしやと思った。博多の中学時代の友人がその病院に勤務していると知っていたからだ。別の高校・大学に進んだので、大学以降は会っていなかったのだが、恩師の便りを通じてお互いの近況は知っていた。名前を聞くと彼に間違いない。大阪勤務時代も非常に近くに住んでいたのだが再会する機会を得ることはできず、故郷から遠く離れた沼津の地で、二十年近くぶりの再会となった。その再会が偶然にも妻の祖父を介してとは、運命のいたずらを感じずにはいられなかった。今では彼は駿河の地に腰を落ち着けて、三島にあるクリニックの院長をしている。彼の愛車は日産スカイラインV36セダンとフェアレディZ34ロードスターでやはりクルマにはちとうるさい。

この地にはクルマ好きを惹きつける何かがあるのかなあ。

[参考・引用]
[1]西風(漫画家)、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E9%A2%A8_(%E6%BC%AB%E7%94%BB%E5%AE%B6)
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