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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

たんじょうじどうしゃ  

たんじょうじどうしゃ

前回のクルマの絵本はミニカー製造工場のお話だったので、今回は実際の自動車製造工場の絵本「たんじょうじどうしゃ」(作・小風さち、絵・山本忠敬、福音館書店「こどものとも」通巻542号)を紹介する。

日産追浜工場
日産追浜工場(横須賀市)

子どもたちの通う小学校では5年次に社会科見学で自動車工場に行くのが慣例となっている。もちろん横須賀市の小学校なので近隣の日産自動車追浜工場だ。昨年5年生だった娘も日産に見学に行くはずだったのだが日程が合わなかったらしく、追浜工場への見学はできなかった。その代わりに見学先となったのは、追浜工場とさほど離れたところにはないNHKニッパツ、日本発条の工場だった。主に自動車用シートを開発する会社だ。これはこれでかなり面白かったと娘からは聞いている。

日産追浜工場は、2011日本カーオブザイヤーを受賞した量産型電気自動車「リーフ」のマザー工場なので、小2の息子が工場見学をする頃には、この絵本のような製造方法とは少し景色が変わった電気自動車(EV)専用工場になっているかもしれない。現在は通常の乗用車(ガソリン車)とEVが同じ製造ラインで混流生産を行っているのだそうだ[1][2]。エンジン自動車とEVとでは、中身の臓物がずいぶん違うと思うのだが、それを一緒のラインで流してしまうとは日本の生産現場はやはりスゴイ。

美しいエンジン
美しく感動するエンジン(「たんじょうじどうしゃ」より)

作画はクルマノエホンではおなじみの山本忠敬さん。作者の小風さちさんは「トラ トラ トラクター」でも紹介した。本書は彼女が初めて書いた自動車絵本とのこと。制作するに当たっては、締め切り間際までずいぶん悩み、苦労したそうだ。筆が止まった彼女を目覚めさせたのは、電車の中で出会った無邪気にミニカーで遊ぶ小さな男の子。自然に、自由に、乗り物に同化できる子供を見ているうちに、素直に乗り物という美しい造形物に向き合おうと考え直した。そして向かった先が自動車工場。その工場で見たエンジンのあまりにも美しく力強い造形美に感動したのだそうだ。

私は見学したことがあるけれども、自動車工場は恐らくこの世で最も巨大でダイナミックな工場の一つだろう。2万点という多種多様な部品が組み合わされて、ひとつの製品が産み出される自動車工場は、アッセンブリー工場の頂点であり、特に日本経済を支えるものづくりの現場を知る上で恰好の見学場所であると思う。だからこそ小学校での社会科見学先に選ばれるのである。

とはいってもどこにでもある工場ではないし、簡単に見学させてもらえるものでもない([2]によれば上述の追浜工場は一般の見学が2名から可能なようだ!)。[3]のサイトにまさしく本書のお話に沿ったような、バーチャル工場見学のコンテンツが見られるので、こちらの実際の映像を参照しながらこの絵本を読み聞かせると、より親しみや理解が深まるのではないだろうか。勉強も兼ねて、“くるまのたんじょう”プロセスを眺めてみたい。

たんじょうじどうしゃ その1
材料を加工する(「たんじょうじどうしゃ」より)

最初は材料の加工である。基本はやはり鉄の鋼板。鉄といっても最新の材料は、軽量化や防錆を目的とした特殊鋼板も多数用いられている。鋼板は一枚の長い板が巨大なトイレットペーパーのようなコイル状になった形で工場に搬入される。1ロールは大きなもので人の背丈より高いものもあり、重さは約12t、長さは3kmもあるのだそうだ。このロールが大型トレーラーでプレス工場に運ばれ、フロアやルーフなどの各パネル部品が生産される。コイルは巻ぐせを直し、洗浄された後、ブランキングマシンとよばれる切断機(上図左)で各パネル部品の大きさに切断される。切断されたパネル部品は、プレス機により金型で型押しされて(上図右)、成形加工が施される。ミニカーと同じように金型は命。工場には約数千種類の金型があるそうだ。金型は大きいもので約30t。そんなもんが上から金属を押し潰している。現場での作業は十分に注意を要する。

たんじょうじどうしゃ その2
ロボット溶接(「たんじょうじどうしゃ」より)

次は車体組立。車体工場では、プレス工場で完成したフロア、ドア、ルーフなどの各パネル部品を溶接で組み付ける。現在の溶接作業は(日本がお得意の)ロボットが行うことが当たり前となっている。この後、手作業でトランクやフェンダーが取り付けられて、全体の骨格が誕生する。

次は車体塗装。車体はまず洗浄液槽で、埃や油、ゴミが洗い落され、塗料槽の中に浸けられて下塗りを行う。その後は中塗り、上塗りと計3回に分けて塗装が繰り返される。この辺はマッチボックスミニカーの製造過程とあまり変わらない。中塗り、上塗りではまたまた塗装“ロボット”が活躍する。

たんじょうじどうしゃ その3
エンジンの装着:部品の荷台高さを上下に調整(「たんじょうじどうしゃ」より)

再び組立工場。車体にタイヤ、シート、ハンドル、ライトなど約3.000~4,000点もの部品が取り付けられる。エンジンなどの取り付けでは、作業姿勢に負担を与えないよう、荷台に乗せた部品の高さを上下にコントロールすることができる。その他、ガラスやシートなどは、大きな部品や重い部品の取り付けは、これまた産業用“ロボット”の力が必要となる。ロボットなくして自動車生産工場は成り立たない。

たんじょうじどうしゃ その4
シャシーダイナモでテスト(「たんじょうじどうしゃ」より)

最後は検査。部品の取り付けが終了した車体は検査工程に運ばれる。狭い場所でも実走状態を再現できるようにクルマはローラー(シャシーダイナモメーター、通称シャシーダイナモという)上で走行させ、スピードメーター、ウィンカーなどを動かして作動チェック。時速100km以上の速度で走行検査を行い、その後ブレーキ、ランプ、足回り、排気ガスなどのさまざまな検査を行う。すべての検査が合格したものだけが出荷される。

本書では完成した赤いじどうしゃが工場から直接出荷され公道を走っている。仮ナンバーでも取らない限り公道を走れるはずもなく、普通はありえない。一般には船やカーキャリアで各販売店に運ばれて、そこでナンバー登録やその他の七めんどくさい手続きを経てから購入者に届けられる。まあそこは絵本なのでご愛嬌。出荷から納車までのプロセスは別として、チャンスがあれば一度は自動車工場の見学をされることをお勧めします。

[参考・引用]
[1]電気自動車「リーフ」はこう造られる! 日産工場に“工場マニア”が潜入、日経トレンディ、2011年09月12日、
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20110908/1037647/?ST=life&P=1
[2]追浜工場、日産自動車ホームページ、
http://www.nissan.co.jp/INFO/FACTORY/OPPAMA/index.html
[3]バーチャル工場見学、日産自動車九州㈱ホームページ、
http://www.nissan.co.jp/AREA/FUKUOKA/INFORMATION/virtual2.html
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Posted on 2011/12/25 Sun. 20:36 [edit]

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