以上のような基礎知識を踏まえて改めて本書(カタログ)を眺めてみたい。ヤフオクで数百円で購入したこのカタログはかなり状態がよく、ほぼ当時のまま。縦11cm×横14cmの小さなカタログの中に75台のミニカーが忠実に描かれている。全編47ページ、箱入りギフトセットも含めて全て手描きのカタログはまさに絵本と呼ぶに相応しい。「世界の名車 絵で見るくるまの文化史」でも紹介したが本物の自動車カタログも昔は全て描画。たかがおもちゃのミニカーごときにも、こんな手間と暇をかけた手描きのカタログを用意するとはなんて優雅な時代だったのだろう。写真にするのは簡単だったに違いないが、あえて絵にこだわったのは、恐らく子どもが見るであろうこのカタログに絵本の役割も担わせたかったのではないだろうか。それが証拠にカタログの最後には“History of the wheel”という車輪の歴史を紹介する数ページの読み物が付いている。
左:Foden Hoveringham Tipper Truck(本カタログより)、右:Racing Car Transporter(上)とCar Transporter(下、本カタログより)
キングサイズモデルにもいくつか保有していたものが見つけられた。Foden Hoveringham Tipper Truck(K-1)とCar Transporter(K-8)は最近まで息子がよく遊んでいた。いずれも私が遊び倒したものなので既にボロボロ状態なのだが、そのオンボロミニカーはやはり息子のお気に入りだった。世代を超えて惹きつける魅力があるのだろう。特にK-1は名作である。Scammel Tipper Truck(K-19)は保存状態がよいので、現在も本棚に大事に飾っている。キングサイズではRacing Car Transporter(K-5)が今でも欲しい素敵なモデルの一つでたまにヤフオクをチェックしている。程度の良いK-5は結構出品されているが、それなりに高価なので未だ手に入れていない。
MOTORWAY(本カタログより)
アクセサリーも充実していて、道路組立てキットの“Build A Road”とか、「ハワイのお土産 その2」で紹介した現MATCHBOXの”Open for Adventure”シリーズの原型と思われるポップアップ式の立体道路マップ“Pop-up Roadways”などが掲載されている。ガソリンスタンドのミニチュアモデル(「ガソリンスタンドのおもちゃ」参照)やジグソーパズルなどの商品も珍しい。中でも “Motorway”は珍品で、見た目はスロットカーセットなのだが、どのマッチボックス・ミニカーでも特別な付属品によって2種類の速度調整ができると書いてある。しかし通常のスロットカーのように駆動部品(モーターなど)が車体に内臓されていないただのミニカーがどうして動くのかが謎だった。調べてみると、2本の長いスプリングがスロット(溝)内をモーターによってぐるぐる回るようになっている。ミニカーの底部に付属のプラスチック・ピンを貼り付け、このピンをスプリングに引っ掛けることによってスロットに沿ってミニカーが動くという仕組みらしい。従ってレーンの異なるミニカー同志は競争することができるが、同一レーン上ではミニカーは一定距離を保って等速で動くことになる[4]。手持ちの安価なミニカーが高価なスロットカーに化けるという簡易版スロットカーを提供したかったらしい。
また、クラッシックカーモデル専用の“Models of Yesteryear”というシリーズがあったことを初めて知った。Rolls-Royce Silver Ghost(Y-15)のモデルもある。こちらはオールドカーファンにとってはたまらないシリーズだと思うが、何よりこのカタログに描かれた各車紹介の絵画が美しい。
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