Jaguar E-type

Jaguar E-type S1(1962)

前々回のクルマの絵本「じょうようしゃ」の表紙を飾ったジャガー・Eタイプについて勉強してみたい。1961年生まれ、私より1つ年上の今年50歳である。ジャガー(エンスー的にはジャグァ)がまだインド資本(現在はTata Motors傘下、共産中国に渡らなかったことが救いだ)ではなく、古き良き時代の正しきメイドインGBであった頃を代表するスポーツクーペ(あるいはロードスター)。エンツォ・フェラーリにして「これまでに作られた車の中で最も美しい」と言わしめた[1]名車中の名車である。

GT Roman 7巻

私の大好きなエンスー漫画に「GTroman」(西風・著、集英社)というシリーズがある。拙妻の故郷・沼津を舞台に、マスターを慕ってカフェ「roman」に集い、たむろする“族”やカー・ガイたちと名車・旧車にまつわる一話完結のお話である。クルマノエホンとして機会を改めて紹介したいが、その作品の中でも、ジャガー・Eタイプは三話(※)ほど取り上げられている。

このストーリーを通して、ジャガー・Eタイプに関するいくつかの基礎知識を得ることが出来る。微妙な違いではあるが、Eタイプにはシリーズ1から3まであることはこのコミックで知った。シリーズ1は1961年から67年までのモデル。’64年を境に前期(初期)型が3.6L、後期が4.2Lのストレート6・DOHCエンジンを搭載、出力265馬力(HP、197.6kW)、最高速度は時速150mile(240km)と言われた[2]。当初はオープン2シーター(OTS、ロードスター)とクーペの2車種が設定されていたが、‘66年にホイールベースを伸ばした2+2(前後2席ずつの4シーター)がラインナップに加わる(OTSとクーペのホイールベース長が2,438mmに対して、2+2は2,667mm)。最初期の300台は運転席床が平らな「フラットフロア」で、レアなモデルとなっている[1]。

XK-Eのプラモ S1 DHC
(左)XK-Eのプラモ(右)S1 DHC

オープンモデルに固定式の屋根を付けたクーペをfixedhead coupe(FHC)と呼ぶ。もともとオープンモデルベースで設計されたEタイプのクーペといえばこのFHCの代表例だ。ちなみにオープンモデルに内張りを持つ折り畳み式の幌を広げたクーペをdrophead coupe(DHC)という[3]。「GTroman」には「Eタイプはドロップ・ヘッドに限る」という下りがあるが[4]、我が家にまだ手つかずで押入れに眠っているEタイプのプラモ(グンゼ産業)はロードスターにもDHCにもできる今では貴重なキットだ。

1967年から68年にかけて、シリーズ1、4.2Lはアメリカ市場を狙って米国の安全基準に適合させるための変更を行っており、国内向けと国外(北米)向けバージョンがある。もちろん北米向けは左ハンドル仕様。Eタイプは安いフェラーリの1/3程度という安価ゆえ、主にアメリカで大ヒットとなり[5]、これ以降はアメリカを最大のマーケットとして開発されている。Eタイプはスポーツカーのジャガーのイメージを決定付けたXK120(1948年)以降、XK140、XK150と直6DOHCスポーツのシリーズ後継として開発されたモデルだったので米国ではXK-Eとも呼ばれた[6]。この1年弱のバージョンを、シリーズ2との中間モデルとしてマニアの間ではシリーズ1½とも呼ぶ。シリーズ1との外観上の違いとしては、ヘッドランプのガラスカバーが外された。

S1 Front View
S2 Front View
S3 Front View
E-type(FHC)のフロントフェースの変遷:上からS1、S2、S3

シリーズ2は1968年から70年までのモデル。アメリカ市場に合わせたフェイスリフトが主な変更点。ガラスカバー無しのヘッドランプはシリーズ1½を継承、ランプユニット自体も前方へ移動した。バンパーの形状および位置も見直され、リア、フロントともに大型化。ラジエーターグリルは大型化され、グリルの前方に太いバーが1本通された。フロントのウインカーおよびリアのブレーキランプとウインカーはそれぞれバンパーの下へ移動し、それぞれ大型化された。2+2はフロントガラスの形状が見直され、傾斜がかなり強くなっている。動力性能は4.2Lの直6で変更ないが、北米市場をターゲットにしたことでオリジナルの流麗な美しさはスポイルされ、デザイン面での人気はシリーズ1に劣るようである。

S1 Rear View
S2 Rear View
S3 Rear View
E-type(FHC)のリアデザインの変遷:上からS1(4.2L)、S2、S3

シリーズ3は1971年から75年までのモデル。動力性能は272馬力(HP、202.8kW)を出力する5.3LのV型12気筒エンジンへと性能アップを図っている。このシリーズでクーペが廃止され、ロードスターと2+2仕様のみ設定。ロードスターも2+2のシャシーを流用したので、ホイールベースが長くなった。フロントにはメッキの格子状グリルが付き、さらにアメリカ的な、それこそ“ヤンキー”な顔付きに変貌していった。この頃はオイルショック真っ只中、スポーツカーにとても逆風の時代。経営が悪化したジャガーもブリティッシュ・レイランド傘下に入り、品質もアメリカにおいて「よく壊れる車」と言われるほど、かなりひどかったようである[2]。

S1 coupe Side View S1 2+2 Side View
S1.5 2+2 Side View S2 coupe Side View
S2 2+2 Side View S3 2+2 Side View
E-type(FHC)の変遷:左上からS1 2seater(TS)、右上S1 2+2、以下S1.5 2+2、S2 TS、S2 2+2、S3 2+2。TSと2+2のホイールベース長の違いがわかる。やはり2シーターの方がバランスがいいなあ。

先の「GTroman」に登場するEタイプのオーナー、英鉄君はその生業がよくわからないが、どうみても金のなさそうなジャグァとは縁遠い存在の青年。でも、一応地元の(お金持ちが集まる)GBカークラブのメンバーである。彼の所有するEタイプは「よく壊れる」シリーズ3の2+2クーペ、左ハンドル。実際によく故障する。彼女から「ロードスターじゃないんだあ・・・」とがっかりされるくらい、デザイン面、希少性での価値からすれば、全く相手にされないEタイプ最終型なのであるが、本人はそんな周りの嘲笑も意に介さず、自らいじって再生させたこのクルマに惚れ込んでいる(本当はDタイプが欲しいらしいが)。

英鉄と亜美(「GT Roman」#39より)
英鉄と亜美(「GTroman」#39より)

絵本「じょうようしゃ」に描かれた2台のEタイプも、子供が後席に乗っているのでいずれも2+2クーペ、ラジエータグリルの形状からシリーズ3とわかる。しかも左ハンドル。その筋のマニアな方からは価値のないモデルと言われそうだが、私にとっては子どもの頃に買ってもらったマッチボックスのミニカー以来、シリーズがどうであれ、十分に美しい容姿をもつ初恋のクルマである。

S1 Roadstar
S1 Roadstar

(※)ジャガーEタイプが登場するストーリーは、第7巻39話“ONE NIGHT IN NUMAZU”、第8巻44話“WHATS GOING ON!!”、第10巻56話“UGLY LOVELY JAGUAR”の三話。

[参考・引用]
[1]Jaguar E-Type、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Jaguar_E-Type
[2]ジャガーEタイプ、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%BBE%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97
[3]coupe クーペ、car knowledge、
http://blazestreamfto.web.fc2.com/fto-introduce.html
[4]GT Roman⑧WONDERFULL TONIGHT、第42話“JOHN BULL SPRIT!?”、p89、西風、集英社、1992
[5]ジャガー Eタイプ ロードスター、ヒストリックカーコレクション、ヒストリーガレージ、MEGA WEBホームページ、
http://www.megaweb.gr.jp/HG/F2/HistoricCars/PopUp/uk001.html
[6]ジャガー・XKシリーズ、BUYER'S FILE、輸入車情報、GooWORLD、
http://www.gooworld.jp/car_info/buyers/0602/
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[ 2011/08/06 08:34 ] cars/車のお勉強 | TB(0) | CM(0)

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