Renault4(1961)[8]

フランス語を知らない人も、数字の1、2、3を表すアン(un)、ドゥ(deux)、トロワ(trois)はよくご存知のはず(バレエで使うあれです)。でも仏語で4から先は何と言うんだろう、と多くの方は思うのではないだろうか。数字の4はquatre(キャトル、カトルの方が近い発音)、ルノー(こちらも正確な発音はウノーまたはフノーに近い)車のNo.4、前回紹介のクルマノエホン“La R4 de papa”の主人公、今年生誕50周年のキャトルについて今回は勉強する。

ルノーは60年代から80年代まで車名に数字を付けることが多かった。ここのサイトでルノー車を調べてみると数字名の車種は、3、4、5、6、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、20、21、25、30とある。日本では知名度の低いルノーではあるが、有名なところではこの4(キャトル)と5(cinq、サンク)、ちょっとフランス車にうるさい人で16(seize、セーズ)、19(dix-neuf、ディズヌフ)、21(vingt et un、ヴァンテアン)、25(vingt-cinq、ヴァンサンク)辺りに乗っているといった感じだろうか。ちなみに元メガーヌ乗りの義弟は21を所有している(手放すのが惜しくてナンバーなしで実家に保管)。

Renault25
Renault25

3はR4の廉価版モデル。価格差があまりなかったので売れなかったようだ。最後のナンバー車名は30だと思ったら25が正解。1983年に前モデルの30(trente、トラント、‘74~)を引き継いだフラッグシップモデルが25。1992年に後継車「サフラン」にモデルチェンジして姿を消した。数字の順番どおりでないのが面白いが、これは30と弟分の20(vingt、ヴァン、’75~)を統合させたような車格を持っていることから間を取って25にしたのだと思う。

ところで7(sept、セット)はないのか?実はあったのである。車名は仏語読みのセットではなくスペイン語のシエテ(siete)。その謎は下記[1]を参照されたい。へえー。

Renault 4CV
Renault 4CV

前置きもこの辺にして本題に入ろう。自動車史的にいうとR4は大戦後1946年に登場したルノー4CVの継承車とされている(正当な後継車はドーフィンだが)。リアエンジン・リアドライブ(RR)の3ボックス4ドアセダンの4CVとフロントエンジン・フロントドライブ(FF)の2ボックス5ドアハッチのR4、外観も駆動系も違うこの2台の一体どこに連続性があるのかと言われるかもしれない。4CVは極めて経済的で実用的な国民的大衆車だった。ルノーは、この経済性に多様性を盛り込むコンセプトを考えた結果、R4の結論に至った。FF化すればリアに空間的余裕が、ハッチバックタイプにすることで荷物車としての多様性も生まれて実用性が向上する。考えてみれば、RRはそのままユニットを前方にスライドすればFFになり得るのである。そうして生まれたのがR4である。

R4のキャビンレイアウト[10]
R4のキャビンレイアウト[10]
絵本にも同じ構図が(”La R4 de papa”より)
絵本にも同じ構図が(”La R4 de papa”より)

ドイツ人ならば、まずRRからFF化への機械工学的合理性を追求し、その理論に適合するようなクルマを設計するであろう。一方、フランス人は乗り手が一番楽しく便利なクルマを考えてみたら、リアエンジンをフロントに持ってきたらいいじゃなーい的に(別にフランス人を馬鹿にしてませんよ)まず商品コンセプトありきの発想をする。実際フォルクスワーゲンはRRからFFに転換するのに30年かかったのに対し(VW初のFF車は‘70年登場のK70)、ルノー初のFF車は1961年に登場したこのR4であった。新しいクルマのコンセプトを描かせるとルノーは実にうまいし、現実的で早い。

ルノーと日産の経営アライアンスも、まず統合によるメリットを活かした事業拡張性など経営の全体ビジョンを考え、両社の文化的、技術的な整合性は後付けだったのだろう。確かに細かな課題で両社が整合し得るか否かなんて悠長に考えていたら、急激に変化する経営環境のスピードについていけない。今の日本の政治も、何事にもこのコンセプト(ビジョン)がないから遅々として先に進まない。できるかできないかを議論する前に、まず(いつまでに)やること、やりたいことを決める。別に孤立無援の管首相の肩を持つつもりはないけれど(将来に向けての)『脱原発』でいいではないか。党の総意でないとか、電力が足らなくなるとか、経済が停滞するとか外野はガタガタ文句を言うけれど、国民が安心できる社会として方向性は間違っていないと思うし、四の五の言わずにやってみればいいじゃん。頭のいい人も技術もリソースはたくさんあるし、皆が知恵を出し合えば解決できる方法は必ず見えてくる。話が脱線したので、本題に戻ろう。

現実的なルノーは、R4開発にあたり横置きFFや2気筒エンジンの新開発も検討していたようだが、結局信頼性や耐久性を重視して、4CVのユニットをフロントにそのまま平行移動させた。FRのようにドライブシャフト(ぺラシャフト)がないのでもともとFFは床をフラットにできるのだが、さらにサスペンションにも工夫を凝らす。フロントが縦置きのトーションバー・スプリング(棒のねじり反力を利用したバネのこと、細いのでスペース効率がよい)を用いたダブルウィッシュボーン式、リアが横置きのトーションバー・スプリングを用いたトレーリングアームを採用していた。

R4のリアサスペンション構成図[6] のリアサスペンションを下から見た図[9]
(左)R4のリアサスペンション構成図[6](右)R4のリアサスペンションを下から見た図[9]

フロントのトーションバー・スプリングは全長の半分ほどある長いもの。リアのトーションバーは乗り心地を確保する捩れを大きくする目的で車幅いっぱいの長さになり、左右の2本のバーが重ならないように、左右のタイヤを40mmずらしている!。リアは駆動輪でないので良しとした割り切りである。こうしてR4は4CVと同じ3,600mmの全長でありながら広い荷室を確保することで、絵本で紹介されているようにパパの仕事や趣味の日曜園芸の運搬に欠かせない多用途性を得たのである。また、ホイールベース長も4CVの2,100mmに対してR4の2,400mm(上記の理由により左は2,440mm)と、キャビンのスペースも広くすることができた。

‘61年式のエンジンは縦置きの747cc(R3は603cc)水冷直列4気筒OHC、出力は26.5PS(21PS)。1963年には上級モデルと輸出仕様に845ccエンジンを搭載。‘68年式では別体だったフロント・グリルとヘッドランプがアルミ製に一体化されるフェイスリフトが施され、変速機は4速となった。’72年式ではベースエンジンの排気量が782ccにアップ。‘75年式ではフロントグリルが黒い樹脂製にマイチェン。1978年には最上級モデルGTLが登場。排気量は1,108ccの直列4気筒OHVエンジンを積み、出力は34PS。フロントグリルやバンパーなどのエクステリアデザインが変更された。’83年式ではベースエンジンを850ccに、‘87年式では950ccに排気量アップした。しかし名車とて寄る年波に勝てず、1992年に惜しまれつつ生産中止となった(私が社会人になった後も生産が続けられていたことは知らなかった)。総生産台数は、1992年12月の生産終了までに約835万台で、ビートル、フォードTに次ぐ歴代3位である。その後、このコンセプトを継承したのが、小生の前愛車「カングー」君である。あー、また乗りたいなあ。

R4の変遷:絵本”La R4 de papa”のモデルはアルミ製フロントグリルの1968年式であることがわかる。

R4 1961年モデルR4 1968年モデル
R4 1975年モデルR4 GTL(1980)
(上左)R4 1961年モデル(上右)R4 1968年モデル(下左)R4 1975年モデル(下右)R4 1980年GTLモデル

[参考・引用]
[1]【ルノーな話】拾った画像でルノー7(シエテ)まつり。、Retrospective...逃げない、はればれと立ち向かう。、2011年3月3日、
http://blog.goo.ne.jp/bb25500/e/691115df5cd1d3e471d4d4577d9ec624
[2]ルノー 4CV&4(キャトル)&カングー、名車達、JOLLYBOYの図書室、2007年4月22日、
http://www.ne.jp/asahi/happy/jollyboy2/car77.htm
[3]世界と日本のFF車の歴史、武田隆、グランプリ出版、2009
[4]ルノー4、名車列伝、GAZOO名車館、
http://gazoo.com/meishakan/meisha/pdf/2149.pdf
[5]ルノー4TL、名車列伝、GAZOO名車館、
http://gazoo.com/meishakan/meisha/pdf/3656.pdf
[6]ルノー4、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB4
[7]Renault4、Renault.com、
http://www.renault.com/en/passionsport/les-vehicules-historiques/pages/renault-4.aspx
[8]Birth of a 50-year legend, the Renault 4、Cars of the World、2011年1月25日、
http://www.carsoftheworld.eu/index.php/News/birth-of-a-50-year-legend-the-renault-4.html
[9]ルノーキャトルのオーナーズマニュアル本、gaaloくん日記、2099年7月10日、
http://gaalgaal.exblog.jp/10587173/
[10]renault 4 celebrates its 50th anniversary、designboom、
http://www.designboom.com/weblog/cat/8/view/13523/renault-4-celebrates-its-50th-anniversary.html
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