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クライスラー・インペリアル  

1966 Imperial LeBaron

先月紹介した「グリーン・ホーネット」で重要な役割を担う黒塗りのハイテク車両「ブラック・ビューティー号」。ベースはクライスラー社のインペリアル‘66年モデル(上写真は1966 Imperial LeBaron)。「ウルトラマンと特装車両」でも紹介したように、ウルトラセブンに登場する「ポインター号」のベースモデルも、’57年式のインペリアル。今日はクライスラー社の最上級モデル、インペリアルについて調べてみた。

ダイムラーと決別した後の金融クライシスで経営破綻、現在はイタリア・フィアット社の傘下で経営再建を目指すかつてのビッグ3、クライスラー社。5月には約6,200億円もの公的資金を6年前倒しで完済、株式の再上場はもう少し時間がかかりそうだが、完全復活に向けて頑張っている[1]。そのクライスラーが設立された1925年の翌年、GMのキャデラック、フォードのリンカーンに対抗する最上級車種として「インペリアル」は誕生した[2]。

1932 Imperial coupe[3]
1932 Imperial coupe[3]

1930年にはクライスラー初の8気筒エンジン車が製造され、たちまちのうちに卓越した性能と他社との相対的な価格の安さで人気車となった。上図は1932年式インペリアル・クーペで、6.3L、135馬力の直列8気筒エンジンを搭載[3]。この時代のインペリアルは、この新型8気筒エンジンを引き合いに“インペリアル8”と呼ばれていた[4]。

フォワードルック・スタイリングの広告 1960 Imperial
(左)フォワードルック・スタイリングの広告(右)1960 Imperial

時代は飛んで、1955年からはクライスラーブランドから独立した「インペリアル」ブランドとして立ち上がった。当然エクステリアデザインも新しいコンセプトで刷新しようと、新設計主任バージル・エクスナー(Virgil Exner)が、スマートで活動的な外見、低いルーフラインと長いボンネットで強調したフォワードルック(Forward Look)デザインをインペリアルを含むクライスラーのフルサイズ車に導入した[5]。1961年にはフォードからデザイナー、エルウッド・エンゲル(Elwood Engel)を獲得、60年式が恐らく最も象徴的であったエクスナーデザイン-巨大なテールフィンを持つフォワードルック(この車のデザインを見ると、つくづく当時のアメ車のデザインはガラパゴスだったんだなあと思う)-から直線基調のスリーボックス型エンゲルデザインに形を変えて行く[2]。しかし、インペリアルブランドもオイルショックで1975年に一度幕を下ろす。破産寸前だったクライスラーを復活させたあのリー・アイアコッカが指揮を執っていた1981年に一時ブランド復活を果たすも、最高級車としては致命的な信頼性が無いがゆえに1983年までの短命に終わった。

Virgil ExnerとForward Look Design[12]
Virgil ExnerとForward Look Design[12]

ウルトラセブンの「ポインター号」と、グリーンホーネットの「ブラック・ビューティー号」は、インペリアルの代表的なスタイリングである、エクスナーデザインとエンゲルデザインを象徴するものだ。

1957 Imperial Southampton 4Door Hardtop
1957 Imperial Southampton 4Door Hardtop

「ポインター号」は、[6][7]によれば成田亨のデザインをベースに廃車寸前のクライスラー・インペリアル(‘57年型Southampton 4Door Hardtopモデル)を改造したモノだそうな。原型をとどめないほど改造が施されているのだが、‘57年モデルもフォワードルックを最も体現した車種の一台で、販売でも最も成功したインペリアルとなった。この年のモデルから、車種バリエーションを最も廉価版のスタンダード・インペリアル、上級モデルのインペリアル・クラウンとインペリアル・ル・バロン、フラッグシップのクラウン・インペリアル(リムジン)の4車種[8]。エンジンは325PS(馬力)、6.4LのV型8気筒、OHVヘミエンジンを搭載。

1966 Imperial LeBaron #2
1966 Imperial LeBaron

「ブラック・ビューティー号」に用いられた‘66年式インペリアル・ル・バロン(映画版では’64年から‘66年式を使い分けている)。60年代のインペリアルの特徴はその頑丈さにある。1960年にモノコック構造に移行した他のクライスラーブランドに対し、インペリアルは1966年までペリメーターフレーム構造(perimeter frames)を採用していた。ペリメーターフレームとは、フレーム構造の一種でボディフロアの周囲にフレームをつけた箱型のフレームである。一般に中間にメンバー(車体の横方向に取り付けられる補強部材)を通さないために、フロアを低くすることができる。しかし、そのためにねじり剛性や曲げ剛性が低くなる[9]が、インペリアルはX状のクロスメンバーを持つことでねじりや曲げに対する剛性をアップさせている。プロペラシャフトはこのX状のフレームに空いた穴を貫通していた[2]。下の写真[10]は’61年インペリアルのフレームであるが、X状のクロスメンバーをぺラシャフトが抜けているのがわかる。どおりで「ブラック・ビューティー号」は超ハードなカーチェイスに耐えられる訳だ。‘66年モデルは’60年式標準であった6.8Lから7.2L、V型8気筒エンジンを搭載、動力性能も強力である。

1961年式インペリアルのペリメーターフレーム[10] X状メンバで補強されたぺリメータフレーム[10]
(左)1961年式インペリアルのペリメーターフレーム[10](右)X状メンバで補強されたぺリメータフレーム[10]

私の調べた範囲は極めて限定的。各年式についてさらに調べたければ、インペリアルクラブのサイト[11]が非常に熱く詳しい(但し英語です)。

[参考・引用]
[1]米クライスラー、公的資金6千億円を6年前倒しで完済、産経ニュース、2011年5月25日、
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110525/biz11052508140030-n1.htm
[2]インペリアル(自動車)、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB_(%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A)
[3]自動車の本、E.アンジェルッチ、A.ベルッチ共著、講談社、p141
[4]Chrysler Imperial、Wikipedia、
http://en.wikipedia.org/wiki/Chrysler_Imperial
[5]新クライスラー(New Chrysler)のシンボルとしてペンタスター(Pentastar) が復活、Chrysler News Desk、
http://www.media.chrysler.com/dcxms/assets/attachments/History_of_the_Pentastar_Japanese.pdf
[6]TDF PO1ポインター:ウルトラセブンの劇中に使われた地球防衛軍の警備車輌「ポインター」の研究報告、
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/5392/p001.html
[7]MJ-12的ビギナー向けウルトラセブン豆知識、ウルトラセブンイラストギャラリー、
http://www002.upp.so-net.ne.jp/MJ-12/mame/mame.html
[8]1957年クラウンイン・ペリアル、Gazoo名車館、
http://gazoo.com/meishakan/meisha/shousai.asp?R_ID=7203
[9]フレーム形式(自動車)、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A0%E5%BD%A2%E5%BC%8F_(%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A)
[10]John’s Chrysler Imperial “Great Razor”、CarDomain、
http://www.cardomain.com/ride/2161191/1961-chrysler-imperial
[11]Imperials by year、Imperial Web Pages、
http://www.imperialclub.com/Yr/index.htm
[12]Where Credit Is Due: A Fresh View on the Exner Designs、The New York Times、2007年10月21日、
http://www.nytimes.com/2007/10/21/automobiles/collectibles/21EXNER.html
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Posted on 2011/07/08 Fri. 20:02 [edit]

category: cars/車のお勉強

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