祖父のこと

臺灣(台湾)時報

地震の起こる数日前、何げに祖父の名前をググってみたら、1件だけヒットした。中国語のサイトで祖父の著作物が参考文献として掲載されていたのだ。会ったこともない祖父と孫がネットで繋がった瞬間である。何でも検索できるもんだなあとGoogleに感心しきり。詳しく見てみると、内容は汕頭に関するもので、出典は1939年(昭和14年)の『臺灣(台湾)時報』(上図)とある。


祖父は1890年(明治23年)生まれ。私が生まれる前に他界している。私の家系の多くは戦前いわゆる「外地」に居留しており、曽祖父は台湾総督府に勤務していた。祖父も台湾銀行に勤めていた銀行マンで、ハンカチで有名な大陸の汕頭(スワトウ)や大連、台北(タイペイ)に駐在していた。そのせいで父も世界恐慌の年に汕頭で生まれ、大連、台北で幼少期を過ごしている。祖父がどういうネットワークを持っていたのかはわからないが、汕頭では帝国海軍の軍人たちがよく差し入れを持って遊びに来ていたという。ちなみに母方の祖父も台湾製糖に勤め、一昨年亡くなった母も高雄(カオシュン)で生まれ育っている。なので私は正直共産中国には抵抗感があるのだが(中国の方、気を悪くしたらスミマセン)、台湾には昔から親近感を抱いている。

もう少し祖父について語ると、一家はその後東京に戻り、東中野に居を構えていた。父によれば、かなりの趣味人だったようで、太公望でもないくせにつり竿を蒐集していたり、当時でも珍しかったと思う観音扉で音量を調整する巨大な蓄音機(ビクター製)なども持っていたらしい。また古書の蒐集は膨大で床が抜けんばかりの量だったという。戦前は禁書であった社会主義や共産主義系の本も結構所蔵していたようだ。今でいうマニアであり、この辺の蒐集癖は孫の私が引き継いだのかもしれない。今残っていればかなりのお宝だったかもしれないけれど、これらは1945年5月の東京大空襲によって自宅とともに全て灰になったそうだ。戦後は故郷の山口県に一家で帰っている。

祖父の持っていた蓄音機は多分こんな感じだったはず↓(父曰く、これよりももっと大きかったそうだ)


などなどの情報は両親から聞いていたので、この文献はすぐに祖父のものだと確信した。そうなると写真と父からの話でしか知らない祖父の遺した形跡を是非この目で見たいという気持ちに駆られる。まず『臺灣(台湾)時報』をどこかで閲覧できないものかと、これまたGoogleで検索。するとこの文献のCD-ROMが販売されているではないか!臺灣時報は、植民地経営に必要な知識を日本人に広める事を目的に明治42年1月から昭和20年3月まで発行された日本語機関誌。台湾を統治していた台湾総督府内台湾時報発行所が発行している。この創刊号から終刊号の全415号を電子化した完全版なのだそうだ。これはすごいと値段を見てみると、1,985,760円也[1]。確かに稀少価値のある資料なんだろうけど、我が家の中古のエクストレイルが買える値段だ。こりゃだめだとさらに検索していると、財団法人交流協会内の日台交流センターがヒットし、ライブラリーにこのCD-ROMを所有し、閲覧も可能とある。早速センターに事の経緯を伝え、複写可能かを問い合わせた。聞いてみるもんである。早々に回答が来て、祖父の文献部分のみpdfで送ってくれた。交流協会のご担当の方、本当にありがとうございました。

結局、祖父の著作物の存在を知ってから、翌日にはその文献の複写を手に入れることが出来た。誠に便利な時代になったものである。さて、その著作物を見てみる。著者の当時の肩書きを父に確認し、間違いなく祖父であることがわかった。ざっと目を通したものの内容は専門の金融や華僑に関することで、当然ながら文体も古く、読んでも意味がよくわからない。でも70年以上の時を超え、何となく祖父を身近に感じることができた。祖父もまさか孫が自分の書いたものを探して読むとは想像もしなかったに違いない。早速父にもコピーを郵送してあげることにしよう。電子メールはないのでね。

こんな状況下で非常にプライベートなネタで失礼しました。改めて今回の地震で被災されている方々にお見舞い申し上げるとともに、不幸にも犠牲になられた方々にお悔やみを申し上げます。

[参考・引用]
[1]台灣時報、雄松堂ホームページ、
http://www.yushodo.co.jp/ypc/taiwan4/index.html
[2]台湾時報、旧外地関係資料アーカイブ、
http://www.lib.takushoku-u.ac.jp/kyugaichi_htmls/pages/twn_96021745.html
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[ 2011/03/13 14:45 ] bookshelves/本棚 | TB(0) | CM(0)

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