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この国にサムライはいないのか  

新渡戸稲造・著「武士道」

私のブログのテーマとはかけ離れているものの、やはり自分の心の内を書き下さないと、なんだかフラストレーションが溜まる。ここ数日来、この国の未来に絶望を感じ続けている一市民の戯言。

子曰く、義を見て為さざるは、勇無きなり。勇とは義(ただ)しき事をなすことなり。日本政府は、正しきことを勇気をもって断行しただろうか。明治の賢人、新渡戸稲造はその名著「武士道」(矢内原忠雄・訳、岩波文庫)において勇気とはいかなるものであるべきかを次のように説いている。『真に勇敢なる人は常に沈着である。彼は決して驚愕に襲われず、何ものも彼の精神の平静を乱さない。激しき戦闘の最中にも彼は冷静であり、大事変の真中にありても彼は心の平静を保つ。』敢為堅忍の精神である。

レアアースの中国からの輸出が事実上凍結され、フジタの社員が中国当局に拘束されてから、日本政府は完全に平常心を失った。菅総理をはじめ閣僚たちの狼狽した姿が目に浮かぶ。そして何を血迷ったか中国人船長の釈放だ。尖閣に領土問題などそもそも存在しないのだから、外交交渉などあり得ない話なのであるが、日本人が“人質”に取られた以上、少なくとも船長は交渉のカードとして使えた。しかし、その最大の切り札をみすみす切ってしまった。挙句の果てが、中国からの謝罪と賠償金の要求に衝撃を受けるトホホな政府。日本はどこまでお人よしの国なのであろうか。

カードをちらつかせながら、漁船の公務執行妨害については証拠ビデオをyoutubeで世界配信し、尖閣問題では国際司法裁判の土俵に上がることを拒絶する中国のアンフェアな態度を白日に晒し、レアアースの禁輸問題はWTOに提訴し、弱みの人権・民族問題でも揺さぶりをかけるなど国際ルールを無視してやりたい放題の中国の信用(もともとないのだけどね)を失墜させるプロパガンダ戦術はいくつも考えられたはずだ。中国がもはやグローバルな資本主義社会に組み込まれている以上、ルールを破ることは自殺行為なのだ。中国製食品の安全性の問題がこれを如実に示している。こういうあらゆる手段を講じることが武力ではない大人の国の喧嘩方法、外交である。最初から白旗じゃねえ。

今回のことで、消極的抵抗ではあるが、私は精神的に日本国民を止めようかと思っている。もう選挙へは行かないぞ。国勢調査にも協力しないぞ。少なくとも子供たちには、語学と専門性を養わせて、将来どこか別の国に移住させることを真剣に考えようかとも思っている。検察のデータ改ざんもそうであるが、この国は、国内外に対して義(ただ)しき事を隠蔽抹殺しようとしている。自民党を中心とする野党も、政府与党の対応を批判するが笑止に堪えない。あなた方も同罪である。そもそも中国の危うさを承知の上で、多くの非礼を受けてなおODAで節操もなく、垂れ流し的に中国に経済援助をし続けたのは紛れもなく自民党政権である。日本人の血税で長年中国を支援してきた返答が、この慇懃無礼な恫喝だ。こんな空気を読めないお間抜けな国会議員を選び、税金を納め、国に忠誠を誓い、生命や財産を守ってもらうなどいい加減バカバカしくなった。

さらに断罪されるは日本の経済界ではないだろうか。中国人船長が釈放された際、「弱腰との批判はあろうが、現実的に解決しないといけない」(東京証券取引所の斉藤惇社長)などと、経済界は一様に評価をしている[1]。もはや財界人らに日本人としての誇りはなく、あるのは金に対する執着のみなのであろう。また、中国側の一方的な対日報復措置が強まっていた今月20日、日産のゴーン社長は、中国合弁会社「鄭州日産汽車」の第2工場(年産能力14万台)の完成式典において、中国での自動車生産能力を2012年に年間120万台と、現在のほぼ倍に増やす方針を発表した[2]。日本が中国に恫喝されているときに、中国で今後もえらい儲けさせていただきますとは、何というタイミングの悪さ。日産はいまや仏資本の会社とはいえ、ルノーに日本人の魂までも売ってしまったのかと情けなくなった。この国の経済人に、以下のような哲学を語れる渋沢栄一のようなサムライはもうどこにもいないのだ。『利を図るということと、仁義道徳たる所の道理を重んずるということは、並び立って相異ならん程度において、初めて国家は健全に発達し、個人は各々その宜しきを得て、富んで行くというものになるのである[3]。』日中双方各界の指導者に聞かせたい言葉である。

渋沢栄一
渋沢栄一

その自動車業界、中国市場での依存度を調べてみた。トヨタ、ホンダ、日産の2009年度のグローバル生産台数と中国での生産台数(中国の占める割合)は以下のとおりである[4]。
・トヨタ:グローバル生産台数=約609万台、中国生産台数=約72万台(11.8%)
・ホンダ:グローバル生産台数=約330万台、中国生産台数=約65万台(19.7%)
・日産:グローバル生産台数=約315万台、中国生産台数=約61万台(19.4%)
先読みが深いのか、単なる投資の遅れなのか、トヨタで約1割強の依存度、ホンダ、日産は約2割を占める。日産に至ってはこれを‘12年までに倍増するという。グローバル生産は鈍化傾向だから比率でいえば3割といったところか。これだけ中国に依存するのだから、日本人の面子よりも金儲けということになる。さらに各社は電気自動車やハイブリット車の量産・増産を計画している。これら電動車にレアアースは欠かせない天然資源だ。

誰が電気自動車を殺したか?」で心配したように、レアメタルが国際係争のカードに使われた。小型モーター用磁石に欠かせないネオジムやジスプロジウム、タイヤの難燃助剤としてのアンチモンといったレアアース(希土類)の生産量は9割が中国、日本は100%中国から輸入している[5]。リスク分散の発想は微塵もない。この国に国家安全保障戦略など存在しないことを示している。電気自動車やハイブリット車は、その基幹技術である電子製品も含め、常に中国の顔色を伺わないと作れないことを意味する。ただ、レアアースは製品にならなければただの土。その高品質な精錬技術や製品化には日本のハイテク技術が不可欠である。材料を売らなければ、製品を売らないと言えばいい。ハイテク技術も交渉のカードになり得るのだが、経済界はいい顔をしないだろう。問題は売られた喧嘩を買う覚悟(勇気)が日本人にあるかである。当然、日本製品の不買運動も含め、再び長期的な景気低迷も想定しておかねばばらない。

レアアース(希土類)
レアアース(希土類)

尖閣諸島問題が長期化しても、仮に早期に解決したとしても、国際社会はレアアースの中国偏重のリスクを改めて認識するであろう。各国は経済や環境戦略の見直しを強いられることになる。中国以外の安定地域に新しい鉱山を開発する、あるいは、レアアースの代替材料を開発するなど日本の知恵を生かせるリスク回避手段もあるが、いずれにせよしばらくは時間が必要となるだろう。そうなると、レアアースが不可欠な電気自動車やハイブリット車に対する熱は一気に冷めるかもしれない。「誰が電気自動車を殺したか?再び」となってしまうのだろうか。

クルマの話で締めたところで、少し冷静になろう。今晩はこの辺で寝ることにするか。

[参考・引用]
[1]「日中関係打開を」 船長釈放 経済界、評価の声、毎日新聞、2010年9月25日
[2]【新聞ウォッチ】尖閣衝突、日産ゴーン社長「影響なし」と冷静、Response、2010年9月21日、
http://response.jp/article/2010/09/21/145348.html
[3]渋沢栄一、論語と算盤、p125、角川ソフィア文庫
[4]自動車大手4社が増産 09年度、中国生産が大幅増、asahi.com、2010年4月26日、
http://www.asahi.com/business/update/0426/TKY201004260463.html
[5]谷口正次、メタル・ウォーズ、p197-200、東洋経済新聞社
[6]尾崎弘之、「レアアース輸出禁止」で損をするのはむしろ中国である、ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、2010年9月27日、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100927-00000005-wsj-bus_all

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Posted on 2010/09/28 Tue. 21:40 [edit]

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