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楽しいクルマ絵本の世界/エンスーのためのクルマ絵本ライブラリー

きいろずきんちゃん  

Cappuccetto Giallo Little Yellow Riding Hood

前回紹介した20世紀の「ダ・ヴィンチ」、ブルーノ・ムナーリのクルマ絵本を紹介する。原書イタリア語のタイトルは、“Cappuccetto Giallo“(Bruno Munari・作、Corraini)(写真左)、英語版は“Little Yellow Riding Hood”、訳して「きいろずきんちゃん」(写真右)。1970年代、ムナーリが企画・監修し、イタリアのEinaudi社から”Tantibambini“シリーズとして66タイトル出版された絵本の一つで、この絵本はシリーズ12番目[1]、2007年にCorraini社より復刻されたものである。この他にも、赤、白、緑、青ずきんちゃんの絵本がある[2]。復刻されたくらいだから、イタリア本国でもEinaudi社版のオリジナルを入手するのは困難のようである。

内容は、ご存知「赤ずきんちゃん」を現代風にアレンジしたもの。きいろずきんちゃんは、駐車場の管理人である父と、スーパーマーケットに勤める母と大きな摩天楼のビルの1階にある小さな家に住んでいる。舞台はニューヨークであろうか。きいろずきんちゃんのお友だちは、彼女の家のバルコニーにやって来る黄色いカナリアたちだ。彼女が道路を渡っておばあちゃんの家に遊びに行くときはいつも一緒について来る。今日も、レモンとグレープフルーツ、オリーブオイルの瓶を入れた黄色いバスケットを持っておばあちゃんの家へお使いだ。

現代のオオカミ(”Cappuccetto Giallo”より)
現代のオオカミ(”Cappuccetto Giallo”より)

おばあちゃんは、道路の向こうにある古いビルの屋根裏部屋に住んでいる。街の中は危険がいっぱい。車に乗ったオオカミが「かわいいお嬢さん、車に乗って行かないかい?」ときいろずきんちゃんを甘い言葉で誘う。彼女はちょっと怖かったけれど、これを見ていたカナリアたちは、信号機に集まって信号を隠してしまった。これで道路は大渋滞。オオカミの車が身動きを取れないように機転をきかしたのだ。きいろずきんちゃんは道路を渡って、無事おばあちゃんの家へ。おばちゃんは、彼女が小さい頃に聞かされた怖い話をいくつもしてくれた。

おばあちゃんの家からの帰り道、きいろずきんちゃんは祖母が教えてくれた「赤ずきんちゃん」のお話を思い出していた。でも、彼女はもう、オオカミのことは怖くなかった。カナリアたちが彼女を守ってくれるからだ。家に帰ると、窓の外では、きいろずきんちゃんをオオカミから守ったカナリアたちが楽しそうに飛び回っている。きいろずきんちゃんはとてもしあわせな気持ちになった。

坑道のカナリア?(”Cappuccetto Giallo”より)
坑道のカナリア?(”Cappuccetto Giallo”より)

元となった「赤ずきんちゃん」のオオカミも、物語が作られた当時の様々な危険に対する比喩だったと思うが、ここでの「オオカミ」は、大都市における犯罪、凶器ともなり得る自動車といった現代社会のリスクに置き換えたものであろう。特に、交通事故で多くの人の命を奪うクルマ社会への警告を込めた作品だと読み取れる。

なぜ、この絵本は「きいろ」ずきんちゃんなのか?信号機や標識、サッカーのイエローカードに使われるように、黄色には「警告」といった意味がある。犯罪やクルマ社会に対する警告を黄色でシンボライズしたのであろう。また、日本では檸檬を想起させるように黄色には爽やかなイメージがあるが、イエス・キリストを裏切ったユダの着ていた服の色が黄色だったことから、西欧では黄色は「裏切り」とか「汚辱」といったネガティブな意味を持つらしい[3]。カナリア・イエローをナショナルカラーにするブラジルも、W杯でみごとに期待を裏切ってくれた。このような西欧的思考を考えると、ハッピーエンドのラストシーンがいずれ裏切られる、すなわち現代社会のリスクから、我々は逃れられることはできないという裏のメッセージを深読みすることもできる。奇才ムナーリに、これくらいの人を食ったような意図が隠されていてもおかしくない。なにせタイトルが「きいろ」ずきんちゃんなのだから。

赤ずきんちゃんには登場しなかったカナリアは何のシンボルであろうか。私が大学で専攻した資源開発工学(Mining Engineering)の世界では、「坑道のカナリア(Canary in a coal mine)」は有名な話。炭鉱で、時に発生するメタンや一酸化炭素といった有毒ガス早期発見のために、先頭の坑夫はカナリアのかごを持って行く。カナリアは常にさえずるので、異常があれば鳴き止む。カナリアが鳴かなくなったら、すぐに坑夫たちは逃げるという訳だ[4]。このように、カナリアは自らの命と引き換えに、我々を生命の危険から守ってくれる動物の象徴なので、きいろずきんちゃんの命を守るキャラクターとして登場させたのだと思う。

ゼログラフィーアの技法(”Cappuccetto Giallo”より)
ゼログラフィーアの技法(”Cappuccetto Giallo”より)

さて、前回も紹介したように、この絵本は「ゼログラフィーア」という技法をふんだんに使っている。コピーをしながら対象物を動かすことで、複製という本来のコピー機の常識の殻を打ち破って、二度と再現できない作品を生み出している。本作は、対象物を道路を走る車とすることで、実にスピード感のある情景を作り出すことに成功している。いろいろな実車がコラージュされているのだが、モデルの特定はなかなか難しい。表紙に描かれた1台には、イタリアの絵本らしく”FIAT”のロゴが。調べてみると、これは1969年に登場したFIAT 128 Rallyという名車であった。右隣のクルマは?。

FIAT 128 Rally
FIAT 128 Rally

[参考・引用]
[1]現代の赤ずきんをコピーで表現、ムナーリ、百町森ホームページ、
http://www.hyakuchomori.co.jp/book/bruno_munari/pages/9788875701048.html
[2]ありました・・・、ブルーノ・ムナーリけんきゅうかい、
http://brunomunari.asablo.jp/blog/2005/11/29/160058
[3]黄色、Wikipedia、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E8%89%B2#.E9.BB.84.E8.89.B2.E3.81.AB.E9.96.A2.E3.81.99.E3.82.8B.E4.BA.8B.E9.A0.85
[4]カナリア、Wikipedea、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%A2
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Posted on 2010/07/20 Tue. 05:09 [edit]

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