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「はやぶさ」に日本のチャレンジ・スピリットをみる  

宇宙たんけんたい

大方の予想に反し、岡田JAPANは初戦を制した。まあカメルーンも調子悪かったし、内容的には手放しで喜べるほど質の高いものではなかったが、勝ちは勝ち。北京オリンピックでは、ただのビックマウスでボロクソだった本田も、今は日本の頼れるヒーローだ。もう一人のヒーローは松井かな。今回のメンバーの中では、一番安心感のある存在だ。W杯6連敗と言われた岡ちゃんも、これでなんとか日本人初の勝利監督という称号が付いた。我慢した甲斐があったね。サッカーほど、試合の勝敗で監督と選手を天国と地獄に露骨に振り分けるスポーツもないからね。「カメルーンの最後の15分の猛攻が、オランダ戦では試合開始から訪れる」というオシム前監督の言葉が、お祭り騒ぎに沸く日本人に、ワールドカップの本当の恐ろしさ、頂の高さを改めて認識させてくれた。そのオランダ戦は、いよいよ明日だ。でも、久しぶりに日本全体を元気にしてくれたニュース。

日本が勝利を収めた日の前日に、やはり日本中の多くの人々が関心を寄せていた、科学技術上のワクワクするニュースがあった。世界でも初めての試みであった小惑星探査機「はやぶさ」が、約7年間の長い旅路を経て、13日地球に無事帰還した。

小惑星イトカワ
小惑星イトカワ

「はやぶさ」プロジェクトは、月より遠い天体に着陸して、地球に戻って来た世界初のケースとなった。着陸といっても、米ソが着陸した月が地球の1/4(直径3500km)の大きさなのに対して、「はやぶさ」が着陸した小惑星「イトカワ」は、たったの540m!地球から月までの距離が38万4,000kmに対して、「イトカワ」までの距離は約3億km(※)。地球のスケールに換算してみると、自律飛行のできる蜂よりも小さいミニヘリコプターを飛ばして、それこそ、日本から13,500km離れたヨハネスブルクのサッカーシティ競技場の芝生の上に置かれたビー玉の上にタッチして、日本に帰ってくるようなものだ。ちなみに直径22cmのサッカーボールを月に見立てると、アポロ計画は24m先のボールに着陸して帰ってくればいい。難易度がわかるでしょ。

これだけでも相当すごいことなのに、もし戻ってきたカプセル内に、「イトカワ」の物質が少しでも入っていたら、アポロ計画で持ち帰ってきた月の石と同等、いやそれ以上の偉業達成である(簡易検査では大きな砂粒は確認できなかったようだ)。地球は小惑星の衝突や合体の繰り返しにより、今の姿を形作ったと言われている。したがって、小惑星の生成物質を分析することは、地球や惑星の誕生、ひいては、太陽系の起源を探る上で、非常に貴重な資料となる。過去に月の石を持ち帰って来た国は、アメリカと旧ソ連だけ。アポロは人の手で拾ってきた訳だし、完全に機械だけの力によって他の天体の物質を持ち帰って来られたら、ソ連のルナ計画以来となる。世界中の研究者たちが、本プロジェクトを絶賛し、期待をかける所以である。最終結果が判明するのは半年後になる。

「はやかわ」による小惑星の土壌サンプル採取イメージ
「はやかわ」による小惑星の土壌サンプル採取イメージ

このプロジェクトも、計画時点では絶対に無理だとボロクソに言われたという。誰かがやったことをトレースするそれまでの日本人の仕事のやり方に対して、今回のプロジェクトは、誰もやったことがない未知への挑戦だった。周囲が心配したとおり、何度もトラブルや危機に見舞われながらも、研究者やエンジニアたちが決して諦めずに、搾り出した知恵によって、問題を解決していった。関係者たちは、「神がかり的だった」と謙遜するが、その神の力を呼び込んだのは、日本人技術者たちの柔軟な頭脳と、モノづくりの高い技術があったからだと思う。それまでに築いてきた基礎があってこそ初めて、神様は助け舟を出してくれる。

日本が再び元気になるには、「モノづくり」といったハードのこだわり(成功体験)を捨て、情報やソフトといった価値重視の新しいサービス産業への転換が必要だという内外の専門家の声も聞く。私は、愚直といわれようが、今回のように高度で精度の高いモノづくりの能力が、やはり日本人の持つべきコア・コンピテンシー(強み)であり、その技術や人材の育成が、日本の生きる道ではないかと思うのだ。古い考えなのかなあ。

あと日本人に足りないとすれば、新しいこと、高い目標にチャレンジする精神と、それを受け入れる社会システム作り。奇しくも、岡田JAPANと「はやぶさ」プロジェクトは、挑戦的な目標設定をして、周囲から叩かれ続けてきた。ターゲットが相当高いから、当然途中で挫折を味わうことになった。しかし、こだわりを持ち続けて、諦めずに結果を出した(岡田JAPANはまだ道半ばだけど)。何かにチャレンジをする人は皆、元気がいいはずだ。頑張る動機づけがあるからね。そして、その目標を達成したときは、本当にいい顔になる。

挑戦者
挑戦者

日本が元気を失ったのは、皆が内向きで新しいことに挑戦しなくなったからではないか。長引く不況で、リスクを避け、安定志向に走る精神構造が影響しているのだろう。ゆとり教育では、その本来の目的から乖離した甘やかすだけの教育になってしまい、付け焼刃では決して養われない本当に生きる上で必要なビジョンを考える力やゴールに向かって実行する力をつける機会を失ってしまったのかもしれない。そういう自分を振り返ってみたときに、常に挑戦し続けているだろうか。

事業仕分けで、基礎科学や宇宙開発を切り捨ててきた民主党は、今回の「はやぶさ」のニュースをどう見ているのだろう。蓮舫行政改革刷新担当大臣は、「はやぶさ」に対してもやはり、「世界初の意味はあるんですか?」とおっしゃるのだろうか。枝野幹事長は、「これのどこが世の中に役立つのですか?」とおっしゃるのだろうか。少なくとも、この高い目標に挑戦した過程や結果が、みんなを元気にしてくれていると思うのだけれど。

事業仕分けだって、決して全てを否定している訳ではない。チャレンジとは全く真逆の精神構造、公益法人の諸活動や高級官僚の天下り。既に敷かれたレールの上をただトレースするだけの仕事やシステムの存在は、日本人の元気に極めて不利益をもたらすので、これこそ、今すぐにでも切り捨てるべきだ。一方で、我が家もいただく子ども手当は、子供やその家族に何かチャレンジする精神をもたらすのだろうか。そりゃ、薄給リーマン家庭にとっては経済的にいくらか助かるけれど、社会にとっては何のウェーブもエネルギーも起こさない。どうせお金を使うのであれば、学生や子育てをする親たちの新しいチャレンジを支援するような社会インフラ、たとえば奨学制度や保育施設の充実とかに使った方が、日本人はもっと元気になると思う。勿論、「はやぶさ」のようなチャレンジングな仕事にも予算的な配慮をしてあげて欲しい。日本を活性化するには、高い目標に挑戦できる環境や風土、元気になるシステムを何よりも整備することが重要だ。

2つの嬉しいニュースで、菅首相もイラ菅からニヤ菅で上機嫌なのだそうだが、私にとっては日本に対する期待と不安が交錯した、ここ1週間であった。

冒頭の児童書は「宇宙たんけんたい(3)太陽系の惑星 」(F・M・ブランリー・著、ケビン・オマリー・絵、的川泰宣・日本語版監修、神鳥統夫・訳、小峰書店)。未知なるものへの探究心を養うこと、すなわちサイエンス教育は、チャレンジ精神の醸成に欠かせないものの一つだと思う。「チャレンジ・スピリット」を精神的支柱におくアメリカには、児童向けの優れた科学読み物が多い。この本もその一つで、宇宙たんけんたいシリーズの1冊。このシリーズには他に、「1.太陽」「2.月」「4.火星」「5.国際宇宙ステーション」「6.宇宙人っているの?」がある。日本だとどうしても、科学漫画になっちゃうんだよねえ。いい本もあるんだけど、文化の差ですな。今回の「はやぶさ」のドラマチックな大旅行を題材に、JAXA監修で上質の児童書を作ってもらえないかなあ。民主党さん、こういうことにお金って使うのではないですかねえ。

(※)直線距離で言えば3億kmだが、7年間の総飛行距離はなんど60億km。

[参考・引用]
[1]はやぶさ 任務完了…JAXA教授「神がかり的だった」、毎日新聞、2010年6月14日、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100614-00000006-maip-soci
[2]はやぶさの贈り物:2010年宇宙の旅、毎日新聞、2010年6月8日~2010年6月11日
http://mainichi.jp/select/science/news/20100608ddm012040127000c.html?inb=yt
[3]はやぶさ 世界初の旅終え帰還…カプセル着地を確認、毎日新聞、2010年6月14日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100614-00000004-maip-soci
[4]小惑星探査機「はやぶさ」物語、JAXAホームページ、
http://spaceinfo.jaxa.jp/hayabusa/

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Posted on 2010/06/18 Fri. 23:00 [edit]

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コメント

民主党には夢も希望も持てない

「はやぶさ」の帰還とカプセルの回収を心から祝福する。しかし、
宇宙開発の予算を大幅に削った腐敗・民主党には、夢も希望も持てない。
子ども手当などの税金のバラマキの10%でも充てれば十分の科学技術予算が得られる。
それはバラマキではなく、日本の将来に対する良き投資となる。

URL | 左巻き菅 #-
2010/06/19 08:14 | edit

Re: 民主党には夢も希望も持てない

左巻き菅さん、コメントありがとうございます。
確かに子ども手当ての財源は、他の何か有益なものに使えなかったのかと思いますね。
おっしゃるように、将来を担う子どもたちに夢を与える健全な「投資」が必要。
そういうことを決断できる政治家は、一体どこにいるのでしょうか。

URL | papayoyo #-
2010/06/19 10:37 | edit

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